第35話 本当にわかったの?
さて、茶番が終わったところで。
僕と、合体を解いたみーむ、ルナ、ティア、コルニスは学園を出て街を遊びまわ……もとい、調査していた。
していたのだが、今のところ有力な情報は得られていない。
とても何かが起こっているようには見えないのだが、こんな時に騒ぎを起こして人々を混乱に陥れるのが神のやり方である。
こうしている間にもいつ嫌がらせを受けるかわからない。気を引き締めなければ。
そんなことを考えていた時だった。
「おら、金を出せっつてんだろ!」
「ご、ごめんなさい。ぼくは……」
そんな声が聞こえてきたのは。
カツアゲか? この世界にもそんなものがあるんだな……いや、感心してる場合じゃない、助けなきゃ!
別に人助けが好きなわけではないが、どうにも放っておけないのが困ったところだ。下手に介入したところで、余計に事態が悪化することもあるからな。たまにはスルーした方がいいのだろうか?
「いや、それは彩人の長所だから直さない方がいいと思うよ? そんなことを言ってたら何もできないし」
……それもそうか。
というわけで声のする方に行くことにした。
そこではザ・チンピラという感じの、ガラの悪い男三人が、赤い髪をした美少女を取り囲んでいるところだった。
「見てみろよ。この娘なかなか可愛いじゃないか」
「本当だ。なあ一緒に来いよ」
「や、やめてください……」
「いいじゃねえか、なあ? 今からちょっといいことしようぜ」
「だ、誰か、助け――え?」
少女が助けの声を叫びきるより前に。
僕の風の“力”が男三人を吹っ飛ばした。
面白いように吹き飛び、倒れる男たち。
あっけにとられたように立ち尽くす少女。
と思ったら男の一人が立ち上がり、言った。
「てめえ、ふざけんじゃねえ! 俺はな、――家の跡取りなんだ。俺の邪魔するとどうなるのかわかってんのか? もし俺をやったら――」
うっとうしいので土の“力”を使って、地面をいじって男たちを沈めてやった。
地下からもごもごという声が聞こえるような気がするが、気のせいだろう。
そういえばあの男は何家って言ったんだ? そこだけ聞き取れなかったな。
まあたぶん関わり合いになることはないから大丈夫だろう。……たぶん。
「た、助けてくれてありがとう……あなたはいったい……?」
少女が言った。
「僕は三好彩人。通りすがりの旅人――」
そのセリフが最後まで言われることはなかった。
僕が遅れてやってきたルナの風魔法によって吹き飛ばされたからだ。
「ちょっと! 置いてくなんてひどくない!? せめて一言言ってからにしてよね!」
ルナはそう言うが僕は返事できない。なぜならルナにぶっ飛ばされて伸びてるからだ。
「あと、通りすがりの旅人って何!? それでナンパできると思ってるの!? あなたって女の子を見たら誰彼構わずナンパする節操なしだったんだね!」
……確かに通りすがりの旅人はないなって思った。それにしても僕はそんなチャラ男に見えるのだろうか。僕は典型的なコミュ症なんだけどな……
……ん? あなた……?
僕はさっき助けた女の子を改めて見てみる。赤い髪の、僕より少し年下に見える美少女だった。さっきから事態についていけず「え? え?」とばかり言ってるが。
でもなぜかこの時、僕は違和感を覚えた。
見た目は文句なしの美少女なのだが、どうにも違和感があるのだ。なんだろう。前にもこんなことがあったような……なんだっけ?
その答えはすぐにもたらされた。
「あ、あの……ぼくは男なんだけど……」
僕が助けた少女……じゃなかった、少年が遠慮がちにそう言った。
なるほど、違和感の正体はこれか。
そういえば僕は元の世界にいた時、いじめられていた子を助けたことがあり、その子は女の子にしか見えなかったので女の子として接していたら「ぼくは男だ!」って強く抗議してきたんだっけ。
その子は僕の一つ下で、どう見ても美少女だったのだが……一応男子用の服を着ていたはずなんだけど全然気づかなくて、せいぜいボーイッシュな女の子にしか見えなかったという……元気かな?
その子と今僕の目の前にいる少年がなんとなく雰囲気が似ているような気がする。どこかと言われると困るけど。
あと、少年よ。そこはもう少し強く抗議していいと思う。
「え……? お、男? うそ……」
「何気に失礼なこと言ってるな!」
ルナのつぶやきに僕は思わず反応してしまう。
「じゃあ彩人はわかったの?」
「なんとなくわかったけど?」
「最初はわからなかったくせに」
ルナの問いに僕が答えたらみーむが茶々を入れてきた。
うるさいなあ。途中で違和感に気づいたからいいんだよ。
「……いいの?」
みーむのそんな疑問は無視する。
「え、あ、ごめん……」
「いや、いいよ。慣れてるから……」
ルナの謝罪に少年は答える。
余計にいたたまれなくなった。
ルナに遅れて、ティアとコルニスもやってきた。
二人は状況についていけなくて困惑しているようだったので、僕が説明した。まあ、コルニスはどうでもよさそうにしていたけど。
ついでに僕が元の世界で会った、女の子にしか見えない男の子の話をしたら、
「彩人ってそういうのが好みなんだ……」
というルナの呟きが聞こえてきたので、僕にそういう趣味はないよ! と抗議した。
「ごめん、ありがとう、それじゃ!」
少年はそう言って、どこかへ行こうとする。
あ、これは放っといたらいかんやつだ。
僕はそう予感した。
だってルナとパターンが同じなんだもん。
「あ、待って!」
僕は少年の手をつかんで、自分の方へ引き寄せた。
嫌な予感がしたからだ。
そしてその予感は的中する。
「え?」
少年が一瞬前までいた場所に槍が突き刺さっていた。
「逃げるよ!」
「えっ、ちょっと!」
僕は少年を抱えてその場から走り出した。
「待ってよ! どうなってるの!?」
ルナたちも文句を言いながらついてくる。
何者か(恐らく今出会った少年)を狙った刺客をかわしつつ、僕たちはどうにかひと気のないところまで逃げ切った。
「それで、どういうことか説明してくれるかな? というかまず、名前を教えて」
そう、僕は今まで困っていたのだ。
名前がわからないので今まで少女、もしくは少年と心の中で呼んでいたが、呼びにくくてしょうがない。ちゃんと名前を教えてもらわなくては。
「ぼ、ぼくは……」
少年は言いかけて、口ごもってしまう。
これはあれか、なかなか教えてくれないパターンか? ルナの時みたいに。
と思ったら、少年は意を決して口を開く。
「あ、あの……ぼくが名前を言うと君たちが面倒なことに巻き込まれてしまうかもしれない。だから、聞かない方がいいと思う……」
「いや、今更なんだけど。ここで見捨てるわけにはいかないよ。……いかないよね?」
少年が言ったことに僕が反論しようとして、ルナたちの方に伺いをたててしまう。……我ながら情けないな……
「……まあ本当に今更だよね」
「聞いた方がいいと思う」
「いいんじゃない? どうでも」
ルナ、ティア、コルニスの同意を得られたので、僕は少年を助けることにした。何の助けがいるのかはともかく。
……てかコルニス、「どうでも」って! まあいいけど。
「というわけで、とりあえず名前を教えて。教えないと……わかってるよね?」
僕は少年を脅して、名前を聞き出すことにする。
……あれ、チンピラとやってること変わらなくね?
みーむ、ルナ、コルニスはこちらをジト目で見ていて、ティアは困惑している。
だが、少年はようやく観念したようで、遂に話し出した。
「ぼくの名前はソニカ=アリアランズ=クラウン。……クラウン王国の、第一王子だ」
みーむ「なるほど、元の世界にもフィアンセが……これは修羅場になりそうだねえ……」
彩人「違う! 頼むから誤解させるようなことを言わないで!」
みーむ「まあ、違うことはわかってるけどさ……そういえばあやとは元の世界で付き合ってる女の子とかいなかったの?」
彩人「いると思う? この非モテ陰キャボッチのこの僕に? いたら面白いよね。はっはっはっはっは!」
みーむ「いや、そんな堂々と言われても……ごめん、ボクが悪かったよ」
彩人「……そんな生暖かい目で見ないで!」
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次も、火曜日に更新する予定です。




