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第34話 決闘と書いて茶番と読む

 僕は困惑していた。


「いや、決闘って……僕が受ける意味が分からないんだけど……それにそもそもルナは誰のものでもないのだけど……」

「ルナは僕の生きる意味だ! それを誰かに奪われるのが、僕は我慢できないんだ! 決闘しろ!」


 ……聞いちゃいない。それに随分正直なんだな。

 それにどういうわけか、僕のプライドが引くことを良しとしないのだ。本当に、なんでだろう?


『あやとはそろそろ自覚した方がいいと思うんだけど……』

 何を?

『……』

 みーむが何かを忠告していたが、問いかけたら黙ってしまった。なんだったんだろう?


 ルナをみると困惑しすぎて目を回している。どういう状態だ。


 まあいい。なんとなく僕はこの決闘を受けなければいけないような気になっていた。なので、

「仕方ない。受けてやるよ、この決闘!」

 僕は不敵に笑って言った。が……


「それで決闘の内容はどうするの? 言っとくけど僕は剣の腕は全然だから」

 僕はそんな情けないことを言う。だって仕方ないじゃん。できないんだから。

だから勢いで誤魔化す。情けないことでも堂々と言えばなんとかなるはずだ! たぶん。


『情けないね』

「情けないな」

「情けない……」

 みーむ、カイト、コルニスに言われてしまった。誤魔化せなかったらしい。


「大丈夫だよ。基本的になんでもありだから。ただし、相手を死なせたり回復不能な怪我を負わせるのはなしだからね」

 クリオはそんなことは織り込み済みだとばかりに言う。嫌味だな。


「死なせたり回復不能な怪我を負わせたりしなければなんでもあり?」

「まあそうなるね。あ、一応言っておくけど他人を呼ぶのはなしね。自分の使い魔はいいけど」

 クリオに確認したところそういう答えが返ってきた。ということはクリオも使い魔を持っているのかな? みーむは厳密には使い魔じゃないけど黙っておこう。みーむがいないと戦えないし。

『……』


 ちなみに回復不能な怪我の定義を尋ねたところ、大抵の怪我は回復薬でなんとかなるとのこと。

 どうやらこの世界の回復薬は性能がいいらしい。さすが異世界。すごいな。

使う機会がないから知らなかった。……あまり頼りたくはないけど。


 ただ、腕が無くなるなど部位欠損があった場合は高価な回復薬を使うか専門の人に治してもらわなければならないため、今回はなしらしい。

 ……それでも治るのが驚きだったが。


 で、相手に降参させるか、審判が戦闘不能と判断すれば勝ちらしい。


 ……相手にルールを決められているのが不愉快だが、僕がこっちの世界の常識を知らないんだから仕方ない。それにざっと聞いたところ僕に不利な点はない。なんてったって僕には自動で回復する力もあるんだからな!


 それで僕達は近くの広場に移動して決闘することになった。審判はコルニスが務める。野次馬も結構来て、みんな好き勝手なことを言っている。

「それではー、はじめー」

 というなんとも間延びしたコルニスの声とともに決闘は始まった。

 そのせいで僕は反応が遅れてしまった。

 僕はクリオの剣を紙一重で避ける。あぶね。


 さて、僕は最初、この勝負は余裕だと思っていたが、認識を改めなければいけなくなった。

 というのも、どうやったら殺さずに敵を無力化できるんだ!? という問題が発生したからである。一応ルナを殺さずに無力化したことはあるが、あれも結局は力技だったからな……あれ、僕詰んでね?


 というわけでここはみーむに任せることにした。僕はみーむとの合体を解いてみーむを出現させる。

「みーむ! 体当たりだ!」

「え、ええ……」

 そんな風にみーむに指示を出したらみーむは渋い顔をしたが、ちゃんと指示通りに動いてくれそうだ。……さすがに今の指示はないな、と僕も思った。

 さて、相手はどう出るかな、と思ったらクリオも使い魔を出してきた。


 犬のような使い魔である。……いや、チワワだ。この世界にチワワがいるのかは知らないけど、チワワにしか見えない。

 可愛い。可愛すぎる。僕はクリオが羨ましくなった。


「……」

 みーむが一瞬恨みがましい視線を僕に向けてきたような気がしたが、気のせいだろう。


 ……そんなことを考えている場合じゃなかった。

 その一瞬の隙をついてチワワがみーむを跳ね飛ばした!


「おい、みーむ、しっかりしろ! 高位の精霊なんだろ! ただの使い魔に負けてるんじゃねえよ!」

「なんだよ、あやと! 今のはお前が雑な指示を出したからだろ! お前こそしっかりしろ!」

「なんだと!?」

「やるかごるあ!?」


 僕とみーむの喧嘩が始まった。そんな場合じゃないのに!


 あ、クリオがあきれた顔でこっちを見てる! 絶対気のせいじゃない!


 やばい、こんなことをしてたら負ける! ここで負けたら僕は売られた喧嘩を買って負ける、ただの情けない奴になっちゃうじゃん! どうしよう!? とにかく考えろ! どうすればいい? ……あ、そうだ!


 僕はなんとか打開策を思いつく。実戦経験を経て僕は土壇場で作戦を思いつくのが得意になったらしい。本当は余裕を持って勝ちたいのだが……

 この策が通じるかはわからないが、やるしかない!


 そう覚悟を決めた僕はあえてみーむとの喧嘩を続けつつ、光と風を操作して誤魔化しながら、攻撃を回り込ませ、そして……


 クリオの頭上に水をぶっかけた。


 クリオが水浸しになる。

 その隙に僕は素早くクリオの背後に回り込んでぶん殴り、昏倒させる。


 そして僕は、クリオの頭を踏みつけながら言う。

「はっはっはっはっはー! 僕はこのためにわざとみーむと喧嘩した振りをして油断を誘ったのだー! そう、これは作戦なのだー!」


「「「うそつけーーーー!!!!」」」


 カイト、コルニス、ルナに、即座に突っ込まれてしまった。

 説明口調になってしまったのがいけなかったか?


「彩人、汗かいてる」

 コルニスに追加で突っ込まれた。


 少ししてクリオが起き上がり、さわやかな笑顔で言った。

「負けたよ。ルナの隣に立つには、どうやら今の僕では力が足りなかったようだ。出直してくるよ。そして君にも興味が湧いた。僕が力をつけたら、その時はまた勝負を受けてくれるかい?」


 ……笑顔が眩しい。たとえそれがずぶ濡れになっていても、踏みつけられたせいで髪がぐちゃぐちゃになって顔が泥だらけになっていても、その笑顔には一片の曇りもなかった。

 僕はそんなクリオに対し、「あ、ああ……」と答えるのが精一杯だった。


 そして僕は恐る恐る周りを見渡してみる。

 すると、みんなが僕にドン引きしていた。

 そのみんなの中にはルナも含まれていた。

 なぜかそれが一番堪えた。


 僕は膝から崩れ落ちる。


 僕は猛烈な敗北感に苛まれた。


 ……こうして僕達が微妙な雰囲気になっていると、そんなこと知るかとばかりに一人の少女が進み出て、クリオにげんこつを落とした。


「え!? 何するの!?」

 という言葉が漏れたのは僕である。なんでだよ。


「クリオ兄! また勝手なことして! なんでそうやって見境なくいろんな人と付き合うの!? 私がいるのに!」

 ……え!? おい、まさか……

「誤解だ! ルーテシア! この人は男だし、それに僕は誰かと付き合ったことはない! 交友関係を広げようとしただけで……」

「どうして!? この私がいるのに!? 信じられない!」


 え、ええ……


 このルーテシアと呼ばれた少女は、濃いピンクの髪をしたかわいらしい女の子だった。

 ザ・幼馴染という感じの娘だったが、メンヘラ属性もあるらしい。


 ……てか男子との交友関係も認めないってどんだけだよ!


「なあ、あのルーテシアってどんな娘なんだ?」

 僕はカイトに聞いてみる。

「クリオの一つ下の幼馴染らしい。クリオの一年後に入学したんだけど、それからはクリオのストーカーをやっていて、クリオに寄ってくる人を追い払っているんだ」

 やばい奴じゃないか。

 それでも女の子が寄ってくるクリオってすごいね。


 僕は再びクリオとルーテシアのやり取りをうかがう。

「ぼ、僕は憧れのルナさんに再び会えたのが嬉しくて、でも同時にルナさんと一緒にいる彩人に嫉妬してしまったんだ。それで決闘を申し込んだんだ」

 クリオはルナを話に出した。

 ……どうやらそれは地雷だったようだ。


 ルーテシアは一瞬無表情になった後、怒りの形相でルナの方を向く。


「え……?」

 ここに来てから基本的に困惑しっぱなしだったルナが声を出した。


「あれ、ルーテシアってルナさんのこと知ってたっけ?」

 クリオがふと疑問を漏らすと、

「話でしか聞いてなかったけど、分かるよ! 視線をずっと向けてれば!」

 ルーテシアがそう答える。

 なにそれ。こわい。


 ルーテシアは親の仇を見る目でルナを睨み、剣でルナの方を指して、言った。

「ルナ! 決闘よ! 受けなさい!」

「え、ええ……?」

 ルナが相変わらず困惑しながら返す。


 それにしてもクリオとルーテシア、揃いも揃って面倒な人だな! 言うこともほとんど一緒だし!


 ルナは断るのも面倒だと思ったのか、決闘を受けることにした。

 そして、ルナとルーテシアの、何を賭けているのかわからない決闘が始まる。


 ……


 まあ、結果から言えば。

 この決闘はルナの圧勝だった。


 まあ僕はルナの勝利は疑ってなかったけど、まさかここまでとは思わなかった。

 いや、ほんとだよ?


 ルーテシアが剣を構えて「いざ、尋常に勝負!」みたいなことをやっているうちに(言ってないけど)、ルナが後方に回り込んだ。ルーテシアがルナを視認できなくなり困惑しているところに、ルナが後ろから手刀で突いて気絶させ、終わりである。


 あまりにもあっけなさ過ぎた。

 やってること自体は僕と同じ不意打ちなのだが、ルナの方がよっぽどスマートだ。

 てか手刀って……


 おかげルーテシアがどういう戦い方をするかわからなかったぞ。

 ……あれ? そういえばクリオも僕があっさり倒してしまったせいでどんな戦い方をするかわかってないじゃん! これはなんかまずいような気がする。


 でも不意打ちでやられるような連中だから別にいいのか? いやでもなんか違うような気がする。なんでだ? う~ん……


 そんなことを考えていたら、ルーテシアが起き上がって、言った。

「私は、負けていない! まだ戦える! こんなところで負けるわけにはいかないの!」

 なんでだよ。


 ルーテシアが往生際の悪い悪役みたいなことを言っているが、残念ながら勝負はもうついている。

 審判だったカイトが、ルーテシアは戦闘不能であると判断したからだ。そしてそれに異議を唱える人はいなかった。

 だってルーテシアはどう見ても戦える状態じゃなかったから……


 ほら、今も足がふらふらして危なっかしい感じだ。今ならデコピンで倒せそう。いや、勝手に転ぶのが先か?


 ……それにしても、手刀で突いただけでこれって、どんだけ衝撃を与えたんだよ……


「私は、負けない。だって、私はクリオの――」

 そこまで言った時だった。

 ルーテシアは足を盛大にもつれさせ、


 ビターーーーン!!


 盛大に転んだ。

 そしてルーテシアは動かなくなった。


「「「「「……」」」」」


 会場を微妙な雰囲気が支配した。


 こうして、学園での決闘(ちゃばん)は終わった。

みーむ「……なにこれ」

彩人「……なんだろうね」

みーむ「これはひどい」

彩人「うん、ひどいね」

みーむ「彩人が」

彩人「僕だけ!? いや、確かにひどかったけどさ、僕だけのせいじゃないよね?」

みーむ「今回の話で彩人は主人公にふさわしくないことが判明しました。なので、主人公の交代を要求します!」

彩人「いや、そんなことを言われても……」

みーむ「とりあえず彩人には退場してもらいます」

彩人「僕に消えろと!?」

みーむ「第29話の後書きで、ボクがもっと出番をくれと言ったら図々しくない!? と言われたけど、その後読み返したらやっぱりそんなに出てなかった件! 主人公なのに生意気だ! とりあえず退場しろ!」

彩人「え? え? ちょ……」


ドゴオオオオオオオオオオンンン!!!


彩人「あ、あれ? 今みーむを吹っ飛ばしたの誰?」

???「……大丈夫? 怪我してない? もう安心していいよ。私が守ってあげるから!」

彩人「……女の子? でも顔に靄がかかって見えない……」

???「何も心配することはないよ。私が精一杯、愛してあげるから! あなたは私のことだけ、考えていればいいんだよ」

彩人「うわあああああ! みーむ、助けて!」

???「……私よりみーむなの? みーむはもういないのに? 自分を消そうとしたのに? ……そうなんだ。なら、あなたと一緒に私も……」

彩人「ぎゃあああああああああ!!!」


彩人「……は! ゆ、夢か……」


お読みいただきありがとうございます。

次も、火曜日に更新する予定です。

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