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第31話 移動手段

お待たせしました。

第二部開幕です。

楽しんでいただけたら幸いです。

 僕の前に一人の少女が立っていた。彼女は白いワンピースを身に纏い、綺麗な銀色の長い髪を揺らしている。顔はよく見えないが、儚い美しさがあるのが感じられた。

しばらくすると少女はこっちに気が付き、とても嬉しそうにこちらに向かって駆け出して、僕に抱きついてきた。


 そして僕の耳元で囁く。

「やっと会えたね。――――。もうずっと一緒だよ。もう離さない。絶対に。だからね、――――」


 恐らく、男なら嬉しくない人はいないシチュエーションである、と傍から見ていれば思うだろう。

 しかし今の僕は困惑の方が勝っていた。


 ……いやお前誰だよ。後お前が言っている人は誰なんだよ。人違いじゃん。どうするんだよ。


 と思ったら、少女がぱっと頭を上げて顔を見せた。


 やはり知らない顔だった。

 僕はますます困惑を強める。


 言えない。今、僕に向かって満面の笑みを浮かべている少女に向かって「どちら様でしょうか?」なんて聞けない……


 それでもいつまでもこうしているのも居心地が悪いので、僕は意を決して口を開く。

「あの、すみません。どちら様でしょうか?」

 僕がそう言うと、少女は途端に悲しそうな顔になる。


「私のこと、覚えてないの?」

「ごめん、記憶にない。たぶん、人違いじゃないのかな?」

 僕がそう言うと、少女は今にも泣きそうな顔で、というか目に涙を溜めて、さらに聞いてくる。

「本当に、覚えてないの?」

「ごめん、本当に、覚えていないんだ。君のこと、教えてくれないかな?」


 僕がそう言うと少女は驚き、絶望に染まった顔をした。

 まるで世界の終わりのような表情である。


 少女は俯き、「ひどい、私は待っていたのに……こんなことってある? ……私は一体今まで何のために……」というようなことを小声で呟いていた。

 そして、「そうだ、忘れられないようにすればいいんだ」と言っておもむろに顔を上げる。


「なら、私があなたを愛してあげる。ずーーーーっと一緒だよ」

 そう言った少女の顔は狂気に彩られていた。

 僕はしばらく動けないでいたが、やがてこれはやばいと思い、逃走を選択する。


 だが、すぐに少女に追い付かれ、腕をつかまれて押し倒される。

「なんで逃げるの? せっかく私が愛してあげるのに。もうぜーーーーったいに、離さないから」


 少女の「愛して」という言葉が「殺して」に聞こえるのは気のせいだろうか。気のせいではないだろう。

 なぜなら、少女の目は血走り、というか目から血の涙を流しており、手にはナイフを持っているのだから。

「や、やめ――――」

 という僕の言葉が少女に聞こえるはずもなく。

 少女のナイフが僕に突き刺さった。


 ぎゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!


 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!!!!!!!!


 と思ったところで目が覚めた。


……なんて夢だ!


てかあの見知らぬ少女は誰だったんだ!? トラウマになりそうなんだけど!

 ……あれ? どんな顔だったっけ? 思いだせない……


 それにしても、あの少女は知らないけど、この夢は前にも見たような……?

 これはコp……じゃなかった、デジャヴ?

どうやら僕はまだ寝ぼけているらしい。

こんな夢をなんべんも見るとかもはや呪いだよね。勘弁してほしい。


 そういえば、夢の中でも痛いなんて思うんだな……

 今は別に体の痛みは感じないし、誰かに襲われた形跡もない。

 それにあの痛みは想像上の痛みで、現実の痛みとは違う気がする。

 こんなことがあるなんて初めて知ったな……


 不吉な夢というか何と言うか……

 そこはかとなく嫌な予感がする……

 ……いいや、どうせ夢だ、忘れよう。


で、意識がはっきりしたところで、今の状況を整理してみる。


 僕達は今、王都に向かっているところである。

 最近知ったのだが、この国はクラウン王国と言って、王様が治める国らしい。王都というのはこの国の首都である王都クラウンのことだ。

 国の歴史は調べてないが、国と都市の名前が一緒なのはこの国はもともと都市国家で、周囲の都市国家を吸収して大きくなったというような歴史があるのだろうか? 時間があったら調べてみよう。


 しかし王都は遠い。徒歩では時間がかかりすぎるので馬車を使うことになった。

 問題は馬車代だが、解放隊の拠点があった町で準備のついでに冒険者としてモンスターを狩って換金していたので、問題はない。


 そして馬車に揺られながら三日ほど旅をしていたのだが、それでも時間がかかる上に乗り心地が悪い。移動がこんなに苦痛だと思ったことはなかった。


 窓の外から景色を見て思う。

 ああ、この道をアスファルトで舗装して、車作ってぶっ飛ばしたい。


 一応王都に繋がる街道なのでそれなりに整備はされているのだが、舗装といってもせいぜい石を敷き詰めたぐらいで、穴ぼこになっているところも結構ある。元の世界がどれだけ恵まれていたか、実感するものだ。


 元の世界の知識を使ってこの世界を開発していきたいなあと思うが、ものすごく大変そうだ。

 だってまず知識がないとできないし、あってもそれを実現するのは並大抵の苦労じゃないはずだ。なぜなら元の世界にあって異世界にないものは多いので異世界にあるものでなんとかしなければならないし、それができても相当根回ししないと着手すらできないのだ。

 要は、ただ単に知識と力があるだけでは駄目なのである。

 道を整備するのはもちろんのこと、車を造るのも一人ではできないからな……


 そういえば、この世界はトイレや下水道はきちんと整備されているな。

 恐らくだが、以前に別の世界からやってきた人が整備したのだろう。


 僕の体感だが、元の世界よりもむしろ下水道の整備は進んでいるように感じる。トイレも綺麗だし、その異世界人はよほどトイレや下水道の整備に執念を燃やしていたに違いない。

そうでなければ、中世ヨーロッパ風の世界なのにトイレの文明レベルがやたら高いのに説明がつかないような気がする。


 おかげで僕はこの世界でもそれなりに快適に過ごせるのでその異世界人には感謝しているのだが、移動手段の方はなんとかならなかったのかとも思ってしまう。まあ、トイレの整備だけで力尽きてしまったのかもしれないし、いろんな横槍が入って実現しなかったのかもしれない。トイレの整備だけでも充分過ぎるほどの偉業だしな。


 でもやっぱり車が欲しい。馬車の旅はもう勘弁だ。車でぶっ飛ばしたい。原付しか運転したことないけど。

 誰か車の研究している人いないかな。王都に着いたら探してみよう。

 あと、車を走らせるには道路の整備も必要だな。どうにか整備できないかな。まちづくりとか道路整備とかすごく興味があるので、是非やってみたい。


よし、やってみよう。

 この力で世界を自分好みに作り替えるんだ。

 そう、これは神を倒すためには必要なことなんだ。余裕があった方がより力をつけて神に挑める。決して自分が楽をしたいわけではないんだ。うん。


『……』


 そう、自分に言い訳をしつつ、決意を固めていると。


「きゃあああああああああああああ!!!!!!」

「うわあ、ルナが馬車から落ちた!」

 ルナが久々にドジをかましていた。……なんで?


「ぷっ、馬車から落ちるなんて、どうしたらこうなるの、ぷくくく」

「う、うるさいなあ! コルニスだって顔色悪いじゃない! 大丈夫なの?」

「ぷくく、うっ、大丈夫、う、だよ」

「本当に?」

「二人とも、喧嘩はやめてください」

 馬車を止めてルナを拾った後、ルナとコルニスが仲良く(?)じゃれあっていて、ティアがおろおろしていた。僕は置いてきぼりである。


「馬車から落ちたルナには言われたくない! 私は本当にだいじょ、う、……」

「うわあ、馬車を止めて!」

 コルニスが乗り物酔いするというトラブルもあった。


 僕はトラブルメーカーを二人も抱えてしまい、頭を抱える。

 僕は御者に謝罪した後、チップを多めに渡しておいた。なお、この世界は基本的にチップは不要だが、別に渡してもいいらしい。なので払っておいた。だってそうしないと馬車を降ろされそうだったし……


 ちなみにみーむは僕と、まーくはティアと合体した状態で馬車に乗っていたので、この馬車に乗った僕の仲間は、僕を入れて四人である。

 そうしたのは、あまり人数が多すぎると断られてしまう恐れがあったのと、あとは馬車代の節約のためである。


 このことを決めた時、みーむは「こんなことに合体を使うなんて……」とか、「ひどいよー! ボクもキミの仲間なのに!」とかいろいろ言っていたが、どうにか説得した結果、渋々ながら受け入れてくれた。

 一方でまーくは文句を言う事もなく、素直に従っていた。まーくがまだ喋れないというのもあるけど、それだけじゃないような気がする。……これが人徳の差か?


 それで僕が御者に頭を下げた時、みーむは僕に『……頑張ってね』と言っていた。仕方ないとはいえ、他人事だと思って……


 それでだいぶ日も傾いてきたということで、宿場町で一泊することになり、現在に至る……といったところか。

 ちなみに僕はルナたちとは部屋を分けてもらっている。さすがに女子と同じ部屋はちょっと……と思ったからだ。ルナとコルニスが同室で不貞腐れていたが、仕方がない。とりあえず、無理矢理全員を同じ部屋に押し込もうという人がいなくて助かった。


 ……そういえば、町を発ってからここまでモンスターに襲われたりしなかったな。さすがに整備された街道にモンスターが出たら問題だからね……あれ、これはフラグか?


 そうならないように祈りつつ、僕は起きて朝食を食べ、朝の支度をして少し休憩した後、次の馬車に乗って王都へ向かったのだった。今日中には王都に着くそうなので、あと一息である。

 それまで何事もありませんように……

みーむ「第二部開幕早々何やってんの!?」

彩人「本当にもう、あの二人は……」

みーむ「夢の中で痛がるなんて……」

彩人「え? そっち?」

みーむ「あと、王都にはいつ着くんですかねぇ……」

彩人「すみません、次回には着く予定です。……てかみーむも助けてよ!」


シーン……


彩人「いない! みーむが逃げた!」


お読みいただきありがとうございます。

次回は火曜日に更新する予定です。その後は毎週火曜日に更新していこうと考えています。

よろしくお願いします。

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