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第29話 旅立ち

 私は泣いていた。


 またこうして、彩人に会って話せるとは思っていなかったから。


 私が呪いに蝕まれた時、もう終わりだと思った。


 あの時私は、偽者に呪いをかけられたと思った。

 だけど今思えば、偽者が現れるずっと前から違和感はあった。

 つまりあれは、私が神になった時から蓄積されたものだったのだ。

 だから力が弱まって、偽者に不覚を取ってしまった。ついでに言うとドジも増えた。


 それを薄々感じていたからだろう。私はこの呪いを解くことは不可能だと理解してしまった。

 だから彩人に頼んだ。私を殺して、と。


 だけど彩人は助けてくれた。呪いを解いてくれた。

 それが無性に嬉しかった。


 ……実はまだ、呪いは完全には解けていない。今でも少しだけ、心の内から誰かの怨嗟の声が聞こえるような気がする。

 私はそれを受け止めて、この世界の不幸をなくしていくつもりだ。

 このことは彩人もわかっているだろう。

 偽者も倒さないといけないし、戦いはむしろこれからだと言える。


 それでも今は。


 こうして会って話ができる。その幸せを確かめたくて。


 私は彩人に抱きついた。


 彩人は確かに、ここにいる。

 堪えきれず、私は泣いてしまった。

 彩人は困った顔をしながらも、私を受け入れてくれた。私はそれが嬉しくて、ついつい甘えてしまった。

 様々な感情があふれ出し、そのまま涙として出てきて、顔をぐちゃぐちゃにして泣いた。思う存分泣いた。


 そして……


「何やってるの?」

 ……知らない声が聞こえてきた。


「えっと……誰?」

 私は彩人に尋ねた。

 彩人曰く、あの娘はコルニスといい、ヴァンパイアだという。過去に家族を殺され、謎の組織に利用されていたとか。

 謎の組織はルアシス……偽者の方ね……が関わっている可能性が高く、コルニスは恐らく騙されたのだろう、とも。

 それを彩人が拾ったと。

 なるほどね……そういうことか。


「そうなんだ……私はルナ。よろしくね」

 と挨拶したものの、無視されてしまった。


 コルニスは何か不満があるらしく、頬を膨らませて彩人の方を見ていた。

「……彩人、私のこと忘れてた」

 そんなことを言われた彩人は、しまったという顔をした後、いや忘れてませんでしたよとばればれの嘘をつき、じろりと睨まれて謝っていた。

「ごめんなさい」

 彩人は土下座までしていたが……

「許さない」

 コルニスはそう言ったかと思うと……


 かぷ、ちゅー


 彩人に嚙みついた。

 前にもやったことがあると聞いてはいたが、実際に目にすると動揺してしまった。

「え? いきなり何するの!」

 彩人が抗議するが、そこでコルニスはさらに爆弾発言をしてきた。


「これであなたはヴァンパイアになった。新しい私の家族。よろしく」


 え……

「ええええええええええええ!!!!!」

 彩人が驚いている。しばらく口をぱくぱくさせた後、

「え……これからずっと血を吸って生きていかなきゃいけないの? そうしなきゃいけないんだよね? 吸った血に菌が入っていて、感染症にかかったらどうしよう……」

 心配するのそこ!?

「大丈夫。別に血を吸わなくても普通に生きていける。ただ、血を吸うと回復が早まったり、パワーアップする能力がついただけ。あと、ヴァンパイアは感染症で死なない」

 コルニスが応える。

「そ、そうなの? そんな都合のいいことある? あ、でもニンニクと教会のシンボルが苦手なんだっけ?」

「それは人による。大抵は生まれつき」

「そうか、まあ嫌悪感は感じないけど……あと心臓に杭を刺されると死ぬんだっけ?」

「それは普通の人間も同じ」

「そうか……あれ、ひょっとして夜しか動けなくなっちゃう!?」

「落ち着いて。今は昼」

 ……彩人とコルニスはそんなやりとりをしていた。


「はは……大変なことになっちゃったね……」

「そうだね……」

 私はみーむとそんなことを話していたが……


 かぷ、ちゅー


 誰かの血を吸う音が聞こえたな……と思ったら私の血が吸われていた。

「え?」

「……私の彩人を奪った罪。許さない。罰としてあなたも私の家族になってもらった」

 と、コルニスが……

 ええええええええええええ!!!!!


 ……まあ、そんなことがあって。


 私達は『解放隊』の人達がいる場所にいた。


 私と彩人がヴァンパイアにされた騒ぎがあった後、彩人が知り合いに会いに行った方がいいのではないかと提案してきた。『解放隊』の人達の所に行こうと。

 でも、どうやって? と言ったら彩人が、以前私が持っていた連絡用の道具を預かっているのでそれで連絡しようと言う。

 なので現在地を伝えたてしばらくしたら、


「ルナーーーー! 会いたかったよーー!!」

リーザが抱きついてきた。


「良かった! 彩人なら愛の力でルナを連れ戻してくれると信じてたよ!」

「愛の力って……」

 リーザは相変わらずテンションが高かった。

「あれ? あの娘はだれ?」

 リーザはさっそくコルニスのことを聞いてきた。

「ええとあの娘は……彩人くん?」

 私はうまく説明できる自信がなかったので彩人に話を振ろうとしたら、彩人は固まって放心していた。小声で「あいって……」と呟いている。何がそんなにショックだったのだろうか……


 どうにか彩人をショックから立ち直らせて、コルニスがどういう娘か説明してもらった。コルニスを解放隊の拠点に連れて行っても大丈夫かという話だったが、みーむが、彩人の言うことは聞くから大丈夫だと言ったので、大丈夫だということにした。

 その割にさっき勝手な行動をしたような気がしたが、明確に禁止したことは逆らわないと断言され、これで連れていかない方がまずいよねという話になったので、コロニスも連れていくことにした。


 それで、リーザに案内されて私達は『解放隊』の拠点に行った。

 なお、拠点は中くらいの町の、何の変哲もない家の地下にあった。


 そこで私達は猛烈な歓迎を受けた。

 そこには村にいた孤児院の子どもたちもいた。

 彩人やみーむは再会を喜んでおり、コルニスも無表情ながらうまく子どもの相手をしていた。なお、コルニスには今後許可のない吸血とヴァンパイア化を禁止してある。特に子供達に会った時は吸血しちゃダメだよと、彩人が念を押していた。そうしたらコルニスは、しないよ! と言っていたが。


 私は孤児院にいたシスターと話をしていた。

「ああ、ルナ様……本当に良かった……」

 やたら大げさな上に様づけなのだが、スルーする。

「ああ本当に良かったよ。ところでみんなは元気にしてたかい?」

「はい、みんな元気にしております。ティアはもっと強くなりたいと修行しておりますし、カイトは『解放隊』のつてを頼って王都へ旅立って行きました。カイト以外は今のところここで解放隊のお世話になっています。その代わりと言っては何ですけど、私達はルナ教の布教を通じて『解放隊』を助けようとしているところです」

「そうなんだ」

 ルナ教の話については苦笑いするしかないが……とにかくみんな元気そうで良かった。


 ただ……ここで一瞬シスターの顔が曇ったのが気になった。

 なんとなく放置してはいけないような気がしたので聞いてみる。

「えっと……何か大変なことがありましたか?」

「……実はね、コラナと、セリカ、カリーナの三人がある日忽然と姿を消してしまったの」


 後ろの方で息を呑む声が聞こえた。

 振り返ると、彩人とみーむが驚愕に目を見開いている。


 セリカとカリーナは村で石を投げつけられているのを彩人が助けた姉妹のことで、コラナはティアが攻撃しようとしたのを私が防ぎ、彩人が孤児院に預けた少女のことだ。コラナの話は今シスターに聞いて初めて知ったわけだが……


「あれ、じゃあみーむの兄弟も!?」

「みーぶのこと!? ボクに兄弟はいないよ!」

 彩人とみーむが聞いて(突っ込んで)いた。どうやらコラナが抱えていた猫はみーぶというらしい。

「そうね。みーぶも一緒にいなくなってしまったの。それでね、一応書置きが残っていたんだけど」

 シスターはそう言って書置きを見せてくれた。

 そこには子どもの字で、要約すると「旅に出ます。探さないでください」的なことが書いてあったのだが……


「怪しいね」

「そうだね」

 彩人が言うように、誰かに書かされた可能性が高かった。

 それ以前に、黙って出ていくなんてことを許容できるわけがないのだが……


「『解放隊』の人達に探してもらっているのですけど……」

 シスターによる状況は芳しくないらしい。

「私達も手伝いましょうか?」

「そうしてほしいのは山々ですが、何分手掛かりが全くないんです……」

 私達には自身の強化と仲間集めを優先してほしいらしい。確かに闇雲に探すよりは効率的だ。いなくなった子たちのことは気になったが、ついでに探すくらいにしてほしいと言われた。

 まあ、『解放隊』の人達にもプライドがあるのだろうし、善意からの提案であることはわかっているので、彼らを信じてみることにした。


 それで、私たちがどこに行くかについてだが、彩人たちと話し合った結果、王都に行くことに決定した。仲間を集めやすそうなのと、偽の神についての手掛かりがありそうなのに加え、カイトに会いたいという彩人の個人的な理由もあった。私ももちろんカイトに会いたいし、王都にいる『解放隊』の人達のことも気になったので、王都行きには賛成だった。みーむやコルニスも特に反対はしなかったので、行き先は決まった。


 さて、私達はこの町の『解放隊』のつてがある宿で宿泊し、数日この町に滞在して旅の準備を整えた。そしていよいよ出発しようとしたところで、孤児院の子どもたちに話しかけられた。

「あの!」

 そう話しかけてきたのはティアだった。

「えっと……どうしたの?」

「私も連れて行ってほしいです!」

 意を決した様子のティアを見て、私は考えていた。こうなることは半ば予想していたけど……


「この道中は危険だ。命を落とすかもしれない。それでも行きたいかい?」

「望むところです。私はもう守られるだけなのは嫌なんです。お願いします」

 ティアは決意を込めた表情で言った。

 どうしたものか……と考えていると、

「この子は日々熱心に訓練していて、私達に教えられることはもうないのです。この子のためにも、是非行かせてやってください。お願いします」

 シスターはそう言って頭を下げるし、

「私はティアがいなくなるのは寂しいけど、ティアを是非行かせてください。お願いします」

 ティアの親友のミラもそう言ってくる。


 そこまで言われるとなんだか断りにくい。私は気づけば、

「ぼくはいいけど……彩人くんは?」

 と言っていた。そして彩人も、

「そうだね……いいんじゃないかな」

 と言っていた。


「やった! ありがとう!」

「良かったね!」

「うん! みんな、今までありがとう!」

「ティアをよろしくお願いします」

 ティアやミラ、シスターたちが喜んでいた。


 こうしてティアの同行が決まり、私、彩人、みーむ、コルニス、ティア、それにティアの精霊であるまーくの四人と二体で王都に向かうことになった。

 たくさんの人々に見送られながら。


 この後、私たちは王都で新たな出会いや、思わぬ人物との再会を果たすことになる。

 まさかそこであのような信じられない出来事の数々に巻き込まれるとは、この時の私達には知る由もなかった。

みーむ「かみたおラジオ! ここからは、ボクとあやとがみんなから寄せられた質問に、一つ一つ答えていくコーナーだよ!」

彩人「え? 何これ? 聞いてないんだけど……。いつの間に質問を募集してたの? てか、かみたお?」

みーむ「ボクの知り合いから募集したんだ! それじゃあ早速いこう! まず一つ目、ラジオネーム『似ている名前のキャラを作るな』さん、ありがとうございます。いつも楽しみに聞いております」

彩人「このコーナー初めてだよね?」

みーむ「質問です。後書きはだんだん長くなっているのに、第23話は一文で終わっています。手抜きですか?」

彩人「そんなこと突っ込む人いる? ええと、第23話はシリアスな雰囲気を壊したくなかったからこうなったそうです」

みーむ「本音は?」

彩人「……天の声が聞こえなくなった。手抜きの疑いはあるね……」

みーむ「じゃあ次のメッセージは彩人が読んで」

彩人「なんでこんなことに……ええと、ラジオネーム『マスコットキャラは必要だ!』さん、ありがとうございます? いつも楽しみにしております。質問です。この作品なんか最近クライマックスっぽい展開になっているのですが、もうすぐ終わりなんですか?」

みーむ「いや、まだ終わらないよ! 未回収の伏線がたくさん残ってるし! 書きたいシーンもまだいっぱい残ってるし! ……だそうです」

彩人「……例によって天の声か」

みーむ「途中で筆を折らないといいね」

彩人「縁起でもないこと言わないで! じゃあ次のメッセージで、ラジオネーム『もっとみーむに出番を!』さんです。質問です。今までルナ、ルクシア、ルアシスなどのヒロインが出てきましたが、彩人は結局誰が好きなんですか? ……ねえ、さっきから質問してるのって、ひょっとして全部みーむ?」

みーむ「ギクッ! い、いや、そんなことは……」

彩人「そうなんだ……てか、あんなに出てるのにもっと出番を! って図々しすぎない? 自分以外のキャラをまったく登場させない気?」

みーむ「それはその……そうだ! 次のメッセージ! これはボクじゃないよ!」

彩人「本当に? まあ一応読むか。ラジオネーム『名無しの小説家』さん。私はwebに小説を投稿している者ですが、調子に乗って後書きがどんどん伸びてしまい、本文が書けていません。ストックを使って毎日更新していましたが、そろそろストックが尽きそうです。どうしたらいいですか?」


びりっ! ぐしゃぐしゃ、ぽいっ!


お読みいただきありがとうございます。

明日も更新しますのでお読みいただけると嬉しいです。

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