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第21話 神がすがる

 なんでこうなったんだろう。


 私はルナの姿で、教会で神として崇められながら思った。


 私はもともと神ルアシスだったけど、何者かによって神としての権限を奪われてしまい、どうにか生き残るため本体を自ら封印。唯一残った分身体である「ルナ」を使って情報収集を行っていた。


 その道中で出会った彩人という男の子は何回も私を助けてくれた恩人なんだけど、その彼が教会の人に捕えられたティアを助けようとした時、様子がおかしくなった。


 なぜか普段ではありえないほどキレて神父につかみかかったのだ。まるでトラウマを刺激されたみたいに。


 私が教会に乗り込んだ時、ありえないものを見て頭が真っ白になった。そしてしばらくすると裏切られた、許せないという怒りの感情が湧き上がった。彩人がいなかったらどうなっていたか、わからない。


 でも彩人が怒っていたことで少し冷静になった。なぜかはわからないがとにかくこのまま彩人に神父を殺させてはダメだ。そう思った。


 だから私は彩人を後ろから抱きしめた。


 ……訂正しよう。全然冷静じゃなかった。今思い出すとなぜこんなことをしたんだろう。恥ずかしすぎる。


 でもこの時の私は止まらない。私は彩人を説得するため、言葉を紡いだ。

 何を言ったのは覚えていない。ただ、この時の私は神だった時の口調になっていたように思う。気のせいかキャラが違うって驚かれたような気が……


 しまったと思ったけど、今更止めるわけにはいかなかったので夢中でそのまま話し続けたら彩人は泣いてしまった。

 私は困惑したけど、どうしていいかわからず、そのままあやし続けたら、彩人はそのまま眠ってしまった。起こそうとしたけど、なんだかその顔は安心しきっていて起こすのも悪いと思ったので、私の膝の上で寝かせてあげた。


 うぅ……私は何をやっていたんだろ……


 私の膝の上で彩人を寝かせた後、教会の人たちが私に話しかけてきた。

「ルナさん、いえ、ルナ様! 神はあなただったのですね!」

「え?」

 なぜばれた!?


「わかります。あなたが神々しい光を放たれた時、私は思ったのです。ああ、あなたこそ本当の神だと。私たちは悩んでいました。私たちは子どもを助けたかったのに、なぜ神は酷い仕打ちをするのかと。それでも神は何か考えがあってのことかと思っていましたが……そうだったのですね! あなたこそが本当の神で、私たちは偽者に騙されていたのだと!」

「えぇ……」


 どうやら彩人を慰めた時、心を癒すために多少治癒の力を使ったんだけど、思ったより力が大きくて周りに影響を与えてしまったようだ。


 しばらくしたら彩人が起きた。私はなんとなく彩人がこの状況をなんとかしてくれると思って彩人の方を見た。困った顔をして。


 そうしたら彩人は予想外の行動に出た。なんと私のことを突然神だと暴露し出したのだ。

 私は困惑した。彩人って私の正体知ってたの!? 今までそういう素振りは全く見せなかったけど……それともブラフ? 確証は得てないけどお前の正体はわかっているんだぞ、さっさと白状しろとか。


 でも今はまずい。情報収集が十分じゃないのだ。今はまだ正体を明かすわけにはいかない。それがたとえ仲間でも。さもないと前回のような失敗をまた繰り返すことになる……


 落ち着け私。まだ相手が私の正体に気づいたとは決まってない。まだ正体を明かすのは早い。


 ああ、駄目だ。思考がぐるぐる回ってわけがわからないことになっている。一旦整理しよう。


 どうやら私は神に祭り上げられてしまったらしい。もともと神なんだけど……


 本当になんでこうなってしまったのだろう?


 私の考えはまとまらなかったが、とりあえず彩人とは話をする必要があると思ったので、彩人には後で話があると言っておいた。なぜか彩人は震えていた。


 とりあえずこれで一件落着……とはいかなかった。孤児院の子どもの一人であるカイトが「嘘だ! 俺は信じないぞ!」と言い出したのだ。

 カイトはしばらく教会の人と言い合ったあと、

「もう嫌だ、こんなところ出て行ってやる!」

 と言って教会から出て行ってしまった。


 私はカイトとシスターのやりとりをを聞いて、安心したような、傷ついたような微妙な気分になり、困惑したまま何も言い出せなかった。


 カイトをシスターが慌てて追いかけたのを見て、私も追いかけようとしてふと彩人の方を見ると、彩人の様子がおかしいことに気づいた。


 私が何か声を掛けようとしたら、彩人は何かを叫びながらどこかへ走り去ってしまった。

 私は慌てて追いかけた。途中見失ってしまったが、何やら話し声が聞こえて覗いて見ると、彩人とカイトが何かを話していた。


 私は邪魔してはいけないと思い、物陰からやりとりを見守ることにした。


 彩人はカイトに自分がなぜ神を殺そうとしているのかを簡単にだが教えていた。


 ……ぼくには教えてくれなかったのに。ちょっとジェラシーを感じちゃうな。ぼくは彩人の一番になりたいのに……


 ……は、私は何を考えていたんだ!? 彩人が他の人と仲良くしているのはいいことのはずなのに……ひょっとして私は焼きもちを焼いている? なぜ?


 とにかく私には彩人とカイトが友情を育んでいるように見えた。

 それを私は微笑ましいような羨ましいような複雑な気持ちで見守っていると……

 不意に悪寒を感じた。


 この悪寒は私の偽者が近づいてきている時の感覚に似ていた。偽者がこれから良からぬことを起こそうとしている時のような……

 となると……教会が危ない!


 直観的にそう思った私は、彩人とカイトのやり取りへの未練を振り切って教会へと駆けつけた。


 教会が燃えていた。

 中から子どもたちが泣き叫ぶ声が聞こえる。

 いかなきゃ! そう思った私は周りの人の静止を振り切って燃える教会の中へ突入した。


「みんな!」

「あ、ルナお姉ちゃん!」

 逃げ遅れた子どもたちが安心したように言う。そこにはシスターたちもいた。

「みんな、逃げるんだ!」

「で、でもどうやって……」

 みんなうろたえている。説明している暇はないので、


「ごめん!」

 と言って近くにいた子供を抱き上げると窓から放り投げた。

「うわあああああああああああああ!」

 涙目で落ちていく子ども。それを風の力で減速させて土の力で盛った小さな山の上に着地させた。

「え? え?」

 子どもやシスターが困惑している。


「みんな! 時間がないので飛び降りてください! ちゃんと着地させますから! はやく!」

「あ、うん……」


 みんな最初は半信半疑だったようだけど、さっきの子が下から手を振っているのを見ると、意を決した子どもやシスターが順に飛び降りっていった。私は風と土の力を使ってちゃんと着地させた。

怖がってどうしても飛び降りることができない子が二人いたのでその子たちは最後に私が両脇に抱えて飛び降りた。


 無事に部屋にいたみんなを脱出させた後、私たちは教会にいた人たちを確認していた。

 幸い子どもたちと世話をしていたシスターのほとんどはそこにいたが……


「あれ? ティアは?」

「え? あれ?」

 ……ティアがいないことに気づく。


 私は迷わず教会の方に向けて駆け出す。

「今から探してくる! 危ないからみんなは外で待ってて!」

「え!? ルナお姉ちゃん!?」

「待って、ルナ様には考えがあるのよ! ここはルナ様に任せて待ってなさい!」

 一部の子どもが追いかけようとするが、シスターが腕をつかんで制止する。

 私はみんなに心の中で感謝しながら再び教会の中に入って行った。


「ティアー! いるなら返事して!」

 私は教会の中をくまなく探し、気配感知などをフルに使って探知したが痕跡は見当たらなかった。仕方がないのでこうしてダメ元で呼びかけている。正直視界も最悪だし、煙が体の中に入って苦しい。ここまでしても見つからないということは恐らく……


 それでも私は諦めきれなくて探し続けたが……燃えた柱が自分に向かってきていることに気が付かなかった。気が付いた時にはもう目の前に迫っていて、押しつぶされる! と思ったら誰かが私を突き飛ばして下敷きになった。


 クオン神父だった。

 誰よりも子どものことを考えていて、子どもを守るためにと熱心に行動し、みんなから慕われていた。だから人体実験をしていた光景を見た時、私は信じられないという思いと裏切られたという思いでいっぱいになったのだが……


「ルナ様、いえルアシス様。お逃げください。教会の人々はもう避難を終えております」

 クオンは私の正体を知っていた。否定しようと思ったが、彼は確信しているような目をしていたし、ここは否定してはいけないような気がして私は否定しなかった。


 それより私には聞くことがあった。

「ね、ねえティアは!? ティアを探さなきゃいけないんだけど!」

「ティアは恐らく……攫われました。少なくともここにはいません。私もくまなく探したので間違いありません」


 彼が言ったのは私も考えていたことだ。考えていたことだが、恐らく事実だ。

「ルアシス様……私は最後に会えて光栄です。ご存じだと思いますがこの世界は偽者によって滅茶苦茶にされようとしています。残念ながら私はここまでですが、必ず偽者を倒して世界をお救いください」

「何を言っているんだ! 君もまだ生きてるじゃないか! 生きることを諦めるんじゃない!」

「逃げてください! 私はもう……子どもたちを、頼みます……」


 そう言うと、彼は気を失ってしまった。

 私はそのまま教会を出た。

 気づいてしまったのだ。彼はやけどや出血が酷く、とても助けられる状態ではなかったことを……


 教会から出ると彩人が待っていた。

 私は彩人に抱き着いて、泣いた。


 まさか神だった私が、誰かにすがりたいだなんて思う日が来るとは思わなかったな……


 そうしていたら偽者が神のお告げと称して脳内に語りかけてきた。ティアは私が預かっていると。

 やはりそういうことだったのだ。

 早くこれに気づいて脱出していればクオンが犠牲になることはなかったのに……


 偽者の声を聞いた後、彩人が何事か叫んでいた。何か、私がそれを聞いて赤面するようなことを言っていたような気がしたが……思い出せない。


 こうして立ち尽くしていても仕方がないので、私は彩人や教会の人達と今後のことについて話し合うことになった。

 といっても村や教会の人たちのことは、かつて偽物を倒そうとした時の協力者に任せて、私と彩人がティアを奪還するということしか決まらなかったが。

 その過程でなぜかルナ教なるものが誕生して、無性に恥ずかしかった記憶がある。


 私たちはティアのもとへ向かおうとしていたが、そのティアは“天使”になってしまった。彼女は手から光の柱を出して村の建物があった場所を次々に更地に変えていた。そこには人が残っていたかもしれない。私の胸は痛くなった。ティアにあんなことをさせるなんて……偽者を許しておけないと改めて強く思った。


 でも今は逃げるしかない。天使を無力化する方法はあるが、殺さず無力化するためには準備が必要だ。それまでの時間を稼がなくてならない。とにかく逃げた。走った。だが……


 私は転んでしまった。


 ティアが天使になってしまったショックで注意散漫になってしまったのかもしれない。肝心な時に転んでしまう自分を呪った。

 そしてそれは最悪な結末を招いてしまう。


 彩人は私を突き飛ばし、光に呑まれてしまったのだ。


「彩人くん!!!!!」

 私は泣き崩れた。

 私はなんとなくわかる。あの光は、物体を分解して出る光だと。そして捕らえられてしまった以上、そこから逃れる術はない。

 そう思った私は絶望してしまった。もう何もかもどうでも良かった。

 ティアは私に向かって手をかざした。

 もうだめだ。このまま消えてしまおう。みんなには悪いけど……


 そう思った時だった。

 急に目の前に人影が現れて、光を弾き返してしまったのだ。

 その人影の正体に気づいた私の目は潤んだ。私はその人の名前を呼ぶ。


「彩人くん!」

みーむ「その頃、ボクとあやとは死後の世界を旅した結果、すべての元凶である神のもとまでたどり着いたのだった」

彩人「あ、ここからは本編と関係ないからね。読み飛ばしてもいいよ。……って話飛びすぎじゃない!? なんで本編より先行ってるの!?」

みーむ「あ、これは前回の後書きの続きという設定ね。もちろん本編はまったく別の展開になるから安心してね」

彩人「当たり前だ! てかあの話続いてたの!? てか設定って言うな! ……うわあ、突っ込みどころが多すぎてわけわからん!」


みーむ「ルアシス! もうお前の思い通りにはさせない! 観念しろ!」

ルアシス?「よくぞここまで来た。褒めてやろう。だが貴様らの活躍もここまでだ。我の圧倒的な力の前に絶望するがいい!」

彩人「これ、神というよりは魔王だよね? いかにも魔王って感じの恰好をしてるし(注:本編のルアシス、本物および偽者とはまったくの別人です)」

みーむ「めんどくさいから一撃で終わらせる! 覚悟しろ!」

彩人「めんどくさいって言った!? てかみーむって剣持てたんだ!? 聖剣を持って突っ込んでるけど、それやられるやつ!」

ルアシス?「なんのこれしき、我の腕の一振りで薙ぎ払……ぐはあ!」

彩人「効いた!?」

みーむ「この長い後書きを終わらせるために、さっさと消えろ!」

彩人「ぶっちゃけた!」

ルアシス?「世界の半分……ぐわああああああああ!」

彩人「うわ……眩しい!」

みーむ「ボクたちは、聖剣が放った光に包まれた」

彩人「解説してる場合じゃ――」


みーむ「こうしてボクたちは、世界ごと魔王……じゃなかった、神を滅ぼしたのであった。めでたしめでたし」

彩人「ダメじゃん! いろんな意味で!」

みーむ「それはともかく起きて。夢は終わったよ」

彩人「しかも夢オチ!」

みーむ「ほら、ルナがピンチだよ。今ならかっこよく登場できるよね?」

彩人「タイミング見計らってたみたいな言い方やめろ! ……ああでも行くしかないか! 行ってくる!」

みーむ「行ってらっしゃい」


お読みいただきありがとうございます。

明日も更新しますのでお読みいただけると嬉しいです。

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