第20話 精神世界
僕は白い光に包まれていた。
白い光の中で何かがゆらゆら揺れている。何だろう。どこかへ流されていくような気がする。
体は動かない。頭はぼーっとする。
ふと周りを見てみる。そこには漫画チックというか、ぬいぐるみというか、マスコットキャラクターみたいなのがいっぱいいる。クマみたいなやつ、ペンギンみたいなやつ、ウサギみたいなやつ、イルカみたいなやつ、エトセトラエトセトラ……
まさかこんなに大勢にお迎えに来られるとは思わなかった。でもこれ、どこかで見たような気が……
ああそうか。みーむに雰囲気が似ているのか。ということは精霊か。この世界では死ぬと精霊が迎えに来るのか。なるほど。
じゃあ、みーむはいるのかな、と思って探してみた。
いた。
あ、しまった。僕が光の柱に呑まれた時、みーむと合体したままだった……
ルナは突き飛ばしたのに、みーむのことは忘れてた!
やばい。ということは僕のせいでみーむは……
それに気づいた途端、僕の顔が青ざめたのがわかった。なぜか汗がどんどん出てくる。僕は死んでいるはずなのに……
『いや、キミはまだ死んでないよ。あの天使の力は物質を分解するものらしいんだけど、ぎりぎりのところでボクの再生の力が働いてどうにか消滅は免れたんだ。でも今も分解の力と再生の力が拮抗しているから危ない状態であることに変わりはないんだけどね』
みーむが話しかけてきた。
そうなんだ。あ、そうだ。みーむを巻き込んでしまったことを謝らなきゃ。
そう思って僕は声を出す。
『ご、ごめんなさい。僕が勝手な行動をしたばかりに、みーむも巻き込んでしまって。僕のせいでみーむも死……』
『話聞いてた!? キミと同じでボクも死んでないんだよ! だいたい精霊はこれくらいじゃ死なないし、ボクがいなきゃキミは死んでたんだよ!』
みーむがすかさず突っ込む。
……そういえばそういう話だった。頭がぼーっとしてて寝ぼけたことを言っていたらしい。
あれ? それじゃ僕が残った意味は? みーむが僕を突き飛ばして残ればよかったんじゃ……
なんてことを考えていたらみーむに睨まれた。
僕はすぐに謝った。ごめんなさい。
ナチュラルに人(精霊だけど)を犠牲にしようとしていた自分が嫌になる。自己嫌悪が凄い。自分を殴ってやりたい。殴った。
『い、いや、そこまでしなくても……まあ咄嗟にそこに留まったのはキミの判断だし、次同じことがあっても人を犠牲にするようなことはしないと思うけどね。それにここから回復すればキミは分解の力が手に入るよ?』
あ、そういえば致命傷を受けたら力が手に入るんだっけ。
でもさっき僕はまだ危ないって言ってなかったっけ? てかここはどこ? 僕は一体どうなっているんだ?
『一つずつ答えていくね。まずここはどこかという話だけど、ここはキミの精神世界でボクと周りにいた精霊たちがここにお邪魔させてもらっているんだ。次にキミは今どうなっているのかという話だけど、キミは今天使の力で分解されるそばからキミ自身の回復の力で回復している状態なんだ。つまり天使の力とキミとボクの力が拮抗している状態。でもいずれキミの魔力が切れる。そしたら再生が追い付かなくなってキミは消滅してしまうんだ』
え? じゃあ、僕が死ぬのも時間の問題ということ……?
『いや、何とかする方法はある。そのために精霊たちに集まってもらったんだ』
みーむはそう言って周りにいるぬいぐるみみたいな動物たちを見た。やっぱり精霊だったんだな。でもそれとこれにどう関係が?
『この精霊たちはボクたちに力を貸してくれると言ってくれたんだ。ボクが声を掛けたら応えてくれたんだよ』
声掛け? いつの間にやってたんだ?
『いや、ボクはキミとずっと一緒にいたわけじゃないでしょ? ボクは時間の空いた時に他の精霊との繋がりを作っておいたんだ』
へー。いつの間に。
『ここにいる精霊たちはキミがこの状況を何とかするまで力を貸していいと言ってるんだ』
じゃあそこにいる精霊の力が使えるようになるってこと?
『いや、ここに精霊の力のほとんどはもうキミがコピーした力と同じだから……』
そうなんだ。
じゃあどうなるんだ? 僕がパワーアップするの? 威力が上がるとか。
『その通りだね』
そう……あれ? さっきのみーむの話だとちょっとパワーアップしたくらいじゃ天使には勝てないんじゃ……
『そこで少し知恵を使うんだ。前、精霊はこの世界の自然現象から生まれたって言ったよね? だから逆にボクたちだけで世界を作ることもできるんだ。結界で周りの世界と隔離してボクたちが自由にルールを決められる世界をつくる。ただし、集められる力の関係でごく狭い範囲になるけど。そこでボクが思念を送って連絡するから、あやとはティアをそこまで誘い込んで欲しいんだ』
どうやって?
『それはお菓子を使って誘い込むんだ! いくら強力な天使といえど中身は子ども! お菓子が嫌いな子どもなんていない! どうだこの作戦は! 完璧だろ! どやっ!』
どやっ!じゃねえよ! まじめに考えてくれ!
『ええ~。いい作戦だと思ったんだけどなあ~』
……
『こほん、じゃあさ、ルナに聞いてティアって子の大事なものを目の前に出すってのはどう? 空飛んで、遠くからでも見えるものとかにしてさ』
何その他人任せな作戦は。てかそれ作戦?
『……まあ精霊たちが力を貸してくれたおかげでキミは既に天使を貫くことができる攻撃ができるんだけどね。でもキミはティアを殺したくないんでしょ? あの天使はどうやら本物のティアであることは間違いなさそうだし』
僕は頷いた。
『だからこの作戦でいけばティアを説得することができると思うよ? ボクも協力するし、絶対成功させる!』
まあ確かに、それしかないよな……
いやでも、そこまで誘導する方法がまだ決まっていないんだけど?
『それはまあやってみないとわからないし? そこは臨機応変ということで! 頑張ってね!』
おい、ちょっと! 大丈夫なの!?
と思ったらだんだん光が薄れてきた。え、まさか、このまま僕は精神世界から現実世界に放り出される感じ!?
『そうだよ。今まで話をする時間を稼ぐためにわざと力を拮抗させていたけど、話が終わったからここで一気に押し返して現実世界に戻るんだ』
話は終わってないんだけど!?
『大丈夫大丈夫、なんとかなる! じゃあまた現実世界で!』
ちょ、ほんとに大丈夫なの!? 大丈夫じゃないよね!? ええええええええええ!?
こうして僕は大きな不安を抱えたまま、光が薄れて戦場である現実世界に復帰したのだった。
みーむ「ここから下は本編と関係はありません。ご注意ください。なお、読み飛ばすことも可能です」
彩人「……あれ? 景色が変わってない……?」
みーむ「起きろ!!」
彩人「いや、とっくに起きて……起きているのか?」
みーむ「そんなことより大変なんだ!」
彩人「え? 何が起こっているの?」
みーむ「ボクたち、死んじゃったんだよ!」
彩人「え!? どういうこと?」
みーむ「ボクたちが現実世界に復帰しようとした時、急に分解の力が強まってボクたちは分解されちゃったんだ!」
彩人「ダメじゃん! せっかくお膳立てしてくれたのにそれはないよ! ……あれ? じゃあこの作品はこれで終わり……?」
みーむ「……い、いや続くんだ。あの世に行ったボクたちにどのような冒険が待っているのか! あの世編、スタート!」
彩人「みーむ、めっちゃ汗かいてんじゃん! 僕も汗だーだーだけど!」
みーむ「……続く!」
彩人「続くの!?」
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明日も更新しますのでお読みいただけると嬉しいです。




