表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/56

第19話 天使

 そんな、ティアが……


 村の孤児院にいて、神にさらわれたティアが、白い服を着て背中には翼を生やし、翼をはためかせて飛んでいた。


 それは天使のようにも悪魔のようにも見えた。

 ティアは一体何をされてしまったのか。もしやもう手遅れなのか……


「こ、これは……天使! まさか……」

 ルナはそう言って絶句している。


 ……ていうか天使? 一見そう見えるけど、それにしてはすごく禍々しい気配がする。


 と思っていたらみーむが教えてくれた。

『天使というのは、神が子どもを改造して作ろうとしている究極生命体……らしい。究極というのがどういうことかはわからないけど、一つ言えるのがとにかく強いということなんだ。……いや、強いなんてものじゃない。今のところ人と精霊が力を合わせても天使には歯が立たない。天使には今のボクたちを瞬殺できるほどの力があるんだ。だけど……』


 ……逃げるわけにはいかない……


『そうなんだよね。しかも……』


 その天使の正体はティアである可能性が高い。偽者という可能性もあるが……


 その答えは、例によって悪趣味な神の声によってもたらされた。

『そうだ。ティアは究極にして至高の存在、天使に生まれ変わったのだ! いや、まさかこんなにすんなりいくとは思わなかったぞ。しかも抜群に適性が高い。私はこれを使ってさらなる高みへと昇る。貴様らは喜んで礎になるがいい!』


 神は一方的に意味不明な、しかも絶妙に人を苛立たせることを言う。もちろん嘘を吐いている可能性もあるが、あの天使には迂闊に手を出せなくなった。まあ、現状では敵わないので、手も足も出ないのだが……


「ふざけんな! 人は神の礎じゃないぞ! しかも意味がわからん! ちゃんと意味がわかるように説明しやがれ!!!」

 僕は可能な限り声を張り上げた。しかし……


「おお、神よ! ありがとうございます!」

「光栄の極み!」

「ああ、これでやっと救われる……」


 など、人々の聞くに堪えない言葉の数々に遮られてしまう。そして神の声は聞こえなくなってしまった。

 僕が内心で苛立っていると……


 上空にいるティアが、おもむろに手を人々の集まっている方に向けてかざした。

「や、やめろおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

「や、やめてええええええええええええええ!!!!!!!」

 僕とルナの声が重なった。

 しかし僕とルナの叫びも虚しく、ティアの手から光の柱が発射され……


 次の瞬間、人々がいたと思われた場所がクレーターになっていた。


 え……?


 悲嘆にくれて泣き叫ぶ人、近くにいる人につかみかかる人、なぜか楽しそうしている人、神に許しを乞う人、諦めて運命を受け入れようとしている人、さっきまで叫んでいた人たち……一体どうなってしまったの……? まさか……


 僕は頭が真っ白になった。


 あまりの衝撃に、僕は周りの音が聞こえなくなっていた。あるいは本当に無音になってしまったのか……


 僕が少しの間、茫然と立ち尽くしていると。

『あやと、ルナを連れて逃げるんだ! 敵う相手じゃない! 態勢を立て直すんだ! 早く!』

 みーむが逃げるように促してくる。そうだ、ここで立ち尽くしている場合じゃない。逃げなきゃ。そうは思っているんだけど足が動かない。僕は震えている。どうしてしまったんだろうか。


 僕が動けないでいると、みーむが合体を解いて出てきた、と思ったら思いっきり僕に体当たりしてきた。僕は転んだ。

 いてて、何するんだよ……と思ったが、このおかげで僕は硬直が解けて動けるようになった。

 立ち上がった僕は再びみーむと合体し、ルナの手をつかんで走り出した。


 ちなみにルナは僕と反対方向に走ろうとしていた。何をしようとしていたのかは知らなかったが、なぜか僕はルナがティアの方へ行こうとしているように見えた。そして、ルナにそれをさせてはいけないような気がした。なぜかはわからなかったけど。


 手をつかまれたルナは困惑の声を上げる。

「何するの!」

「逃げるんだよ! ティアは今の僕達が敵う相手じゃない! 一旦逃げて態勢を立て直すんだよ!」

「でも、そうすると村が……」

「僕たちがやられてしまったら意味ないだろ! 最悪でもルナには生きていてもらわないと困るんだ! だから逃げるんだよ!」

 僕は声を張り上げる。


「え、なんで……?」

「僕がそうして欲しいからだよ! とにかく逃げるんだ!」

 僕は強引にルナの手を引いて走る。


 てか僕どさくさに紛れてとんでもないこと言ってないか?

 しかしそれを気にしている暇もないので、とにかく走る。

 走る、が……


 ルナが転んでしまった。


 僕が強引に引っ張ってしまったからだ!

 でも今は後悔している暇はない。僕はルナの手を引いて強引に抱き起こす。

 そこで僕は不意に気配を感じて上を見る。


 上空にはティアがいた。


 もとより逃げることなんて不可能だったのだろう。それでも諦めるわけにはいかないんだ。

僕は逃げようとするが……


『……ルナ? アヤト?』


 ティアの方から困惑したような、悲しげな声が聞こえてきた。


 気になって再び上空を見上げると、ティアはさっきまでと同じ無表情だ。相変わらず無言を貫いている。さっきのは幻聴だったのだろうか?


 しかし気にしている場合じゃない。

 ティアが自然な動作で手を僕達の方へ向けてきた。

 逃げようとしたが、間に合わない。


 そう思った僕は咄嗟にルナを突き飛ばしていた。


「あ、彩人くん! ――」

 ルナが焦った顔で何かを言いかけたが、それを聞き取ることなく――


 僕は光の柱に呑まれた。

彩人「あ、これ欲しい! でもこれ買うと小遣いが……」

天使『買っちゃいなよ! 今買わないと売り切れて後悔しちゃうよ!』

彩人「そうか……買っちゃおうかな?」

悪魔『いや、だめだ! これ本当に必要? 違うでしょう? なら買っちゃだめだよ!』

彩人「天使と悪魔逆じゃない!? ……じゃなくてどっちもみーむだよね? 勝手に合体して僕を惑わすのやめてくれない?」

みーむ「(合体を解いて)いやあ、ちょっとやってみたくなって」

彩人「何? みーむは人を惑わすために生まれてきたの?」

みーむ「何のために生まれてきたのはボクにもわからないけど……彩人もそうだよね?」

彩人「それもそうか」

みーむ「で? 結局それ買うの?」

彩人「……やめとく」


お読みいただきありがとうございます。

明日も更新しますのでお読みいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ