第18話 過ち
前回、石を投げつけられている小さな姉妹を見つけてしまった僕は、石を投げた男たちとの間に立ちふさがり、手を広げて叫んでいた。
「何やってるの!? 石を投げるのはやめて!」
その時僕はルナやみーむと一緒に囚われの身になっているティアを助けに向かうところだった。
どうする僕? 僕は果たして姉妹もティアも村もみんな救うことができるのだろうか!?
……なんて前回のあらすじ風に語ってる場合か! 僕! 現実逃避していないで前を見ろ!
男たちが僕に向かって石を投げつけてるじゃないか! いたいいたい!!
「み、みんな、まずは話を聞いて。話せばわか……」
「おまえも裏切り者だな! 殺せ!!」
あ、ついに直接殴ったり蹴ったりしてきた。
僕に対する暴行はエスカレートし、僕は意識が飛びそうになる。
「うぐ、ああ……」
駄目だ! このままやられたら彼女たちを守れない!
そう思って僕は意識が飛びそうになるのを懸命にこらえて踏みとどまる。
「こ、こいつ、なんでまだ生きていやがるんだ!」
「おかしい! 血まみれで、しかもこんな状況で笑ってやがる!」
「悪魔だ! お、俺たちやられるぞ!! 逃げろ!」
すると男たちは勝手に恐れおののいてくれた。これは好都合。
「……逃がすと思うか?」
これいっぺん言ってみたかったんだよね。
そして僕はあたり一帯に土の壁を作り、風のカーテンも作る。
「こ、これはどういうことだ?」
困惑する男たちに僕は言ってやる。
「脱出できるものならやってみな! まあさせないけどな! おまえらみーんな、なぶり殺しだ!!!」
そして僕は手に炎を出し、男たちに向かって攻撃……
しようとしたところで突如として脳天に衝撃を感じて崩れ落ちた。
だ、誰だ……と思って振り返るとルナがいた。
「ル、ルナか……裏切ったな……」
と言ったところで再び脳天チョップをくらった。
「痛い! なにすんの!」
「それはこっちのセリフだ! 姉妹を助けるだけじゃなくて、そこの男たちを殺そうとしたでしょ! また過ちを繰り返すつもり!?」
「あ、う……ごめんなさい……」
詳しい話を聞くと、みーむがこっそり僕との合体を解いてルナに知らせたらしい。それでも僕が気が付かなかったのはどういうことなんだろう?
そして男たちだが、僕の力に恐れをなした上、そんな僕を一撃で沈めたルナを見て絶対に敵対してはいけないと悟ったらしく、ルナを崇めるような姿勢を取っている。やめてくれ。
そして肝心の姉妹だが、みーむに保護されていたらしく、みーむが彼女たちを連れてやってきた。
話を聞くと、村が襲われていたのは教会の人たちがルナを信仰しだしたことが原因だとすでに村中に知れ渡っていて、犯人、つまりルナ信者捜しが始まっているらしい。そして見つけたらリンチにせよ、そうすれば助けてやるみたいなことを神は言ったという。
ふざけんな神! どこまで邪悪なんだ!! 絶対許さねええええ!!!
と、ひとしきり叫んだあと、ふと我に返ると、男たちが「ルナ様!」「ルナ様万歳!」「ルナ様こそ真の神!」「ルナ様、いや神様! どうかお許しください!」とか言ってルナを崇めていた。
お前らもか!!!!!
だから目を付けられるんだよ! この世界の人はまったく!
で、小さな姉妹が僕を見てすっかり怯えながらも、僕に「あ、ありがとう」と言ったのが、なんとも居た堪れなかった。
ルナにも「この子たちを守ってくれたのはいいけど、暴走するのは駄目だよ!」と注意された。はい、反省してます。
だけど教会にこんな子たち、いたっけ?
ルナに聞いてみても知らないと言う。
姉妹に今までどうしてたのか聞いてみると、
「私たち、小さいころに親が死んじゃって、その後は内職とかして何とか稼いでいたの」
と言っていた。「孤児院のことは知らなかったの?」と聞いたら、
「え? それって何?」
と聞かれた。君たちみたいに親を亡くした子どもたちがくるところだよと教えたら
「そんなところがあるの?」
と驚かれた。知らなかったらしい。
どうやらこの子たちは、今まで二人だけで生きてきたのをたまたま村人たちに目をつけられ、この騒ぎに巻き込まれたらしい。もしここで僕が助けなかったら……ぞっとする。この世の中にはこういう境遇の子たちがたくさん存在しているのだろうか。そして誰にも助けてもらえないまま人知れず……
いや今はそんなことを考えている場合じゃない。思考を切り替えよう。
状況は最悪だ。神の一方的な宣言によって村はパニックに陥り、我先に脱出しようとする者、犯人捜しを始めて罪のない人たちを殺そうとする者、もう後がないのだからと略奪に走る者、様々である。このままでは神が手を下すまでもなく、この村は壊滅してしまうだろう。もしかしたらそれが神の狙いかもしれない。
毎度思うけど、神は趣味が悪すぎる。
それで今だに僕を警戒しているさっきの小さな姉妹に話しかける。
「ええと、君たちは……名前は何て言うの?」
「私はカリーナと言います」
「私はセリカです」
どうやら姉はカリーナ、妹はセリカというらしい。
ルナはカリーナとセリカの姉妹にさらに問いかける。
「君たちはどうするの? 大人になるまで教会の孤児院で暮らしてもいいけど」
カリーナとセリカは少し考える素振りを見せた後、訊ねる。
「そこはいいところなの?」
「ええと、ちゃんしてれば読み書きができるようになるし、今よりも楽に暮らせると思うよ?」
「じゃあ、そうする!」
「いいの?」
「うん!」
カリーナとセリカは揃って頷いた。
じゃあ二人はそれでいいとして……
「どうやって二人を合流させよう?」
そもそも教会の人たちが無事かどうかという問題があるが……
「それならぼくに考えがあるよ」
ルナがそう答えた。どういうこと? と疑問に思っていると、ルナがポケットからカードを取り出して、指先で何やらとんとん、とつつきだした。しばらくすると一人の少女がどこからか出てきた。
あのカードはなんだろう? 異世界にもケータイはあるのか? でもルナが持っているのは見た目は本当に紙切れで厚みはほとんどないのだが……この時はそれを追及する暇はなかった。
やってきたのは見た目ルナと同じくらいの年頃の少女だった。短い茶髪で、眠そうな目をしている。その少女はルナに問いかける。
「なに?」
「この子たちを教会の人たちのもとへ送り届けてほしいんだ」
ルナはカリーナとセリカを示しながら茶髪の少女に伝える。
「わかった。じゃあ行くよ」
「う、うん。よろしくね」
僕は頷いた。
「お願いします」
ルナの話を聞いた茶髪の少女はカリーナとセリカを促し、三人でどこかへ行ってしまった。
「大丈夫なの?」
僕は失礼だと思いつつ、そう聞かずにはいられなかった。
「大丈夫。さっきの女の子はぼくの信頼できる仲間なんだ。彼女に任せておけば大丈夫だよ」
「そうか」
彼女の素性はわからなかったが、これ以上追求するのも野暮だと思って聞かなかった。後で聞こう。
ルナはさっきの男たちにも子どもたちや困っている人たちを助けるように指示してから、僕に先に進むように促す。
僕は村のことが気になったものの、村はルナの信頼する人達に任せて先に進むことにした。
進む方向を確認するため、僕はルナに借りている石に意識を集中する。
……? さっきと反応が違う。この反応だとターゲットとなる神の分身はすぐ近くにいるということになる。
嫌な予感がする。本当に行っていいの迷ってしまうが……
『あやと、行くんだ。ボクも嫌な予感はするけど、立ち止まっていては何も始まらない』
みーむの言う通りだ。立ち止まっていても始まらない。だから僕は石が示す方に向かって駆け出していく。が、そこで……
ピカッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!
僕が向かった先に青白い光の柱が落ちるのが見えた。そして無数の小さな光が天に昇っていくという、幻想的な光景が見えた。
何もなければ感動的な景色として心に刻んでいたことだろう。しかし今は見惚れている場合ではない。
何が起きたかを確かめるため、僕たちは現場に向かった。そこで見たものは……
街の真ん中に空いた大きなクレーターだった。
ここに何があったのか。覚えていないが、不自然にそこだけ切り取られたような地形を見ると、何もなかったということは考えにくい。
そこには建物があったのだ。家もあっただろう。そしてその中には人も……
周りからだんだん人が集まってきていた。
そしてこの光景を見た人たちの中には、悲嘆にくれて泣き叫ぶ者、近くにいる人につかみかかる者、なぜか楽しそうしている者、神に許しを乞う者、諦めて運命を受け入れようとしている者などがいた。
僕はとても見ていられなかった。僕は目を逸らそうとして……なぜか悪寒がしてとっさにルナを抱えてその場を飛びのいた。
直後、一瞬前まで僕たちがいた場所に光の柱が降り注いだ。
僕は眩しくて目を閉じた。そして光の柱が降り注いだ場所を見てみると……そこはクレーターになっていた。
僕はその光がどこから降り注いだのか確かめるため上を向いて……信じられないものを見た。
人が、飛んでいた。
いや、それは人と呼べるのだろうか。白い服を着て背中には翼を生やし、翼をはためかせて飛んでいた。
その人物は天使のようにも悪魔のようにも見えたが、何より驚いたのが、それが僕たちのよく知っている人物だったということだった。それは……
「「ティア!?」」
僕とルナの声が重なった。
彩人「あ、そういえば本文で僕がケータイって言った物はいわゆるスマホのことね」
みーむ「じゃあスマホって言えばいいじゃん! なんでケータイって言ったの!? 後書きのネタを作るため!?」
彩人「いや……周りにいた人がみんなケータイって言ってたから……」
みーむ「なんで?」
彩人「なんでだろう?」
お読みいただきありがとうございます。
明日も更新しますのでお読みいただけると嬉しいです。




