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第17話 壮絶な過去

 いかんいかんいかん、また話が逸れた!!

 僕がここで話したかったのはそういうことじゃないんだ。早く本題に入ろう。


「とりあえず僕が決めたいのは教会の人の安全の確保と、ティアの奪還をどうやってやるか、ってところかな」

「私も聞きました。ティアは偽の神様に連れていかれたって。私はティアのことが心配です。ティアを取り戻してください。ティアは私の大事な人で……」

 そう言ったのは、大人しそうだった八歳くらいの女の子だった。眼鏡をかけていて、本好きなイメージがある。偏見か?


 それと、そうか、さっきの“神”の声は他の人にも聞こえていたか。ひょっとしたら村中の人に聞こえていたかもしれない。


 そういえばこの話は今更隠すことじゃないと思って特に遮音フィールドとか張ってなかったから、宿のおばちゃんたちも聞いているんだった。飯時は過ぎていたので、他の客はいない。


「何やら大変そうなことを話しているね」

 そんなことを言いながら近寄ってきたのは自称宿の看板娘ことリーザだった。この娘は僕とルナの関係をからかってきたりしたので正直苦手だったが、せっかくなので話を振ってみることにする。


「まあね。ところでさっき神の声みたいなのが聞こえなかった?」

「聞こえたよ。そのせいで今村中が大パニックだね。気づかなかった?」

 ……気づかなかった。自分のことで頭がいっぱいになっていたからか。これからは周囲にも気を付けるようにしよう。不意打ちにあうかもしれないし。


「ところで呑気に見えるんだけど大丈夫なの?」

「いや、君とルナがいれば大丈夫な気がしてね。本当は王都にいる知り合いがここにいれば心強いんだけど、移動に時間がかかるし、向こうも忙しそうだしね。まあ、君たちだけでも大丈夫でしょ。私も一応戦えるし」


 何を根拠に言っているんだ?

 リーザが王都に知り合いがいることとか、リーザが戦えることも意外だけどさ。

「でも戦力を集める必要はあるよね? まあこんな急に戦力が集まるとも思えないし、最悪僕とルナだけでも行くけど」

「まあ、それがいいんじゃないの。私もいるし」

「それはありがたいです」

 それにしてもリーザは昨日と打って変わって冷静だな。こういう事に慣れている感じがするというか……


 僕は再び教会の人に向き直って言う。

「ティアは必ず奪還する。約束する。そしてこの村も救う。これも約束する。もう犠牲は出したくないんだ」

「お願いします」

 シスターたちが涙ながらに頭を下げる。あいかわらず涙もろいな。

「……お願いします。ティアは初めてできた、大事な友達なんです。ここに来たばかりの時、ティアが私に話しかけてくれて……どうか、お願いします」

 さっきの眼鏡の女の子も涙ながらに言う。

 ちなみに名前を聞いたら、ミラと名乗っていた。


「それで村のみんなのことなんだけど……神が突然襲撃してくるかもしれないし、だれか守る人がいた方がいいよね? どうしようか?」

「あー、それなんだけど私が残ろうか?」

 そう言ったのはリーザである。


「いいのか?」

「さっきも言った通り私もそこそこ戦えるからね。村の方は私に任せて、ルナと行っておいでよ」

「わかった。任せる」

「いーよー。そのかわり、帰ったらどんなことがあったのか、教えてよ。二人は戦場で過酷な運命に翻弄されながらも、仲を深めていくのだった。なんてね。きゃーー!!」

 リーザはやっぱりぶれなかった。彼女はどこかへトリップしている。僕とルナは呆れて何も言えなかった。


 それで孤児院の子どもたちだけど、結局村に残ってもらうことになった。戦闘訓練は一応しているが、実戦レベルになると厳しいらしい。カイトたち一部の子は行きたがっていたが、村を守るのも大切な仕事だからと言って、強引に納得させた。


 改造されて強化されてはいないの? と一応ルナに聞いてみたところ、素質のある人はいるがまだ訓練は足りないらしく、今回は連れていけないと言っていた。


 そりゃまあ、連れて行きたくないよね。僕もそうだし。


 で、ティア奪還作戦の詳細は後で詰めるとして、教会の人たちとはここで解散することになった。のだが……


「なあ兄ちゃん、ちょっといいか?」

 カイトが呼び止めてきた。

「どうしたの?」

「さっきはありがとな。俺を助けてくれて」

「あ、ああ……」

 僕は照れ臭くなってカイトから目を逸らす。


 カイトはなぜか僕にしか聞こえないように声を潜めて続ける。

「俺は昔、神の陰謀で妹を殺されているんだ。俺は妹の仇を討ちたい。そのためには何でもする。だから必ず神を倒してくれ」

「ああ、約束する」

 カイトは僕を信頼してくれた。嬉しい。まあ、内容が内容だけど……

「じゃあな、頑張れよ。俺も頑張るから」

「あ、ああ……」


 カイトの妹が殺された時に何があったのか、なぜ神の仕業だと分かったのか、なぜ今その話をしたのかなど、聞きたいことはいろいろあったけど、なんか聞ける雰囲気じゃなかった。


 ふと思いついて、

「あ、頑張るのはいいけど、命は大事にしてよ」

 と言ったけど、聞こえていたかはわからない。

 結局そこでカイトとも別れて、僕はルナと作戦会議をすることになった。


 と言っても僕にはどうしていいかまったくわからないわけで。

「ええと、みーむはどうしたらいいと思う?」

「いや、自分で考えようよ! まあ、ボクはわかんないんだけど!」

「奇遇だな! 僕もわかんないよ!」

 僕とみーむはやけくそ気味に言い合いしていた。そこでルナが

「あのー、何もないならぼくが言っていいかな?」

 と、目が笑っていない笑顔で言うので僕とみーむは揃って思わず

「「ごめんなさい」」

 謝った。


「それでルナ、さんは、どうしたらいいと、お考えでしょうか?」

 僕はルナに尋ねたが、言葉遣いがぎこちなくなってしまった。

 ルナはそれを気にしない風にして続ける。

「ぼくはこんな物を持っているんだけど」

 そう言ってルナは小さい宝石みたいなものを取り出す。


「これは?」

「これは神を探知する道具なんだ。紐を括り付けて首にかけるなり、手で握るなりすると、神のいる方へ導いてくれるんだ」

「どうやって」

「それはこう……気配というか、方角が勝手に頭に入ってくるというか、とにかくこれをつけた人はわかるようになっているんだよ」

「よくわからないけど……」

「付けてみればわかるよ、ほら」


 そう言ってルナはいきなり僕に近づいてその石についているひもを僕の首にかけた。

 いつの間に! てかそんな大事そうなものを人に預けていいのか?

 ……ちなみにこの時ちょっとドキっとしたのは内緒。

「なるほど……なんとなくわかった」

 導かれるという感覚は。だけど……


「神って人が行ける場所にいるのか?」

「本体は天界にいて、そこは普通人間が行くことはできない。だけどその神は自分の分身を作る力を持っていて、分身体が下界にいることは結構あるんだよ。その石は最寄りの分身体のいる場所まで導いてくれるんだ」

「分身体ねー」

 つまりコピーってことか。

「でも分身体のところまで行ってどうするんだ? 分身体を倒しても本体には届かないんじゃないの?」

「そうだね。でも全くダメージがないわけじゃないし、手掛かりが得られることはあるんだよ。それにティアが捕らわれているとしたらそこに分身体がいる可能性が高いんだ」

「なんで?」

「神は慎重で疑り深い、つまり誰も信用していないから大事なことがあるとそこに自分の分身体を置く可能性が高いんだ」

「よく知ってるねー。ひょっとして知り合いなの?」


 僕が冗談半分でそう言うと、ルナはなぜかしまったという顔をして少し目を泳がせた後、真剣な表情に戻って言った。

「ぼくは神がどこかおかしいと思ってちょっと調べたことがあって、その時に昔神に挑んだことがあるという人と知り合っていろいろな話が聞けたんだ。神を倒すまでもう少しというところまでいったらしいんだけどね……」

 結局敗れてしまったと。


「ほら吹いてるんじゃないの?」

「そんなことはない!!!!」

 ルナが突然怒り出した。

 僕はしまった、と思った。おそらく彼(彼女)はルナの信頼に足る、大事な人だったのだろう。

 と、思っていたら案の定そういう趣旨のことを延々と言われたので

「ごめんなさい!!!!」

 猛烈に謝った。


 僕はルナに許してもらったあと、ふと気になったことを尋ねてみた。

「じゃあその石はさっきの知り合いからもらったの?」

「……もらったというか協力して作り上げたというか……そうだね、もらったんだよ。自分はもうダメだけどルナは生き延びていつか機会を繋げてくれ、って……」

 なんかルナが泣きそうな顔になっている。

「大丈夫?」

「……あ、うん。ちょっと昔のことを思い出しちゃって……ごめん、心配かけたね。ぼくは大丈夫」

「あ、うん……」

 なんかルナの壮絶な過去が垣間見えて凄く気になったが、ルナが聞いてほしくなさそうだったので聞かないでおいた。


「それで、とりあえずその石の示す方へ従って行くことは決まったけど、誰が行く?」

 僕はルナに尋ねる。

「今回はぼくと彩人とみーむだけで行くよ。あまり大人数で行ってもかえって危険だし」

 ルナはそう答えた。


「え……? 人数少ないけど大丈夫?」

「今回はティアの奪還を優先するので少人数の方がいいんだ。できれば犠牲は出したくないし……」

 僕は犠牲になってもいいの? とは聞かなかった。だって話がこじれるだけだし。それに最初から行くつもりだったし。


 と思ったらルナがはっと何かに気づいたような顔をして、

「あ、彩人なら犠牲なってもいいという意味じゃないからね。彩人には絶対生きていてほしいというか、信頼しているから一緒に来てほしいというか……」

 顔を赤くして慌ててフォローするルナ。ちょっとかわいいと思っちゃったじゃないか。今回は特別に許してやろう。……僕は何様だ。


 戦い方は臨機応変ということにして(要するに決まってない。だって決められないから)、さてそれでは行くかと思って外に意識を向けると人々の怒声が聞こえてきた。


「おまえらのせいでこんなことになっているんだ! どうしてくれる!」

「そうだ、そうだ! 謝罪しろ!」


 罵詈雑言が聞こえてくる。どこかへ石を投げる様子が見える。

 僕が見に行くべきかどうか迷っていると、


「ほら、行くよ! ぼくたちはティアを奪還しなければいけないんだ! 時間がない! 約束したでしょ! ティアを助けるって!」

 ルナが僕の手を引っ張りながら言ってきた。

「う、うん……」

 頭ではわかっているが、僕はどうしても村の方が気になってしまう。

『さっきのリーザって子が村はなんとかするって言ってたから今は信じるしかない! 行くよ!』

 僕と合体したみーむもそう言ってくる。

 僕は首を振って余計な考えを振り払うと、ルナと一緒に村の出口に向かって駆け出す。

 のだが……


「おまえらが偽者を信仰するから俺達までこんな目に遭うんだ!」

「そうだ! 罰として死ね! これは裁きだ! 惨たらしく死んでしまえ!」

 耳障りな声が聞こえてきたので、声のする方を向くと、小さな女の子の姉妹が村の男達によってたかって石を投げつけられる光景が目に入った。

 姉妹はぼろぼろになり、涙を目に浮かべながら、「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返している。


 ……見なきゃよかった。


 ルナが急に立ち止まった僕を不審に思って「ねえ、どうしたの? 彩人くん」と言って腕を引っ張ってくるが、今の僕にはそちらに意識を切り替える余裕がなかった。


 僕はどうするべきか?


 一瞬考えたが、あの子たちを放っておいたらいけないような気がする。

 そう思ったのと同時に足が動いていた。


 僕は姉妹の前に立ってかばうように手を広げる。

「何やってるの!? 石を投げるのはやめて!!」


 ……やっちまった! 今こんなことしている場合じゃないのに!

 この後どうしよう。

みーむ「まあ、あんな場面にあったら助けるしかないよね」

彩人「いや、まあそうなんだけどね。それにしてもルナは過去に何があったんだろう?」

みーむ「それは第8話から第10話を読めばわかるよ」

彩人「身も蓋もないことを言わないで!」


お読みいただきありがとうございます。

明日も更新しますのでお読みいただけると嬉しいです。

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