第15話 中二
恥ずかしい。
どうしよう。赤の他人ならともかく、その子は僕が孤児院に行った時に僕を見ているはずなのだ。つまり知らない人ではない。つまりどうしよう。
とりあえず叫んでいたことはスルーしてもらうことにする。
「実は君に話したいことがあるんだ」
誤魔化すためにとっさにでてきた言葉がこれだった。さてどうしよう。
この子には僕の本当の考えを話していいでしょうか、みーむ先生。
『まあいいんじゃない? てかルナを神に祭り上げたのはあやとだよね? その辺は好きに判断すればいいんじゃない?』
うっ……みーむ先生から辛辣なコメントが……
その後で『でも代わりの神様を用意するって考えは間違ってないと思うよ? ルナを神様にしようって考えには驚いたけどね』という、一応のフォローはもらってるのでほっとする。
「今更何を話そうってんだ?」
そして僕が話しかけた少年も辛辣である。でもここでひるむわけにもいかないので、気にしてないふりをして話を続ける。
「実は、僕は神を倒そうとしているんだ。みんなが信仰している神は人を不幸にすることを楽しみにしているひどいやつで、僕はそいつのことが大っ嫌いなんだ。だから倒そうとしている」
「な、なにを言っているんだ?」
少年は強気を装っているが今の言葉におびえたたようだ。僕のことを得体のしれないやつだと思っているんだろう。だって今の僕、胡散臭さマックスだもんなぁ……
でも気にしないふりをして僕は言葉を続ける。
「君はわかっているだろうけど、ルナが神様だというのはもちろん嘘だ。じゃあ何でそんな嘘をついたかというと、教会の人達は代わりの神様を用意しなきゃ神を倒すのに納得してくれなさそうだったからなんだ。神は強敵だから、今はなるべく味方を増やしたいんだよね」
「そ、そうか。いや、でもそれじゃみんな神は信じ続けるよな。何の解決にもなってないじゃないか!」
うむ、この少年なかなか頭が回るじゃないか。将来大物になるな。是非仲間に欲しい。
「確かにそうだね。でもやり方は大事だよ。だってそうしないと簡単に殺されちゃうもん。この世界じゃ」
「あ、ああ、そうだな」
「それにあんまり脅すようなことは言いたくないんだけど、君のさっきの発言、結構やばかったと思うよ? ここの人達は優しいから大丈夫だと思うけど、もしあの中に裏切り者がいて教会の本部に通報したら?」
少年は今更それに気づいたようだ。みるみるうちに顔が青ざめていく。
「……君はみんなの見せしめにされて、苦しみながら処刑されるんだろうなぁ?」
その方法は考えたくない。聞かれたらどうしようかと思ったが、その必要はなかったようだ。
「だ、大丈夫だよな……? 兄ちゃんは俺を通報したりしないよな?」
少年が震えながら聞いてきた。僕の罪悪感が刺激されるがここで下手に出るわけにはいかない。少年の今後のためにも。……言い訳臭いな。
「さあ? これから僕の言うことをちゃんと聞き入れてくれれば君のことを守ると約束するけど」
「約束する! 絶対だな? 約束だからな?」
「ああ」
これでどうにか僕のさっきの行動は誤魔化せたな。
――と安心するのは早かった。
「で、この話がさっき休んでたのとどう関係するんだ?」
……やはり誤魔化せなかったか。さてどうしようか。
「こ、これは力を溜めるために必要な儀式だったんだ」
言い訳が苦しすぎる。自分でも声が震えてるのがわかる。
「儀式?」
「そうだ。僕の力は巨大過ぎて時々制御できなくなるんだ。だから時々こうして発散しないと、とんでもないことになってしまうんだ」
中二か! みーむも絶句してるぞ!
あと、言ってることが支離滅裂だし!
「とんでもないことってどんなことだ?」
「そうだな……ひとことで言うのは難しいけど、例えばこの村が消滅してしまうかもしれない。実際僕は過去にこの有り余る力で村を消滅させてしまったんだ。それで僕は大切な人を死なせてしまった……」
自分自身でも恥ずかしいと思っているのに、僕の口は止まらない。
この口を閉じろ、僕!
『……まあ、事実といえば事実かな?』
みーむはあきれていた。
いや、事実か?
目の前の少年を見ると戦慄していた。
「そ、そんなことが……ひょっとして神を倒すとか言ってたのも?」
「そうだ。僕が暴走してしまったのも、神がそうなるように仕向けたからなんだ。僕は神を許さない。絶対に倒す」
少年は思ったよりピュアだったようだ。とにかく助かった。
「なんだ、自業自得じゃん。真面目に聞いて損したぜ」
僕は少年のその言葉で凍り付いた。確かに今の話を聞いたらそういう反応になるよな……
僕は放心して、泣きそうな表情になっていたのが自分でもわかる。
ここでみーむが僕から飛び出してきてフォローしてきた時にはついに泣いてしまい、思わずみーむに抱き着いてしまった。
そして落ち着いたところで僕は少年にも慰められてしまい、さらに恥ずかしい思いをすることになる。
「兄ちゃんは泣き虫だなあ。さっきはルナに泣きついて一晩中ルナの膝で寝てたし」
僕の恥ずかしさが限界突破した。
え? てか僕あの状態で一晩中寝てたの?
『今気づいたの!? とっくに気づいてると思ったんだけど!』
みーむにあきれられた。
そうだよな……気がついたら夜は明けていたし、なぜか疲れが取れてたし……気づかない方がおかしいよな……
と、そうだ。肝心なことを聞いてなかった。
「そういえば、君の名前、なんだっけ?」
「俺の名前はカイトだ! まさか今まで知らないでしゃべってたの?」
「ご、ごめん。僕、人の名前を覚えるのが苦手で……」
「俺は得意だぞ! 孤児院の子たちや教会の神父やシスターとか、店のおっちゃんとかおばさんとか、会った人の名前はみんな覚えるようにしてるんだ」
「す、すごいね……」
少年改めカイトは自慢げに語る。でもこれは素直にすごいと思った。
「そういえば俺がなんで神を憎んでいるのか聞かないのか?」
カイトは思い出したようにそう聞いてくる。
「興味はあるけど、別に無理して聞こうとは思わないかな。人それぞれ事情があるわけだし。あ、でも言いたかったら言ってもいいよ」
するとカイトは表情をゆるめた。
「俺、彩人兄ちゃんのいうことは聞いてもいいかもしれない。いいぜ、俺にできることなら協力してもいいよ。ただ、その代わりってわけじゃないけど、俺の話も聞いてほしい」
そう言ってもらえるのは素直に嬉しい。
結局カイトは自分のことについてしゃべりたいみたいだ。案外、オープンな性格かもしれない。断る理由もないので頷いておいた。
「ええと、俺は実は……」
カイトがそう言いかけた時だった。
僕はなぜか嫌な予感がして、カイトを抱えてその場から飛びのいた。
そして一瞬前まで僕たちがいたところを
どごっっっっっっっっっ
天から降り注いだ光の攻撃が襲った。
自分でもなぜ察知できたのかはわからない。ただ、ここのところ戦闘が多かったので勘が鍛えられたのかもしれなかった。
腕の中のカイトが何かを見て震えていた。
「どうしたんだ?」
「兄ちゃん、あ、あれ……」
そう言ったカイトが指さした方を見てみると。
教会が燃えていた。
ま、まずい……! 教会にいるルナや子どもたちが……!
そしてすぐに、僕は青い顔をして立ち尽くしている場合じゃないことに気づき、教会の方へ駆け出した。カイトを強引に引っ張りながら。
みーむ「今回はあやとの黒歴史のオンパレードだったな~」
彩人「やめて!」
みーむ「僕の力は巨大過ぎて――」
彩人「やめて!!」
みーむ「過去に有り余る力で――」
彩人「やめて!!!」
みーむ「ルナに泣きついて一晩中ルナの膝で――」
彩人「やめてーーーー!!!! てか本当に僕はルナの膝の上で一晩中寝てたの!?」
みーむ「まあしょうがないよ。いろいろ大変だったし」
彩人「その温かい目で見るの、やめて!!!!!」
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