第12話 やんちゃ
僕とルナはティアの話を聞いていた。
「私、怖いの。うまく言えないんだけどこのままだと私が私じゃなくなってしまいそうで……」
ティアはルナに不安を吐露していた。ルナは親身になって聞いていた。
ちなみにそのことを話せと言った人のことだが、声から女の人だと思っただけで、姿は暗くてよく見えなかったらしい。不気味だがあまりにも情報が少ないためとりあえず放置するしかない。
「そういえば彩人くんはそんなに驚いていないように見えたけど、何か知っているの?」
ここでルナが僕に話を振ってきた。よく気づいたね。そりゃ気づくか。
「う~ん、何て言えばいいかな……」
『何て言おうか?』
ここで僕はみーむにこっそり思念を送る。
『やったことがやったことだからな……まずいことはオブラートに包んで臨機応変に……まあいいや、ボクが思念で台詞を送るからキミはその通りに喋ればいいよ』
という非常に頼もしいお言葉が。
『ほんと? 助かる!』
といったやりとりを一瞬で終わらせた後、僕はみーむに指示された通りに喋りだした。
「ええとね、僕はこことは違う世界からなぜかこっちの世界に来ちゃったんだけど、何も力が使えない状態で魔物に襲われて死にそうになったところをルクシアっていう女の子に助けてもらったんだ。それで僕はルクシアのいた村の孤児院に世話になって……」
さすがみーむ。僕は以前に自分の境遇を話したことがあったのだけど、それをうまくまとめて簡潔に説明してくれる。僕は感心していた。
「それで僕はルクシアと仲良くなって……って何言ってんだ!」
感心したと思ったらすぐこれだよ! 思わず突っ込んじゃったじゃないか!
僕は一瞬みーむの方に視線を向ける。これがいけなかった。
ふと気になってルナの方をちらっと見ると……こっちをジト目でにらんでいた。
やばい。何がお気に召さなかったのだろうか。僕の額から汗が流れる。
「ええと、ルナ、さん? どうしました、でしょうか?」
思わず敬語に、それも滅茶苦茶である。
「聞きたいことはいろいろあるんだけど、とりあえずみーむの言葉で話しているのなら、みーむに直接話してもらったらいいんじゃない? わざわざあなたが話さなくても、ねえ?」
「あ、はい。すみませんでした」
一体何に怒っているのかわからないけど、それを聞ける雰囲気じゃなかったので、とりあえず謝っておく。
「彩人くんとみーむには思念で話す方法があるみたいだけどね……」
なぜばれたのだ。このことはルナには言ってないはず。
「ぼくの情報収集能力をなめないでほしいね。精霊と契約した人は話さなくても意思疎通できるということぐらいわかっているんだよ」
そうなのか。正直なめてた。だってドジだし。
『いやでもルアシスによる徹底的な口封じによってこのことを知っている人間はほぼいなくなっているはずなんだよ。ボクも口封じを警戒してなるべく話さないようにしていたんだ。一部の生き残りから聞いたのかもしれないけど謎だな……』
みーむ先生にもルナのことがわからないらしい。
僕にもますますわからない。ルナは優秀なんだけどとてもそうは見えない。だってドジだし。
……あれ? ルナも僕の思考を読んでなかった? みーむ先生―!
『いや、そんな感じじゃなかったけど……わかんない』
頼りにならないなあ……ルナはみーむに悟られずに思考を読む能力があるのだろうか?もしそうならルナは相当の実力者ということになるのだがとてもそうは見えない。だってドジだし。
ルナを見ると顔は笑っているのに目は笑っていない状態である。怖い。
そして置いてきぼりになっているティアがとても怖がっている。早くなんとかしないと……
僕はルナに謝り倒し、どうにかなだめた後、僕が孤児院で人体実験しているところを見かけたが止められず、結局村は壊滅してしまったと説明した。いろいろあった後、結局みーむが黙らされて僕が説明していた。最初からそうすれば良かったんだよなあ……
「それでどうする? その実験している場所だけど見に行った方がいい?」
僕はルナとティアに問いかける。
「私、その場所知ってるから案内できるよ。今から行こう?」
「ええと……」
僕は迷っていた。行ったらほぼ確実に戦闘になる。みんなを守りながら果たせる自信がない。でも時間をかければかけるほど取返しのつかないことになる可能性が高い。だからといって慌てれば失敗して命を落とす。どうしたものか。
「ルナはどうしたらいいと思う?」
「ぼくは行ってあげたい。せっかく勇気を出して言ってくれたんだ。後回しにすると取返しがつかないことになるような気がするんだ」
ルナはやる気のようだ。
「みーむは?」
「あやと次第かな。ボクは行っても行かなくてもいいけど、どちらにしてもボクがフォローするから。無理のないようにした方がいいと思う」
じゃあ決まりかな。あ、でも。
「じゃあ行くということで。それでいつ行く?」
「今からじゃないの?」
ティアは今すぐ行くと思っていたようだ。確かに治療院に戻らないといけないからなあ……
「準備は必要だし、実験するのって夜なんだよね?」
「そうだけど……」
「下手に下見して失敗すると警戒が強まるかもしれないんだ。だから夜に行った方がいいと思うんだ」
「でも私、戻らないといけない……」
そこなんだよな……ティアを連れて行って守り切れるかという心配もあるけど置いていった方が危険な気がするからそれはいいとして、ティアが遅れると大人たちが心配して余計なことをするかもしれない。だからといって正直に言うわけにもいかないし……
「それならぼくにまかせてよ。気配を誤魔化す方法ならあるからさ」
そう言ったのはルナだ。
なんでもルナは今まで隠密行動のために自分や他人の気配を誤魔化す手段を鍛えてきたそうだ。どこまで当てにできるかわからないけど、これまで冒険者として身を立ててきたからある程度はできるのだろう。そう思って任せることにした。
こうして僕たちはティアを一旦治療院に送り返してから、夜みんなが寝静まったころに教会に突入することで合意した。
ティアを送り返してからルナとさらなる打合せをして、持ち物の準備をして、少し仮眠を取ってごはんを食べたりした後、ルナと人気のないところで待ち合わせをした。
そうしたらルナはティアを連れて集合場所にやってきた。ルナは治療院にこっそり侵入し、ティアの気配をベッドに残す仕掛けをしてからティアとこっそり脱出したらしい。
騒ぎになっていないところを見るとうまくやったようだ。そうでなかったらこの時点で作戦を中止していたところだ。
それでティアの案内で教会の秘密の入り口から侵入し、僕たちはこの村の闇へと足を踏み入れた。
なお、秘密の入り口は下水道にあった。
ちなみにこの世界は中世風の見た目に反して衛生観念はしっかりしている。過去にこの世界に来た異世界人が整備させたのだろうか? それっぽい伝説はあったし。
「すごいね……ティアはなんでこの場所を知ってたの?」
「えーとね、昔ほかの子と一緒に教会を探検したらたまたま見つかったの」
「……怒られなかった?」
「ここのことはばれてないけど戻るのが遅くなってそれで怒られた」
「そうなんだ……」
なんというか。ティアは大人しそうな見た目に似合わず結構やんちゃしてたようだ。元気なことで。
そう思うと、なぜかティアが急に頼もしく思えてきたのであった。
みーむ「ねえ、あやと。ボクたちがなぜ後書きにも登場させられているか、考えてみたんだ」
彩人「その話、長くなる?」
みーむ「ボクが思うに、作者は極度の恥ずかしがりやで、自分の言葉で書くのが恥ずかしいからだと思うんだよね」
彩人「そんな話、誰も興味ないと思うんだけど?」
みーむ「(無視)それで自分が書いた文章を読んで、いろいろ突っ込みたくなるんだけど、なんて書けばいいかわからない」
彩人「聞けよ!」
みーむ「だから代わりにボクたちにしゃべらせているんだ」
彩人「だから聞けよ! てか作者ディスるのやめて!」
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