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第10話 出会い

 私はあれから宣言通り人助けのためにいろんな場所へ旅をした。


 例えば冒険者をやって稼いだ金で金のない孤児院に寄付したり、身寄りのない子どもを保護したり、子どもの里親を見つけたり、子どもに一人で生きていくための術を教えたり……。


 きっかけがきっかけだったからか、孤児院や身寄りのない子どものために動くことが多かったような気がする。私が、子どもが好きだからかもしれない。


 私は楽しかった。自分の本体を取り戻すために動いていたときよりも、自分のやりたいことをやっているという充実感があったからだ。こんなに充実しているのはアリアと冒険者をやっていた時以来かもしれない。


 そんなある日のことだった。その日は孤児院に病気の子どもがいたが、その子を助けるためには貴重な薬草が必要だということでダンジョンまで取りに行くことになった。


 それはいいのだけど最近なんだか調子が悪い。何もないところでずっこけるし、すぐに罠にかかって周りの人に救出されるということが増えた。子どもたちにまで心配される始末。情けない。


 それでも子どもたちに不安を見せないのがヒーローだ。なるべく子どもたちに安心してもらえるように不安そうな素振りは見せなかったつもりだ。それにしても時々頭がぼーっとして注意散漫になってしまうのはなぜだろう。なんとかしなければいけないのかもしれない。


 それでも今回の仕事は急を要するので、私はなんとかダンジョンの薬草がある場所にたどり着いて薬草を採っていた。


 あの時警戒はしていたつもりだったが、ここまでの道のりで無駄に体力を消耗していたので、警戒が緩んでいたのは否めない。迂闊としか言いようがなかった。


 だから私がモンスターの気配を探知した時はもう手遅れだった。私がモンスターの対して逃げるか戦うか迷う間もなく捕らえられてしまい、身動きがとれなくなっていた。そのモンスターがタコ型なのに気づくのは身動きがとれなくなってからだった。私はこの状況を切り抜ける方法を必死に考えるが、


「誰かー! 助けてー!!」


と叫ぶのが精一杯だった。しかし近くに人がいない。


 私はルナとして生まれて初めて死を覚悟した。分身体が死んでしまったことは過去にもあるが、その時は本体が健在だったので意識と記憶はしっかり残っていた。でも本体が動けない今分身体が死んでしまったらどうなるのだろう。運よく誰かが私の本体を見つけて助けてくれるかもしれないがもはや望み薄だ。それに復活できたとしても記憶がないかもしれない。つまりルナの死は私の死につながる可能性が高いということだ。


 今までの記憶が走馬灯のように駆け巡る。

 ――ああ、私はこれで終わりなんだ。結局何も救えなかったな。子どもを救っていい気分になっていたけど結局それはただの自己満足で、私が天界を乗っ取られなければそもそもこんな悲劇は起きていなかった。私は最低だ。結局すべて私のせいなんだ。私のせいで多くの人が死んで、不幸になって。天界を取り返そうと思ったのにそれも果たせなかったし……

 ……みんな、ごめんなさい……


 そう思いながら私の意識は薄れていった。その時だった。

 男の子と猫? が私に向かって走ってきた。

 助けてくれるかも? と期待したが、なんだか嫌な予感がする。


 ダメ、逃げて!


 と言おうとしたが言葉が出ない。

 そして嫌な予感は的中する。男の子と猫? はモンスターに捕らえられてしまったのだ。


 ……また私のせいだ……本当にごめんなさい……


 そう思いながら、私の意識は闇に落ちた。


 私が目を覚ますとさっきモンスターに捕らえられていたはずの男の子がこちらを覗き込んでいた。もしやここは天界か……と思ったけど違うらしい。よく考えたらそんなわけないよね。自分でもなんでそう思ったのかわからない。


 ……ここは天界? って口に出してしまったような気がするけど、そのことについて何も言わないから大丈夫だろう。たぶん。


 そして私はじっとしている場合じゃないことを思い出して走り出したけど、モンスターにやられたり、罠にかかったりして、そのたびに彩人――私と一緒にタコ型モンスターに捕らえられていたがいつの間にか脱出して私を助けたという男の子はそう名乗った――とみーむ――彩人と一緒にいた猫みたいな使い魔らしい――に助けられ、しまいには説教されてしまった。私は改めて自分の無力さに打ちひしがれると同時に、自分のことを本気で心配してくれる人がここにもいるんだと知って嬉しくなった。そう思ったら涙が出てきた。


 とりあえず私は彩人とみーむと一緒に薬草を採ってからダンジョンを出て、モンスターのドロップアイテムを売りにいった。本当はすぐにでも村に向けて出発したかったが、さすがに懐が寂しくなってきたので金に換えられるものは換えておくことにしたのだ。ほとんど金にならなかったけど……


 そういえば私は彩人に説教された後、一緒にいようと言われて少し動揺してしまった。もしかして私を口説いてる? いや、そういう意味じゃないってわかっているけど、ね……


 それで私たちはアイテムを売り払って冒険者ギルドを出た。

「じゃあ、今度こそ行くよ。今までありがとう。どこにいるか教えてくれればお礼をしにいくよ」

「いや、お礼はいいんだけど……それより今ちょうど昼だけど、ごはんは大丈夫? おごるけど……」

 ナンパ? おごってくれるのはうれしいけど……

「いや、遠慮しとくよ。急いでいるし。それじゃあ……」

 そこまで言いかけた時だった。


 ぐうううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ


 私の腹の虫が盛大に鳴ったのは。


「……」

「……」


 沈黙。気まずい。


「……ごはん、行く?」

「……そうだね」

 結局私は彩人と一緒にごはんを食べた。


 そして一緒に村に行くことになったけど私があまりにもドジだったのでさすがに彩人もあきれていた。


 どうにか村にたどり着いて子どもが助かりそうだということがわかった後、私はふと、今後はどうしようかと考えた。しばらくは村に留まるつもりだが、ずっと留まっているわけにはいかない。かといって調子が悪いのに一人で行くのはさすがに無謀過ぎる。


 ……ここは彩人たちについていくのがいいのではないか?

 そう思った私は彩人たちに着いていっていいか尋ねることにした。何か目的があったら手伝うとも。

 そしたら、それは大丈夫だけど場所を変えようと言ってきたので自分が世話になっている宿に行くことにした。そこで宿で働くおばさんたちにからかわれたが、話がまわりの人に聞こえない席を快く貸してくれた。


 そこで彩人から聞いた話は衝撃の連続だった。まずみーむが高位の精霊だったというのが驚きだった。記憶はないものの、言われてみればみーむみたいな精霊はいたような気がする。今まで集めてきた情報によると精霊は力として使われてしまったせいで純粋な精霊はほとんど残っていないとのことだったので、純粋な精霊がまだ残っていたことが驚きだった。彩人はみーむが高位の精霊だということに懐疑的だったようだが、おそらく本当だろう。


 でも、彩人たちの旅の目的が神を討伐することだと言った時にはもっと驚いた。以前に私が起こした騒動でそういう人たちは一掃されてしまったと思ったので、まだそういうことを言うことがいるのかと驚くと同時に、私が起こしてしまった悲劇を思い出して悲しくなった。


 それとなぜだろう、彼から私、ルアシスの名前が出てきた時、なぜか私の胸がチクリと痛むような気がした。彼が私を倒そうとしているという事実に胸が痛くなる。

 私の正体を話して勘違いを正せばよかったのだろうけど、言えなかった。今ここでそれを話せば彼は私を攻撃してしまうかもしれなかったから。そうならないような気もするけど、そうなる可能性があると思ったら言うことができなかった。なぜだろうか、私は彼と少しでも長く一緒にいたいと思ってしまったから。


 そう思ったら、涙が出てきた。我慢できそうにない。私はわずかに残っている精霊とのつながりを使って時間を少しだけ止めて、思う存分泣きはらした。力を失った私でもこのくらいのことは朝飯前なのだ。何の自慢にもならない。


 泣き終わって再び時間が動き出した後、私は彩人に神を倒すのに協力すると言った。私が泣いたのは隠したつもりだったがやはりばれていたようで、思いっきり心配されてしまった。それでもとにかく私は彩人たちの旅についていくことが決まった。

 それでもまだごちゃごちゃする頭を整理するため、その日は早めに自分の部屋に戻り、ベッドで考え事をしていたら、いつの間にか眠ってしまった。

みーむ「あやと、ひどーい」

彩人「いや、本編の僕はこのことを知らなくて……ごめんなさい」


みーむ「それはそうと、とりあえずプロローグはここまでで、次回から本編に入るよ」

彩人「プロローグ長くない?」

みーむ「そこは作者の技量不足で……」

彩人「だから作者を出さないで!」


お読みいただきありがとうございます。

明日も更新しますのでお読みいただけると嬉しいです。

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