第1話 転移
なんでこうなったんだろう。
僕はモンスターに追いかけられながら考えていた。
僕は高校生だったがいじめが原因で不登校になっていた。
ある日散歩がしたくなって外をふらふら歩いていたところ、裏山の公園に謎のトンネルがあるのを見つけた。
あれ? こんなところにトンネルなんてあったっけ? 不思議に思ったが、好奇心のおもむくままにトンネルに入ろうとした。そうすると、急に視界が暗転する。すぐに明るくなったが、そこは一目で異世界とわかる異様な景色で……
見たことの無い植物や動物がいっぱいで、これは異世界だとわかったのはいいが、困った。
帰れない。どこへ行けばいいかわからない。
どうしよう。
しかも熊みたいなモンスター? に睨まれて……
あ、死んだ。と思った。
いや待て落ち着けこんなときは死んだふりじゃない威嚇しながら後ろへ下がるんだそうすれば……
うん、襲いかかってきたねここはたぶん地球じゃないもんねどうしよう
そうだ、異世界召喚されたならチート能力があるはず、ピンチになったら覚醒するはず、そうに違いない、そうじゃないと困る。
と、いうわけで試しにやってみることにした。
右手を前に突き出して言う。
「ブラストファイアー!!」
何も出なかった。
そりゃそうだよね。出るわけないよね。
てかブラストファイアーってなんだよって考えてる場合じゃないよやばいやばいやばいやばいとにかく逃げなきゃ
そんなことを考えながら逃げていると足元でぐにゃっと何かを踏んづけたような感覚があった。
スライムだった。
スライムに足を取られて進めなくなってしまったのだ。
さらにスライムが湧いてきて全身にまとわりつき、あっという間に身動きが取れなくなってしまう。
そして僕を追ってきた熊のようなモンスター。
死ぬ。いやだ死にたくない。誰か助けて!
その時だった。
突然あたりを白い光が埋め尽くし、一瞬何も見えなくなった後、モンスターは跡形もなく消滅していた。と思ったら、そこから人の声が聞こえてきた。
「大丈夫!? 怪我はない!?」
そう言って心配そうに駆け寄ってきたのは、紺色がかかった黒い髪を長く伸ばし、聖騎士のような格好をした、自分と同じくらいの年の少女だった。今まで見たことのないほどの美少女に、思わず見惚れてしまっていた。
「いや、大丈夫だけど……」
「ひどい、こんなにぼろぼろになって……」
「いや、これはすり傷だけど……」
「手当てしてあげるからじっとしてて」
そう言うと、少女の手から白い光が溢れてきて、ぼくの怪我を瞬く間に癒やしていった。
「大丈夫? 立てる?」
「いや最初から立てるけど……」
「あなたはここで何をしていたの?」
「ええと……」
何て答えたらいいんだろう? 正直に話したらおかしい人だと思われるだろうか?
だけどうまくごまかす方法も思いつかなかったので結局正直に話すことにした。
「そう……大変だったね。行くところがないならうちに来る?」
え……!?
女の子の家に!? 大丈夫か? これは罠か?
と思ったものの、他に当てもないので、結局お言葉に甘えることにした。
「そうさせてもらえるとありがたいです。よろしくお願いします」
「よろしくね。そういえば名前聞いてなかったね。私はルクシア=フォーエルン。あなたは?」
「僕は三好彩人。さっきも言ったけどよろしくお願いします」
「みよし、あやと……? あやとくんでいいのかな? うん、よろしくね」
こうして僕はルクシアと名乗った少女の村に行くことになった。
案内されたのは、教会だった。
ここはルアシス教の教会で、孤児院でもあるらしい。僕はそこで孤児たちと一緒に暮らすことになった。ルクシアの家じゃなかったのは残念だけど、彼女は領主の娘で忙しいみたいなので、それはしょうがない。それより、自分よりも小さな子どもたちと一緒に同じ生活をするのが恥ずかしかった。子どもの世話をさせるのが目的だったらしいが……
教会の神父いわく、ルアシスという神はこの世界を創った神様で、信じる者は等しく救う、慈悲の神様らしい。正直信じていないのだが、もちろんそんなことは口には出さない。何かを信じることで心の平穏が保てるならそれでいいし、わざわざ余計なことを言って人を不快にさせることはないのだ。
それに、教会の子どもたちはみんないい子だった。やんちゃな子もいるが言うことは良く聞くし、真面目だし、何も知らない僕にいろんなことを教えてくれた。そしてどういう訳か戦闘力も高かった。何故それがわかったのかと言うと、どうもこの世界ではモンスターや人間同士など、何かと戦いが多いらしく、孤児院でも戦闘訓練をやっていたからだ。一緒に訓練もやったが、僕はいつもボコボコにされていた。僕、情けな……
元の世界に比べて生活水準は低かったが、村人も助け合って生きていて、僕はそれなりに充実していた。
あの日までは……
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