私の町の天狗様
むかしむかしある山に、
一匹の天狗が住み着きました。
天狗は神すら殺し、
人を攫うといわれる怖い妖怪です。
天狗は気まぐれに雷を鳴らし、
嵐を呼びます。
山の傍の村の人々は恐れおののきました。
『山には絶対行ってはならない』
村人達は掟にそう記しました。
天狗が住み着いてから数年。
ある日、旅人が村を訪れました。
その旅人は、山の麓で死体で発見されました。
近くで遊んでいた子供達は、みな
「天狗が旅人を殺した」
といいます。
それからというもの、村の周りでは、頻繁に死体が発見されるようになりました。
村人達は、恐怖しました。
それから、天狗は頻繁に山から下りてくるようになりました。
特に子供たちの傍に現れます。
「村を捨て出て行こう」
村人達は、村を捨てることにしました。
そして、村人達は知ることになりました。
世間は大飢饉に襲われていて、
盗み、人攫いが横行していることに。
村人達はようやく理解しました。
天狗の起こす嵐は農作物を育てるため。
殺された旅人は、実は盗人でした。
なにより天狗は子供たちを見守っていてくれたのです。
そうして村人達は天狗の優しさに気づき、村に戻ってきました。
それからというもの、村人達は天狗を『天狗様』と呼び。
今では、心優しき妖怪達と一緒に暮らしているといわれています。