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再会

一日の仕事が終わって、いつにない興奮を持て余してお気に入りの丘に登った。

ひんやりとした夜露を含んだ風が火照った頬や体を冷ましていく。


今日は一日の仕事をするのが本当に大変だった。

どうにかこうにかこなした感じだった。

ふわふわと地に足がついていない感じで、何かミスをしないか冷や冷やして一日を過ごした。


アンソニー様はあの後何を話して良いのか分からず固まっている私を見て、私の仕事の妨げになると思ったのか、また来ると言って出て行かれた。


またっていつ?って聞きたかったけど、食い下がって聞くことの理由?言い訳?を自分の中に持っていなくて診察室を出ていくアンソニー様を引き留めることはできなかった。


さぞかし情けない顔をしていただろう自覚はある。


次に会った時に何を話せばいいんだろう。


恋の病ってことはまだ私のことを好きでいてくれるってことだろうか。


一日中そんな問いがグルグル頭の中をまわっていて、何とか考えないようにしよう、仕事に集中しようと思ってもすぐにアンソニー様の事を考え始めてしまって、堂々巡りの攻防に頭が沸騰しそうだった。


疲れすぎて変な頭痛がする。

精神的な疲労感が半端ない。


やっと一人になれたので、居心地の悪さを我慢して今朝のアンソニー様のことを思い出してみる。

元気そうだったなとか、相変わらずかっこよかったとか、三年前よりワイルドな感じ?とか乙女な思考が溢れて止まらない。


誰も居ないのに顔が赤くなるのが分かる。

何とも言えない甘い感情で体がはち切れて辺り一面をピンク色にしてしまいそうで、立っていられなくてその場にしゃがみこむ。


「あ~、どうしよう。どうしたらいいの。どうしたいのかな。」


「何か悩み事かな。」突然頭の上から声が降ってきてびっくりした。

見上げると、アンソニー様が木の枝の上で寛いでいた。


「こんなところで何しているんですか?!」

独り言を聞かれていた気恥ずかしさと予想以上に早い意外な場所での再会に驚いて思わず声が大きくなる。


「ここに居ればエリザベスに会えるかなと思って待っていた。」

悪びれもせずに言われると嬉しいのと恥ずかしいので顔がにやけてしまって慌てて俯く。

やっぱり本人だったんだと安心する。


木の上からアンソニー様が飛び降りてきて、私の前に立つ。

顔を上げる勇気が無くて下を向いていると、アンソニー様の指が私の顎にかかり上向かせられる。

このところ久しくなかった自分では制御不可能な状況に緊張が高まりちょっと涙目になってしまう。


「会いたかったよ、エリザベス。」久しぶりに見たアンソニー様の眼は相変わらず優しく甘くて、胸がいっぱいになった。

さっきとは打って変わって髭は無くなり髪は整えられている。


「その顔を見るとお前も私に会いたかったと思って良いのかな?」そういって微笑む。

私としてはどう答えて良いのか分からなくて、ただ黙ってアンソニー様を見つめ返すだけしかできなかった。


ああ、夜明けの空を映したような紫の瞳が相変わらず綺麗だなとか思いながらぼーっとしていると、アンソニー様の顔が近づいてくる。

近づいてくる、近づいてくる、ん?


「何しようとしているか聞いてもよろしいでしょうか?」近づいてくるアンソニー様の口を両手で押さえると吐息が掌に掛かってくすぐったい。

「何って、キスだ。」しれっと言って掌にキスをする。


一気にキャパの限界値を振り切った。


三年前は毎日アンソニー様に接していたからこの色気にも耐性があったけど、久しぶりのこの波状攻撃は三年間仕事しかしていない私には厳しい。

とりあえず安全圏に退避しようと思って下がろうとするとすかさずウエストに手を回して引き寄せられる。


「で、先ほどの答えは?」

「お、お会いできて嬉しいです。」

「私もだ。ああ、本当に会えて嬉しい。」そういってアンソニー様は私を力いっぱい抱きしめた。


私はと言えば、抱きつき返したい気持ちでいっぱいだけど、そんなに素直には体が動かなくて、アンソニー様の服をそっと握り締めるのが精一杯だ。


「お前は相変わらず愛情表現がぎこちないな。」久しぶりに聴くからかいを含んだ甘い声に心のバリケードが溶かされていく。


「アンソニー様に抱きしめてもらうの、好きです。すごく安心します。」黙って抱き合うのはそれはそれで恥ずかしかったので、何か言わなきゃと思って、でも嘘や強がりも言いたくなくて、思ったことがそのまま口から出た。

どうやら私の理性と頭脳は今日一日酷使しすぎたせいでとっくに職務放棄したらしい。


「安心されるのはいささか不本意だが、まあ今は良い。」

....なんて言うか、安定の攻撃力ですね王子様。


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