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再会

古い台地にできた大きな穴の底の湖の湖岸に黒の竜が降り立つと、湖のほとりに立つ神殿の前に白い竜が待っているのが見えた。


あれが話に聞いていた原始の竜かと思い当たる。


この数百年の間、数回の偶然の邂逅以外では人に姿を見られたことのなかった原始の竜にこれほど簡単に会えたことに驚きが隠せない。

だがそれもきっとエリザベスが居るからなのだろう。


黒の竜が神殿の前まで進み、アンソニーがエリザベスを腕に抱えてなんとか地面に降り立つ。

体中が痛みと熱で悲鳴を上げていて、立ち上がることもままならないが、何とか膝をつかずに一歩二歩と進み原始の竜の前までたどり着くと、竜はその姿を人型に変化させた。


真っ白な長い髪と白磁のような肌。瞳は明るい空の色の美しい青年の姿だった。


竜の化身は何も言わずアンソニーの腕から意識を失ったままのエリザベスを受け取り、その顔を気遣わし気な眼差しでみつめた。


しゃべろうとしたアンソニーを視線で制して、ついてこいともついてくるなとも言わず背を向けて神殿の中に入っていく。


アンソニーは鉛のような体を引きずりながら後をついていった。

二度と会えなくなりそうで片時もエリザベスから目を離したくなかった。


神殿の中に入ると、そこは高い天井から光が差し込む静謐な空間が広がっていた。

中央に大理石で作られた腰高の台があり、その周囲には白い砂のようなもので精緻な模様を有した魔法陣が描かれている。

竜の化身は魔法陣を乱さないようにエリザベスを抱えたまま宙に浮きあがり、中央の台の上にエリザベスをそっと横たえた。


アンソニーは魔法陣の手前で立ち止まり、エリザベスと竜の化身の姿を一心に見つめた。


竜の化身が静かな低い声で呪文を詠唱し始める。

それは聞いたことのない言葉だったが、その低くゆるやかに波が寄せて返すような一定のリズムに心が鎮まる。

詠唱の声が大きく、声が高くなってきたかと思うと魔法陣から光の粒子が浮かび上がり、竜の化身の手の上で凝集されていく。

竜の化身はその光の塊をそっとエリザベスの口元に寄せて優しく開かせた口に注ぎ入れた。


エリザベスの体が内側からぼうっと光り、その光が収まると同時にエリザベスのまつげがかすかに揺れて緑の美しい瞳が開く。

焦点を失ったように辺りをさまよっていた視線が、竜の化身の顔を捉えるとゆっくりと瞳に力が宿り、子供のような無垢な笑顔で笑った。


「ツキシロ。」


竜の化身がエリザベスの背に手をいれて助け起こすと、エリザベスはその首にしっかりと抱きついた。

一瞬びっくりした顔をした竜の化身も、優しくエリザベスの背中に手をまわし抱きしめて言った。

「明日香。久しぶりだな。」


その様子を魔法陣の外から見ていたアンソニーはエリザベスが生き返った安堵と、ただならぬ二人の様子に心臓を締め付けられるような痛みを感じ目の前が暗くなり、立っていられずその場に膝をついた。


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