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チュートリアルおじさんと異世界巡り  作者: 雪夜小路
Ⅶ章.レベル61~70
92/138

92.訓練

 黒竜が来て数日が経ち、異形の姿にも見慣れてしまった。


 考えてみればテュッポやボロー、それにCP-T3もいるので外見への意識が薄い。

 控えめに言っても戦闘狂なのだが、それゆえに弱いと判断したキャラとは絡みが少ないので問題を起こす頻度も少なく済んでいる。

 むしろ、外見としては人に近い某狐キャラの方が、連日のように問題を起こして木村にストレスを与えていた。


 木村にとって意外だったのは、黒竜が戦闘キャラ以外にも話をする相手がいたことだ。

 リン・リーやゴードンといったある分野で活躍しているキャラには、黒竜も一定の意識をおいており話をしている姿が確認できた。

 特定の分野で生き抜いている相手は、一種の戦士として認められていると木村は考えた。

 あるいは強い戦士を作るための一機関としての認識だろうか。


 ちなみに木村は黒竜と絡みがない。

 間違いなく木村は戦士として認められていない。

 戦士認定と言えば、ヘルンは戦士として認められていた。


 ヘルンは木村でも何となくわかる。

 彼女はスイッチが入れば戦場カメラマンになる。

 あの大神オーディンの登場時ですら撮影していたので、木村も認めざるをえないところだ。

 黒竜も撮影した写真を見て、感心していた様子があった。


 なお、ワイルドハントが終わったら、ヘルンは消えると思っていたが消えなかった。

 「死後の世界に連れて行ってもらえませんでしたー」と、のほほんとした表情で告げてきた。

 しかもカゲルギ=テイルズの世界にも帰らせてもらえなかったようで、カクレガに同行して写真を撮っている。

 今は「将来、カゲルギ=テイルズに帰ったときに写真集を出して名を上げるんです」と張り切っていた。


 そのカゲルギ=テイルズの世界は、サ終を迎えるかもしれないという話だがどうなのだろう。

 約半年後にサービス終了のようだ。回避できるとは思えない。

 サ終すべくしてサ終するゲームだ。


 オーディンによると、こちらの世界と一緒に滅ぶことは回避できるような口ぶりだった。

 一緒に滅ぶことはなくてもカゲルギ=テイルズの世界が滅ぶことはあり得る。


 木村もイベントの意味が何となくわかってきた。

 あれはサ終を回避するための事前準備ではないだろうか。

 カゲルギ=テイルズ世界をこの異世界に移動するための準備だ。

 いきなり全部をくっつけると崩壊するから、少しずつくっつけて試しているとか。


 ここまで考えて、あまりにも突飛すぎて木村も阿呆らしくなった。

 最近はサ終の後のカゲルギ=テイルズ世界がどうなるかをよく考えてしまう。


 そして、自らがどうなるかも気にしてしまうのだった。



 話を戻すと、黒竜の戦士認定でやや不思議な判定を受けているのが二人いる。


 一人は霊体のルーフォである。

 カクレガ全般の事務仕事を一手に引き受けている彼女なのだが、そこが認められたのだろうか。

 それにしては黒竜の態度が、他の戦士認定キャラとはまた別の気がしてならない。

 どちらかと言えば、黒竜の方から距離を取ろうとしている。

 木村の気のせいと言えば気のせいかもしれない。



 もう一人の謎判定がアコニトであった。

 初めて彼女と黒竜が顔合わせをしたとき、木村は彼女が例によって例のごとく殺されると思った。

 あの時のアコニトは、当然のようにクスリで頭がパッパラパーだったし、酒臭い息を黒竜に堂々と吹きかけたのだ。


 「おかしな奴がいる」と、黒竜はおっさんにそれだけを言った。

 おっさんも「おかしいのは頭だぞ」と即座に返して、アコニトを動かなくした。


 その後も黒竜は素面かつ正常のアコニトと会っていたが普通に会話が成り立っていた。

 互いの距離感で話をしていたと木村は覚えている。


 確率が高いところだと、彼女が持っている竜の加護を黒竜は見たのかもしれない。

 アコニトは赤竜と闇竜の二つの加護を持っている。すごいはずなのだが、普段の姿からはまったくわからない。



 黒竜の訓練はメインメンバーがほぼ入っている。


 フルゴウルとモルモーも強制的に引き出された。

 免除されたのは機械のボローと謎のアコニトだけである。


「強くなるためとは言え、これはきついね」

「どうして私まで……」


 フルゴウルは特訓には乗り気だが、体力不足のせいでいっぱいいっぱいだ。

 モルモーは死にそうな顔で訓練室の天井を見上げている。


 特訓メニューはそれぞれ異なる。

 ゾルはテュッポの攻撃をひたすら躱す練習をしているし、フルゴウルはシエイと一緒にモルモーを攻撃し、モルモーは攻撃を捌かされている。

 ときどき攻守やメンバーが交代をして延々とおこなわれていた。


 ウィルは訓練室の片隅で眼を閉じて集中している。

 炎を纏う練習をしているようだ。木村は数日前に彼と交わした会話を思い出す。



 その日、木村は訓練室の隅にて単独で特訓をさせられているウィルに話しかけた。


「どう?」

「なかなか」


 彼は炎を体に纏う練習をしているのだが、木村が見たところ苦戦している様子だ。

 服を燃やすだけならまだ良いが、火傷までしてペイラーフの世話になっていたこともある。


「難しいですね。炎を纏う感覚がまるで掴めません」


 木村は珍しいと感じた。

 ウィルは魔法に関して貪欲で才能もある。

 一部の強敵を相手にする以外で、こういった弱音を吐いた記憶がない。

 しかし、昨日の今日ですでに炎を体に貼り付けているように見えたので進展は見られる。


「そもそもの話なんだけど、炎を纏ったら相手の魔力やら神気が防げるの?」

「ずばりそこなんです。どうして炎を纏うことで神気を防げるのかさっぱりわからないんです」


 ウィルも首を捻っていた。

 理論が不明らしい。感覚が掴めないのは理論がわからないからかもしれない。

 頭で考えてから実行し感覚を掴むタイプなら、理論がわからないことは、設計図もなしに模型を作るようなものなのだろうか。


「神聖術による炎に自らの神気が含まれることで、外部からの神気と相殺されると考えたんです。炎による障壁ですね」


 炎をバリアにすると木村は考えた。

 外からの脅威を炎バリアで守るというわかりやすいイメージだ。


「それならこれで良いんです」


 ウィルが「すこし離れて」と手で示すので木村が距離を取ると、ウィルの周囲に炎の膜ができた。

 卵の殻のようにウィルから離れたところに、バリアみたいなものができている。

 戦闘の時にたまに見たこともある。


「できてるじゃん。これじゃないの?」

「違います。これは炎の障壁です。黒竜の気当ては防げませんでした」


 意味がありませんとウィルは首を振っている。

 木村も話がここまで来て、ようやくウィルが何をしているのかわかった。


「ああ、それで実際に皮膚に炎を纏ってるんだ」

「はい。外側に展開する障壁ではなく、皮膚のようにぴったりと炎をくっつけるのかと思いまして」


 結果としてこの発想は間違いだった。

 服を焼き、さらに火傷を増やしたウィルを見て、黒竜が木村でもわかる呆れ声で言った。


『なにゆえ己を焼いている? 炎の属性付与はできないのか?』

「できますけど、まさか自分の体にですか?」

『最初は片腕だけでやれ』


 アドバイスはそれだけである。

 木村でもわかる話だった。属性付与は見たことがある。

 直接、魔法で攻撃することが多いので滅多に使わないが、ゾルに付与して攻撃させることが昔はあった。

 彼女の専用武器は物理特化なので属性付与の乗りが悪く、やはり属性付与は使われる機会が減ってしまっている。

 どちらかと言えば防具に付けて、相手の炎攻撃を緩和することの方が多い。


「属性付与って武器や防具に付けるものだと思ってた」

「いちおう人にも付けられます。近接戦闘を得意とする人で助教レベルになると使うこともあると聞きますね」

「人に属性付与するとどうなるの?」


 武器はわかりやすい。

 防具も属性への耐性がつくのでわかる。

 人に付けても属性への耐性が付くだけと思うがどうなのだろう。


「あまり知られてないんです。この分野の方々は体で覚えろというタイプが多くて、資料に残してくれないんですよ。僕はやったことがありませんね」


 それはそうだろう。

 今まで選択肢としてすらあがってないくらいだ。


「ルルイエ教授は?」

「使っているところを見たことがないですね。使えるとしても使う相手がいないのかもしれません」


 それもそうかと木村は納得する。

 属性付与をする必要もなく、普通に魔法で攻撃して倒せてしまう人だ。

 もしもあの教授がオーディンや冥府の導き手を相手にすると、どう戦うのかが木村は気になった。


「さっそくやってみましょう」


 またしても「離れて」とジェスチャーをされたので、木村は距離を取った。

 ウィルが腕を上げた。黒竜に言われたとおり、いきなり全身ではなく腕にだけ属性付与をかけるつもりらしい。


 ウィルの腕がほんのり赤みを帯びた気がする。

 木村は声をかけようと思ったが、ウィルの顔があまりにも真剣だったので黙って見ておく。


「……あっ」

「わっ!」


 しばらく見ていると、ウィルが声を発した。

 同時に腕から炎が上がる。訓練室の天井近くまで火柱があがった。

 木村もその炎を見て思わず声が出た。過去にアコニトの尻を焼いた光景がフラッシュバックする。


 ウィルが腕を振って、炎を消そうとする。

 しかし、炎はなかなか消すことができない。ただ、徐々に収まってはきていた。


 完全に火が消えてから木村はウィルに近づく。

 火が見えたためか黒竜も来ていた。


「これ……。初めてやりましたけど、ものすごく難しいですね」

『あれだけの炎は滅多に出せない。なにより、初めてで腕を灼き尽くすこともなく収めたか。やはり術の才覚はある。励め』


 今さらりと腕を灼き尽くすとか言ったぞと木村は思った。

 最悪、ペイラーフに治療をしてもらえるだろうが、先に言っておけよとも思う。


「難しいの? 最初の時と何が違うのかわからないけど」


 木村の素人目ではどちらも体に火を付けているだけだ。

 最初にやっていたときの方が、服が燃えていた分だけ危険そうに見えた。


「全然違いますね。最初の炎を纏う訓練は、神聖術の技術面だけ見ていました。いかに火傷もなく体に炎を纏わせるかですね」

「属性付与は?」

「神聖術の制御面になるでしょう。体の内から溢れようとする炎をどう抑えるか。……なんとなくですがわかってきました」


 木村はよくわからない。

 とりあえずウィルがビジョンをうっすらとでも掴めたようなので良かったと思う。



 数日前に交わした会話を思い出したが、その後の進展ははっきりと見られない。


 暴発させていた炎が出なくなっているので、素人目では制御がうまくできているようには見える。

 ここにいても仕方がないと判断し、木村は自室に戻る。


 今はまともなイベントがない。

 ログインボーナスがもらえる期間であり、現実では退屈だろうが異世界では一番心が落ち着く期間だ。

 このまま何もないままにサ終を迎えて欲しくすらある。



 自室に戻り、久々にトロフィールームに入った。

 目に見えてトロフィーが増えている。


 いつでも入れる部屋なのだが、木村はこの部屋があまり好きではない。

 まず空間自体が謎すぎる。カクレガも謎だが、特にこの部屋は諸々の法則を無視している。

 キャラはトロフィールームが認識できない。ブリッジと接続したケルピィどころか、おっさんすらだ。

 なにより木村はこの部屋にいるとプレッシャーを感じる。今まで歩いてきた過去が重みを持って、彼にのしかかってくる錯覚があった。


 近くから見ていく。

 イベント棚に銀色のトロフィーが増えた。

 写真の一枚のように四角く縁取られた枠の中に、スクルドとロゥが映っている。

 スクルドは馬から下りて剣を持っており、ロゥは何も持っていない。


 題名:“ワイルドハントで連れてって”

 説明:“あなたは未来を摘み取る一撃を堪えきった。残った未来は困難に満ちている。”

 効果:“ヘルンが仲間になる”


「……おぅ。ヘルンってそうなの?」


 イベントキャラなのはもちろん知っていたが、運命切断に堪えてなかったらヘルンはいなかったのか。

 仲間になってなかったら、死後の世界直行だったのだろうか?


 はっきり言って、成し遂げたことと手に入れたものが釣り合ってない。

 言っちゃ悪いがそこまでヘルンは要らない。写真は撮れるが撮ったから何なのって話だ。



 そして、イベント棚にまさかの金トロフィーが来た。


 ワイルドハント全員で撮影した集合写真がトロフィーになっている。

 しかもよく見ると、あの時いなかったはずのロゥやカリーフ、壺、Ninjaキャラもこっそり入ってる。

 完全にねつ造写真だが、こういったねつ造なら許せるものだ。


 題名:“ワイルドハントで連れてって(コンプリート)”

 説明:“あなたは本イベントでの隠しを含む全ミッションを達成した。”

 効果:“メモリアルルームが配置可能になる”


 どうやら全てのミッションを達成した証らしい。

 逆に言えば、今までのイベントでは取り逃していたことになるだろう。

 取り逃したのはちょっと悔しいが、もはや復刻は期待できないので諦めるしかない。


 メモリアルルームが配置可能になるようだ。

 おそらくカクレガの施設と思われるので、後で家具マシンを見てみることにする。

 しかし、もっと良い名前はなかったのだろうか。記念室とかで良いだろう。なぜメモリアルルーム?

 もはや葬儀会場だ。遺影か遺骨が置かれ、両手を合わせる印象を受ける。



 次に都市・国等の破壊シリーズ棚に行った。


 あまり増えて欲しくないシリーズなのだが、今回は違う。

 このシリーズに金トロフィーが増えている。


 ラベクの飲み会場所だ。

 ロゥが他の人たちと楽しげにお酒を飲んでいる光景である。


 題名:“救世主の都ラベク”

 説明:“あなたはラベクに訪れる未来を救った。誰が信じるだろうか? この都が一度は滅びた、と。”

 効果:“パルーデ教国に属するキャラのステータスが大幅にアップ”


「おおぉ」


 木村もこれは嬉しい。

 やり直した甲斐があったというものである。

 都市・国等の破壊シリーズから、破壊・救済シリーズに名前を変えなければならない。


「……ん? パルーデ教国に属するキャラ?」


 効果を考えてみるとパルーデ教国に属するキャラがいない。

 ロゥには効果がかかっているのかもしれないが、同行してないのでまったく意味がない。


 この金トロフィーの隣には滅びたラベクの銀トロフィーがある。

 土台だけになった神殿跡地に老人が座ってパイプをふかしていた。


 題名:“壊滅の都ラベク”

 説明:“あなたは滅びたラベクを訪れた。老人の顔は煙に隠れてよく見えない。”

 効果:“パルーデ教国に属するキャラのステータスがアップ”


 やっぱり滅亡バージョンもあった。

 あそこでやり直さなければこれだけになっていたのか。

 そして、やっぱり効果は意味がない。Ninjaキャラにかかるかもしれないがラベクに残っている。



 竜関連の棚に行けば銅トロフィーが二つあった。


 一つは壺がごろんと転がっているだけの地味なトロフィーだ。


 題名:“意竜とおしゃべり”

 説明:“あなたは意竜と話した。彼女の口にする九割は無駄口である。残りの一割に気をつけなければならない”

 効果:“意属性とそれに伴う技の効果が上昇する”


「あの壺……、意竜だったんだ」


 今さらな話である。

 すでに彼女とは別れているので話すこともない。


 意属性の効果アップをもらったが、該当する技がやはりなさそうだ。

 今回のトロフィーは効果に意味のない物が多い。



 もう一つの銅トロフィーは黒竜だ。


 最初の登場シーンだった。

 廊下の奥から現れる様子がそのままトロフィーにされている。


 題名:“黒竜との出会い”

 説明:“あなたは黒竜に出会った。彼は戦いに関係しない相手に興味がない”

 効果:“自身に対する属性付与の効率が上昇する”


 ようやくまともな効果が出た。

 ウィルがまさに訓練しているので都合も良い。


「効率?」


 ただ、属性付与の“効果”と思ったが、よく見ると“効率”である。

 どう違うのかがわからないし、そもそも自身に属性付与をかける意味も現状ではわからない。


 今回のトロフィーは本当に微妙なものが多いと感じつつ木村は次の棚に移った。



 特殊能力者棚に銀トロフィーが置かれていた。


 アフロ頭のロゥが壺を片手に叫んでいる。


 題名:“詞”

 説明:“あなたは「詞」のロゥに出会った。詞に力を”

 効果:“詞に対する完全抗力を得る(※あなたに限る)”


 詞に対する完全抗力を得たところでどうしようもない。

 他に同じ力を持つ相手がいれば別だろうが、そもそも木村にしか抗力がない。

 とりあえず記念品みたいな物だろう。元を正せばトロフィーがそういったものである。



 近くの棚に銀トロフィーがある。

 最初の“ワイルドハントで連れてって”と似たトロフィーだ。

 スクルドとロゥが対峙しているのは同じだが、スクルドは馬に乗っている。

 対するロゥは壺を持っているし、彼の傍らにはカリーフがいてロゥとともにスクルドに立ち向かっていた。


 題名:“運命(未来)との対峙”

 説明:“あなたは災厄を乗り越えた。長い今日が終わり、明日がやってくる。”

 効果:“運命(未来)と対峙したキャラに、災厄を無効化する力が備わる”


 意味のない効果シリーズだ。

 効果は良さそうだが、対象キャラがロゥなのでやはり意味なし。



 最後に、強敵関係もしくは神関係の棚にトロフィーが金銀銅と三つ増えている。

 全てオーディンのものだ。


 まずは銅トロフィーである。

 出会ったときの姿だ。老人がパイプをふかしている。


 題名:“オーディンとの出会い”

 説明:“あなたはオーディンと出会った。彼の姿に惑わされてはならない”

 効果:“変化による能力低下が緩和される”


 久々に使えるものが来た。

 これはモルモーが使えそうだ。

 ……使えそうではあるが、基本的に変化で戦わないから意味があるのだろうか。

 どちらかと言えば、装備を作成してもらうときに役立つかもしれない。



 続いて銀トロフィー。

 老人が杖で宙に文字を記す姿がある。


 題名:“オーディンのルーン”

 説明:“あなたは全てのルーンを確認した。あなたが真似て書いても意味はない。”

 効果:“ルーンを一つセットすることができる”


 ルーン文字の選択肢がずらりと出てきた。

 見覚えのあるような、ないような文字が出てくるのだが……。


「効果が何も書いてない……」


 いろいろと選べるのが嬉しいが、効果がさっぱりわからない。

 後でブリッジのモニターから説明文を引っ張ってくる必要がありそうだ。

 細かいところで地味に不便で困る。



 最後に金トロフィーである。

 さすがにこれは木村でも予想できていた。

 騎士状態のオーディンがスレイプニルに跨がり槍を投げるシーンだ。


 題名:“オーディンの一撃”

 説明:“あなたはグングニルの発動を見た。彼の勝利があなたの敗北とは限らない。”

 効果:“グングニルの直撃を受けたキャラが『グングニルの傷痕(スティグマ)』を得る。確定勝利が5%の確率で無効化される(無効化されるのは確定勝利の効果のみで、ダメージやその他効果は受ける)。”


 効果が珍しく長い。

 そして、やっぱり意味がない。

 効果を得ているのはどうせロゥだけ……、


「ん?」


 木村は記憶をたどる。

 あのときグングニルを受けたのはロゥだけではなかった。

 グングニルを止めるためにアコニトも闇竜のスペシャルスキルで受けさせた。


「もしかして――」


 アコニトも“グングニルの傷痕”とやらを得ているのではないか。

 そして、黒竜はどうやってか、その効果を見て彼女を戦士と認めている可能性がある。


 どちらにしても滅多に発動されない効果だ。

 普段は気にする必要もない。やはり意味のない代物と判断すべきだろう。



 トロフィーの確認も終え、何でもない一日がまた過ぎていった。

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