86.イベント「ワイルドハントで連れてって」4
ブラウザ、OSによって一部の文字が適切に表示されないかもしれません。
達成が困難な課題ほどクリアしたときの充実感は大きい。
一般的にはそのはずだが、木村としては充実感よりも課題が消えてくれた方が嬉しい。
とりあえずワルキューレとのツーショットも撮ることができた。
次のミッションは一つではなく、複数のミッションを達成していくタイプのようだ。
ブリッジのモニターで詳細を確認することができる。
そして、いくつかのミッションはすでに達成されていた。
例えば、“ワルキューレの背中に乗った状態を撮影する”もクリアしている。
この手のミッションは早めに開示して欲しい。この課題は昨日の雰囲気以外で撮れると思えない。
他にも“ワイルドハントの集合写真を撮る”とかいうクソミッションも偶然撮ったものなので、もしも後から知ったら絶対に達成不可能だった。
“異なるルーン文字を24字確認する”
ミッションの一つに目が留まった。
現在は10/24と10ほど集まっている状態である。
このミッションは他のミッションと違い、撮影ではなく確認とある。
「ルーン文字?」
木村も聞いたことはある。
ただ、どんなものなのかは見たことがない。
昔のヨーロッパ地域の文字で、アルファベットの原型になったくらいの知識だ。
ミッションでは24字だが、現在、10字は確認済みのようだ。
どこで集めたのかわからない。そもそもどれが集まっているのかわからないし、どんなものかも不明だ。
勝手に集まるのは助かる。見てもわからない可能性が高い。
モニターでさらに詳細を展開できるので開いてみた。
ずらっと見覚えのない文字群が出た。
01.ᚠ:ワルキューレ全員に刻まれる。彼女たち固有の力を引き出す。
02.ᚢ:
03.ᚦ:エイルに刻まれる。彼女は火と水の嵐をもたらした。
04.ᚨ:
05.ᚱ:ワルキューレ全員に刻まれる。強靱な乗り手と馬体を結合させる。
……
22.ᛜ:
23.ᛟ:
24.ᛞ:ゲイルスコグルに刻まれる。光と暗闇の狭間に彼女はいる。
達成した文字が白く点灯し、説明文が載っている。
未達成の文字は灰色でフリガナだけが表示され、説明はつかないようだ。
24字全てを集めるのは無理かもしれない。
そもそも、なぜルーン文字が今回のイベントと関係あるのか木村にはわかっていなかった。
ルーン文字を最初につくり出した、あるいは見つけたのがオーディンだからという神話的側面を彼は知らなかったのである。
余談だが、筆者もルーン文字と神話の関係性をまったく知らなかった。
第一に筆者はルーン文字が何かもわかっておらず、Unicodeで存在することすら初めて知った。
文字に内包される神秘の説明とかもちょこちょこ出す予定だが、間違っていても生暖かい目で静かに見守って頂けるとありがたい。
なお、使用する文字は北欧ルーンではなく、オーディンが見つけたという伝承に従い、ゲルマン共通ルーンの24字とする。
ルーン文字、及びフリガナもゲルマン式にするつもりだが、違っていてもスルーしていただきたい。
木村は本イベント制作者の頭を疑った。
プレイヤーの九割九分は知らないであろうルーン文字とやらを、24字もわざわざ設定するとか馬鹿じゃないのか、と。
しかも困難な割にミッションの達成報酬は少ないので嫌になる。
まるで日本の現実社会のようだ。やりがいばかり搾取され、実が増えない。
せめてゲームくらいは困難な課題には、多大で過剰な報酬が用意されていても良いと感じる。
なぜルーン文字を24まで用意しておきながら報酬はケチるのか。
力の入れどころがおかしいと木村は感じた。そんなことだからユーザーが離れるんだ。
わざわざ本当のルーン文字を表示させ、説明テキストを考える暇があるなら、報酬のバランスを考え是正するべきだろう。
とにかくルーン文字の全確認は難しそうだ。
文字を見たが、どこで確認したのかも木村はさっぱり記憶にない。
逆に、ワルキューレの厄介そうなミッションをいくつかクリアできている。
昨日の撮影会は無駄ではなかったと木村は安堵の息を漏らす。
おそらくまだ開示されていないミッションはあるだろう。
現状での未達成ミッションは二つだけだ。
一つは先ほどの“24のルーン文字の確認”。
それに“スクルドの抜剣を撮影する”である。
どちらかを達成すれば、他のミッションが出るのだろう。
あるいは単純にイベント日程が進めば開示されると考えられる。
未達成ミッションにあるスクルドは、ワルキューレの中でリーダー的な存在だった彼女だ。
オーディンの隣にもいたし、運命の女神の一柱だとも聞いた。
人語を話すのもワルキューレでは彼女だけである。
木村も覚えている。彼女の腰に剣があった、と。
ミッションとして、難しいのか簡単なのかがいまいちわからない。
撮るだけなら簡単そうだが、彼女がどのタイミングで剣を抜くのかが不明だ。
他のワルキューレで事足りるなら、彼女が剣を抜く出番はないのかもしれない。
あるいは、今夜の写真引き渡しの際に、剣を抜いた姿を撮影できないか頼むことも手段として考えられる。
懸念として“あの”ワルキューレたちのリーダー格だ。
しかも運命の女神も兼ねているらしい。そんな彼女の剣がただの剣なのだろうか。
木村は漠然とした不安を感じていた。
さて、写真の引き渡しは今夜だが、面倒なことが一つある。
「私も連れていきなさい!」
ロゥの召喚主であるカリーフが叫ぶ。
彼女の姉とその被召喚者がワルキューレの餌食となった。
餌食というのは正確ではない。牽かれて粉みじんになったがより正確だ。
「私があの悪魔どもを皆殺しにします!」
無理だろ――思うだけで木村は口にしない。
自明なことだ、わざわざ音にする必要はない。
ロゥやケルピィも同様であった。
ただ、彼女の気持ちはわからないでもない。
尊敬していた姉とその被召喚者が、彼女の敵対視する存在に殺された。
「せめてこれをどうぞ。彼女たちの最期の姿です」
ヘルンから渡されていた写真をカリーフに渡す。
写真には兵士を逃がそうとする彼ら、そしてワルキューレに立ち向かう姿が鮮明に写っている。
カリーフは写真を見つめて涙を流し、恐怖よりも激情に支配されていた。
絶対殺す、私が殺す、生かしておかないなどと、できないことをギャンギャン叫び、いたたまれなくなったロゥが彼女をどこかへ連れていった。
いちおうペイラーフから寝かせ続けると体に悪いと言うことで、カリーフもカクレガでの移動を許可している。
ただし、このカクレガに多種族がいることを知らせた上で、発言にはくれぐれも気をつけるようにと注意はした。
注意はしたが、あの様子だとまた不適切な発言が飛ぶな、とカリーフの声が遠ざかるのを感じつつ木村は頭を悩ませる。
カリーフらと入れ違いにしてヘルンがブリッジに入ってきた。
木村は彼女に礼を言うべきか迷ったが、彼女のにたついた顔を見て口を止めた。
「とぉ~ても良い感情を出されていましたね!」
ヘルンはとてつもなく充実した顔をしている。
見ている木村が苛つくほどだ。
「彼女の顔を撮りたかったんですが、鉢合わせると殺されそうなのでやめておきました」
最低限の節度はある。
しかし、あまりにも最低限過ぎた。
思わず木村の口から苦言が出る。
「彼女を怒らせるために、写真を渡したんですか?」
「当たり前じゃないですか」
さも当然のように返答された。
木村が呆れて口を開いていると、ヘルンは勝手に続きを話し出す。
「あたしは、あたしの撮影した特ダネで人々を感動させたいんです! それが一人であれ、怒りであれ、感動に他なりません! あたしは今、記者としての本分を実感しています!」
アコニト顔負けのマスゴミリスだった。
絵に描いたようなクズだ。さすがの木村も不快に感じる。
木村はときどき思うのだ。
このゲームはこんなキャラが多すぎないか、と。
アコニトにしろ、おっさんにしろ、このリスにしろだ、まともではない人物が揃いすぎている。
敵側にいるならまだわかる。しかし、初期☆5、チュートリアルキャラ、イベント強制参入と避けられないほどに味方側だ。
最初の頃に考えていた疑問が、今になって湧き上がってくるのである。
この“カゲルギ=テイルズ”のメインシナリオはいったいどんなものなのか?
絶対にまともな話ではない。
主人公側が、どちらかといえば一般的なゲームでの悪側ではないか?
いつもどおり答えは出ないのである。
「今回は見逃しますけど、次に同じような事をしたり、やらせたりしたら訓練室で竜と戦わせますからね。赤・青・黄の初期竜と三連戦です」
「またまた~、あたしは戦えませんよ~」
「だからです」
死んでもかまわない。
モルモーにこのクズリスの写真技術だけ真似をしてもらおう。
木村の本気の思いは無事ヘルンにも伝わったようである。
ヘルンは出来の悪い笑顔を引き攣らせている。
「あの……、それっていつからカウントされますか?」
「今からです」
ヘルンはほっと息を吐いた。
その反応を見て、木村の心の不信感が大きくなっていく。
このクソリスは、もうすでに何かをしていると木村は確信した。
「ヘルンさん、何をしました? ――おっさん」
「呼んだか」
おっさんの名前を呼ぶと、入口の扉が開いて現れた。
「いや、速い速い」
あまりにも速すぎる登場だ。
呼べば来るのは知っていたが、こんなに速いと逆に驚く。
汗の具合から見て、訓練した帰りにたまたま様子を見に来ただけだと木村は判断した。
だが、ヘルンにはあまりにも突然現れたようにしか見えなかったようで、驚いて固まっている。
「もう一度だけ聞きます。ヘルンさん。何をしました?」
「そ、それは――」
答えを待つまでもなかった。
部屋の外から怒りのこもった叫び声が近づいてくる。
扉が開き、おっさんの脇からぶち切れのカリーフが木村に詰め寄ってくる。
何かを手に持って叫び続けているが、安物のスピーカー並みに声が割れて、木村はもはや聞き取れない。
カリーフが手に持っている物に注目する。
写真である。彼女が机において、写真をバンバン叩く。
ロゥが後ろから羽交い締めにしてようやく写真から手が離れたので木村は内容を見た。
真ん中の最前列に老人と木村、それにおっさん、周囲をスクルドや数多の神々やワルキューレが囲んでいる。
木村もすぐにわかった。昨夜のラストで撮影した集合写真だ。
「どうして! あなたが悪魔どもと仲良く映っているんですか!」
聞き取れる範囲を解釈すると上のようなことを言っていると木村も理解した。
ロゥの話を聞くに、この集合写真や他のツーショット写真がカリーフの部屋に置かれていたらしい。
カリーフが彼らを嫌っていることを知っており、その彼らと木村が仲良くしていることを伝えるような写真である。
いったい何を思ってヘルンはこの写真をカリーフの部屋に置いたのか?
感情をかき立てるのが狙いと話していた。
なるほど確かにカリーフは怒り狂っている。
木村も怒りが出てきた。カリーフではない。ヘルンにだ。
「ヘルンさん」
呼んでみるが返事はない。
それどころかブリッジから姿をくらませていた。
「あんのクソリス……」
「これを説明なさい!」
説明も何もイベントの兼ね合いで撮ったものだ。
ムカつくが腕は良い。写真映りの悪い木村も、ちゃんと平凡な様子で写っている。
撮影者の歪んだ信念が写真までに入り込んでいないのが、プロの一端を示してきているようで余計に腹が立つ。
「彼らと親交を築いていました」
「あの悪魔どもと! あなたは人間でしょう!」
木村はカリーフと話してもイライラしてくる。
ヘルンのこともあり、余計にイライラが募っているところであった。
ふと、彼はなぜこんなにも彼女にいらだちを覚えるのだろうかと考えるのである。
「私は彼らを絶対に許しません!」
苛つきはするのだが、同時に羨ましいとも思える。
ここまで怒りを露わにして声も出せたら気持ちよいだろうな、と。
気持ちは良いだろうが、果たして疲れないのだろうか。いつもプンプンしている。
「彼らを許さないとどうなりますか? どうにもなりませんよ」
木村は落ち着いて疑問を投げた。
「いいえ! 彼らには必ずや天罰が下ります!」
残念ながら天やら神とは彼らのことであり、彼ら自身に罰は下らない。
下るのは常に人間側なのである。
「彼らには、エニアの名を持つものが死を持って償わせるでしょう!」
徹底抗戦の火は消えていない。
ある意味すごい。あの戦力を見て、なぜ戦おうと思えるのか。
「念のため言っておきますが、もしもあなたたちと彼らが戦うことになったとしたら、僕たちは介入せずに見守ります。どちらかに味方するなら彼らの味方をしますから」
強いものには巻かれろという魂胆だ。
あの軍団に勝てるビジョンがまるで見えない。
「かまいません! 私たちはあの悪魔どもを下し、その次はあなた方を下すまでです!」
ロゥがどうどうとカリーフをなだめている。
木村もケルピィにたしなめられて、この話はここで終わりになった。
夜になり、約束どおり写真を引き渡すことになった。
メンバーは昨日よりも一体多い。
ゾルとヘルンは固定で、ケルピィも来たいということで機械玉を連れてきている。
ヘルンの写真はワルキューレ達に評価され、彼女はまたしても写真を撮っている。
昨日は決めポーズが多かったが、今日は普通に過ごす写真がメインのようだ。
ヘルンはクズだが行動力は凄まじい。
ワルキューレだけでなく、あちこちの神々を撮り回っている。
話ができる神たちと話して死後の世界を聞いていた。まだ死後の世界への訪問を諦めていないようだ。
今からでも行ってくれればいいのにと木村は半ば真剣に思っている。
木村は彼女の行動力に目を瞠りつつも彼自身は動かない。
昨日と同様に、老人と一緒に他愛ない話をしている。今日はスクルドもいた。
木村としてはスクルドがこの場にいるだけで緊張の度合いが数段階上がるのだが、神である彼女に人の心労がわかるはずもない。
「……あ、そういえばルーンをご存じですか?」
木村はミッションを思い出して尋ねてみた。
もしかしたら老人なら、ルーンについて詳しいかもしれないと考えたからである。
質問に対し、老人は酒を口に付けて笑った。
スクルドも口元をおさえた。兜をつけているのでわからないが、もしかして笑っているのかもしれない。
「若人、ルーンを知りたいか?」
「え、まあ、どちらかと言えば、知りたいです」
老人は首を横に振った。
「その程度の覚悟では知ることはできんな」
「どのくらいの覚悟があれば良いんです?」
「どのくらいか……、ふぅむ。木で首を吊り、槍を自らに刺し、九日間を堪えるほどだ」
オーバーキルだ。
ひょっとして馬鹿にされているのだろうか。
スクルドが顔を背けて肩をふるわせていた。おもしろがっている様子だ。
やはり馬鹿にされていると理解した。
「からかいが過ぎたな。一文字だけ披露しよう。さて、どれが良いか……」
老人が木村を見る。
ぼんやりと見ているが、どこか焦点が合ってない気がした。
「ふむ。候補は二つ。……無色の煙にはこちらが相応しいか」
:ᛜ:
老人がボソリと何かを囁いた。
同時に手に持っていた杖で木村の前に模様を描く。
杖の先端が菱形の軌跡をなぞり、不思議なことに軌跡が光となって宙に浮かんでいる。
「えっと、この菱形がルーンなんですか?」
「いかにも。ᛜのルーン。儂の同胞を指すルーンでもある」
「同胞……、神なんですか?」
老人は頷いた。
木村としてはそんな大層なルーンを示されても困る。喜ぶべきだろうか。
「神であることは重要ではない。重要なことは、この文字の奥底を見つめることだ」
文字の奥底と言われても、見た目には◇である。
どう見ろと言うのか? 木村の疑問が老人にも伝わったようで解説をしてくれる。
「まず、この形だ。どこから見るかにより変化がない。立ち位置の不変性が見える」
そりゃ◇だから上下左右はないに等しい。
「さらに線を伝う流れを見ることもできる」
老人が宙に浮かぶ◇の一点を示す。
菱形の上の頂点が強く光った。その強い光が辺を移動していく。
まるで数学の問題でよく出てくる菱形ABCDの辺ABを等速で移動する謎の点Pである。
頂点から頂点へ移動していき、一巡して元の位置に戻った。
「状態は遷移し、うつろいゆくがやがて同じ地点に戻る。変容のプロセスを示す。循環でもある。若人の回りの命は彷徨わず、循環を繰り返す」
キャラ達のことだろうか
死んでも復活することを示している気がした。
次に老人の杖は菱形の内部をさした。
辺は光るが、内部は何もない。
「何よりも無意識だ。自らを煙と捉えている。あやつの影響だろうな」
木村が空っぽだと言われているようだった。
あやつとはアコニトだろう。
「やがて取り巻く循環が抑えられなくなったとき、その意識は果たしてどこへ向かうか」
菱形の辺が強く輝いた。
その輝きは内部の空洞を光で埋め尽くすようだ。
そして、菱形は消えた。
「こんなところだ」
「ありがとうございます」
何を言っているのか正しく理解できたとは言いがたい。
余興としては楽しめた。占いみたいなものだろう。
もう少し聞いてみたい気がした。
「ちなみに迷われていたもう一つの候補は何だったんですか?」
「儂でも九日かかった。杯の底も乾かぬうちに二つも知ろうとするのは、欲が深いというものだ。……だが、良いだろう。文字だけは示しておこう」
:ᚷ:
老人がまたしても杖を動かした。
シンプルである。普通にXだ。×なのだろうか。
先ほどの菱形と上下左右がないという点では似ている。
この観点は共通項なのかもしれない。
「意味は何なんですか?」
「いずれ知ることになるであろう」
回答はそれだけである。
言ったとおり、文字を示すだけのようだ。
いずれ知ると言われても、知る機会があると思えない。
知っちゃダメとバッテンを示されているようだ。
ルーンも少しであるが知ることができた。
ちょうど良いことにスクルドが目の前にいる。
木村は酒の場を借りて、ミッションのことを尋ねてみた。
「あの、スクルドさんの剣を抜いたところを撮影させてもらいたいんですが」
「やめんか」
スクルドが何かを口にする前に老人がストップをかけた。
叱られた気持ちになる。やはり調子に乗りすぎていたようだと木村は反省した。
ミッションにもなるくらいである。おそらくただの剣でないことは何となくだが察していた。
「運命の女神の剣は、軽々に抜いて良いものではない」
「軽々に……、どんな場面なら抜くに相応しいのでしょうか?」
「決まっておろう。死すべき者の命運を断つときだ」
思ったよりも力強い語調だった。
スクルドも「然り」と言葉短く老人の言葉を肯定した。
思ったよりやばい剣のようだ。
抜剣する場面は来ないで欲しいと真面目に木村は願った。
――願いは叶わなかった。
この夜からわずか四日後のことである。
サナの次女、すなわちカリーフの姉であるサウィフとその被召喚者の命運が断たれた。
木村はなぜ彼女のたちの命運が断たれるに至ったかを振り返る。




