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チュートリアルおじさんと異世界巡り  作者: 雪夜小路
Ⅵ章.レベル51~60
73/138

73.ローグ「水の館 ph7.0」2

 イベント二日目は緊張の朝を迎えた。


 討滅クエストⅡ、ローグライクがどうなるかがわからない。

 昨日はローグライクに討滅クエストⅡが巻き込まれたが、今日はいきいきと破壊活動をするかもしれない。

 さらにはローグライクも浮かんでいるだけだったが、日が変わる際に水が全て地上に落ちる可能性も捨てきれない。そうなると魔物たちが地上でローグライクし始める。


 木村たちはアコニトを除く最高戦力をもって、王都で謎の強敵を待ち構える。

 王都の住民は外出が禁止され、王都の兵士や魔法使いたちは彼らを守るため死力を尽くす構えだ。


「あと一分」


 時刻は5:59。

 朝の六時に開始だ。


「変化があります!」


 ウィルが叫んだ。

 木村も上空を注視する。

 空を浮いていた水が、移動を始めた。


 水が上空で移動をしているのはわかる。

 中にいた魔物たちが、移動に巻き込まれたようで水に溶けて色が変化していく。


 なお、昨日の水の館への勝手な攻略はチクリとトゲを刺された。

 チュートリアルで強制攻略だったので仕方ないと説明してもわかってくれないだろう。

 それより歪みの影響があったことに興味を持たれた。シエイなる人物がいるかもしれないということはケルピィとメッセを喜ばせた。

 ただし、シエイなる人物がいたとしても水の状態だ。どうしようもない。


「魔力の異常反応を確認!」


 一分が過ぎ、討滅クエストⅡの強敵が現れた。

 見たところ、大きな影が出てきた場所は水の館の中だ。


「大丈夫そうだね」


 フルゴウルも感情の読めない顔つきで見上げている。

 木村も強敵が水の館の中でもがいているのが見て取れる。


「キィムラァ。強敵が撃破されたぞ」


 そして、あっさりと結晶状の宝箱が現れる。

 これを残りの二回も繰り返した。


 昨日はわからなかったが、強敵の死に方がやや異なることに木村は気づいた。


 一体目は大きな影であり、水の中でもがき苦しんで死んだ。

 二体目は初めは小さな影で、徐々に大きくなり、大きくなった後でもがいて死んだ。

 三体目は数が徐々に増えていき、最終的に消し飛ばされた。


 一体目は溺死だろうが、二体目は溺死の前に戦闘があったとウィルは言う。

 三体目は何かに消されたとフルゴウルが話した。


 二体目は三人の用心棒が戦っていそうが、三体目は別の者が倒した可能性もあるとのことだ。

 水の館のボスがやっている可能性が高い。そのボスの攻撃は残りの三人とは違う。

 もしかするとシエイなる人物かもしれない。


 そんなわけで今日もローグライクに挑戦することになる。




 ただし、水の館への挑戦は昼からだ。


 朝はまだ早い。

 デイリーを消化して、一眠りしてからでも良い。

 なにぶん起きたのは五時前であり、夜もゆっくり眠れたわけではない。

 ちょうど外にも出ており、戦力もどこかへ消えたアコニト以外は揃っているのでデイリーを消化して帰ることにした。



 カクレガに帰って食堂に行く。


「朝ご飯ありがとう。おいしかった」

「あいよー。おそまつさん」


 木村が厨房に礼を言うと、リン・リーが木村を見ることもなく応えた。

 彼女は鍋を振るっている。鍋を熱する火は、家庭用のものとは比較にならないほどの大きさである。


 木村たちは朝が早かったので、リン・リーが外で食べられる朝食を人数分作ってくれていた。

 今は他のキャラたちも活動し始めるころなので、厨房は忙しくなりつつある時間帯だ。


「配膳を手伝おうか?」

「テイが手伝ってくれてるから大丈夫」

「私がいるよ!」


 隣でテイが手を挙げている。

 ちょうどできあがった料理を取りに来たところだった。


「そうだった。生ゴミが出たんだ。そっちを捨ててきて」

「もちろん」


 お安いごようだ、と木村は請け負った。

 厨房に入って、すでに台車に載せられていたゴミ箱を押す。


「おっ」


 けっこう重い。

 夜に捨てているはずなのだが、今朝は大量にゴミが出たようだ。

 リン・リーが朝から大量の仕事をしてくれた証でもある。これは感謝を覚える重さでもあった。


 台車を押して、木村は厨房から出た。

 裏口を通り、誰ともすれ違うことなくゴミ捨て場についた。


 ゴミ捨て場独特のツンとした刺激臭が鼻につく。

 さっさと捨ててしまおうと、ゴミ箱の蓋を開ける。


 木村はちらりとゴミ箱の中身を見た。


 ――顔があった。


「う、うわあああああああ!」


 木村は思わず叫んだ。


 意味がわからない。

 ゴミ箱の蓋を開けたら顔と対面した。

 顔はボコボコにされており、誰かと言えば無論アコニトである。


「えぇっ! なんで……?」


 ゴミまみれではあるが、体中が折り曲げられてゴミ箱に入れられているとわかる。

 顔と対面できる体勢で、なぜか足もゴミの中から出てきて見えているということが、折り曲げられているなによりの証左だ。

 どうやら彼女は意識がないらしい。どこにいるのかわからなかったが、ゴミ箱にいたようである。


 実行犯はこちらも無論おっさんだ。リン・リーも関係しているかもしれない。

 彼女は余った装備とわずかだがスキルテーブルも進めている。

 実際にステータスを上げると調理の質も上がったらしい。

 今回はアコニトが調理されたということだ。


 とりあえずゴミ箱を倒して、中身を出した。

 アコニトが他の生ゴミと一緒に出てくる。彼女も生ゴミと言えなくもない。


 ゴミに混じって肢体が露わになった。

 予想どおりねじ曲がっている。アピロよりひでぇ。

 しかし、ゴミ箱から出てきてもアコニトは眼を覚まさない。

 ぐにゃぐにゃの体でゴミの海を漂っている。まるでクラゲのようだ。


「どうしたんですか!」


 木村の先ほどの叫び声が聞こえたようで、ウィルがゴミ捨て場にやってきた。

 彼は捨てられたアコニトを見て、驚愕の表情を見せ、すぐに納得した。


「昨晩、食堂で酒を飲んでいましたからね……」


 酒を飲んで、おかわりを寄こせと酔ったアコニトが暴れ、近くにいたおっさんにしばかれた。

 ウィルが来るほどの叫び声をあげて、おっさんがここに来ないわけがない。

 木村が叫ぶ理由に心あたりがあったから来ないのだ。

 しばいたのは十中八九おっさんだ。


 そして、しばかれた後で、リン・リーが生ゴミ(アコニト)の置き場所を提供した。

 一晩放置され、木村がここに運び、今に繋がる。


「どうしようか?」

「大丈夫ですよ。アコニトさんなら」

「そうだね」


 これにて問題解決である。




 一眠りしてから昼になり、またしても王都にやってきた。


 今日はウィルと水の館に挑む。

 ウィルの次がフルゴウルだ。アコニトはゴミ捨て場で留守番している。


「それじゃあ、僕も行くね」


 木村の横に機械玉が浮いている。

 ケルピィである。城にいてもすることがないのでこっちに来た。

 メッセはメンバーとカウントされるが、ケルピィはカウントされないのでついてきているわけである。


 ケルピィは直接の戦力にはならないが、観察力と洞察力はずば抜けている。

 さらにブリッジに繋がっており、マッピングや情報アクセスもできるのでそちらに期待だ。



 昨日と同様に水の階段を上がって、水の屋敷に到着した。


 到着したのは良いのだが雰囲気が違う。

 昨日は玄関の前からだったが、今日はすでに屋敷の中だ。

 屋敷の中ではあるが、昨日の退場地点ではない。見たことがないところにいる。


「知らない部屋だ」

「リセットされたようだな」


 そういえば最初の説明文に書いて会った気がすると木村は思い出した。

 一日ごとにリセットされると書かれていただろうか。


 部屋の配置が変わるなら、リセットというよりシャッフルが正しいのではないか。

 逆に言えば、一日の中でなら部屋の順番は変わらないということか。

 運営なりに攻略がしやすいよう気遣った気配を感じる。

 次回があれば、毎回シャッフルされそうだ。


「キィムラァ。始まるぞ」


 おっさんが言うと、選択肢が現れる。

 右のゲージはまだ選択肢を選んでいないためか現れていない。


“シャワーを噴射”

“バスタブに浸かる”

“タオルを手に取る”


 選択肢を見てから部屋を見渡すとどうやら浴室のようだ。

 シャワーもバスタブも一つなので、温泉旅館で見たような集団が入るものではなく、個人用のものだとはわかる。

 一人でここまでの広さが必要なのかと首をひねるほどである。


 選択肢を吟味する。

 バスタブに浸かるはおそらくよろしくないことが生じる。溺死もあり得る。

 シャワーを噴射も嫌な予感しかしない。熱湯かシャワーの勢いが強すぎるのか。

 それにこれらを勝手に使うことは、マナー違反でphが上がる。用心棒が来てしまう。


 木村は“タオルを手に取る”を押した。

 これなら悪くてもマナー違反で済むだろう。


「キィムラァ。タオルだぞ」


 水である。

 バスタオルの形をした水を、おっさんが丁寧に折りたたんで渡してきた。


“バスタオル:水分をくまなく拭き取ろう。水属性攻撃を無効化する。”


 効果はすごい。

 水分を拭き取るというか、水を吸収しているのではないか。

 ここの全ての攻撃が無効化とまで都合が良くはならないだろう。


 ふと、木村は思い出した。

 前回の攻略の引継ぎで水属性攻撃アップのアイテムも持っている。

 ウィルに話して、水の魔法を使ってもらうことにした。


「使った感覚は同じですね」


 ちょうど廊下に出たところで魔物が出たので倒してもらう。

 感覚は同じようだが、威力は木村が素人目で見たところ上がっているように感じた。


「攻撃アップではなく、ダメージアップだったはずです。僕の感覚は通常ですが、魔物が受ける威力が大きくなっているだけかと」


 説明文を見直すと確かにダメージアップとあった。

 つまり、この効果は攻撃アップのバフではなく、水耐性ダウンのデバフということだろうか。

 ……どちらにせよ。水が有利になったことに変わりはない。


「あまり水は得意ではないんですが、ここまで強くなるならこちらを使っていったほうが良さそうですね」


 ウィルは火の魔法をよく使う。

 調整が一番簡単だとウィル本人が話していた。


 風は殺傷力に欠ける割に、広範囲での制御が面倒らしい。

 土は組成により細かい変更が必要で、地域差も大きいのでやはり面倒のようだ。

 水はつくり出すのが意外に難しく、さらに操作も大変だとか。凍らせるのも魔力の消費が多いらしい。


「そういえば、この前の結晶ボスで見せた新しい魔法はなんだったの? 石ころから紐が出てきたやつ」


 カクレガにアピロとボスの結晶が出たときに、ウィルが石ころを投げていた。

 石ころが紐になり、結晶の歪みバリアを越えてボスに巻き付き、倒すことができたのを木村は思い出す。


「あれですね。恥ずかしながら、まだ不完全です」

「そうなの?」

「はい。冥府の導き手の神術を見て、なるほどそういう使い方もあるのかと気づいたのでやっていたんです」


 冥府の導き手の神術とは、石ころを穴に投げて都市を再生させていたものだろう。

 すごい魔法であることは木村でもわかる。


「どういう魔法なの?」

「神術がどういったものかは肝心ではないんです。中身はシンプルな魔法の組み合わせなので。新しいのは、先にも言ったとおり神術の使い方なんですよ」

「……うん?」


 さっぱりわからない。

 そもそも魔法の欠片すら使えない人間が、使い方を変えたとか言われてもピンとこない。

 最初から何もわからないのだから。


「……今までは頭の中で、一つの魔法を構成してたんです」

「うん。詠唱の代わりでしょ?」

「はい」


 この話は前にも聞いた。

 ウィルが、この世界の一般的な魔法使いのように詠唱をしない理由の話だった。

 頭の中に魔法を使うための演算領域みたいなのがあって、その領域で他のヒトが詠唱で構築している魔法を構築するとか。

 この世界では稀にしか見ないので、かなりレアな力だとは木村もわかる。


「問題がありまして、一度に一つの神術しか使えないんです」


 それも聞いた。

 連発はできるが同時発動はほぼ不可能、と。

 ごく一部の例外――ルルイエや歪みに巻き込まれたシエイくらいしかできないとも。


「神術は、二つ合わせると強くなることは知られているんですが、合わせるのが難しいんです。神術の強度は個人差がありますし、同じ威力に調整しても内部の組み方が違いますからうまく複合しません」


 これも聞いた。複合術式だったか。

 重ね合わせとも言うとか。


「それなら別のところに演算領域を複数展開して、その中で神術を構成させて、後から時間差で発動させれば良い、というのが冥府の導き手がやったことですね」

「石の中に、魔法の演算領域を? しかも複数? できるのそんなこと?」

「僕も見ていて同じことを思いましたが、実際にできていたので真似てみたのです。……できましたね」


 木村もできたのは見た。

 プログラムみたいなものだろうか。

 コンソールから一行ずつコマンドを打つのをやめて、スクリプトに記入して実行した。

 しかも複数の並列実行だ。


「自分で術式を構成するので、複合が簡単にできます。自分の術式はよくわかっていますから。条件による分岐も可能ですね。ただ、構成に恐ろしく気を遣うのと、時間がかかるのはネックです」


 ボス戦のときも集中をして、しかも発動に時間がかかっていた。

 かなり難しいことは間違いないだろう。


「冥府の導き手がやった魔法の内容はなんだったの?」

「僕にわかったのは神術の使い方だけです。あの都市を元に戻した神術は、現状で神術で括られた範囲を超えています。神術ではない神術。僕の理解の範疇を遙かに超えていて、真似しようにもできません。教授ならあるいは……」


 冥府の導き手はどうやら魔法の格が違ったらしい。

 それでも使い方だけでも把握できたのは、ウィルの能力が高さを証明するものだろう。


「条件分岐はわりかし簡単に搭載できましたね。他の研究室でもやられていたので、論文も何度か読みました。ただ、複合術式は縁がないと思い、ほぼほぼ手を付けなかったのがまずかったです。石ころで実験はいろいろとしていますが、同じ術を重ねる単純複合による強化くらいしかできません。もっといろいろできるはずなんですが……」


 複合はいろいろと難しいくらいにしか木村はわからない。

 プログラムもあまりよくわかっていない木村には、条件分岐ができているだけでもすごいと思う。

 もしもウィルが現代にくれば、良いプログラマーになるんじゃないか。ウィザードだけに。


「キィムラァ。道が分かれるぞ」


 どうやら分岐点に来たようだ。


“二階に駆け上がる”

“右奥の道を突っ走る”

“左奥の道を慎重に進む”


 二階もあるらしい。

 確かに階段はあるし、上に魔物もいる。

 シャッフルされているので、二階も一階もさほど意味がなさそうだが、行ってみることにした。


「二階に上がるぞ」


 おっさんが走って二階に駆け上がる。

 木村とウィルは駆け上がるおっさんを黙って見ている。

 上がったおっさんの手招きに応じて、踏み外さないようにゆっくり階段を上がった。


「キィムラァ。階段は駆け上がるものじゃないぞ。マナーが良くないな。phが上がったぞ」

「えぇ……」


 駆け上がったのはおっさんなのに……。

 ゲージが上がったのは、視界端ですでに確認済みである。

 納得できないが文句を言っても仕方ない。


 二階を進んで行くと玄関があった。


「キィムラァ。どうするんだ?」


“玄関から入る”

“開いた窓を探す”

“チャイムをポチッとな”


 見覚えのある選択肢が出てきた。

 昨日は、初っぱなにあったから許容できた。

 しかしながら、二階の廊下の途中で玄関が出てきても困る。


 しかも開いた窓とか近くにない。

 玄関の両端は廊下の壁だ。


 昨日はチャイムだったので、今回は普通に“玄関から入る”を選んでみる。


 おっさんが扉についている水のドアハンドルに手をかけて引っ張る。

 ドアハンドルはバキッと音を立てて扉から取れた。


「離れているんだ」


 木村とウィルに手の平を見せつけ、距離を取らせる。

 その手の平を移動させ、扉にぺたりと付けた。


「――ふん」


 おっさんが、気合いの入っているのか入ってないのかわからない声を出すと、水の扉が飛んだ。

 扉は回転も傾きもせず、地面と垂直な状態を保ちながら、木村たちから離れていく。

 奥にいた赤い魔物数体を巻き込んでようやく扉は止まった。

 パタリと倒れて地面に吸い込まれていく。


「キィムラァ。訪問した際はチャイムを鳴らすべきだぞ。マナーが良くないな。phが上がったぞ。青の住人が倒されたことで、phが下がったぞ。おっ、“ドアハンドル”が手に入ったな」


 盛りだくさんだ。


 チャイムを鳴らしてないからマナー違反でphアップ、青の敵を倒してphダウン。

 魔物を倒した数が多かったからか相殺されてphは最終的に下がった。

 館が赤みを帯びてくる。


 ついでにおっさんが壊したドアハンドルも手に入ったらしい。

 扉は壊して良かったのだろうか?


“ドアハンドル:扉から取れたドアハンドル。硬い素材でできている。物理属性のダメージが大幅にアップ”


 硬い素材も何も水だろう。

 とりあえずウィルには関係のない効果だ。

 ゾルがいれば強くなったかもしれない。


 木村はバランス重視で考えていたが、この考えを改めつつあった。

 選択肢によってはダメージもかなり負う。それに物理属性のダメージアップもある。

 もしかすると攻撃偏重のゾルの方が、HPもあるのでこのイベントには向いているかもしれないと思い始めていた。


 進んでいきわかったことだが、無難な選択肢はダメージを負わないがアイテムも少ない。

 phの変動や魔物との戦闘が主となり、有用なアイテムが手に入らない。

 それでも先には進めるので、前回よりは奥に来たと思える。


「キィムラァ。用心棒の一人がこちらに歩いてくるぞ」


“戦う”

“逃げる”

“様子を見る”


 よく見る選択肢が出てきた。

 ここ最近は一日に数回ほどこの選択肢が出る。

 だいたい“様子を見る”にしていたのだが、どうやら用心棒との遭遇選択肢だったようだ。

 まさか地上で“戦う”を戦闘すると、地上まで降りてきたりするのだろうか。


 相手が一人なら勝てるのかもしれないが、今回は調査がメインなので“逃げる”を選ぶ。


「逃げるんだぞ。素早さが上がったな」


 おっさんが背を向けて走り出す。

 木村と、よくわかってないウィルも彼に付いていく。

 どうやら素早さが上がったようだが自覚できることはない。キャラだけだろう。


「あ、本当にハッピートリガーだね」

「キィムラァ。追いつかれたぞ。戦うんだ」


 ケルピィとおっさんが喋る。

 逃げるどころか、曲がり角一つも曲がる余裕がなかった。

 これは逃げさせる気がない。強制戦闘だ。元の用心棒なら逃げられるかもしれないが、歪んでいるため無理そうだ。


 戦闘が開始されたが、戦闘は一瞬であった。

 相性が悪すぎる。こちらも遠距離メインで、あちらも遠距離メイン。

 さらにスピードと手数が段違いであちらが上だ。ウィルの魔法がうさ耳に当たる前に、ウィルの体が穴だらけで、服が血みどろになった。

 銃声による耳鳴りが治るよりも前に、ウィルは倒れて消えてしまった。


 そこから先は昨日と同じ流れだ。

 入口に戻され、アイテムの選択をさせられる。

 氷はやめて、バスタオルかドアハンドルで迷い、ドアハンドルを選んで攻略を終えた。

 攻撃重視で選択したが、あるいは防御の方が重要かもしれない。

 用心棒の攻撃に堪えることがまず重要とも考えられる。


 次はフルゴウルで挑戦の予定だったが、おそらく彼女でも無理だろう。

 彼女からもやんわりと挑戦を拒否されてしまった。


 もっともだろう。

 あの用心棒があまりにも強すぎる。


 相性問題があったにせよ、一体でもあの強さだ。

 勝てる見込みがない。ph最大時の三体同時戦闘なんてもってのほかだ。

 討滅クエストⅡの強敵でも、あの三体を相手にすればやられることは充分に考えられる。

 逆に言えば、あの三体に勝てる実力がつけば、討滅クエストⅡは突破できるとも考えて良さそうだ。


 一方でキャラの強化を考えれば、スキルテーブルは素材要求が多くなかなか進めず、装備も落ち着いてきている。

 結晶もキャラ一体に一つ。ガチャを引いてキャラ重ねもできるがカクレガの部屋問題もある。


 討滅クエストⅡはキャラ四体で挑めるにせよ、強さの限界を感じ始めた。

 ソシャゲでもよくある状況だ。ある程度までの強さは一気にいけるのだが、その上にはなかなかいけない。


 顕著なゲームだとその仕切り線が課金と無課金の線引きにもなる。

 無課金でも、より時間を費やしたごくごく一部の廃人だけしか辿り着けない領域だったりする。



 木村も廃人と言えなくもないが、そこまで入れ込んでいない。

 異世界ではトロフィー効果が強いので、獲得を狙いたいところだが狙い撃ちができるわけでもない。

 やはりもっとイベントをやっていき、地道に強くなっていくしかなさそうである。



 ひとまず次はゾルで水の館に挑んでみることにした。

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