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チュートリアルおじさんと異世界巡り  作者: 雪夜小路
Ⅵ章.レベル51~60
72/138

72.ローグ「水の館 ph7.0」1

 ピヨヨ宰相との話は終わった。


 政治的な話をするのは良いが、素人でもわかるように言って欲しいと木村は思った。

 主語や目的語が抜けて、察しろみたいな発言はさっぱりわからない。

 フルゴウルが理解しているようなので彼女に任せた。


 木村でもわかるのは、「大人しくして」ということだ。

 たたでさえ王都中が迷宮化した空白の十日間騒動で、はちゃめちゃなのにこれ以上の混乱は困るということだろう。

 これは木村も理解できるので、しばらくはデイリー消化を主軸とすることにする。


 討滅クエストⅡも勝手に終わったので、王都外のヘンテコなデイリー建造物へ通う日々になるだろう。

 なお明日の朝だけは討滅クエストⅡが、今日と同様に敵が自滅するかを確認することになる。


 上手く自滅すればデイリーだけの日々だ。

 デイリーに挑むのはなんだかずいぶんと久々な気がする。


 城を出て、空を見上げれば水がぷかぷか浮いている。

 ゲームやアニメならまだしも、現実で水が空に浮かんでいる光景はなかなかに幻想的だ。

 光もぐにゃぐにゃになっているし、時折、日光が敵に当たり影となって地上に映る。


 気にはなるが、水の館(あれ)は放置と話をしたばかりだ。

 木村としてもローグライクはさほど好きじゃないので、今回は挑戦しないことにする。


「キィムラァ。水の館のチュートリアルを始めるぞ」

「……話、聞いてた?」

「まず、仲間を一人選ぶんだ」


 おっさんは、完全に話を聞かないチュートリアルモードである。

 木村は諦めた。フルゴウルやウィルも困った様子だが、きっと止められない。


「一人選ぶとどうなるの?」

「選んだ仲間と一緒に水の館を調査するんだ」

「あ、そう」


 木村は考える。

 魔物は間違いなくいる。すでに外から見えている。

 大きさはまちまちで強さはわからない。序盤はそこまで強くないだろう。

 巨大な魔物の姿も見えるので、生半可な戦力のキャラでは話にならない。主力メンバー級が必要だ。


 さらに攻撃に振りすぎても、防御に振りすぎていてもいけない。

 ゾルとボローは除外になるだろう。


「誰でも大丈夫かな」


 今のメンバーの誰かであれば、ピーキーすぎるのはいない。

 フルゴウル、モルモーはかなりバランスが良い。

 ウィルはやや攻撃に寄っているがまだいける。

 アコニトはまともな状態なら悪くない。


「選択の時間だぞ」


 周囲が薄暗くなり、選択肢が現れる。


“アコニト”

“ウィル”

“それ以外”


 三択だ。

 四人いるから四択にしてくれればいいのに……。

 上の二人が出てくるのはメンバーの加入順だろうか。


 とりあえず最初はウィルかフルゴウルで中を調査するのが順当だろう。

 歪みを取り込んだ影響がどう出てくるかわからない。


「もぉおああああああ」


 ウィルを選択しようとしたところで、低い大きな音が聞こえて驚き指が動いた。

 指は上に移動してアコニトをタッチしてしまう。


「ほおおおお!」


 時間の進みが戻り、アコニトが大声で叫んでいる。

 眼を覚ましたらしい。そのせいで彼女を選んでしまったが、キャンセルはできるのだろうか。


「……女狐で行くんだな。よし、階段を上がるんだぞ」


 キャンセルはできない。

 おっさんがたいへん不満な顔つきで、アコニトを見たので木村はそう判断した。


 階段がどこにあるんだと見ると、目の前に水の段差が現れた。

 階段状にはなっているが、これは足を突っ込んでも大丈夫なのだろうか。

 濡れたり、すり抜けて落ちたりしないのか。


 おっさんが水の階段を歩いてみせる。

 水がまるで透明な石のように硬くなっているように見える。

 木村も真似て水の段差に足を出すと、弾力があり、体重を乗せても水に足が入らない。


「面白いですね。液体の構成変化でしょうか」

「しかも、対象を限定しているね」


 フルゴウルが段差に足を付けると、段差は普通の水のようにちゃぷちゃぷと表面を揺らす。

 どうやら木村とおっさん、それに選択したキャラしか上がれないらしい。


「ちょっと行ってみる」

「下から観察しておきます」


 観察されながら攻略するのは緊張するからやめて欲しい。

 しかし、情報が欲しいのも事実。やはりキャラはウィルが良かった。

 アコニトはおっさんに足首をつかまれて、水の階段を引きずられている。

 頭をガンガンと段差に打ちつけているが、到着するまでに死なないか不安になった。



 長い階段を上りきると、水の家があった。


 かなりの豪邸だ。デザインは異世界と言うより地球のデザインに近い。

 ガラスっぽい窓のデザインに、チャイムらしきものまで玄関の脇に付いている。


「ほんとに水の館だね」

「お、始まったぞ」


 周囲が暗くなった。

 キャラ選択と同様に選択肢が現れる。


“玄関から入る”

“開いた窓を探す”

“チャイムをポチッとな”


 二番目の選択肢が気になるところだが、三番目も気になる。

 とりあえず礼儀としてチャイムを押すにしてみた。


「チャイムを押すぞ」


 おっさんがチャイムを押した。しかも連打する。ヴィーという振動音が何度も響く。

 しばらくすると、赤い魔物が玄関の扉の前までやってくる。


 ゴブリンのような小人のような魔物だ。

 鳴り響くチャイムにイライラしているのが、水の扉越しでもわかった。


 魔物が背伸びをして扉を開けた。

 開けるとすぐに魔物がおっさんへ叫び散らかす。ぶち切れてる。

 そりゃあれだけチャイムを鳴らせば怒るってもんだろう。


「戦闘だぞ。しっかり戦うんだ」

「なんだぁ?」


 気づけばアコニトが正常に戻っている。

 そして赤ゴブリンが、おっさんに襲いかかった、が、なぜかおっさんの位置にアコニトがいた。


「え?」


 アコニトの位置を見るとおっさんが普通に立っていた。

 にっこり笑って木村たちを見ている。

 手品だろうか?


 ゴブリンも驚き、アコニトも驚いている。もちろん木村もだ。

 ゴブリンは勢いのままアコニトに襲いかかるが、彼女が口から吐いた毒を浴びて瞬殺される。

 倒したゴブリンはアイテムを落とさない。光にもならず、赤い液体となって地面の水に溶け込んでいく。


 突如、視界の右端に縦長のゲージが現れた。

 ゲージの真ん中にあったバーの高さが下がっていく。

 さらに水の館全体が、うっすらと赤みを帯びた気もする。


「赤の住人が倒されたことで、phが下がったぞ」


 木村は意味を理解した。

 赤の魔物を倒すと水が赤くなる。

 phが下がるとおっさんは言った。


 小学校か中学校でも習った気がする。

 リトマス紙の色の変化と同じだろう。

 赤が酸性で、青がアルカリ性だったはず。


 行動や倒す魔物によって館にある水の酸性度合い、あるいはアルカリ性度合いが変わってくるのだろう。

 これをなるべく偏重させずにクリアしましょうというイベントらしい。

 今は赤の魔物を倒し、phが下がったので酸性になったということだ。実際に水が酸性なのかはわからない。

 ただ、赤色で雰囲気を出しているだけの気もする。


「どこだここはぁ? 儂はまだ幻覚を見ておるのかぁ?」


 アコニトはちゃんと二足歩行しており、呂律もまともで涎も垂らしていない。

 クスリが抜けている。これはイベントによるものだろうか。

 開始と同時に状態が正常化される、と。


「イベント中だよ。この水の館の奥まで行かないといけないらしい」

「はぁぁあああぁぁ。坊やは面倒ばかり巻き込まれるなぁ。……竜は出てこんかったか?」

「竜らしき何かは出たけど、この水に巻き込まれて死んじゃった」

「まぬけな奴だぁ」


 アコニトはククッと笑う。

 ……フラグが立った、と木村は思った。

 こういうことを言うと、だいたい間抜けな死に方をするのがアコニトだ。


 おっさんとアコニトを両脇に木村は水の館の内部に踏み込む。

 この三人で行動していると、初期のころを思い出して少し懐かしく、そして嬉しくなる。


 開きっぱなしの玄関扉を潜るとエントランスである。

 道は三方向だ。景色が暗くなる。


“右に進む”

“まっすぐ進む”

“左に進む”


 普通の選択肢だ。木村は景色を見る。

 何も情報がなければランダム三択だが、透けてるので奥の様子が見える。

 右は敵がうじゃうじゃいる。左はいない。奥には大きな魔物がいる。


 最初の魔物は弱かった。

 敵の力自体はそこまで強くないかもしれない。

 右やまっすぐでも良いのだが、より多くの情報を得るためひとまず左にしてみた。


「よし、左に進むんだな」

「儂は右がいいぞぉ。雑魚を片付けておくべきではないかぁ」

「左だと言っただろう」

「んおぅっ」


 右を向いていたアコニトの首を、おっさんがぐるんと回して左を向かせた。

 なお回したのは首だけなので、首の可動角度を大きく超えている。

 変な音もしたし、声も出ていた。


 体が遅れて左を向くが、首は元に戻らず入口の方を見ている。

 もはや気持ち悪い。


「治してあげて」

「……ふん」

「アギャアアア!」


 ゴキッと鈍い音がした。

 なぜ曲げるときと治すときで音が違うのか。

 しかも、アコニトがめっちゃ痛がっている。水の床でもがき苦しむ。



 落ち着いてから木村たちは左の扉を開けた。

 外からでもわかっていたが魔物はいない。


 向かい合ったソファーと、その間に低めの机がある。

 応接室かもしれない。


“手前のソファーに腰掛ける”

“奥のソファーで立ち上がる”

“何もせずに進む”


 ……二つ目の選択肢がすごい気になる。

 木村はあまり悩むことなく、二つ目の選択肢を押した。


 おっさんが歩いて、奥のソファーの上に立った。

 水のソファーの上に仁王立ちし、木村とアコニトを見下ろす。

 圧倒的強者の風格があった。ソファーの上に立っているだけなのに。


「頭が高いぞぉ、中年風情がぁ」

「お前はそちらに立つんだ」


 おっさんが反対側のソファーを指さした。アコニトが、すぐに指定されたソファーに立つ。

 二人の視線が揃った。低いテーブルを間に挟み二人が互いを睨んでいる。


 木村には意味がわからない。

 応接室のソファーにおっさんとアコニトが立っている。

 状況がさっぱりだ。ついていけない。先に動いたのはおっさんだった。


「マナー違反!」

「ふごっぉおお!」

「えぇ……」


 おっさんがソファーから飛び、アコニトに膝蹴りを食らわせる。

 アコニトは壁まで飛び、水のソファーは倒れてしまう。

 あまりの理不尽さにさすがの木村も呆れた。


「キィムラァ。ソファーは座るものだぞ。マナーが良くないな。phが上がったぞ。おっ、“ソファーの部品”も手に入ったな」


 おっさんの言葉どおり、右のゲージのバーが上に大きく動く。

 真ん中を越えて上に行き、水がやや青みを帯びた。


 おっさんが手に水の欠片を持っている。

 ソファーの部品だと言うが、どの部品かわからないので水の欠片としか木村に思えない。


「これ、どうなるの?」

「よく見てみるんだ」


 言われたとおり、水の欠片を見ると説明が出てきた。


“ソファーの部品:あなたが壊したソファーの一部。phの変動が大きくなる。”


 変な効果があるようだ。

 説明文からイベント専用のアイテムだということがわかる。

 あなたが壊したとあるが、壊したのはおっさんであり、木村ではないのであなた呼びはやめて欲しい。



 さらに進むと厨房があった。

 とても広い。カクレガの厨房の三倍近くはある。

 ここまで広い厨房がなぜ必要なのかが木村にはよくわからない。


“コンロに火を付ける”

“冷蔵庫を開ける”

“何もせずに進む”


 コンロに火を付けるは、どうなるかが目に見えている。

 おそらくアコニトが火だるまになるだろう。

 さすがにそれは可哀相だ。


 冷蔵庫ならそこまでひどいことにもならないだろう。

 中が透けて見えているので、中にアイテムがないことも確認できるがどうなるかはわからない。


 木村は“冷蔵庫を開ける”を押した。

 おっさんが冷蔵庫を開くとひんやりとした空気が肌を襲う。


「キィムラァ。人の家の冷蔵庫を勝手に開けるものではないぞ。マナーが良くないな。phが上がったぞ」


 右のゲージがさらに上に伸びて行く。

 水の色がはっきり青みを帯びたとわかる。


 進もうとするが、アコニトが止まっている。

 声をかけても動く気配がない。


「アコニト……、どうし、冷たっ!」


 瞬きもしておらず、不気味になって木村は彼女の腕を触ると、痛みを覚えるほどの冷たさだった。

 指が腕にくっつき、ペリと音がして指が腕からようやく離れる。

 よく見ると彼女の全身に霜がおりている。


「女狐。凍ってる場合じゃないぞ」


 おっさんがアコニトを珍しく優しく小突いた。


「ふあっ! ふぃ! ……ふぁ?」


 彼女の全身から薄氷がバラリと落ちて、息を吹き返した。

 何が起きているのかわからずぼんやりしている。

 意識がはっきりすると、今度は震えだした。


「なんだぁ……、めちゃんこ寒いぞぉ」

「だろうね」


 凍ってたくらいだ。

 寒いで済むのがすごいだろう。


 アコニトは強くなった。強くなったのがまずい。

 以前なら一撃二撃で死んでいたが、今は堪えるようになり中途半端な攻撃では死なない。

 おそらく今の氷漬けも初期の頃なら即死だっただろう。

 さらにおっさんから鍛えられてタフさが増している。


「キィムラァ。“氷”を手に入れたぞ」


 おっさんが差し出してくるのは水の塊である。

 触ると確かに冷たいが、氷とは何かが違う。なんだろう。透明度か?

 でも、透明度は水から不純物を取り除けば透き通るとも聞く。やはりこれは氷なのだろうか。

 とりあえず水か氷かの悩みは捨てて説明文を読む。


“氷:冷蔵庫で溶けかけていた水でできた氷。冷たい。水属性のダメージが大幅にアップ。”


 前半の説明はつっこみどころしかないので無視する。

 後半だけ見ると良い効果だ。ただし、アコニトに水属性の技は……。

 ウィルの魔法なら大幅に強くなったかもしれない。


「……あれ? 狐の嫁入りって水属性?」

「毒属性だな」


 ダメだった。

 とりあえず持っておくことにする。



 その後もマナー違反が重なり、ゲージが最大値に達したときに問題が起きた。


「キィムラァ。マナー違反が過ぎたな。用心棒がやってくるぞ」

「あらら」


 どうやら強敵が登場するようだ。

 廊下の奥から無色っぽい魔物がこちらに向かってきている。

 どうやら用心棒は人型で、他の魔物と違い赤や青といった色はなく透明に近いようである。


「あぁ? なぁんでこいつらがおるんだぁ?」

「知ってるの?」


 アコニトが用心棒を見て声をあげた。

 確かに三人の用心棒は魔物ではなく人の姿をとっている。


「地下で会ったカゲルギ世界の奴らだぁ。ツキトジんとこの小僧もおるなぁ」


 木村は歪みの影響だと考えた。

 二人は兎っぽい耳や猫っぽい耳をした獣人の形をしている。

 もう一人は何だろうか、ぐるぐると大きな角がある。山羊だろうか。まるで悪魔のようだ。


「女狐。油断するんじゃない。――強いぞ」

「あぁ? こいつらの力はすでに見ておるわぁ。負ける道理がないぞぉ」


 アコニトはおっさんを鼻で笑っている。

 木村は今度こそ完全にアコニトの死亡フラグが立ったと感じた。

 しかもおっさんが強いと言った。このおっさんは戦力分析に関しては正直に答える。


 間違いなくこの用心棒三体は強いのだろう。

 そもそもなぜアコニトは地下で見た人間バージョンと、イベントで出る水の魔物バージョンを同一視できるのだろうか。


「おぉ、かかってこいやぁ。トレジャーハンターごときが儂に勝てると……お?」


 アコニトを後ろから見ていた木村の顔の横を何かが通り過ぎた。

 同時に破裂音が数回響き、木村はその音に思わず体をすくませてしまう。


 木村が体勢を戻すと、アコニトの体がふらつくところだった。

 彼女の頭や体には数カ所の穴が空いており、そこから血の代わりに煙が出てくる。


 用心棒の一体――兎の耳をした者が銃を構えてアコニトに向けていた。

 木村は幸いと言うべきか銃と縁がない生活だったので、今の音が銃の音と理解するのに時間がかかった。


 さらに別の一体――猫の耳をした者が、まさに倒れゆくアコニトに近づいた。

 近づくと言うより、もはや高速移動だった。残像が見える速さでアコニトの側に立ち、すでに水の刀は振られていた。

 アコニトが胴体部分で分かたれて、上半身だけがひどく傾いて倒れる。


 木村は変な音を聞いた。倒れゆく二ブロックのアコニトが縦長に縮んでいく。

 まるで両側から見えない壁に圧し潰されているように縦に長くなり横は細くなった。

 最終的にアコニトだったものは平面になった。空中で紙芝居の絵のような状態で浮かんでいる。

 やがて魔法の効果が切れたのか平面は消え去った。


 ……アコニトは死んだ。


「キィムラァ。今回の挑戦はここまでだぞ。入口まで戻るぞ」

「……うん」


 アコニトの久々な壮絶な死を見て、放心していた正気がようやく木村に戻ってきた。

 用心棒は、木村たちを見つめているが襲いかかってくる様子はない。


 歩いて帰るのかと思ったが、足下の床が勝手に動いていく。

 水の壁が、動く木村を避けるように開き、木村はスタート地点まで戻った。


「キィムラァ。五地点以上進めたな。アイテムを一つだけ次回の探索に持ち越せるぞ」


“ソファーの部品”

“氷”

“それ以外”


 また選択肢が出る。

 どうやら完全なリセットではないようだ。

 これはありがたい。“氷”を選び、初回の探索を終えた。


 一度、下に降りてウィルやフルゴウルと話す必要がある。

 帰りはまた階段かと思いきや、水の屋敷と同様に足下の床が動いて地上まで降ろしてくれた。

 上がるときもこれにして欲しいと木村は思う。


「どうでしたか?」

「……うーん。悔しいけど案外おもしろいかもしれない」


 アコニトには悪いのだが、思ったよりもずっと楽しかった。

 ゲームだと繰り返し作業と運ゲーになりがちで疲れるが、現実でやると何が起こるかわからないので新鮮に楽しめる。


 あるいは初回だからかもしれない。

 何度もやれば同じく飽きてくるのは間違いないだろう。

 少なくともあと数回は楽しめそうである。


「いえ、おもしろいかどうかではなく、歪みの影響はありそうかを尋ねています。王都に影響のあることはどうでしょう?」

「あ、そっち? そりゃそうか。――歪みの影響らしきものはあったよ。王都への影響は何とも言えないかな」


 木村は水の館で見たことや、館の仕組みについて感じたこと考えたことを正直に話した。

 二人はphという科学的な部分はさほど理解してもらえなかったが、これは木村も完全に理解しているわけではないのでなんとなくでわかってもらうことにした。


 やはり用心棒として出てきた三人のことが、歪みとの兼ね合いもあり話の中心になる。

 彼ら三人は歪んだ迷宮の中ボスとして配置されていた。

 倒してアイテムになり復活はしなかった。


 中ボスが出てくるならあと一人いたはずだ。

 シエイという名の女性だ。メッセやケルピィも彼女が帰らず悲しんでいた。

 どうして彼女は出てこないのだろうか。カゲルギ=テイルズのキャラではなく、異世界の住人だからか。


 答えは出ず、ひとまずカクレガに戻ることになった。


 イベントが終わったのにやることが多い。

 今日中にデイリー消化もしないともったいない。

 さらに消化が終わったら、ケルピィに水の館で見たことを伝えておこう。

 他にもキャラの強化や武器の強化もできそうだ。



 こうしてイベント盛りだくさんの初日が過ぎていった。

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