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チュートリアルおじさんと異世界巡り  作者: 雪夜小路
Ⅱ章.レベル11~20
18/138

18.召喚者スキル

 転移がおこなわれたせいか、カクレガは大きな揺れに襲われた。


「キィムラァ。どうやら転移は成功したようだぞ」


 おっさんが転移の成功を知らせてくれる。


「時間も進んでしまったようだな。半日近く経過している」


 感覚としては一瞬だったが、どうやら時間をかけて移動したらしい。

 飛行機のようなものだろうか。


「今の俺達はここにいるようだな」


 おっさんが地図の左上付近を指で示した。

 真ん中右付近だったので、大きく移動していることがわかる。


「パーンライゼ区域」


 地図にはそう表示されている。

 どんなところなのかはさっぱりわからない。


 外に出てみるかと、木村は意識を地図から外した。

 隣にいたウィルが地図を凝視している。


 木村も地図に視線を戻し、彼が見つめている地点を見た。

 転移前のグランツ神聖国と古遺跡の辺りだ。


「え……」


 木村も思わず声が出てしまった。

 古遺跡の扉に×が付けられている。これはまだわかる。

 ただ、グランツ神聖国にも大きく×印が付いていた。学園だけでなく国全体が×だ。


「何が起きたの?」


 木村の疑問には誰も答えることができない。

 沈黙の後、おっさんが口を開いた。


「キィムラァ、召喚者レベルの上限が解放されたぞ。召喚者スキルも手に入れたな。さっそく見てみるんだ」


 グランツ神聖国とか、もはやどうでも良いかの如く、おっさんが嬉々として報告してくる。

 やや呆れつつも目を瞑り、開き直すと「召喚者レベル」という項目があるので選択してみる。


「レベルが11になってる」


 表示されているレベルは11。ゲージはゼロだ。

 今までは10だったのだろう。召喚者レベルの存在に驚きはない。

 むしろやはりあったのかという印象だ。今まで出てこなかったのが不思議なくらいであった。


 多くのソシャゲではプレイヤーレベルがある。

 レベルを上げれば、戦闘をおこなうためのスタミナや燃料の最大値が上がる。

 また、キャラのレベル上限も、プレイヤーの最大レベルに制限されるものもあった。

 さらに言えば、コンテンツの制限もプレイヤーレベルに関わるものがある。


 キャラのステータスに関しては、スキルテーブルがあるが、もしかするとキャラのレベルも見えないだけで設定されているかもしれないと木村は考えた。

 仮にキャラにもレベルがあるとして、スキルテーブルが追加で解放されるのか、単純にステータスがアップしていくのかは現時点ではわからない。


 召喚者についての情報に目を通す。

 召喚者スキルの欄に、一つだけスキルが浮かび上がっている。

 これもそれなりに見られる。一度の戦闘に一回だけ使えるとかそういうやつだ。

 最初は攻撃力や防御力のアップ、回復といったものが多い。直接、攻撃するスキルもある。

 レベルが上がるにつれ、ドロップ率のアップや、効果の上がり幅が増加とかが追加されることが多かった。


“自爆”


 スキル名はただ二文字。


「じ、自爆?!」


 浮かび上がるスキル名は「自爆」、あまりのスキル名に木村は声をうわずらせる。

 名前からして物騒なスキルだ。最初のスキルとしてこんなのはまずない。


「お、自爆か。良いスキルを手に入れたな。戦略が広がるぞ」


 おっさんは朗らかである。

 朗らかに言って良い台詞ではないだろうと木村は思う。


 効果を見てみる。

“☆3以上の仲間一人を自爆させ敵味方全体に大ダメージ。ダメージはキャラの性能に依存。自爆させたキャラの好感度はやや下がる”


 名前通りと言えば名前通りだ。

 なかなかピーキーなスキルだと木村は考えた。

 使えるかどうかはダメージしだいだろう。さっそく威力のほどを試してみたい。


「遺跡にいたはずだがなぁ。なぁぜ儂はここにおるんだぁ? それに揺れたようだがぁ、何かあったのかぁ?」


 奥の扉が開き、アコニトが現れた。

 最後に見たのが、首無しからの全身消滅だったので少しドキリとした。

 今はピンピンしている。どうやら自分がやられた時の記憶はないようである。幸せだ。

 しかし、これからも幸せかどうかはわからない。


「場所を移動したんだ。それよりアコニト。ちょっとクエストに付き合ってよ。新しいスキルを試してみたいんだ」

「はぁぁあああ、めんどうだぁあああ。まぁ、外でなら葉っぱも吸えるから良いかぁ」


 外でも吸って欲しくないが、試すスキルを考えると目を瞑らざるを得ない木村である。

 とてつもなく面倒そうではあるが、ちゃっかり付いてきた。



 転移したとは聞いたが、本当に外の景色が一変している。


 土っぽい景色だったのが、緑色に溢れる景色となった。

 周囲に丘や山も見えず、かなり平坦な場所が周囲に広がっている。


 一つだけ例外があった。


「試練の塔はどこでも生えてくるんだね」

「どこにいても挑めるようになっているぞ」


 前向きな回答が返ってきた。

 そういう回答が欲しかったのでは無論ない。


「ここがパーンライゼ区域。本当に本で読んだような景色ですね」


 一緒に外に出てきていたウィルが呟いた。

 どうやら本でここのことを知っているらしい。


「どういうところと書いてあったの?」

「平野がどこまでも広がる地域とは聞いています」

「住みやすそうなところだ」

「人はほとんどいないはずです」

「そうなの?」


 聞き返しはしたが、見た目からしてそうかもしれない。

 平野が広がっているのに人の気配がまったくない。道という道すらない状態だ。


 アコニトは塔や場所のことなど気にせず煙管をふかしている。

 最近は周囲を気にかける心遣いを覚えたようで、風下に移動してから吸っている。

 かなり良い葉っぱを使っているんだろう。顔のとろけ方と、こうなるまでの早さがまるで違う。

 安いやつだとこうはならない。酔っ払いみたいになり、呂律も回らなくなり、普通にラリる。



 塔に入り、敵が出てきて木村はすぐに異変に気づいた。


「キィムラァ、気づいたか?」

「うん。ここは一階じゃない」


 出てくる敵が違っている。

 今まで試練の塔に挑むときは、必ず一階からで上るのが億劫だった。


「改善されてる」


 ここは前回クリアした最終地点だ。

 この階の敵は倒せたが、次の階で倒せずギブアップしていた。

 ガチャのアップデートに加えて、この塔までもが改善されている。

 最初こそやらかしていたが、もしかしてここの運営はなかなか優秀じゃないかと木村は思い始めている。


 もちろんそんなことはない。

 最初にひどすぎる状態だと、それなりの状態になっただけでもよく見えるという心理効果である。

 現に一階層からこの階までの報酬が得られなくなっているので、アップデート必須の状態だ。


 アコニトが葉っぱでおかしくなっているが、なんとかこの階の敵を倒すことができた。

 制限時間があったはずだが、かなりギリギリだろう。

 ウィルの力が大きいと言わざるを得ない。



 次の階層に進み、アコニトがもうダメダメだったが、なんとかスキルを使った。

 おっさんに向かって毒霧を吐いたのだが、さすがの彼も試練の棟内部では彼女に反撃を加えなかった。

 最後までおっさんが無言だったのが、かなり怖いと木村は感じている。

 カクレガに戻ったら膝蹴りはありえるだろう。


 毒霧が周囲に広がり、モンスターを襲う。

 この塔の敵は耐久力が高い。時間制限内での撃破を狙うクエストなのでそういう特徴だろう。

 逆に言えば攻撃はそれほどでもないので、ボローの挑発が全員に効き、彼一人だけでもなんとか耐えることはできる。


「残り30秒だ」


 おっさんが残り時間を知らせる。

 ウィルもアコニトの毒を防ぐための魔法にリソースを割かれるようで、攻撃魔法が微妙である。

 それでも相手の弱点属性を探って、攻撃をするあたりは優秀だ。


「20秒」


 おっさんのカウントが減っていく。

 残り20秒を切ったにも関わらず、敵三体は一体も倒すことができていない。前回と同じだ。


「見るのだぁ! 三匹のカメが! 星の基地をめがけて疾走してるぞぉ! 革命の時は近い! 同士諸君! 世界に滅亡の光あれ! 敬礼!」


 アコニトは完全に使い物にならない。どこかのSF世界を巡っている。


「キィムラァ、召喚者スキルを使わないのか? あいつに使うべきだぞ。なぁに、あのトリップの仕方では記憶には残らない。遠慮することなんかないんだぞ」


 さすがに可哀相だからやめようかな、と逡巡していたが薄れつつある。

 おっさんも、声音はいつもどおりだが、アコニトを処理したくてうずうずしている気配をひしひしと感じさせる。


「……やるか」

「よく決意したな。俺はお前さんの選択を尊重するぞ。使い方はわかるか? 戦闘コマンドから使いたい召喚者スキルを選択するんだぞ」


 意識をすれば“戦闘コマンド”という文字が浮かんでくる。

 文字を選択すると、召喚者スキル以外にもキャラの行動やアイテム利用などもここで選べるようになっていた。


 ひとまず今は出てきたスキルへ進み、“自爆”をさらに選択。

 キャラを選べと言わんばかりに周囲の時が緩やかになり、選べるキャラが白く目立ち表示される。

 瞳孔を完全開放し、泡を吹きながら彼方を眺めていたアコニトを意識する。


「よっし! 行くぞ! 飛ぶぞ! 儂も星の基地に一緒に行くのじゃ! ふぅぅぅっ!」


 久々に見た四足歩行モードで、突如、アコニトはボローへと走って行く。

 どうやら自爆モードに入ったらしい。あるいはただトンでいるだけなのかもしれない。


「ボロー。ウィルを守ってあげて」


 伝令が通じたようで、ボローとアコニトがすれ違うように入れ替わる。

 敵味方にダメージと書いてあったので、ウィルがやられないようにしておく。


 木村の前にはおっさんが動いてくるので、彼が防いでくれるのだろう。


 敵三体の対象がボローからアコニトに移った。

 アコニトは敵の脅威など気にせず、どんどん進撃していく。


 アコニトの体が淡く光る。

 彼女の体の各部が蜂に刺されたかのようにボコボコと膨らんでいく。


「きひひひひいひぃ! うっ、があっ、いぃ、ぎゃ!」


 痛みすらも別の感覚に変わっているようだ。

 元からおかしいアコニトの様子が、さらにおかしくなっている。


 そして、おっさんがそこから先の景色を遮った。

 木村はあまりの光に目を閉じた。音もよく聞こえなくなっている。


 次に視界が映ると、地面や壁は真っ黒であった。

 木村とウィルが立っているところだけが、おっさんとボローに遮られ元の色だ。


 敵三体とアコニトが消え、宝箱が出現している。

 どれだけのダメージが出たのかが正確にはわからないが、少なくとも正攻法では倒せない敵も倒せることがわかった。


 ただ、こちらのダメージも大きい。

 ボローですらボロボロになり、戦闘の継続は難しそうだ。

 もしかしたら防御値を一部無視してダメージを与えているのかもしれない。


 次の階層に進まず、試練の塔を出る。



 召喚者スキルの使いどころは限られるだろう。


 デイリークエストの強敵か、よほどやばい状況のときでしか使えなさそうだ。

 街中といった人の多いところでも使うことは憚られる。



 召喚者スキルの力を確認できたので木村たちはカクレガに戻った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自爆の文字を見た瞬間察することができるアコニトさんはしっかりキャラが立ってますね
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