vs従弟(sideオーガスト)
さいきん、お父さまとお母さまがよくケンカしている。ちょっと前まではなかよしだった。ただ、なぜかおじさまがよくあそびに来ていた。お父さまがおしごとでいない時にお母さまとよくお話をする。ぼくはおじさまとお母さまがお話をしている間は、にわであそぶようにおじさまとお母さまに言われているんだ。おじさまとお母さまのお話が終わると、いつもお母さまは具合が悪くなってベッドから出られなくなる。お母さまは体が弱いっておじさまが言ってた。なんでお父さまじゃなくておじさまがしってるんだろう。お父さまとお母さまがお話していてもお母さまは具合が悪くないのに。
ベッドから出られなくなるお母さまのかわりにおじさまがいつもあそんでくれる。でもぼくはおじさまがすきじゃない。だって、お父さまに「おまえはおろかだから、おれの言うことを聞いていれば良い」って言ったんだ。おろかって言うことばが何だか悪いことばに聞こえて。ぼくはその時からおじさまがすきじゃない。おじさまの子のメイとジューンには、1年に1回会う。すきでもきらいでもない。でも、おばさまはぼくがきらいみたいでぼくのかおを見るとおこったかおになるんだ。でもなぜかなきそうなかおにもなる。なんでだろう。
お父さまとお母さまのケンカのりゆうは分からないけど、ある日、おじさまがやって来て、ぼくに「今日からおじさまの子になるんだ」って言われた。ぼくは「お父さまとお母さまの子です。いやです」って言ったのに、おじさまは「お父さまとお母さまが良いよって言った」と言う。そんなのウソだって思ったのに、お父さまとお母さまがかなしそうにぼくを見ていた。お父さまは、おばさまみたいにおこっているかおとなきそうなかおをしていた。なんでだろう。
夜、おじさまの家に来て、次の日の朝、おきたらお父さまとお母さまの家に帰ろうとしたけれど、おじさまの家は広いからまよった。おじさまの家のにわにいて、メイとジューンがいた。メイとジューンに「今日からおじさまの子」と言われたことを話したら、2人ともふしぎそうなかおだった。2人ともしらないんだと思う。
すこししてからジューンがお父さまとお母さまがなかなおりするのかは、2人がきめること、と言った。ぼくがなかなおりしてほしいって言ってもなかなおり出来るか分からないってことだ。ぼくはかなしかったけど、ジューンがぼくに、メイとジューンとなかよくあそぶのが良いと思うって言うから、ぼくはいつも2人となかよくあそぶことにした。
それからメイがジューンとぼくにおべんきょうをおしえてくれるようになって。ぼくは本をよめるようになった。お父さまとお母さまに話したら、2人ともほめてくれるかな。
「本がよめるって言ったらお父さまとお母さまはほめてくれるかな」
ぼくはメイとジューンに聞いた。メイは「きっとよろこんでくれるよ」って言ったけど、ジューンは「ほめてくれるか分からないけど、よめれば大人になってこまらないよ」って言う。ジューンの言うことは、むずかしいんだ。
「ほめてもらいたいなぁ」
「オーガストは、自分のお父さまとお母さまにほめてもらいたいかもしれないけど、それよりも前にわたしのお父さまがほめると思うよ」
ぼくのことばにジューンが言う。
「おじさま?」
もしかして、メイとジューンはいつもおじさまにほめられているのかな。いいなぁ。
「だってオーガストは、お父さまが自分の子にするって言ったんでしょ? だったらほめるんじゃない?」
お父さまとお母さまにほめてもらいたいけど、おじさまにほめてもらえるのもうれしいかな。ぼくがそう言う前に、メイがへんなかおをした。
「ジューン。父上がほめるわけないだろう。ぼくとジューンのことを一回もほめてくれたことがないんだよ?」
「それは、わたしとお兄さまのことをすきじゃないからでしょう。だって、お父さまは、わたしとお兄さまとお母さまがいるこの家より、おじさまとおばさまとオーガストの家に行くことが多いもの」
ぼくは、ビックリした。メイとジューンはおじさまに会える日がすくなくて、ぼくのほうがおじさまに会う日が多いらしい。
「だから、オーガストはほめられるってこと?」
メイがジューンに聞いた。ジューンは「うん」ってうなずく。
「だって、わたしとお兄さまよりオーガストのほうがすきだから、会うんでしょう? だからわたしとお兄さまはほめられなくても、オーガストはほめられると思うよ」
ジューンは、ほめられたいとは思っていないのか、かおがかわらないけど、メイはほめられたいのか、ジューンのことばにぼくをおこったように見てきた。ぼくはどうしていいか分からなくてかおを下にむける。
「お兄さま。オーガストにおこっちゃダメ。オーガストが悪いんじゃなくて、悪いのはお父さまだよ。だってお父さまがわたしとお兄さまをきらいなんだから。オーガストは何もしてないんだよ」
「だけど、ぼくとジューンはほめられないのに、オーガストはほめられるのはズルイ」
「うん。でも、それはオーガストじゃなくてお父さまに言うことだよ。お父さまは聞かないと思うけど。お父さまはお父さまのしあわせしか考えてない。わたしとお兄さまとお母さまのしあわせなんて考えてないんだよ。だから、お父さまに言ってそれで終わりにしたほうがいいよ。でも、今のわたしとお兄さまじゃ聞いてくれない。だから、お兄さまが学園に入って、おべんきょうで1番になるの。そうすれば、お父さまはきっと聞くよ」
「1番になったら?」
「だってお父さまって、自分が1番だもの。だから子どものお兄さまが1番になるのもうれしいって思うよ」
「分かった。ぼく、学園にいったら1番になるよ」
「オーガストは、ずっとうちの子でいたいならオーガストも学園に入って1番になるのが良いけど、もし、おじさまとおばさまの家に帰りたいなら、1番にならないのが良いよ」
「えっ。1番にならないとお父さまとお母さまのところに帰れるの?」
「うーん。分からない。でも。お父さまは、1番が大すきだから。お兄さまが1番になれば、お兄さまのお話を聞いてくれると思う。でもオーガストが1番じゃなければ?」
「ぼくの話を聞かない。でも、ぼくのこともすきじゃなくなる?」
「そう。そうしたらうちじゃなくて、おじさまとおばさまの家に帰れることもあるかもしれない」
「分かった! 本当はすぐに帰りたいけど、おじさまから家には帰れないって言われていたんだ! でも、学園にいって、おべんきょうで1番じゃなければ家に帰れるなら、ぼくは2番になるよ!」
「2番じゃすぐに1番になれるって思って、お父さまは帰してくれないよ。だからオーガストは、10番より後ろになるくらいが良いよ。お兄さまに10番より後ろの子のおべんきょうがどのくらいなのか聞いて、そのくらいのべんきょうでやめればいいよ」
「そっか! ジューンはあたまがいいんだね!」
ジューンの話で、ぼくは家に帰れるようにあまりおべんきょうをがんばらないことにした。
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