第二十話 《怪象》
前回のあらすじ
VS.戦士長
二か月ぶりの更新。族長戦です。
なんだか暗い場所にいる。いや、暗いというのは少し違う。黒い空間と言った方がいい。足元も見えなくて宙に浮いてるような感覚なのに、足は無いはずの地面についている。
どうなってるのと思っていると、誰かが歩いてきた。何か大きな物を持っている。あれは……大鎌?
「へえ、死にかけかぁ……あれでよく死ななかったね」
見ると黒い服を着た若い女の子だ。いかにも生真面目そうなしかめっ面だ。後ろにまとめた髪を揺らしつつ、私の顔をまじまじと覗いている。
「あっ、ごめんごめん。僕はミズキ、死神だよ」
「し、死神?」
何を言っているのこの子?さっき私を見て「死にかけ」って言ってたけど……もしかして。
「察しがついた? ここは死後の世界で、君は死にかけてるんだよ。原因に心当たりはあるでしょ?」
『君』と言われるような年齢でも無いのだけど、やっぱりそう言うことか。ちょっと無茶しすぎたかなぁ……
「まあ死にかけてるだけだから、意識が戻れば生き返るけど……君とはちょっと話してみたかったんだよね」
私と話したかった?どうしてだろう。私はただの鍛冶師だと思うけど、そんなのとどうして?
「よりにもよってあの男について行ったからね、君」
「えっ?」
あの男?ダグとはもう二十年来の仲で、そんな人ではないことは知ってる。とするとエミールか。
「まさか知らないで同行してたの?」
呆れたような声色で聞かれた。騎士を殺したことは横で聞いていたから、その時点で嫌なものを感じてはいたけど、知った時には既に遅かった。
それにダグから何も聞いて無い……いや、そういえば酔って帰ってきた挙句そのまま寝たから聞く暇も無かった。
「……死者328名、重軽傷者416名、行方不明者30名」
ミズキの声が明らかに嫌悪感を帯び始め、表情も苦々しさと沈痛さが入り混じったようなものになった。死者328名?いったい何の話なんだろう。
「カリストタワービル爆破事件の被害者数だよ。エミールが起こした事件のね」
タワービルって何だろう。いやいや、それより爆破事件?死者328名?そんな事件をエミールが起こしたって……
「エミールはね、悪名高い殺し屋なんだよ」
「えっ!? こ、殺し屋って、お金をもらって人を殺す、あの……?」
ミズキが首を縦に振った。なんでそんなことを……?
「何でそうしたかは調べる気も起きなかったけど、気になるなら本人に聞けば?」
聞いたところで教えてくれるとは思えない。でもまあ、そうするしかないか。生きて帰れたら聞いてみよう。
そう思っていると、段々と体が薄くなってきた。
「か、身体が!?」
「ああ、君の意識が戻ってきたんだよ。それじゃ、お元気で」
景色が明滅するように、現世とこの世界の景色が交互に映し出される。しばらくして、ミズキの姿も見えなくなった。
何か目の前が暗いなと思っていたら、目を閉じていた。こっちの世界ではずっとベッドの上で寝込んでいたらしい。起き上がって辺りを見渡すと、左側に象の顔があった。
「ピィィッ!?」
「失礼極まりないから人の顔を見て後ずさるんじゃあない」
声を聴く限りヌァルのようだ。間近にその顔があったら誰だって驚くと思うのだけど……。
「あ、そういえばディクルは?」
「……あ奴は……」
少し沈痛そうな声色で言われ、思わずこちらの表情も沈んだ。まさか、死んでしまった?でも、確かに危なそうな様子だったし……。
「勝手に殺すな親父殿」
後ろから少しふらつきつつディクルが現れた。良かった、生きてた。
「冗談だ」
「危うく本当になるところだったがな」
「無事だったんですね」
少し苦々しい表情をされた。何かまずいことを言ったのかな。
「無事じゃない……右手が動かない。一生こうらしくてな、治癒出来ないそうだ」
「それは……」
間違いなく私のせいだろう。こっちが殺されそうな状況だったとはいえ、少し罪悪感が湧いてくる。
「別に気にすることは無い、うちの部族じゃ体の一部が無い奴なんて珍しくないしな」
気にすることは無いと言われても、そんな簡単には割り切れない。後半に至っては、それはそれで大問題だと思うのだけど、多分言うだけ無駄だろう。
「そう言えば、なんか奇妙な女に会ったな。死神とか言ってたが」
死神を名乗る女?
「それって、ミズキって子?」
「ああ、そうだ。お前も会ったみたいだな」
やっぱりか。そんな妙ちくりんな子が他に居るはずもない。……居ないよね?何となく既視感のある雰囲気だったけど。まあそれはいいや。
「何か大量の獣人が来て忙しいって言ってたが……ほとんどがブラウ族の奴だと言ってたな」
「ブラウ族って、密林に住んでる部族でしたっけ?」
ディクルがうなづいた。密林に誰かが行っているのだろか。獣人の行き先が死後の世界という時点で誰だか予想が付くけど。
「お前の他にも三人いたらしいな?そいつらの誰かがやったんじゃないか?」
「……一人は私の夫なので、むやみに命を奪う人ではないことは知っています」
そう言うと、妙に驚いた顔をされた。何か変な事でも言ったかな。
「あの変なメンツの中にお前の旦那が居たのか……」
少し引いたような声でディクルが言った。何故だろう、ものすごく馬鹿にされた気がする。
でもまあ冷静に考えると奇怪な面々ではある。私たち以外の二人に関しては、目の死んだ人殺しと素性の分からない赤い変態だもんなぁ。
「お主も大概だと思うがな」
「ッハハ、確かにな」
笑われてしまった。なんとも酷い言い草だ。
「おっと、そろそろ次の試合だぞ。準備しておけ」
さらっとディクルが言うけど、私がさっきまで寝込んでいたことを忘れてないだろうか。まあさっき「体の一部が無いのはよくある事」って言ってたし、寝込むくらいじゃ大した影響も無いんだろうけど、ドワーフと獣人の頑健さを一緒にしないでほしい。
相も変わらずの大歓声に耳が痛いが、さすがに三回目ともなると少しは緊張も……解けない。やっぱり人前に出るのは好きじゃない。
「さぁ! とうとう最終戦です!」
実況も相変わらず声が大きいなと思っていると、周りの獣人よりも一回り大きい獣人が入ってきた。
「最終戦はこのお方! 我らが族長、《怪象》ダゴール・ニースゥゥゥゥ!」
一際大きな歓声が巻き起こり、ダゴールが一歩、また一歩と場内に入ってくる。
《怪象》ダゴール……ディルナ王国の騎士隊300人を単独で壊滅させた獣人。王国内でも要注意集団として扱われているバルマ族の族長。正直勝てる気がしない。
見上げるほどの巨体もそうだが、歩くたびに地面が振動するのもあって相応の威圧感を放っている。
「一つ聞きたいことがあるんですが……」
「何だ?命乞いは聞かんぞ」
さすがにここまで来ておきながら命乞いはするつもりは無い……わけでもないが、それよりも少し前から気になってたことがある。
「なんで実況が付いてるんですか? 戦うだけなら別に要らないと思うんですけど」
一瞬だけ、ほんの一瞬だけダゴールが驚いた。怒らせてしまったかと思ったが、返ってきたのは意外な反応だった。
「ハッ、ハハッ、ハハハハハハハハッ!」
大爆笑されてしまった。ダゴールが腹を抱えて笑い転げている。
「ど、どうしたんですか急に!?」
「そ、そりゃあ笑うに決まってるだろう! ハハハッ!」
まだまだ笑い続けている。なんだか段々苛立ってきた。
「ハハハ……しかし、呑気なやつだ。こんな状況でそんなことを気にするとはなぁ」
まあ、確かに我ながら呑気な質問だった。
「それで、どうしてですか?」
「あ? ああ、あれは俺がやるように言ったんだ。戦う音だけでは飽きが回ってきたからな」
思った以上に下らない理由だった。聞くべきじゃなかったかな。
「ま、それはもういいだろう。そろそろ始めるとしようか」
そう言い、ダゴールが構えを取り始めた。……え、素手?確かに武器らしいものは何も持ってなかったけど、それにしたってまさか素手とは……。
「真の戦士に武器などいらん」
その言葉に、確かな不快感を覚えた。武器を作る鍛冶師として聞き流せない言葉だ。
「やる気になったようだな」
「さぁ、それでは……始めぇッ!」
号令と同時にハンマーを振り上げ、突撃する。相手が素手なら私のハンマーを当てるだけで怪我を負わせられるだろう。
「どりゃあぁっ!」
ガンッという、何か硬いものを叩いたような音が聞こえた。見ると、ダゴールが右腕でハンマーを止めていた。
「なっ!?」
「流石は族長! 鋼の如き剛腕だぁッ!」
一度離れ、もう一度下からハンマーを振り抜いて当てた。
「たああっ!」
また、ガンッという音がした。左腕でハンマーを止められている。信じたくないけど、ピクリとも表情が動いていないところを見ると、まるで効いていないらしい。
「これで終いか?」
「ッ! まだまだ!」
ハンマーを離し、連撃を叩きこむ。手ごたえが無くても、一回くらいは通用するかもしれない。そんな淡い期待をこめつつ殴った。
「おぉ! 挑戦者の凄まじい連撃が炸裂する! これはどうだぁ!」
先とまったく同じ音が響く。何度も、何度も響く。それでも殴るしかない。
殴り疲れて連撃を止めると、まるで地面に擦った跡がない。つまり、一歩も動かせてないことに気がついた。
「話にならん」
もう一度距離を取ろうとしたら、巨大な何か──いや、彼の握りこぶしが体に飛んできた。柄の部分で少しだけ防ごうとするも、ハンマーの柄が曲がってそのまま一緒に吹っ飛ばされた。
「ガハッ……ウガッ……」
あまりの衝撃に吐血してしまった。何なのこの男?
「言っただろ? 真の戦士に武器などいらん、と」
また、その言葉か。どうにもそれにだけは納得いかない。いや、納得したくない。
「最初からそう考えてたわけじゃないでしょ? 武器を扱ったことは無いの?」
「握ればすぐ曲がるような脆いものなど必要ない。俺の拳より弱いのでは話にならん」
自分の中で不快感が段々怒りに変わっていくのを感じる。ただ、ダゴールの言うことも分かる。確かに、その人に合う武器が作れないのは鍛冶師として未熟さを感じる。
「所詮武器などその程度、お前らのような貧弱な種族がすがる小賢しい物に過ぎん」
その言葉で、全てが吹っ切れた。
「……確かに、あなたたちに比べれば人間や私たちみたいな亜人なんて貧弱だし、対抗するため武器にすがるしかないのは間違ってない」
実際、どれだけ攻撃しても大して効いていないし、この怪力はそれらの種族には無い。
「そうだろうとも」
「でもっ!」
声をあげ、立ち上がる。ダゴールは突然大声を出され少し驚いている。
「でも、武器は、決して『小賢しい物』なんかじゃない! 私たち鍛冶師が使う人のために材料を加工し、工夫し、丹精込めて作ったもの、鍛冶師の技術の結晶なの!」
ハンマーを握る手に力をこめ、構えを取りながら叫ぶ。体中が痛い。でも、ここで退くわけにはいかない。
「だいたい、自分の不器用さを武器のせいにしないでよ!」
言いたいことを言って少しスッとした。彼はこちらの言葉をかみしめるように黙り、少しして口を開いた。
「お前の信念は理解した。言っていることも一理ある。ならば……」
彼は改めて構えをとった。
「その結晶とやらで俺の拳を破って見せろ。それが出来れば認めよう」
「上等……!」
手に力をこめ、ハンマーを振る。案の定、音と共に腕で防がれた。それどころか、衝撃が私に伝ってきて腕が痺れた。ハンマーも少し曲がっている。
腕の痺れを気にする暇もなく、ダゴールの拳が迫る。後ろに下がって避け、ハンマーを振り上げ、叩きつけた。予想はしてたけど、結果は先と同じだった。
「無駄だ!」
ハンマーを左腕で弾かれ、更にその拳を握って振り上げてきた。拳が伸びてきたところで脇に避け、懐に潜り込む。
「おぉ! 挑戦者がダゴール様の懐に潜り込んだ!」
「そこだっ!」
体勢を立て直す前にハンマーを振り抜いて脇腹に当てた。ガアンという音こそ鳴ったものの、大きくその巨体を動かした。
ただ、それでも表情は全く動いていない。衝撃を与えられても効いてはいないらしい。
「……今のは少し驚いた。お前のことを見くびっていた」
少し褒められて、思わず口角が上がった。
「笑うのは結構だが、これで何になった? 精々後ろにずり動かしただけだろう」
呆れたような声で言われてしまった。確かに、言い方こそとげとげしいものの、攻撃して効果が無いと倒しようがない。
ただ、そうは言っても現状はハンマーで殴る以外のことはできない。あの腕をすり抜けつつ一撃を与えるのがやっとで、それも大した結果にはなってない。腕に防がれるよりはマシみたいだけど……ん?腕で、防ぐ?
「何をさっきから考え込んでる? さすがにそろそろ再開と行くぞ!」
ダゴールがこちらに向かってくるけど、何か引っかかる。腕や脇腹を攻撃しても無意味だった。攻撃が通らないなら何で腕で防御するの?防御して守る必要のある部分が腕の奥に……頭か!
違うかもしれないけど、まだ攻撃してない以上試す価値はある。よし、やってみ──
ドゴォンッ!
「おおっと! 挑戦者、棒立ちのままダゴール様の拳を受けたぁ! 何を考えているんだ!」
「あが……ぐ……」
まずい、考え込み過ぎた。武器の設計とかの癖でついやってしまった。体中に鈍い痛みが駆け巡り、口の中も切れたけど、ハンマーで体を支えつつ立ち上がった。
「……何をしているんだ、お前?」
ダゴールも心底呆れたような声と表情を出した。返す言葉もない。
「大丈夫……かかってきて……」
「息も絶え絶えで言われても何の説得力も無いが、まあいい」
自分のせいとは言え、構えをとるだけでもかなりの苦痛を伴う。でも、さっきの考えを実践しないまま死ぬのはもやもやするし、何より悔しい。
「さて、そろそろ終わらせよう……半分終わっている気もするが」
ダゴールが構え直し、気迫をこちらに向けて放った。とどめを刺そうとしているらしいけど、体中が痛くて怯える暇もない。
というかそれ以前に足元がおぼつかない。視界もぼやけている。これ以上長引けばこっちが持たないだろうし、次で決着をつけよう。
「行くぞ!」
ダゴールが大きく踏み出し、右腕を振り上げた。拳が彼の真横を通ろうかというとき、左腕が下がった。──今だ!
「どおりゃああっ!」
左手側からハンマーを振り抜くと、高さが足りなかったのか彼のあごに直撃し、その巨体をふらつかせた。
やった、効いている!
「な、なんと! 挑戦者が族長の顔を攻撃した!?」
「があっ! お、お前……!」
体勢を立て直しつつ左手を叩きこもうとしてきた。ただ、その拳に勢いが無くなっている。もしかして、今なら……
「そこっ!」
その拳に向かってハンマーを当てると、ガギィンという音こそしたものの、その拳をはじき返せた。
「これはどうしたことか! 族長の拳が弾かれた!」
「ぐっ! な、なんだ? 体が思うように……」
この機を逃す手はないと思い、ふらつく彼の頭にハンマーを叩きつけた。渾身の一撃が彼の脳天をとらえ、その巨体を地に沈めた。
王都行きの街道 馬車内
「悪いなスチュアート卿、同乗させてもらって」
パラ
「ジャック、だったか? 誰かさんと違って礼儀はわきまえてるな」
「誰が礼儀知らずだって?」
「お前だお前」
「確かにな」
「二人そろってコケにしやがって、人のこと言えねえじゃねえか」
パラ
「……おいジャック、さっきから何読んでるんだ?」
「ガリア戦記だ。第一次ゲルマニア遠征のあたりだな」
「生憎だが分からん。西洋史には疎くてな」
パラ
「まあ歴史に興味あるやつでもない限り、知らない奴の方が多いけどな。エミールなんかもドイツに住んでたけど、歴史の成績は最悪だったらしいからな」
「「悪かった」じゃなくて「最悪」か……相当だな」
「エミールって、エミール・コルトバーグか?」
「ああ。知ってるのか?」
「独断専行で突っ込んだとはいえ、部下を一人殺された」
「……襲われたからとはいえ、何も変わってないなあいつ」
「そういや、あいつのことクソ生意気な小僧ってくらいしか知らねえんだが、どういう奴なんだ?」
「ラウム、お前そういうところだぞ。そうだな……少し長くなるが、いいか?」
「構わん、いずれやりあう時が来るかもしれんしな。その時のために情報はできるだけほしい」
「暇つぶしくらいにはなるんだろうな?」
「どっちもロクな理由じゃないが……まあいい」
パタン
「昔のあいつは、やり方はともかく考え方自体は真っ当だった。いじめられた下級生を守るために……」
「いじめた奴に殴り掛かっていったのか? だとすりゃあだ名は『猪』がお似合いだが」
「いや、いじめた奴を帰り道に襲撃して病院送りにしてた。あだ名は『ギャングボーイ』だった。思えば昔っから加減を知らない奴だったなあ」
「待て待て、しみじみするような記憶じゃ無いだろ!?」
「確かに、これじゃ俺の倫理観を危ういな。まあとにかく、多少なりとも正義感はあったんだよ、少なくともあの日まではな」
「あの日?」
「八歳の誕生日だ。あいつの両親が強盗に殺されたんだよ」
「……なかなか重い過去だな」
「……あいつの初めての殺人も、その日だ」
「おいおい、ってことはまさかその強盗を?」
「ああ、ケーキナイフで一撃だ」
「いい腕だな、《幽鬼街《ウチ》》に欲しいくらいだ」
「一応あいつは警察に保護されたんだが……そのあと親戚を頼ってドイツに引っ越していったんだ」
「そんなことがあったらむしろ正義に目覚めそうだが、なんだってあんな危険人物に?」
「俺も気になったんで聞いてみたんだよ、「お前、何があってそんなになったんだ」って。そしたら「気づいたんだよ、自分を守ったのは人間でも法律でも無く一本のナイフだったってな」だと」
「どういうことだ? あいつらしくも無い詩的な表現だな」
「詳しく聞いてみたら「俺を守ったのは警察でも法律でもない、俺自身だ」と言ってた。多分、あの時点で正義に見切りをつけてたんだろうよ」
「俺だって元々裏の人間だからその理屈は分からんでも無いな」
「……真っ当さだけじゃやっていけないってのはよく分かる、俺も騎士だからな」
「前から手段を選ばない奴だったが、あの後からタガまで外れたからな。もう手のつけようがないかもな」
「なるほど……そんな戦い方をするってことは、本人の戦闘能力ってそんな高くないのか?」
「いや、素で滅茶苦茶強いぞ? 正直あいつ以上の殺し屋は知らん」
「さっき部下が殺されたって言ったろ? 殺されたのは俺の副官だ」
「それは相性の問題じゃねえのか?」
「それに……俺が一番敵に回したくない相手がエミールだ」
「……ここ数年で一番の衝撃だな」




