アンサンブル
高島の応急処置で清水は救急車で運ばれて幸いにも命を取り留めた、知識が少しだけ役に立った。
しかし男子生徒は帰宅中に車両事故に巻き込まれて下敷きになり燃料引火による火災で断末魔の叫びをあげて焼死した。
翌朝、登校してすぐに対策委員を集めてことの顛末を説明した。
遅れること15分、それぞれの担任たちがやってきた。
「2年生で死者が出ました、事態は一刻を争います、昨日の事を教えてください」
慌てている学年主任にも同じように説明した。
「おそらく、仁科さんは介錯人であると予想されます、回復を待って話を聞きましょう」
清水も本気で怯えて始めた。
「私、もう嫌、死にたくない」
小声でそれだけを言って椅子に座った。
「今回の件も他所者には口外禁止です、警察に通報しようものならそれこそ大惨事です」
口外しかけた、噂を言おうとして階段で死にかけていた者と実際に亡くなった者が現れた。本年度の最初の被害者である。
「俺がついてるから心配しない」
ハッと息を飲むと清水は高島を見上げた。
「頼りにしてるぞ!がっくん」
高島の言葉に清水は元気になった。
この日は短縮授業となって午前中で終わって、予告どおり会議室に集まって昨日の続きの話があった。
「えー、皆さんもご存知の通りですが、始まってしまいました、見つけ出すまで終わりません、教務主任より話していただきます」
還暦を過ぎた紺色のアンサンブル、ワンピースのマダムである。
「守谷先生から聞いているかもしれませんが、私は元介錯人です、つまりそれは高校生の時に誰かとキスをしたという事ですね、守谷先生?」
場の空気を和らげようとしているが、オールバックの厳つい先生は教務主任の言葉で生徒から顔を逸らした。
「その話はさておき、始まってしまったのは事実、本日は能力者について説明しますと、、、その前に長い話になると思いますので、いろいろ買ってきましたので、先生たちもご自由にお召し上がりください」
炭酸飲料や紅茶、ミルクティーにカフェオレ、おにぎりにパン、お弁当、和菓子に洋菓子、好みがわからないと、いろいろ準備されていた。