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12.それぞれの行方

 食事を終え、サンドイッチ店の外で話し合う三人。


「悪いんだけど、ミコの奴におつかい頼まれてたの忘れててさ。先に帰るね。その子のついてはまた今度でいいかな」


「それはいいが……何を頼まれていたんだ? 人手がいるなら手伝うぞ」


 大量の荷物を抱えたサラを見て、シキは気を遣う。


「いやいや大丈夫さ。来客用のインクが切れてるって言ってたから、それ買いに行くだけだよ」


「なるほど……それであの羽ペンが置いてあったのか」


「ごめんねぇ、昨日も頼まれてたのに買い忘れちゃってて。今の食事はお詫びという事でここは一つ、ね?」


「分かった分かった。早く買いに行け。私も用があったのをすっかり忘れていた」


「そりゃ悪い事したね。それじゃあまた明日」


「ああ。ではな」


 サラは宿へ向かって歩き出した。


 大量の荷物でふらついている彼女の背中が、どことなく寂しそうに見えた。



 ────────────────────



「無い……無い無い、無いぞ!? そんな馬鹿な!! 何故だ!?」


 サラと別れてから数十分。シキ達はある物を探して商店街を彷徨っていた。


「まさか……盗られた……?」


 シキの顔が真っ青に染まっていく。


「私の『ウォールプレート』はどこだあああああ!?」


 街の中で男は叫ぶ。

 慌てて投げ捨てた建物の間やその周辺を片っ端から探すも、あの大剣はどこにも無かった。


「無くなったらその時と言ったが……まさか本当に無くなるとは……」


 近くにいた住人や冒険者に話を聞くも、目新しい情報は一切得られなかった。


 シキの脳裏に、アイヴィの顔が浮かぶ。


「金は渡したが……そういう問題ではない……!」


 次に『トバル・ブラックスミス』の店主の顔が浮かんだ。


「トバルではない店主……すまない……。極める前に無くしてしまった……」


 ここでふと、とある一つの案を思いつく。


「いや違う、あの大剣を取り戻す方法も、極める方法もまだあるではないか!」


 決まってからは早かった。

 シキはとある場所を目指し走り出した。


「…………」


 そんな彼に、ネオンは何も言わずついて行った。



 ────────────────────



「トバルではない店主!! ウォールプレートはまだあるか!?」


 シキ達は再び鍛冶屋へ訪れていた。


「うおおっ!? って、誰かと思ったらアイヴィちゃんの友達じゃないの」


「あの大剣はあるかと聞いている! どうなんだ!?」


「あれは俺の趣味で作った物だから、この世に二つとねぇよ。……おい、どうしてまたそんな事を聞くんだ」


 シキの様子をおかしく思った店主は、疑いの目で問いかけた。


「……無くした」


「無くしただぁ!? 馬鹿野郎俺の作品をなぁに無くしてやがんだ!! さっさと探しに行けぇ!!」


「す、すまない。そうだな。今すぐ行ってくる!!」


「あったりめぇだ馬鹿野郎!! ……ったく、アイヴィちゃんから貰ったものを無くしてんじゃねえ」


 店主の優しい怒りが、シキを駆り立てる。


 シキはウォールプレートを探すため、一日かけて街中を走り回った。



 ────────────────────



「今日はシキくん来なかったなぁ……どうしちゃったんだろ」


 夕暮れ時。アイヴィは商店街を歩いていた。


 その日は朝早くに宿を出て、事件現場をしばらく調べた後、森へ向かった。

 ここで魔物狩りでもしていればいずれ彼らも来るだろう。シキの特訓を進めるためアイヴィは森の中で待つ事にした。

 しかしいつまで経っても現れなかったため、一度宿へ戻ってどこに行ったか聞こうと考えたのだ。


「……もう一度見てから帰ろうかな」


 帰宅途中、ふと別の感情が芽生えた。


 なんとなく、あの事故現場に行けば会える気がする。根拠なんて無かったが、彼なら再びあの場所へ立ち寄りそうに思えた。


 帰宅ルートを変え、通り魔が現れた路地裏へ向かう。一歩一歩と足を進めながら、気づけば彼の事を考えてた。


「うるさいし文句も多くて、正直一緒にいて疲れるタイプだね~」


 半日ほど行動を共にした結果、マイナス評価の方が先に出てくる。その事に思わず笑ってしまう。


 しかし、それでも彼の事が気になる自分がいた。


「でも、なんだかんだ最後まで付き合ってくれるんだよね」


 今考えても、昨日は強引に振り回していたと思う。最初にいちゃもんを付けて連れ出したのも、言ってしまえば都合よく利用しようとしただけだった。


 それでも。


「一緒に冒険出来たら、楽しいだろうなぁ」


 アイヴィはそっと呟く。


 地面を蹴る足が、軽くなった気がした。

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