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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第3章 : 裏切り合いの終着点(デルニエアレ)
98/301

98. 岐路

皆様、本日はクリスマスイブですね。


去年は確か、クリスマス当日の投稿だったと思いますが、今年は聖夜の投稿となります。


なんだかいつも凄い日に投稿してる気がします、、こういう日の投稿は何かを察されるかもしれないので控えたいですね、


クリスマスイブの投稿。とは言いますが、内容は大切な部分のため全く関係ありません。もう少し話をしたいところではありますが、真剣な回なので、今回はこの辺にしておきたいと思います。それでは!

カチカチと、部屋の壁掛け時計から鳴る音のみが響く。碧斗(あいと)達は、"その日"が訪れると直ぐに、樹音(みきと)の周りを囲む様にして祈る。樹音の隣では、この中で1番彼との時間を過ごした沙耶(さや)と碧斗が両手を握る。


ー頼むっ。お願いだ、、目を、開けてくれっー


碧斗は心中で願う。恐らく、皆も同じだろう。口にはせず、無言のまま、樹音の意識にまるで直接伝えるかの様に脳内で祈る。


手の握る力を強める碧斗。目を強く瞑る沙耶。唇を噛む美里(みさと)。歯を食いしばる大翔(ひろと)


皆がそれぞれ樹音を思う。グラムもまた、突然家に押しかけた身であるのにも関わらず、樹音の生存を、まるで親友の様に一心に願っていた。


そんな時間が流れる事数十分。長い時間が経った気がするが、不思議と誰も祈りを止める事は無かった。そんな力強い想いもあってか、皆が樹音の元で見守り始めてからおよそ30分。樹音が大量出血と、大量の能力使用により意識を無くしてからおよそ4日と半日。




樹音の瞳が、ゆっくりと開かれた。



「っ!え、円城寺(えんじょうじ)君!?」


「えっ、円城寺、君!?」


「は、ははっ!お前、、心配かけんなよっ!」


「はっはっ!よく頑張ったのぉ。ミキト」


碧斗を始めとし、皆は樹音が意識を取り戻した事に気づき、口々に安堵の声を上げる。美里もまた、少し瞳を潤ませながらホッと胸を撫で下ろした。


対する樹音は、何が起こっているのか分かっていない様子で、薄い意識の中皆の顔を見回す。


「え、えと、僕は、一体、」


「「円城寺君、」」


「「良かったぁぁっ!」」


碧斗と沙耶が口を揃え息を吐く様に放つ。沙耶は樹音に詰め寄り、言葉と同時に態度で喜びを表現する。


「お前、あと少しで死ぬとこだったんだぞ?」


大翔が表情を緩めて告げると、ハッと何かを思い出したのか、樹音は突然起き上がる。


「っ!」


「お、おい、まだ起き上がるのは」


「そうだ、っ!竹内(たけうち)君は!?」


「「「「え?」」」」


突如として放たれた、この場に居ない名に、一同は呆然とする。


「竹内君、竹内君はっ、?まだっ、まだ言わなきゃいけない事が、、まだ言えてない事があるんだ!伝えなきゃ、、竹内君はっ、大丈夫だった!?」


「た、竹内君、は、居なかったが、」


碧斗が不思議そうにしながらも、あの時の様子を思い出して答える。


「周りには王家の人とかが既に探索していたから、あそこに居たという可能性は極めて低いが、、もしかして、円城寺君を陰に運んで隠してくれたのって」


碧斗は状況を思い返すと同時に、あの時の不自然な場所に倒れていた樹音を思い出し、沙耶と顔を見合わせる。


「え、運んだって、どういう事、?」


「円城寺君は、何故か王家の人達に見つからない様な、王城の陰になる場所で倒れてたんだ。だから、もしかすると、竹内君が、」


「え、、僕の、事を、?」


樹音は敵対していた相手が、自らを助ける様な行動を起こしたという可能性に、声を漏らす。もしそれが本当ならば、心配するのは当然だろう。不安そうな樹音の表情にそれを察し、碧斗は優しくフォローを入れる。


「でも、恐らくだが、竹内君は大丈夫だと思うよ。誰かを見つけたって話は国王の方からは聞こえてこなかったし、それより前に大内(おおうち)君が探しに、、っ」


樹音を悟す様に告げるがしかし。そこまで思い返すと、修也(しゅうや)が言っていた「涼太(りょうた)の1番恐れている事」という台詞を思い出し、言葉を濁す。


もしそれが第三者であるならば、大丈夫だという確信は得られないだろう。そう思い、考え込む碧斗を差し置いて、大翔はずっと言いたかった事を言い放つ。


「樹音、お前他の奴の心配もいいけどよ。まずその前に言うことがあんじゃねぇか?」


「っ!」


大翔が声の調子を下げて呟くと、樹音はハッと気づいた様に肩を揺らし、俯く。


「そ、そうだよね。みんな、ごめん。本当にごめんなさい。みんなは信じてくれてたのに、裏切って、あんな怖い目に遭わせて、、」


俯いたまま小さく言うと、顔を上げ、皆の顔を見回したのち、座ったまま深々と頭を下げる。


「本当に、すみませんでした」


そんな樹音の姿を見て、小さく微笑む碧斗と沙耶。少し呆れた様に息を吐く美里と大翔。すると


「何言ってんだ」


呆れた様子でありながら、どこか優しく、どこか笑っている様に口角を上げながら大翔は指摘する。


「ここ、どこだか分かってるか?」


「え、、ぐ、グラムさんの家、、だよね。そっか、ぼ、僕の事、みんなで運んでくれたんだ、、ごめん。ほんと、みんなにも、グラムさんにも、、顔向け出来ないや、、」


自傷的な笑みを浮かべ、樹音は頭をかく。だが、そうではないのだ。と、大翔は更に続ける。


「ああ。そうだ、でも違う。俺達はお前をここまで運んだ。心配もしてた。それだけで分かるだろ?俺達が、どう思ってんのか」


「え、?そ、、それって」


樹音が恐る恐る声を漏らす。


「ああ。俺達は、樹音を運んだ時点で裏切った事を責めようとはこれっぽっちも思っちゃいねぇーよ。だから、樹音。お前が言うべきなのは、、言って欲しいのは、ごめんじゃねぇ」


そこまで真剣な面持ちで告げると、ニッと笑顔を作り、それを言い放つ。


「ありがとう。だ」


「っ」


感情がごちゃごちゃになった様に、樹音は目を見開いた。驚きと感動の両方が現れるその姿に、大翔に続いて碧斗達もまた、笑みを送った。


「そんな、、僕は、僕はみんなを裏切ったんだよ!?あんなに優しくしてくれたみんなに、刃を向けたんだよ!?それなのになんで、、なんでこんな僕を許してくれるの!?」


涙を浮かべる樹音に、皆は顔を見合わせ小さく笑うと、碧斗は口を開く。


「そんな事ない。まず俺達はそんなに優しくしてあげられた訳じゃ無いし、寧ろ、どうする事も出来なかったあの時の俺と水篠(みずしの)さんのところに来てくれて、救われたのは俺達の方だ。それに、裏切った裏切ったって言ってるけど、最初っからそのつもりで俺達に近づいた訳じゃ、無いんだよね?」


碧斗の問いに、申し訳なさそうに唇を噛んで頷く。


「それだったら、円城寺君の、この争いを止めさせたいって思いは本当なんだから、裏切った事にはならないよ」


そこまで返すと、碧斗は「それに」と、更に続けて言い放つ。



「"本当にこの争いを終わらせてくれる人に出会えるなら、何度だって騙される覚悟はある"。そうだろ?」


目を見て告げられたその言葉に、目を見開くと、泣きそうになる樹音。


「まっ、樹音は別に怪我を負わせようとした訳じゃねーんだ。怒る理由はねぇだろ」


碧斗に続いて、大翔が口角を上げ詰め寄る。と、ずっと涙を抑えていた沙耶が、割って入る。


「そうだよっ!だから、だからっ、、これで仲直り、、しよ?」


沙耶の願望でもあるその優しい言葉に、樹音は更に目の奥が熱くなりながらも、袖で目を擦って


「そうだね、、そう、だよね」


と、小さく呟いたのち、はにかむ様に薄ら笑いながら、顔を上げる。


「みんな、、ありがとう」


目に涙を浮かべながら感謝を述べる樹音に、皆は優しく微笑んで返す。すると、大翔は腕を組むと目を逸らして言い放つ。


「でもなぁ、樹音。俺はお前に怪我負わされたんだよなぁ。別に、気にしちゃいねーけどよ。でも、ただ怒ってねぇってだけで、まだ信用してるって訳じゃねーからな!それだけは覚えとけ!」


「はは、"まだ"ね」


「な、なんだよ」


大翔のぶっきらぼうでありながらも、優しさが滲み出る物言いに、碧斗と沙耶、樹音には笑顔が溢れる。


「はっ、だから俺はまだお前達を認めてねーって事だ。つまり、今助けてやってんのは怪我してるからって理由であって、治ったら出てってもらうぞ!いいな!?」


「おいおい、ここは儂の家じゃぞ?」


「てぇっ!?」


大翔がニヤケながら、皆に命令をする様に告げると、後ろからグラムが冗談めかして軽く頭を叩く。


その姿に


「ありがとう、みんな。これからも、よろしく」


と、涙ぐみながら、樹音はそう皆に頭を下げた。


           ☆


樹音が目覚めてから1時間弱。樹音に眠っている間の話や、それまでの事を告げると、彼は感謝と謝罪の言葉を繰り返した。


「と、そんなところだな。円城寺君が意識を失っている間に話した事は」


「そっか、ありがとう。僕の為に、こんなに」


「それよりも、あの大内って奴とはどういう関係なんだ?」


「あ、そ、それは、」


「ん?」


大翔が気になっていた率直な疑問を投げかけるが、屋上に居た「あの時」の樹音の様子から、何かを察していた沙耶と美里は神妙な表情で首を横に振る。


「あ、いや、いいよ、別に。みんなには、、もう隠し事はあまりしたく無いし」


そう呟くと、樹音は現世での関係を話し始めた。言い難いところは濁す事が多かったものの、恭介(きょうすけ)という友人がいた事。涼太が彼をいじめていたという事実。そんな恭介を元気付けようとした行いが裏目に出た事。そして、涼太と駆け引きをした事。


その全てを包み隠さず話した。


「そう、、だったんだ、」


「ごめんね、、何も、気づいてあげられなくて、」


「そ、そんなっ!みんなが気にする事じゃ」


皆が今までの樹音の思いや苦労を察し、碧斗と沙耶は順に呟き、一同は歯嚙みした。その場に、またもや沈黙が流れたのち、空気を変える様に碧斗が口を開く。


「それで、ずっとその大内君のところに行ってたっていうのは、」


王城の屋上で告げられたそれを改めて話された碧斗は、疑問に思い、問う。


「うん。竹内君が僕達に初めて攻撃を仕掛けたあの日の夜。その時の襲撃で家の場所を把握した大内君が、僕のところを訪ねてきたんだ」


遠い目をしながら、思い出す様に語り始める樹音の話に、皆は耳を傾けた。


「その時に、現実世界の時と同じ。駆け引きみたいな話を持ち出されて、僕はそれに乗っかった。それからは2日に1回程度のペースで、近況報告をしに王城に来るように言われて、それから行く様にはしてたんだけど」


「そ、そうなのか、、っ!だったらこの家の場所もーー」


「この家の場所はみんなに迷惑かけるからって、言ってなかったみたい」


碧斗がまさかと思い立ち、身を乗り出すが、それを遮る様に小さく返す美里。


「っ!え、黙っていて、、くれたのか、?」


「それはそうだよ。そんなみんなを危険に晒す様な事、する訳ないよ」


碧斗が思わず声を漏らすと、合間無く樹音は真剣な顔で答える。と、そこまで言うと、またもや表情を曇らせて続ける。


「僕は、みんなに危害を与えるつもりは無かったんだ、」


「だから、前からあんたは私達に何か伝えようとしてたんでしょ?」


「あっ、もしかして、前に言ってた"ついてきて欲しい"っていうのも、、そう?」


美里がそれは分かってると言わんばかりの表情で聞くと、沙耶も思い出した様に言い放つ。樹音は2人の言葉にまとめて返す様に頷くと、「でも」と続ける。


「大内君からは早く連れてこいって、、最近は怒ってるみたいだったから、早くしないとって思ってたんだけど、」


樹音の話に、碧斗は思い出した様に目を剥く。


ーそういえば、竹内君も最初に俺達のところに現れた時、連れてこいって言われてるって言ってたな。やっぱりその時から、その大内君は既にー


「それで、強行手段に出たって事?」


美里が聞くと、樹音はうーんと唸りながら首を捻る。


「それもあるけど、1番は」


そこまで言って、言葉を詰まらす。皆は身を乗り出して聞く耳を立てるが、言いづらいのか、口を噤む。だが、2、3秒悩んだのち、少しくぐもった声で恐る恐る口にする。


「その、、なんか、みんなギクシャクしてた、、でしょ?それで、その時相原(あいはら)さんが出て行っちゃう様子だったから、咄嗟に、」


「えっ、私のせい?」


「いやっ、せいとかじゃ無いけど、相原さんが、、心配だったんだ。この家を出て、狙われちゃうんじゃ無いかって。王城に戻っても、何かされちゃうんじゃ無いかって。だから、それよりも前に。安全にみんなを確保してくれるって言ってくれた、大内君のところに連れて行こうと思って、、ほんと、あんな強引な事して、ごめん」


そこまで言うと、樹音はしゅんと項垂れる。何か言いたげだった美里も、それよりも前に樹音の謝罪を受け、口を尖らせて体を引く。


「そっか、、ずっと、俺達の事考えてくれてたんだな、」


「そんなの、、全然裏切りじゃ無いじゃん、」


碧斗と沙耶は、口々に感情を漏らす。樹音は変わらず俯いており、大翔はやれやれと頭を掻く。


「そうだ、、そうだよ。円城寺君は俺達を裏切った訳じゃない。守ろうとしてくれたんだ。それが、相手が悪かったがために、悪い方向に行ってしまっただけで、円城寺君は何も悪くなんてない」


「っ、で、でもっ、僕はみんなをーーっ!」


樹音は皆を騙したという事実に、罪悪感を抱きながら更に声を上げる。が、それを言い終わるより前に、沙耶が樹音の腕を両手で掴み、目を潤ませながら口を開く。


「そんな事ないよっ、、私は、円城寺君が生きていてくれて、、本当に嬉しかった、」


樹音は沙耶の言葉にハッとし、同じく目を潤ませる。その(のち)、樹音が皆の方に視線を移して唇を噛む。


「僕の事、、また友達だと、思ってくれるの、?」


「フッ、ああ。当たり前だ」


碧斗がそう口にすると、皆もまた、そんな当然な事を言わせるなと言わんばかりに息を吐き、視線を逸らす。その姿に、樹音もそれに応える様に滲み出した涙を拭って向き直る。




「ありがとう。碧斗君」


「っ!」


いつもとは違うそれに、碧斗は思わず目を剥き動揺を見せる。


「ありがとう、大翔君」


1人1人、順に目を合わせながらそれぞれ伝える。


「ありがとう、沙耶ちゃん」


「えっ、」


「ありがとう、みさーー」


「キモいから私は止めて」


「あっ、そ、そうだよねっ、!それじゃあ、ありがとう。相原さん。それと、グラムさん」


「およ?儂は何もしとらんが」


「そんな事無いです。碧斗君達も、グラムさんも、同じく僕に居場所をくれた、大切な人ですから」


皆の視線を受けながら、優しく笑顔を浮かべると、ゆっくりと立ち上がろうとする。


「「っ!だ、駄目だよまだ立ち上がっちゃ!」」


碧斗と沙耶が声を上げると同時に、慌てて皆が止めに入ると、樹音はあははと流されて座る。


「ご、ごめん。座ったままになっちゃうけど」


と、樹音はそう前置きをして改めて頭を下げる。


「僕に、こんな僕に出来る事は限られちゃうかもしれないけど、もう1度、、協力させて欲しい」


目を赤くして放つ樹音に、一同は答えはいらないと言うように、笑みを浮かべて頷き返したのだった。

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