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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第2章 : 喪失感と葛藤(アジテション)
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49. 信用

見返したらこの異世界の方が予想以上にでかいと感じたので最初の身長の部分を変更させていただきました。元々の表現でキャラクターをイメージしてしまった方々、大変申し訳ございません。

振り向くとそこにはガッチリしていて、2メートルは超えているであろう身長の男性が立っていた。とても良い体つきをしていて、健康的な見た目ではあったものの、深く刻まれたシワが目立つ顔をしており、60以上はありそうだと感じた。決して、頭が寂しかったからとかそう意味で決めつけたものではない。顔の見た目と体つきのギャップが大きい事から、人にとても近い見た目をしているが、違う種族なのではないかと予想する碧斗。


「おう?」


その男性は驚いた様に頭を掻いてそう声を漏らした。


「すっ、すすすっ、すいませんでしたぁー!本当に、勝手に入ったりして本当にっ、申し訳ございませんでしたぁー!」


慌てて違法で家の敷地内に侵入してしまった事を土下座をする勢いで全力で謝る。その碧斗(あいと)の大声に気づいた碧斗の後ろで話しながらゆっくりと跡をつける他のメンバー達は、そちらに視線を向ける。


「えっ、ど、どうしたの?伊賀橋(いがはし)君、?」


「だ、大丈夫?」


「碧斗様、何かございましたでしょうか?」


皆、窓は碧斗の陰になっているのか見えていない様で、心配そうに詰め寄る。皆心配そうに、いや皆ではなさそうだ。美里(みさと)からは何も言ってはいないが、うっさいといった目線が送られてくる。


「っ!あ、貴方は、?」


「あっ、えっ!?も、もしかして、」


碧斗に近づいた4人は、"その人"の姿を目視出来る場所まで来た様で驚愕の声を上げる。


「申し訳ございません。1度インターホンを押してご確認はさせて貰ったのですが、応答が無かった為、裏から再度確認をーー」


マーストは正当な理由を作り上げて僭越(せんえつ)ながらそう弁護すると、頭を下げた。だが、そんな言い訳じみた主張を言い終わるよりも早くに目の前の男性は笑って手を叩く。


「あ、お主らもしかしてヒロトの友達じゃろ!?おお、これは何かの縁かも知れんな、とりあえず上がっていきな」


その気さくな様子に、まるで親戚のおじさんと話している気分になる。


「い、いやいや!悪いですよ、そんないきなりお邪魔しちゃうなんて、」


「いいから、いいから。上がっていきな」


碧斗を含めた5人は手を振って遠慮するものの、気前よく対応してくれた事もあり、このチャンスを逃すまいと碧斗は「で、では、お言葉に甘えて、」と呟いて恐る恐る入室した。


内装はマーストの家ほど大きなものでは無かったが、物がきちんと整理整頓されておりとても清潔感のある部屋であった。部屋は木造建築でバーベキュー時に泊まるロッジの様な様式である。部屋はリビングと寝室、浴槽にキッチンなどの必要最低限といった部屋が揃っており、自分の部屋の様なものは無かった。おそらく独り暮らしだったのだろう。そこに大翔は住まわせてもらっているという事なのだろうか。と、部屋をいかにも自然な様子で見回しながらそう察する。すると、奥から飲み物を5人分トレイに乗せて先程の男性がやってくる。


「いやぁー、ヒロトにこんなに多くの友達が居たなんて驚きじゃな!さっ、遠慮なさらずに座って座って」


「あっ、はい!」


リビングの横長の椅子へと案内された碧斗はそう促され、


「「「「「失礼します」」」」」


と声を揃えて腰掛ける。見た目から予想は出来ていたが、明らかにその椅子が2人用なのでいくら小柄な沙耶(さや)や、男子の中では細身な碧斗が居るとはいえ、3人が限度であった。ギリギリ座ろうと皆で詰め寄りながら場所を取り合う姿が面白かったのか、その男性は笑う。


「はっはっはっ、あー、いやいやぁ、申し訳ないのぉ、じゃあ、ちょっと待っておれ」


そう言い残すと、部屋の奥へと姿を消す。何をするのか分からずに皆は顔を見合わせて首を傾げる。


数分経つと、奥からアウトドア用品店でよく見る様な折り畳み式の椅子を持ってやってくる。椅子の材質は木で出来ている為、周りのインテリアにとても合っていると言えるだろう。


「ほれ、これでみんな座れるじゃろ」


「ありがとうございます」「あ、ありがとうございます!」「ご丁寧にありがとうございます」


美里と樹音(みきと)、マーストは声を揃えて感謝を口にすると、その男性は笑う。


「ええよ、ええよ」


そう呟くと、「にしても」と続けて碧斗達の対面にある1人席に腰掛ける。


「ヒロトにこんなに友達が居たとは驚きじゃのぉ」


噛み締める様にそう頷くと、見兼ねた美里が口を開く。


「いえ、私達別に友達じゃないです」


「はて?」


「「あ、相原(あいはら)さん!」」


真実を告げてしまった美里に碧斗と樹音は声を上げ、皆唖然とする。対する美里は淡々と続ける。


「他人に嘘ついてまで部屋譲ってもらいたくないし」


その言葉にその場の4人は圧倒されて押し黙る。その真っ直ぐと前を見据えた力強い姿が、なんだかとてもカッコよくて、上手く言葉には出来ないが、とても素敵だと感じた。思わず声が漏れそうになった碧斗は慌てて口を噤む。


「だから、貴方には申し訳ないけど、友達じゃないので」


続け様にそう言うと、碧斗達はその男性の反応を恐る恐る見据える。と


「やはり、そうじゃったか、」


その男性は悲しそうな表情ではにかんだ。その反応に5人は罪悪感を感じる。だが、それと同時に疑問に思った碧斗はそれを口にする。


「あの、、やはり、とかあの大翔(ひろと)〜とか言ってましたけど、貴方は何者なんですか?」


そう、違和感の正体は妙に大翔と親密だというところである。見た目や、話し方の特徴から異世界人だと感じていたのだが、転生者である大翔の事をよく知り、まるで息子であるかの様な扱いである点が不思議に感じた。


そう指摘されたその男性は何かに気づいた様に目を見開くと、ゴホンと咳き込み、改めて話す。


「これは失礼、(わし)の名前はグラムじゃ」


「ど、どうも、初めまして。俺の名前は伊賀橋碧斗です」


「わ、私は、水篠(みずしの)沙耶、です」


「僕は円城寺(えんじょうじ)樹音です」


「私は、相原美里、」


「わたくしはマーストと申します」


「おや?そちらのスーツの方は異世界人だったのか?これはこれは、皆様ご丁寧にどうも」


一通り自己紹介が終わると、笑ってそう言い、お辞儀する。それに慌てて碧斗達も座ったまま深く一礼する。


「というか、あの、グラムさんはどうしてあの、(たちばな)君と住んでいるんですか?」


「って言っても赤の他人にそんな事言うわけーー」


「そうじゃなぁ、あれは勇者様が転生されて来た数日後じゃったか、」


「「いや、話すんかい」」


樹音の質問に美里がツッコむと、グラムは思い出す様に話始める。それに対し反射的にツッコミをする碧斗と美里。


「勇者様が転生されて1週間ほど経ったかのぉ?そんなある日の事じゃった。あの夜は不穏な空気が流れとった、その予想が当たってしまった様じゃが」


「それが、全てが始まったあの日、」


「初めて犠牲者が出た日の事ね」


碧斗と美里が呟く様に言うと、残りの3人は冷や汗混じりに無言で頷いた。


「その日の夜、雨が降りそうだったかなんかで、儂は外に自分で栽培している畑を見に行ったんじゃが、そこには見知らぬ人物がおった。見慣れない服装に、我々とは少し違った訛りがあったそやつを、儂は旅人だと予想した」


「怪しいと、思わなかったんですか、?」


「正直、敵かとも思ったわい。じゃが、行く当てもなさそうな様子を見ちゃあ、助けないわけにもいかんってもんじゃろ?敵だったら敵で、儂が返り討ちにしてくれる」


自信満々に胸を張るグラム。それに柔らかく笑って対応すると、声色を戻して「そして」と続ける。


「家に置いてやると、そう言ったんじゃ、でもやつは"そんな話信用できん"と、話を聞かんくての、結局何処かに消えてしまったんじゃ」


「え?それじゃ、その後にどこかで会えたって事ですか?」


「ああ。その容姿からヒロトは街のチンピラに目をつけられてな、よく喧嘩をしとったと聞いておる。ヒロトは、喧嘩はめんどくさいと考えるやつじゃが、その時は何か言われたのか、殴り合いの喧嘩をしちょった」


殴り合い、?と碧斗は首を傾げる。大翔が殴り合いなんてものをしたら、一瞬で勝敗は決まり、場合によっては相手を殺めてしまうほどの力だというのに、一体「殴り合い」とはなんなのだろうか。手加減をしてあげていたのだろうか。と、そう思考を巡らせる碧斗をよそに、グラムは続ける。


「その喧嘩の後だったんじゃろう。ただ何をするでもなく座り込んでいるヒロトの姿が見えた。目立った傷などはなかったが、"見えない傷"がやつにはつけられていたんじゃろう。と、そう思ったんじゃ」


「それで、助けたんですか?」


「でも、また、拒否されちゃうんじゃ、」


「そりゃ断られたわい、だけどそれくらいじゃへこたれるもんかい」


そう言うと、グラムは笑う。言葉では語っていなかったが、おそらく長時間の説得や言い合いでもしたのかもしれない。だが、それに関しては本当に謎だった。グラムがそこまでして大翔を助ける理由なんて無いはずなのだが。それでも助けたいと思う純粋な気持ちが、この人にはあるのだろうか。


「ヒロトは人間不信ってわけではないんじゃが、難しい奴だからな、大変なところもあるとは思うが、、あやつをよろしく頼む」


「い、いや。だから友達じゃないってーー」


「それは分かっておる。友達なんて大層なもんにならんくてもいい。だけど、たまに気にかけてはくれんか?」


真剣な声音に皆は顔を見合わせ数秒考え込むと、頷いて口を開く。


「分かった。だけど、向こうからしたら俺らは敵と思われてる。だから話が出来る保証は無いけど」


確かに大翔は敵であり、何度も殺されかけた。だが、それで向こうが信じてくれないからと(さじ)を投げ、責任を放棄する訳にはいかないのだ。今、目の前にいる男性は、たとえ信じてくれなくて、何度も抵抗されようとも何度もぶつかったのだ。ならば、と。そう考えた碧斗はそこまで言うと、一呼吸間を置いて真剣な眼差しを向けて言う。


「任せてください。ここに居るみんなは見捨てる様な人達では絶対にないので」


そう力強く言い放つ。その眼差しに、グラムは目を(しばた)かせたかと思うと、笑顔になる。


「そうか、やはりあんたらに話して正解じゃった様じゃな。色々あったせいでヒロトは難しいかもしれんが、お主らならやってくれるかもしれんの」


噛み締める様に笑うグラム。だがそれとは対照的に、疑問に思った碧斗達は首を傾げて聞き返す。


「あの、色々って、、何があったか知ってるんですか?」


すると、少しの間5人の顔を見回す様に凝視する。その後、何かを納得したかの様に一度頷くと、息を吐く。


「うーん、お主らなら、話しても良さそうじゃな」


「「「「「え?」」」」」


「別にヒロトがそう簡単に話してくれた事じゃないが、毎日毎日夜になるとうなされておって、寝言を聞いていくうちに、なんとなく分かっていったんじゃ。その後、ヒロトは少しずつではあったが、全てを話してくれたんじゃ」


あの人を信じきれない大翔が自分の過去を口にするなんて、よっぽどこの男性は何度も説得を繰り返し、信頼される存在になったのだろう。そんな大切な話を聞いていいのか不安になったものの、今は寝床探しなどはどうでもよく、少しでもグラムや大翔の力になりたいという思いが碧斗の頭を埋め尽くしていた。それは、碧斗以外の皆も同じ様で、真剣にその話を聞こうと身を乗り出した。すると、


「これは、ヒロトがここへ来る前の話じゃ」


そう前置きすると、グラムはゆっくりと口を開いた。

今日はクリスマスなので、そういう内容にしたいという気持ちがあったのですが、上手く合いませんでした。真剣な話になっていくので、もっと後書きを書きたいとは思いますが、このくらいで終わりたいと思います。

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