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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第2章 : 喪失感と葛藤(アジテション)
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47.発見

「ここで終わらせてやるよぉ!」


改めてそう叫ぶと、碧斗(あいと)達にもう1度襲いかかる。


「く、来るぞ!」


「ここは一回逃げた方が良さそうだね」


「りょーかい。逃げっぞ碧斗」


樹音(みきと)の提案に頷くと、碧斗に促す(しん)。その視線で"やって欲しい事"を察した碧斗は煙を出し、美里(みさと)がそう簡単に逃げられない様に大翔(ひろと)の周りに炎の輪を出現させる。


「クッ、てめぇらぁ、また逃げる気かぁ!?」


またもやそう声を荒げると、火がまとわりついている事もお構い無しで煙に猛突進する。が


「ぐはっ!」


「何か」にぶつかり、尻餅をつく。何が起こったのか分からずに目を白黒させる。


「な、なんかいんのか!?」


訳が分からずにそう叫ぶと、煙がゆっくりと薄れて"それ"の全体像が写し出される。



そこには、立派な岩が立ち尽くしていた。



「っ!?あ、あいつらぁぁーー!」


碧斗達を完全に見失った大翔はそう叫ぶと、拳を力強く握った。


           ☆


息を切らした碧斗達は商店街の裏へと戻り、身を隠した。


「はぁ、はぁ、なんとか逃げられたな、、はぁ、」


昨日からずっと走りっぱなしなのと、能力を多用しているせいで疲労がどっと押し寄せる。「疲れた」などとマイナスな言葉を吐きそうになったが、ずっと走っているという点では皆同じであり、能力に関しては自分の何十倍も使用している人達がいる前でそんな事を言うのは野暮というものだ。と感じた碧斗は慌てて口を紡ぐ。


「でも、この時間帯の外出は控えた方がいいかもね」


「この時間って言うか、あんた達は狙われてるんだからいつもだと思うけど」


「で、でも、外出とかの前に、家がない、」


碧斗、樹音、美里が次々とそう口にしたのち、沙耶(さや)が小さく呟き、皆表情を曇らせる。


あれから何も進展はなく、結局白紙に戻っただけである。いや、大翔に目をつけられたという部分を考えると悪化してしまっただけのようにも感じる。そう思い、バツが悪そうに呟く。


「元はと言えば俺のせいだ、、ごめん」


「えっ!?いきなりどうしたの!?」


「そ、そんな事ないよ!」


「は?何それ。かまって欲しいの?きもっ」


「どうした碧斗、病み期か?」


皆の反応を見て「この事」はただ自分の脳内で考えていただけに過ぎなかった事を理解し、言葉に詰まる。すると、突然何か思い出した様に進は手を合わせた。


「あっ、わりぃ!俺、そろそろ戻んなきゃいけないわ」


進はそう言って立ち上がり、ズボンについた砂を払った。


「そうだよな、進もずっとこっちに居たら怪しまれちゃうしな」


「ありがとう!佐久間(さくま)君、助けてくれて!」


「ほんと、佐久間君が居なかったら僕たち今頃やられてたかもしれない」


皆から称賛の声を貰い、微笑む。


「いやいや、御礼にゃあ及ばないぜ!」


「いや、あんま調子乗りすぎんなよ?でも、まあ、本当に助かった。ありがとう」


進がニヤリと笑い手を前に出すと、碧斗は苦笑いで返す。


「まっ、後でご馳走でも奢ってくれたらオッケーと言うことで」


「なんか更に話進んでません!?」


話が大きくなってきた事に焦りツッコミを入れる。その後、一呼吸置き改めて美里に向き返る進。


「それで、相原(あいはら)さんはこれからどうするの?」


「こいつと一緒にいる事にする、、けど、正直これからどうなるかは分かんない」


「う、ごめんなさい、」


美里の冷淡に呟かれた言葉に、後ろめたさを感じた碧斗は謎に謝る。「なんで謝るの?」と言った表情で見られたが、目を逸らした。


「うーん、俺も力になりたいけど、これ以上居たら俺を探しにきた人に場所バレる可能性もあるし、、申し訳ないけど、これ以上は手助けは出来んなぁ」


「ううん!もう十分助けてくれたんだから大丈夫だよ!ありがとう」


「ここからは僕たちの事なんだから、僕たちがなんとかするよ。だから佐久間君は安心して大丈夫だよ」


「ああ。これ以上助けられても頭が上がんないからな」


「そういうノリが不安になるんだけど、、でも、いつまでもあんたの力借りるわけにもいかないんだし、自分の事先に考えた方がいいよ」


「はい、後はわたくし共にお任せください。ですが、またいつか機会がございましたら顔を見せてくれるとありがたいです。ここの勇者様達も喜ぶでしょうし」


沙耶と樹音、碧斗と美里、そしてマーストは順に進に声をかけた。それを聞いた進は、何故か嬉しそうにはにかむと、相変わらず高いテンションで「おう!絶対また来るぜっ!」と笑って手を振ると、早足で来た道を戻るのだった。


「ふぅ、ほんと、助かったな、」


遠くなる背中を見据えながらしみじみ呟く碧斗に「うん、本当に」と樹音も同じく呟いた。


「で?こっからはまた白紙に戻ったって事だけど、前も言った通りこの際私は野宿でいいから早めに寝床だけは確保して置いた方がいいんじゃない?」


「ほ、本当に、い、いいの、?相原さん」


「は?もうそれ以外ないんでしょ?ならそうするしかないじゃん」


「う、うん、そう、だけど、、水篠(みずしの)さんも本当に大丈夫?」


「うん!相原さんも一緒なんだし、全然大丈夫!」


「そ、そっか」


驚きに声が裏返る碧斗。だが、直ぐに気持ちを切り替えて頷く。


「じ、じゃあ、そういう事にして」


「うん!それじゃあどこで寝るか探しに行かなきゃだね!」


「「う、うん」」


碧斗と樹音は沙耶に圧倒され声を濁らす。美里が来てから、なんだか沙耶が元気になっている気がする。やはり、女子が1人でも加わるだけで気持ち的な面で大きく違うものがあるのだろう。おそらく美里は沙耶にとって女子友達の様な感覚なのだ。こんな状況下で今まで話すらあまりしてこなかった2人が、仲が良くなっていっている事を理解した碧斗達2人は、顔を見合わせて微笑む。


「えっ、ど、どうしたの?2人して」


「ふふっ、いやいや、なんでもないよ」


和やかな雰囲気が漂う中、平和ボケしていた碧斗達を現実に引き戻すかの様に美里が割って入る。


「はいはい。それよりもまずやるべき事があるんじゃないの?」


「あ、ああ、そうだよね。よし!とりあえず寝られそうな場所を探そう」


碧斗の提案に異議は無かった様で皆は頷く。その時、その中に恐る恐るではあったものの、樹音は割って入る。


「えっと、その事なんだけど、ちょっとみんなに聞いて欲しい事が」


「何々?」


「なんか提案あるの?」


「えっと、実はーー」


「あぇっ!?」


沙耶と美里に促され、樹音が言い始めようと口を開けたその瞬間に碧斗がよく分からない声を上げる。それに対し、皆は不審な目で見つめる。


「い、伊賀橋(いがはし)君、どうしたの?」


「ご、ごめん円城寺(えんじょうじ)君、だけどちょっと見てくれ」


「え?」


樹音が心配そうに碧斗に詰め寄ると、路地裏の外を指差して続ける。


「あれ、さっきの(たちばな)って人だよな?」


「あっ!本当だ」


指を指した先には少し大きめな民家に入っていく大翔の姿があった。


「えっ、ほ、ほんとだ、」


「もしかしてあそこの家に住まわせてもらってるのか、?」


「ちょっと待って。あんた、さっき何か言いかけてたけど、」


「あ、いや、それは大丈夫だよ、」


遠慮気味に小さく手を振る樹音に腑に落ちない顔で「そ、そう?」と呟く美里。


「正直気になるが、とりあえず今はあの家を観察するか。何か掴めるかもしれない」


美里とマーストは樹音の言動が気になった様で賛成している様には見えなかったものの、本人と沙耶が頷いている姿を見て、渋々了解する。


その後、碧斗は力強く頷き返して決意を露わにすると、皆の方へ1度目線を送り、路地裏から足を踏み出した。

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