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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第7章 : 関わり合いと処罰する者(パニッシュメント)
296/300

296.回収

大内涼太(おおうちりょうた)君みーっけっ!」


「「「なっ!?」」」


 その一言に、碧斗(あいと)大翔(ひろと)のみならず、涼太(りょうた)も声を漏らす。


ー何が起こった、?今の一瞬で、、気づかれたのか、?ー


 涼太は冷や汗を流す。影からの一撃。毒を与えて逃げるつもりだったがしかし。

 何を間違えた。

 何で気づかれた。

 涼太はそんな事を思いながらも、今はそれどころでは無いと思考を変えようとする。が。


「絶対に死なせるなっ!」


「言われなくても分かってる!」


 碧斗がそう声を上げると、大翔が必死に起き上がり、涼太に向かう。このままだと、そこから無数の岩が生えて後戻り出来なくなる。そう思ったが、しかし。


「ぐはっ!?」


「大翔君っ!」


 突如大翔の足元から岩が生えて足を貫く。それに驚愕した碧斗は、大翔の元へ。では無く、(りん)の方へスピードを出して向かった。


「お」


「らよっ!」


 その勢いのまま、煙の圧力を利用して蹴りを入れるが、彼もまた圧力でそれを耐えると、カウンターをする様に、圧力で碧斗を殴る。だが。


「させるかっ!」


「っ」


 碧斗は大量の煙を放出する。それにより、煙を吸収しようとする凛だったものの。


ーなんだよこの量!?多すぎんだろっ、!ー


 凛が目を見開きそれを思うと同時。対する大翔は足の岩を破壊し涼太へ向かうと、彼を岩から引き抜く。


「クッ」


「どうだ、?お前の能力は、、はぁ、岩の能力じゃ無いっ、だからこそっ、はぁ、水篠(みずしの)さんの様に、岩の感覚が繋がるわけじゃない。つまり、視界を奪えば、狙うのが大変になる、、そうだろ、?」


「何だよ、今それ、俺に行ったのか?」


「ああ、お前以外に誰が居るんだよ」


「生意気な事言ってんじゃねぇぞ」


 それに、凛が小さく零すと、背後に大量の石を浮かせて口を開く。


「見えなくても、全部壊せばどっちみち一緒だろ。それで終わり」


「っ」


 凛の言葉に、碧斗が目を見開くと、次の瞬間。


 その場一帯を覆い尽くす量の岩を放った。が。


「うおらぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「おお」


 大翔は、必死に全てを破壊する。それに、思わず凛が声を零したものの。


「素晴らしいな。でも、それとは比例しない」


「なっ、クッ!?」


「っ!」


 突如、圧力を自身に与えてその勢いのまま煙を裂く様に凛が現れる。それに対抗しようとしたものの、岩を破壊していた構えからは攻撃のしようがないと。僅かに後退った。すると。


「ナイス判断だっ!大翔君っ!」


 碧斗がそう声を上げ、突如。


「っ!」


 大量の煙の中、それを膨張させる事で彼を吹き飛ばした。すると、それに追撃をするかの如く、大翔が必死に殴りに入る。だが、それを空気圧で防ぎながら、指一本を前に出して圧力で殴りを止める。


「クッ、、お前、能力ねぇと何も出来ねぇだろ、」


「君も、能力無かったらもう五回は死んでる」


 そう返すと、指を弾く。それと同時に、その空間は震え、大翔が弾き出される。が、それを利用し。


「スモークミストッ!」


「また煙か、」


「今回は呼吸が難しくなるほどのだ。そう簡単には逃げられない」


「顔に何もつけてないってのを確認してからの方がいいぞって、教わらなかったか?」


「確かにそうだったな、でも、今回のそれは、呼吸困難だけじゃ無いって話だ」


「何、?」


 碧斗はそう告げると、指を上に上げる。それと共に、その煙は濃くなり、視界を奪うと共に上空から地面に向かって大きな圧力を与える。


「クッ」


 それに、僅かに反応が遅れた。その瞬間に。


「やれっ!」


「うおっしゃぁ!」


 大翔は足を踏み出す。と、それと同時に、その足裏に煙を出現させ、その膨張で彼のスピードも早め、勢いをプラスして凛に向かう。

 が。


「はぁ、だるいんだよなぁ、そういうの」


「「っ!?」」


 凛がそう零すと同時。彼を中心に全方位に向かって大きな圧力が放たれる。それにより大翔と煙まで押し出され、碧斗は目を見開く。

 マズい、このままだと。そう思った矢先。


「もう終わりにするぞ?俺も忙しいんだよね」


「っ」


 凛はダルそうにそう口にすると、碧斗の目の前に瞬時に現れ殴りを入れる。


「かはっ!?」


 それも、圧力を含んだ殴りだ。それに踏ん張るものの、更にその上から。


「かっ!?」


 圧力が更に加わり崩れ落ちる。そんな中、凛は更に大翔の元へ瞬時に移動すると、同じく殴りを入れる。それと同時に、対する碧斗は振り返るものの、そんな彼に地面から岩が飛び出し足を貫く。


「ぐぅ!?がぇ!?」


「っ、碧斗っ」


 それに、腕で圧力を押さえていた大翔が目を剥くと、その隙を狙って足を蹴ってバランスを崩し、上からの圧力で崩して地面からの岩で貫く。


「ぐうぇ!?」


「こんなもんか?」


「っ」


 二人を動けなくすると、そこから数メートル先。蹌踉ながら走る涼太に向かって大量の石を放つ。それにより。


「ぐあっ!?」


 その内の一つが、彼に激突する。と、共に。


「回収」


「なっ」


 激突した石は変形し、空中で涼太を包み込む。


「大内君っ!」「おまっ」


「...やめろ、っ、やめてくれっ、頼むっ、、たすけっ」


 と、そののち。


「じゃあな」


「っ!?」


「やめろっ!」「おまっ!?」


 凛が、拳を握りしめる。それと同時に、その岩の"内側"から先の尖った、突出したものが生えて、岩を貫通して反対側にそれの先端が現れる。と、そのまま。


「まあ、一応?」


 凛はそう軽く言うと、手を下に向ける。それによって、その岩にかかる圧力が更に強くなり、見せしめの如く空中で潰された。


「っ!」


「やめろぉぉぉっ!」


「ここまでやったんだ。終わりだな」


 碧斗と大翔は必死に体を動かして声を上げるものの、上から押しつけられる圧力に勝る体力はもう既に無かった。


「っと」


「「っ!」」


 凛が手を下ろすと同時。その岩も地面に落下し、叩きつけられた。


「お、、大内、君、」


「っと、、このくらいやんないと能力採取出来ないのが問題なんだよな、、身体が残ってると、能力は未だその人のものとして扱われるから、、ちゃんとその人の器も崩して、能力のみが残される状態にしないと、回収出来ないってところがネックだ。ほんと、これまた面倒な能力だよ」


「ぐぅ!?」


 凛はそう言いながらその、中から血が溢れる岩へと向かう。そんな彼に、必死に向かおうとしている大翔だが、圧力を更に強められ思わず声を漏らして倒れる。そんな中、一方の碧斗もまた起き上がろうとしているものの、凛は手を横に流すと、その岩が崩れて中の"涼太だったそれ"が露わとなる。


「クッ!?」


 それに、大翔が思わず歯嚙みする。見た目も辛かったが、それ以上に。

 認めたくなかったのだ。見なければ、まだ生きていると、現実逃避出来たのにと。大翔は拳を握りしめる。

 すると、対する碧斗はその姿に。


 目を、剥いた。


「あれって、、まさか、」


「ん?」


「あの、、酷い有様、、形も残されてない様な、あんな最悪な殺し方、、そして、身体を壊さなきゃいけない、、お前、」


 碧斗はそこまで考えたのち、目つきを変えて彼に放った。


「能力を回収、吸収するために、、身体を壊さなきゃ、いけないんだよな」


「ん?ああ、そうだな。その部分だけが面倒なんだよ。毎回身体をしっかり破壊しなきゃいけないわけだからな」


「...お前、、まさか、」


「ん?どうした?」


 凛が涼太に向かいながら、僅かにこちらに顔を向けると、碧斗はそれを察して目の色を変える。


「お前、、(しん)の、、空気圧の能力、、持ってるんだよな、?」


「ん?今更どうした?ああ。もう嫌というほど受けてるだろ。今受けてるこの圧力こそ、彼の空気圧の能力だ」


「...って事は、つまり、、進の、遺体を、あそこまで無残な姿にしたのは、、まさか、」


「あー、、そういえばそうだな。あの殺人鬼、修也(しゅうや)って奴さ、そのまま凍らせてたから面倒だったんだよな」


「っ」


 碧斗はその一言に、目を見開く。その話が本当だとすると、修也は進をそのまま凍らせただけだったのだ。


ー殺すにしても、修也君がどうして、、苦しい思いをさせないために、?いや、それよりも、ー


 碧斗は一度目を細めたものの、それどころでは無いと、目の色を変える。修也が彼をそのままの形で凍らせて殺したのであれば、あの時見た姿とは大きく異なる。即ち。


「お前が、っ!あんな風にしたのか!?」


「あんな風って。もうどんな風だったかなんて忘れたんだけど。結構前だろ?それ」


「っ」


 碧斗は歯嚙みする。ああ、こいつは、人を殺める事に、何の感情も湧かないんだろうな、と。そう思いながら。


「でもあの時は大変だったな。まだ能力も回収出来て無かったからさ。でも、本当に殺し合ってくれて助かったよ。そのお陰で、強い能力を得られたし、このままいけば、新たな世界も作れる」


「お前には、絶対っ、やらない」


 碧斗はそう低く。だが強く放つと、煙を放出して彼の元へ向かう。


「おお?やるか」


 それに、凛が振り返った。

 ものの。


「おっと、何、?」


 碧斗は凛。では無く、その後ろの涼太に目をつけ、そこに移動すると。


「大翔君っ、!少しだけっ、耐え切れるか!?」


「っ!はぁ、、ほんと、無茶な事言ってくれるぜ、」


 碧斗の言葉に、大翔は俯き息を吐くと共に微笑み、顔を上げてニッと笑みを浮かべた。


「任せろっ!お前の方こそ、絶対離すなよ?」


「ああ。絶対、涼太君を渡してたまるかっ、!」


 碧斗はそう告げると、涼太だったそれを圧力で集めて持ち上げると、走り出す。


「あいつ、、肉片を、、そうか。俺が能力目当てなのをしってるからな、」


 凛はそう息を吐くと、足を踏み出す。だが。


「っ」


 突如、勢いよく何かが後頭部にぶつかる。それに目を見開き振り返ると、そこには。


「ぜってぇ、逃がさねぇからな」


 周りにあったものを蹴ってぶつける大翔の姿があった。


「はぁ、面倒だな」


 それに、凛が息を吐くと、大翔は強く踏み出し彼に向かう。それを空気圧で弾き、そのまま歩き出すと、そうはさせるかと。その圧力を利用して大きく跳躍し、そこからの落下の勢いを使って地面を大きく殴る。それにより、地面の形が変形し、運ぶ碧斗を追う凛の目の前が盛り上がって、まるで壁の様にそれが現れる。


「めんどいな」


 それに、凛は息を吐き大翔に振り向いたものの、そこにも地面の変形による壁があった。だが。


「よっと」


 それに対しても、自身を包む岩を使って盛り上がって壁となった地面を貫通させて岩の腕を伸ばす。


「がはっ!?」


 それによって顔面にそれが入った大翔は僅かに隙が出来る。すると、続いてその地面の壁を破壊して凛が眼前に現れ、それを瞬時に防いだものの、圧力によって吹き飛ばされ、その先で。


「じゃあ、少しの間ごゆっくり」


 凛はそう微笑むと、地面から岩を生やして大翔の周り全方向を封じて閉じ込める。


「クッ、てめっ!」


 大翔はその岩を破壊するものの、またもや地面からは岩が生える。


「クソッ!」


 大翔は何度か繰り返すものの、一向に向こう側が見えてこない。彼の能力の限界を知らないため、これを行いながら、なんて事もあり得るのだ。


「早くっ、抜け出さねぇとっ!」


 大翔はそう焦りながら岩の壁を破壊し続ける。


 その一方で、碧斗は必死に運びながら走る。


「とにかくっ、遠くへっ、!」


 碧斗は必死に周りを見渡す。どこか、隠れられる場所は無いか、と。それを思うがしかし、碧斗はそれを運びながら、気づく。


 ーー肉片の中に、彼を包んでいた岩が崩れた際の破片が、入っている事に。


「そうだ、、岩の能力は、確か、空中生成は出来ないけど、岩を操ることが出来る、、ってことは、っ!」


 碧斗はそれに気づき、退こうとしたが、その瞬間。



 既に遅し。目の前の破片が突如爆散し破片がまるで弾丸の様に、碧斗腕を抉る。



「がぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


「逃げるなって。まあ、弱者故の行動か」


 碧斗は腕を押さえながら、息を漏らす。そんな彼に、凛は背後からゆっくりと。空気圧による浮遊で上空から現れた。


「はぁ、、はぁっ」


 碧斗は、絶対に渡してたまるかと。煙を放出して上空の凛に向かう。だが。


「おらよっと」


「クッ!」


「お」


 空気圧によって碧斗は弾き飛ばされる。と、思われたものの、それを煙の圧力で耐える。


 が。


「やるじゃん!」


「がはっ!?」


 その後ろから凛の蹴りが入り、碧斗は地面に叩きつけられる。


「がはっ!?」


「じゃあ、いただくよ」


 その隙を狙って、凛は涼太だった肉片に近づく。


「いやぁ、相変わらずキモいなぁ。でも、これ触んないと能力吸収出来ないんだよねぇ、、マジきしょいななんだこれ」


 凛はそう言いながらそれに手を伸ばす。


 と、その時。


「っ」


 背後から岩が飛んで来て、凛の頰を擦る。


「おっと、抜け出したか」


「はぁ、、はぁ、させねぇ、」


 振り返るとそこには、大翔が先程の岩を破壊し、その破片を蹴り返してこちらを狙う姿があった。それに、凛は息を吐くと、こちらに向かう岩を全て留め、空気圧で大翔を吹き飛ばす。


「がはっ!?」


 そののち、先程空中で留めた岩の数々を彼の元へ向かわせる。それに、大翔は歯嚙みしながら殴りを入れて防ごうとするが、しかし。


「なっ、これって、!?」


 そう。破壊された岩の数々が、それぞれ形を変えて大翔の体を。まるで凛の鎧の如く体について固定する。


「クッ!?はぁ!?クソッ、どうなって、」


「そこで見てろって」


 凛はそう微笑み告げると、その肉片をーー


「やめ、ろ、」


 碧斗は必死に、手を伸ばし掠れた声を上げる。ものの。


 ーー彼は手で取り、能力を吸収した。

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