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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第7章 : 関わり合いと処罰する者(パニッシュメント)
295/300

295.可能性

「さて、、そろそろ効果が出てくる頃か、」


「なんとか、、ここまでは来てないな、」


 涼太(りょうた)と遠くへ避難した碧斗(あいと)は、建物の影でそう息を吐いた。


「みんな、、無事だと良いけど、」


「無事とは到底思えないけどな。あいつがここまで来てないんだ。相当、粘った結果だろう」


「...だとしても、、まだ分からないだろ、」


「せいぜいそう思ってろ。お前が思う程、この世界は甘くない」


 碧斗が拳を握りしめ振り返る中、涼太はそう息を吐いて歩き出す。


「おいっ、何処行くつもりだ、」


「もうそろそろ効果が出始まる。そしたら俺はもう逃げる必要も無いし、お前と一緒に居る必要もなくなる」


「...まあ、、そうかもな、」


「その後、お前も時間をズラしてあるが、毒の効果が出て死ぬ。助かったよ。お前のお陰で、俺のタスクは全て完了した」


「みんなが、、死んでるとは限らないだろ、」


「まあ、そうだとしても、直ぐに俺が終わらせるさ」


 涼太はそう微笑むと、踵を返す。それに、碧斗は歯嚙みし足を踏み出すと。


「お?どうした?俺を殺すか?まあ、既に体内に毒が入ってる場合、相打ちを狙うしか無いだろうからな。そうするなら、してみろよ。そう簡単にはさせないけどな」


「いや、、そんな事はしないよ。その前に俺は、、大内(おおうち)君を納得させて、大内の判断で毒を解除してもらう」


「ハッ、、相変わらず頭がお花畑だな。俺の目的は変わらない。お前らを粛清するのは俺だ。つまり、どれ程御託を並べようが、俺の意思は揺るがない。何を話しても、犯罪者による弁護でしか無いからな」


「確かに、、その通りかもしれない、、でも、」


「でも?なんだよ。俺を納得させる程の力があるのか?お前がいくら良い言葉を考えようとも、お前が放っている時点で俺は聞くつもりはない。それよりも、先に魔法石を取って来た方が賢明な判断だと思うけどな」


「それは、、考えたよ、、でも、さっきの、現世での話を聞いて、こっちを選んだんだ」


「さっきの現世の話?」


「ああ、、ただ、樹音(みきと)君をいじめてたわけじゃ無いって話だ。樹音君をいじめていた事も、樹音君の友達をいじめていた事も、許される事じゃ無い。だけど、それが処罰を受ける対象であると分かっていて。自分が嫌いな存在になる覚悟を持った上で、それをするくらいの、出来事に対する向き合い方を聞いて、、俺は、ちゃんと、話をしたいと思った。いや、、寧ろちゃんと話さなきゃ駄目だ」


 碧斗は真剣に、涼太の目を見て告げる。と、それに。


「...それを話してどうなる?何か、変わるとでも思ってるのか?」


「変わっても変わらなくても、、俺は、大内君を知りたいと思ったんだ。結果がどうであれ、今ここで君を倒すつもりはないよ」


「そうか、、まだそんな生ぬるい事考えてるとはな、、だが、話をし終わるよりも前にお前の命が尽きるぞ」


 涼太はそう口にすると、時間稼ぎだと言わんばかりに振り返る。


「じゃあ、聞いてやろう。お前のその、話ってやつを。死ぬ前に残す、最後の言葉になるだろうそれをな」


「...ありがとう、、聞いてくれるんだな、」


 碧斗はそう感謝を告げると、改めて目つきを変え放った。


「大内君、、君は、、何のために戦ってるんだ、?」


「何のため、?...そうだな、、お前らは少し勘違いをしてるみたいだ」


「か、勘違い、?」


「ああ。俺は、目的のために戦ってるんじゃ無い。処罰を与えるために、粛清の為に動いているだけだ。それが、戦う事に結びついているってわけだな」


「なら、、大内君はずっと、、俺らを、処罰対象である俺らをずっと、粛清しようとしてた、、って事か、?」


「ああ。最初から、それは変わらない。そう言ってるだろうが。それのためのチームを作り上げたり、裏でやり取りをしたり、、色々あったが、理由はそれだけだ。だが、何よりも大切だと思っている。この世界には、俺ら異世界人を取り締まるものが、何も無い。だからこそ、処罰を与える存在が居なくちゃいけないんだ」


「なるほど、」


 彼の言葉に、碧斗は目を細める。この言い方。


「なぁ、、それって、、智也(ともや)君と、同じなんじゃ無いのか、?」


「何、?」


「大内君の考える、その世界は、、智也君の話してた世界に近いよ、、この、今は無法地帯となっているこの世界に、秩序を生み出すために戦う、、智也君のやっている事と、同じだ、」


「...はぁ、、まあ、そうなのかもな、」


「それなら、、どうして、みんなに毒を盛った、?どうしてっ、そんな、この世界を平和にしようとしてるのに、そんな事っ」


「それは、そいつらがその平和を脅かす存在となったからだ。お前らという存在に、少しでも心が揺らいだその瞬間、そいつはお前らと同等となる」


「どうして、」


 碧斗は歯嚙みする。彼の行いには一貫性はある。それは、現世の事を考えると、なんとなくは分かる。だが、そんな一度の心の揺らぎで。同じ目標を持った仲間を、どうして殺められるのか。碧斗は拳を握りしめる。


「...どうして、、信じてあげられないんだ、」


「何、?」


「どうしてっ、同じ目標に向かうチームなんだろ!?何か理由があるのか!?どうして、、どうしてあの二人を、」


 碧斗は掠れた声で放つ。あの時、沙耶(さや)の前で亡くなっていた姿。大翔(ひろと)のあの様子。それを全て、目撃しているのだ。それを思い返すと、思わず感情的になってしまう。


「...お前、理由が欲しいのか?」


「え、」


「さっきから聞いてると、、そう聞こえるぞ」


「そ、それは、」


「お前は、俺を悪にしようとしていたが、過去を聞いて、そうでは無い"可能性"を考えた。そして、その可能性に賭けたいと。お前は俺に話を持ちかけた。違うか?」


「そ、それは、」


「俺を善人として。扱いたいんだろ?理解したいんだろ?そうだよな。お前はいつもそういう奴だ。相手の話を聞く、話し合うなんて言いながら、結局は自分の中の理想を押し付ける」


「そ、そんなんじゃ、」


「じゃあハッキリと言ってやるよ」


 碧斗が押し黙る中、涼太は声を上げた。


「俺は、あいつらをチームだと。仲間だと思った事は一度も無い」


「っ!」


「俺は、あいつらが"使える"と思ったからチームを作った。あいつらがチョロそうだと思ったから、毒を盛った。それが全てだ」


「お前、」


「俺の理想のために、最適な奴を集めたんだよ。どうだ?これが事実だ。お前のその平和ボケした想像とは、違う。現実だ」


 涼太がそうニッと、不敵な笑みでそう告げると、碧斗は足を踏み出し顔を上げた。


「ふざけんな、、あの人達は、、みんなっ、大内君の考えを、支持してくれてたじゃ無いか!同じ目標に、向かえる人達だったんじゃ無いのか!?それなのに、、どうして、どうしてそんな、」


「あー、、そうだな、、お前はまた一つ勘違いしてるみたいだから、教えてやるよ」


「え、」


 涼太はそう前置きすると、少し間を空けて低く告げた。


「今生きてるのがあいつだけだから、智也の話でいくと、あいつ、そろそろ潰れるぞ」


「何、?」


「まあ、お前の言う通り。俺とあいつの思考というか、最終目標は同じだ。だからこそ、お前の言った通り、二人で目指す事も可能だった。だが、俺らを見ていれば分かると思うが、俺らは」


 涼太はそう言いながら碧斗に近づくと、目の前で見下す様にして付け足した。


「この世界の秩序を守るために、ただ一人の存在になりたいと思う人間だ」


「っ」


「だからこそ、二人で目指すのは不可能なんだよ。あのまま二人でやってても、結局お互い潰し合って、終わってたよ」


「ど、どうして、」


「どうして、同じ目標に向かう奴らは協力出来ないかって?お前、まだそんな事考えてんのか。いいか?この世界はな。目標は同じでも、手段が違う奴。目標は同じでも、最終目標は違う奴ばっかりだぞ?目に見えているものが全てじゃ無い。俺らは、見えない部分で、一緒に見えて一緒じゃ無いんだよ」


 涼太はそう言いながら息を吐く。それに、碧斗が歯嚙みすると、対する彼は付け足す。


「それに、俺がどうこうしなくても、結局みんなあのままだったらこの世界に潰されてたよ。さっきも言ったが智也はこのままだと潰れる」


「どういう、意味だ、?」


「あいつだよ。智也が一緒に居るあいつ。あいつからは、、別の目的の匂いがする」


「っ」


「智也だけじゃ無いが、俺がパニッシュメントに入れたメンバーはみんな、"騙されやすい"んだ。だからこそ、俺の管理下から外れても、ああやって使われる。それで終わったら捨てられる運命だ」


「そ、そんなの、、分からないだろ、」


「自信無さそうだけどな」


「クッ、」


 碧斗は拓篤(たくま)との際の裕翔を思い出し目を細める。


「でも、、少し安心したよ」


「は、?」


「君は少しでも、、他にあの人達を利用しようとした連中から、みんなを離そうとしたんだろ、?」


「取られる前に取っただけの話だ」


 涼太はそう言い切ると、碧斗は目を細める。


 と、その瞬間。


「っ!げほっ、かはっ!」


「さて。いい時間だな。めんどくせぇ話頑張った甲斐があった。お前を回復に行かせずに仕留める事が出来る」


 涼太はそう笑うと、見下す。


「お前の能力的に飛んで回復しに行ったら俺は何も出来ないからな。助かったよ」


「クッ、」


 涼太が放つと、碧斗は拳を握りしめてゆっくり立ちあがろうとする。


 が。


「がはっ!?」


「どうした?」


「グッ、」


 涼太は、起き上がろうとした碧斗の背中を踏みつけて地面に這いつくばらせる。と、それに碧斗は彼を睨みつけながら口を開く。


「...大内君は、、俺らを殺して、その後どうするつもりなんだ、?」


「お前らを倒して、?そんなの、一つしかない。桐ヶ谷(きりがや)修也(しゅうや)を、俺が粛清する。そして、転生者がこの世界の人間を傷つけない世界へと作り変え、違反者は俺が処罰を下す。その流れを、作り上げる」


「そうか、」


 碧斗は小さく零し考える。修也をなんとかしたいのは、こちらも同じだ。どこかで、協力出来ないかと。先程の話を思い出し甘い考えでは無いかと思いながらも、それを交渉という形で出来るように、どう切り出すか悩む。

 と、刹那。


「ごはっ!?」


「っ、」「ん?」


 突如、上空から一人の人が落下し叩きつけられる。


「な、なんだ、?」


「ごはっ、げほっ、ぐはっ」


「っ!大翔君っ!?」


 そう、空から勢いよく落下し叩きつけられたのは、他でも無い。(たちばな)大翔だった。


「大丈夫か!?」


 碧斗は慌てて駆け寄り、声をかける。すると、それに大翔は、小さく。


「にげ、、ろ、」


「え、?」


「はや、く、にげ、」


「に、にげ、?って、まさか、」


「涼太をっ、、連れて逃げろっ、!俺らがっ、勝てる相手じゃ無いっ、!」


 大翔がそう掠れた声で放つと、碧斗はハッとし涼太に振り向く。と、そこに。


「おっと、みんなお揃いじゃん。いやぁ、ツイてるなぁ。探す手間が省けたよ」


「お前、、なんで、」


 ゆっくりと。上空から喜佐見凛(きざみりん)が、空気圧を調整して、まるで見えない階段を下りるかの如く様子で現れる。それに、涼太が怪訝な表情を浮かべ小さく零す。と、それに、凛はニッと。爽やかに微笑む。


「え?なんでってそりゃ、君の能力が欲しいからね!」


「そうじゃ無い、!お前に、、毒を、与えてた筈だっ、!もうとっくに、時間経過で毒が広がってる筈だ、、それなのに、、どうして、」


「あぁ、そういえば。そんな事もあったな。まあ、なんとかラッキーで助かったんだ。丁度」


 凛はそこまで告げると、手に持っていた「それ」を見せる。


「このヒールの魔法石が、目の前を転がっててさ。最高のタイミングだったから、本当に助かったんだよね」


「嘘、だろ、」


「お前っ、!まさか、」


 涼太が絶望する中、碧斗は先程我々が使用したものだと察して目の色を変える。これは、自分のせいだ、と。

 それを思うと同時に。


「スモークバーストッ、!」


「「っ」」


 涼太と凛の間に煙を発生させ、その暴発力で二人を引き離すと、碧斗はその間に入り込み手を広げる。


「大内君っ、!早く逃げっ、ごぽっ!?」


「なっ、おま、」


「クッ、ソ、、こいつに吸収されたらっ、この世界は終わるぞっ!」


 碧斗の言葉に、涼太は歯嚙みし、少し悩んだものの、仕方がないと。舌打ちをし頷いた。すると。


「なるほどなっ!弱き者を守るかっ!素晴らしい心意気だ!」


「...何、?俺が、弱き者だと、?」


「...やめ、ろよ大内。安い挑発に乗んじゃ、ねぇ、」


「チッ、」


 凛がそう微笑み告げる中、涼太が振り返ると、大翔はそう割って入る。


「はぁ、余計な事言うなよぉ、、良いところだったじゃん?弱いのにしゃしゃんな。ここはお前のステージじゃ無い!」


「がはっ!?」


「大翔君っ!お前っ!」


 凛は息を吐くと、回し蹴りをして背後の大翔を吹き飛ばす。それに、碧斗は声を荒げると、煙の勢いを更に強めて彼の元まで到達すると。


「おらっ、よっ!」


 碧斗は圧力で彼を殴る。それに、吹き飛ばされる凛だったものの、空中で反対から押し出す圧力を生成し留まると、碧斗は足を踏み出す。


ー相手は空気圧の能力、、一度、戦ってる相手だ、、(しん)との時は、、どう、戦ったんだっけ、ー


 碧斗は、圧力でお互い殴り合いながら考える。だが、そんな碧斗に向かって。


「大丈夫かそれ?その戦い方、君死ぬぞ?」


「なっ、!?」


「俺の攻撃が圧力だけだと思うな」


「っ!」


 突如横から巨大な岩が現れ、碧斗は慌てて自身の前に煙を生み出すと、膨張させて自分を吹き飛ばす。


「クッ、」


ーそうだ、、あの時は気候変動で、、でも、喜佐見君は、絶対そういうのはやらない筈、、だとすると、俺は、っー


 碧斗はそこまで考えると共に、思い出す。と、凛の背後に居る大翔に目配せし、目つきを変えると、更に足から煙を放出して向かう。


「くらえっ!」


 碧斗はそう言うと、圧力で殴る。だが、それを凛は押さえると、その瞬間。


「っ」


 その場に、濃い煙が現れた。


「おらよっ!」


「っと!」


「っ」


 突如その背後からは大翔の殴りが、前からは碧斗の圧力が襲い、吹き飛ばされる。


「クッ」


 だが、それもまた空中で止まると、振り返る。だが。


「っ」


 またもやその周りには濃い煙が現れ、横と背後から二人の攻撃を受ける。


「クッ」


 それに向きを変えて、またもや攻撃を返そうとしたものの、同じく煙が現れ、二人の攻撃が向かう。が。


「何回も同じ方法でやれると思うなよっ」


 凛はそう告げると、圧力を自身から外側に向かって放ち、皆を吹き飛ばそうとした。

 が。


「させるかっ!」


「っ」


 自身を取り巻く濃い煙が、突如別のものに変化し、その圧力で封じ込められる。それに、気を取られた瞬間。


「おらっ!」「おらぁ!」


「っ!?」


 二人の攻撃が、モロ。彼に打ち込まれた。


「かはっ」


 それにより吹き飛ばされたものの、またもや途中で留まる。と。


「やるなぁ」


 凛は小さく零し、歯嚙みすると、周りが煙になった瞬間。腕の岩を伸ばして剣にし、タイミングを見計らって二人を斬る。


「がはっ!?」「くはっ!?」


 それにより二人は退くものの、碧斗は煙の圧力で彼の元に瞬時に戻ると、漂う煙の圧力を変動し、背後と目の前からの圧力で潰そうとする。


「はぁ、馬鹿が」


 それに息を吐くと、凛は圧力と岩を分解し周りに放つ。その二つの圧力で押し返すと、碧斗を蹴り飛ばす。


「がはっ!?」


「碧斗っ!」


 それに、大翔が驚愕し振り返った。すると、そんな大翔に向かって岩を放ち、それに気づいた彼が殴って破壊した、その向こう側から。


「おらっ」


「クッ!?」


 直ぐに凛が現れ、圧力を含んだ蹴りを放つ。それを、腕で押さえ、そのまま彼の顔面を強く殴ったものの、圧力により大翔は吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。と。


「おっと、、顔の岩を破壊するとはな」


 凛が顔に手をやりそう零すと、対する大翔は隣を見据える。


「はぁ、、はっ、はぁ!はぁ、」


 その隣にいた人物。一方の碧斗は、同じく荒い呼吸を零す。


「お前、もう疲れたのか?はぁ、、ほんと、弱くなってるな」


「まあ、、連戦、だからな、」


 碧斗はそう言い換えてゆっくり立ち上がる。毒の事は、周りは誰も知らない。だからこそ、言えない。彼も、それを言ってしまったら毒を受けている事を踏まえたやり方を考えてくる筈だ、と。そう思い、あえて口を噤んだ。だが。


「ぐはっ、」


「あ、碧斗、」


「クッ、うっ、」


 碧斗は必死に起き上がろうとするものの、血を吐き出し崩れ落ちる。もう、限界が近い。長く話し過ぎたか、と。碧斗が歯嚙みをした。すると、凛は碧斗に近づく。


「はぁ、もう終わりみたいだな。もう、邪魔すんなよ?」


 そう小さく告げると、次の瞬間。圧力を与える様に手を前に出す。


 が。


「っと、ぐぅ!?がっ!?」


「お前、」


「ひ、大翔君っ」


 その間に、大翔が割って入り、代わりにその圧力を受ける。


「ガハッ!?」


 その圧力は地面に向かって放たれているものであり、大翔はまるで踏みつけられたかの様に地面に叩きつけられる。


 マズい。なんとか、しなくては。


 動け。

 動いてくれ。

 頼む。


 碧斗は必死に起き上がろうとするものの、意識が朦朧とする。


ーあ、これ、、駄目なやつかもしれないな、ー


 碧斗は蹌踉めきながら、察する。終わるのか、これ、と。拳を握りしめる。ここまで来たのに。拓篤と、約束したというのに。それなのに、こんなところで。

 碧斗がそう歯嚙みしながら、薄らとした意識の中、凛を睨みつける。


 と、その瞬間。


「ポイズン、ブレイクッ」


「っ」


 突如、その場に毒が、全体に放たれた。


「何っ」


「待ってたぞ。この瞬間をっ」


「おまっ」


 その時、涼太が戻って来た様で、凛の近くで大量の毒を放出する。


「さっきの一撃で顔の岩を破壊した。それの復旧には時間がかかる。つまり、今ならまだ"隙間"があるって事だろ?」


「っ」


「これでっ、終わりだっ、!」


「お前っ、!」


「馬鹿っ、やめろっ!」


 碧斗と大翔は懸命に手を伸ばす。彼の乱入によって助かった。だが、それでもそれ以上に。


 彼を止めなくては。そう、強く思ったが、次の瞬間。


「いやぁ、来てくれて助かったな」


「っ」


 涼太は影に隠れていたのにも関わらず、凛がそう小さく零すと、次の瞬間。


「なっ、」


 涼太の腹には、大きな岩が、突き刺さっていた。


「大内涼太君みーっけ」


 凛はそう微笑むと、「そちら」に振り返った。

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