293.連携
「「がはっ!?」」
「樹音君っ、大翔君っ!ぐふ!?」
二人の様子に、思わず碧斗は振り返るものの、圧力が突如強まり、地に這いつくばる。
「クッ、」
「はぁ、、手間かけさせんじゃねぇよ。雑魚が群がっても所詮雑魚なんだ。強者の言う通りにしておけ」
凛はそう告げると、今度は涼太の方へ向き直り、ゆっくりと近づく。
「さぁ、お前の力を貰おうか」
「近づいてみろよ」
「ああ、、そうだったな」
凛はふと気づくと、岩の鎧を作って顔まで覆う。
「毒を放たれちゃ困るからな」
「チッ」
凛が気づいたことにより、涼太は歯嚙みする。と、その瞬間。
「っ」
目の前に、突如炎の壁が現れる。
「逃げてっ!あんたの能力吸収されたらっ、取り返しのつかない事になる!」
「チッ、、クソッ」
不本意だっただろう。狙っていた対象から逆に狙われ、挙げ句の果てには狙っていた対象から保護されるなんて。ギリっと歯嚙みし拳を握りしめる。だが、今は逃げるしか無いと、涼太は踵を返し走り出す。と。
「はぁ、、なぁ!ちょっと、退いてくれないか?」
「は?退くわけないでしょ」
「そうかい、間抜けが」
凛はそう零すと、その炎を吸収しようとする。
が、しかし。
「っ!」
それを吸収出来ずに、凛は目を見開く。
ーなんだ、?吸収は出来てる、、それなのに、炎を回収した感覚がない、ー
自身の手を見てそう思うと、同時。
「ぶっ!?」
突如何かが破裂した様にして、凛は吹き飛ばされる。と、その様子に、必死に起き上がりながら、碧斗は放つ。
「はぁ、、はぁ、俺の煙は、、まだ消えてない、お前の周りを、漂い続けてる、、どういう事か、分かるか、?」
「ん?ああ、まさか」
凛は何かに気づいた様に放つと、手から"それ"を放つ。と。
「やっぱりか」
そう、そこからは、煙が放たれたのだ。
「やるねぇ。俺の周りには煙がある。だからこそ、吸収しようとすると、その煙が先に吸われるわけか。弱者なりに、頑張って考えたみたいだなっ」
凛はそう声を上げると、そのまま碧斗の目の前に瞬時に移動し、蹴りを入れる。
「がはっ!」
圧力の含んだそれにより、碧斗は吹き飛ばされるものの、なんとか涼太を逃す事には成功したと、小さく微笑む。だが。
ー絶対、、俺らはここで死ぬな、ー
勝てる希望は、一つも無かった。涼太がここに援軍を連れて来るとは思わないし、彼を逃すのを最優先とするなら、助けを求めるのも違うだろう。
ーここまで、、なのか、?やっと、、やっと俺は、生きる意味が、、見つかったのにー
碧斗は拳を握りしめる。そんな彼に、凛は上から圧力を与えて潰そうとする。
が、その瞬間。
「おらっ!」
「っ」
突如大翔が殴りを入れて、それを岩の盾で守ると、凛は数メートル先で地面に手をやり口角を上げる。
「碧斗っ!まだ、諦めんじゃねぇぞ!」
「ひ、、大翔君、」
「それでまだやるのか。しつこいぞっ」
「ああ、、こんなもんじゃ、、俺は止まらねぇよ、、俺は一回、死んでる身なんだからよ、」
大翔は、はぁはぁと。息を切らしながら、掠れた声で。だが強くそう告げる。
「まだ相原の火の壁も消えてねぇ。みんな、まだ戦えんだろっ!先に、諦めてんじゃねぇぞ!」
「ふふ、ふふふ、、なるほどなっ、!素晴らしいっ!こんなにボロボロで、ボコボコにされているというのに、、何度も立ち上がるっ!とても素晴らしい勇気だっ!その勇気に免じて、涼太の能力を回収する手伝いをしないか!?」
「しねぇよ、、渡すわけねぇだろ」
「そうか。じゃあ死ねっ」
凛は笑みを浮かべて放っていたものの、彼の一言に真顔で返すと、圧力で吹き飛ばす。だが。
「させっかよっ!」
大翔は力強く地面を踏み締め、背後に地面を盛り上がらせると、それを壁とし背をつける。と、それと同時にそのまま足をつき、それを蹴ることで凛へと向かう。
「おらっ!」
大翔はそのまま殴りを入れる。だが、それを岩で防ぐと、それにより破壊された岩の後ろから、凛はそのまま回し蹴りをする。
「クッ」
それを腕で防ぐと、数メートル先で着地する。そんな大翔に、岩の塊を放つ。
「っ!」
着地と同時である。それ故に、避けることが出来ないと、冷や汗を流したものの。
「っ」
突如、ナイフが現れ、岩を弾く。それに凛は目を見開いたものの、直ぐに大翔に向かい圧力で潰す。
が。
「うおらっ!」
大翔はその威力を利用して地面を強く踏み締めると、それによりヒビが出来て破壊し、それにより浮遊した破片を殴って飛ばす。
だが。
「っと」
凛はそれを空中で止め、向きを変えて大翔に向けて放つ。それを拳で破壊し、そのまま凛に殴りを入れる。それを岩で防ぐものの、その瞬間。
「っ!」
突如目の前に炎が現れ暴発し吹き飛ばされると、それにより僅かに破壊された部分を狙って大翔は殴る。それを復旧しようとしたものの、それを狙ってーー
「っ」
ーー凛の周りには、大量のナイフが浮遊していた。
「あいつっ、あの状態で、」
凛は思わず振り返る。その先には、岩に突き刺さる樹音。彼は残り僅かな力を全て使い、ナイフを生成、彼に向かわせた。
「おいおい、冗談キツいな」
凛は舌打ちを零しながらも鎧としていた岩から破片を切り離し小石を浮遊させると、ナイフが向かう部分に移動し大きさを変形して盾とし防ぐ。一方、凛は大翔に接近戦をするものの、炎による暴発により圧力を使う事が出来ないと。そう思いながら、大翔と殴り合う中美里の姿を捜す。
ークッ、、あいつ、どこ行った、?ー
見えないところからの援護攻撃。時間稼ぎだとしてももっといい方法があるだろうと、凛は呆れすら感じながら周りを見渡す。だが、一方の碧斗は笑みを浮かべる。
凛の能力は空気圧と岩。空気の圧力や岩による打撃と、尖った岩による飛び道具。そして、彼が纏う岩の鎧。それ故に、彼と対面で戦う際に必要なのは、岩の鎧が破壊でき、圧力に対抗出来るフィジカルがある人物に限られる。それは、即ちーー
「おらぁ!」
彼を殴ると、それにより岩が破壊され、横腹が露わとなり、そこから回し蹴りを入れて吹き飛ばす。
ーーそう、そんな彼。橘大翔である。
彼が接近戦で唯一彼に攻撃を与えられる人物である。それ故に、碧斗含めた一同は、全力で彼をサポートする。
「全力っ、出し切るレベルでっ!これに賭けるっ!」
碧斗は掠れた声でそう告げ、手を前に出す。それと共に、大翔の足元に煙が現れ、それが膨張し威力を出す。
「クッ!?」
「とらぁ!」
その勢いのまま、大翔は凛を殴り抜け、そこから更に煙の圧力で直ぐに距離を詰め殴る。凛はそれに岩を隔てて距離を取り、鎧とした岩を分裂させてその破片を飛ばすものの、空中に浮遊しているナイフがそれに激突しその場に落ちる。
「ふざけんな」
それに舌打ちを零すと、地面から岩を突出させて、それに乗った凛はそのまま跳躍すると、またもや体の岩を分散させて足場とし、それを乗り継いで大翔に向かう。だが、そこに。
「っ」
突如目の前に炎が現れ、それに目を見開いた凛は空気圧を調整して戻ろうとするがしかし。炎により温められた空気中で放ったが故に、それが突如膨張して吹き飛ばされる。
「クッ」
と、その先に。
背後に岩の壁を破壊して大翔が居り、そのまま煙による圧力で跳躍すると、その勢いのまま回し蹴りをする。
「グハッ!?」
蹴られた先は地面。地に叩きつけられた凛は一部の岩が剥がれ落ちた状態で立ち上がる。が、そんな彼の目の前に炎が現れると、次の瞬間。
「どらぁ!」
「っ」
その炎の中から、拳が現れ、そのまま殴り抜ける。空気圧の調整をしていたが故に、炎に触れたその空気は膨張し破裂する。
「クッ!?」
それにより吹き飛ばされた凛は、顔を上げると、そこには。
炎が纏った拳を振り上げる大翔の姿があった。
「それぞれの能力を活用して、俺に対応しやすい奴を前にもってきたって感じか!?」
その一連の流れにより、皆の作戦を察した凛は、ニヤリと微笑む。と。
「いやぁ、単純だな。既に、お前らの動きは何となく分かったぞ」
凛はそう告げると、岩の壁を作りそれをあえて。
逆に、破壊する。
「なっ!?」
それに、大翔は目を見開き跳躍しながら退く。そう。彼の岩の能力は、岩を生やしたり操る事が可能な能力。距離があれば空中のナイフに撃ち落とされるが、近くで破壊したそれを操れば、目の前の人物に当てるなど造作もない。
「グッ!?」
それが大翔に向かうがしかし。
「っ」
突如その岩が破壊され、そこから大翔が殴りに向かう。
「っ」
ー炎による空気圧縮で岩の破壊をした、?いや、煙の暴発か、?ー
凛は目を見開きながらもそう察すると、またもや岩を作り、大翔と距離を取る。だが、彼はそれすら破壊し殴り抜けたものの。
「残念」
破壊された岩の破片が殴った彼の腕に集結し固定される。
「グッ!?」
固定された腕に、内側から岩を突出しようとしたが、しかし。
「させっかよ!」
大翔は腕に力を入れると共に岩にヒビを入れ、炎による暴発でそれを破壊すると、そのまま跳躍し凛に蹴りを入れる。
「っと」
だが、それを空気圧で防ぎ、横流ししようとするがしかし。彼の足にも炎が宿っており、それによる空気中物質の変化で暴発。吹き飛ばされる。
「っと」
だが、空中で圧力を調整し留まると、向かってくる大翔に岩の鎧を分散させてシールドを作り防ぐ。
「そろそろお前らの連携の仕方も分かってきたっていうか、なんか飽きてきちゃったんだよなぁ、、流石に見せ場も無く終わらせるのは可哀想だけど、そろそろ終わりだ。正義こそ勝つ」
凛はニッと微笑みそう告げると同時。更に空中に石を大量に浮かせると、各方向から放たれるナイフを防ぐために移動させ変形させ、小さな壁を作り上げる。その中で、更に自身の鎧である岩から破片を出して足場を作ると、それを蹴って乗り継いで大翔の後ろに回り込み蹴りを入れる。
「がはっ!?」
更に、そのまま岩を伸ばして彼を貫いたのち、振り回して吹き飛ばす。
「グッ!?」
ーは、速いっ!?そうかっ、あの野郎、、岩の能力プラス空気圧だから、岩乗り継がなくても空中戦いけんじゃねぇか、、それなのにわざわざ岩の足場を作る理由はっー
大翔はそれを察して空中で向きを変える。と、背後に。
「おっ」
一瞬にして凛が現れたが、そんな彼には既にーー
ーー大翔の蹴りが、向かっていた。
「舐めんなよっ!」
大翔は血を吐き出しながらもそう強く放ち蹴りを入れる。だが。
「おっと、大丈夫か?」
それを受け止めた彼は、そのまま岩に足を取り込むと、そののち。
「よっ」
「っ!」
空気圧によって岩の中で足を引きちぎろうとしたものの、それに気づいた一同は、凛の目の前に炎。煙を同時に出現させて圧力で吹き飛ばし、その威力と共に大翔は力を込めて足を岩から引き抜く。
「グゥッ!?」
その激痛に耐えながらも、勢いよく吹き飛ばされ、背後に刃の壁が出来、それ故に留まる。
「ふぅ、、ふぅ、、空気圧の調整じゃ、スピードがある程度までしか出ないだろうからな、、岩の足場を移動しながら、重力にプラスして圧力をかければ、倍以上の力が出るって事か」
大翔は零しながら目つきを変える。ギリギリである。全力を出しても、彼には追いつけない。それを、いつまで続ければ良いのだろうか、と。僅かに後ろ向きな考えが過ぎる。涼太は、逃げ切れるのだろうか。それ以前に、どうして、涼太なんかに。
そう思った、矢先。
「大翔君っ!前っ、ヤバいぞっ!」
「なっ」
瞬間、目の前に巨大な岩が向かい、それを既のところで受け止めると、それを力で押さえる。
「クッ!?うぅぅぅぅぅっ!」
大翔は必死に歯嚙みし堪えながら、強く地面を踏み込みそれを受け止める。が。
「ダメだね」
「っ!」
受け止めた岩は破裂し、その破片が彼を包み込もうとする。それに、跳躍し逃げようとしたものの。
「なっ、グッ!?」
目の前からは凛が空気圧を調整し一瞬にして現れ、腕で防ぐものの、吹き飛ばされる。が、しかし。
「がはっ!?」
その直ぐ数メートル先で見えない壁に激突すると、血を吐き出し押し戻される。そう、彼の空気圧だ。
ーみ、見えねぇ壁かっ!?ー
それに、大翔が目を剥いた、その瞬間。
「じゃあなっ!」
「っ」
目の前に、凛が現れ、圧力含めた岩のパンチを入れようと振り上げる。
が、しかし。
「っ!」
突如、その場には濃い煙が生み出され、その圧力で僅かに押される凛は、歯嚙みし足を踏み出す。それに、対する大翔は「サンキュ」と。心で呟くと、跳躍してまたもや距離を取ろうとする。彼は焦っている筈だ。この近距離での煙。またどこか隙間から入り込み、致命傷を狙いに来ているのだと勘違いする筈である。だが、今回のこの煙はそのためのものでは無い。これは、そのままの、目眩しとしての煙。だが、彼にとっては「ただの目眩し」として使われていた煙を、知らないのだ。故に、隙が生まれると。そう思ったのだがーー
「なっ、グッ!?」
その煙は突如消え去り、その奥から現れた凛が大翔を掴むと、そのまま地面に叩きつける。
「ごはっ!?」
「目眩しの煙って、面白いけど、意味がない」
「ごあぁっ!?」
凛はそう告げると、上から圧力を与えて大翔を地面に押し付ける。と、その時。
「させるかっ!」
「っ!」
遠くから。聞こえない声量で碧斗がそう放つと、彼の周りに煙が大量に発生する。
「あれ?」
「その空気の無い空間で、苦しめっ」
碧斗は、それを彼の顔の周りに移動すると、物質変換により、彼に直接薄い空気を与えようとする。だが、しかし。
「ふぅ、、なるほどな!」
凛は吸ったら死ぬと。半ば察してそう零したのち息を止めると、岩のマスクを作り上げそれを防ぎながら。
地面に倒れる大翔に向かって手を伸ばし、「煙」を、放った。
「なっ!?」
「ふっ」
「グッ!?がっ、がはっ!?な、なんだっ、これっ!?」
凛は煙を、大翔に圧力をかける事で逃げられない様にしながら吸わせる。
「クッ、、さっきのかっ!?」
「見てるんだろ?碧斗。いいのか?大切な仲間が、お前によって死にそうになってるぞ」
「クッ」
そう。彼は吸収した一部分を放出する事が出来る。即ち、先程目眩しで放った煙を吸収したが故に、それをそのまま放ったのだ。更に。
「碧斗。煙の成分を操る事が出来るお前には、"混ざってしまった煙"に関しては同じものとして調整するしか無くなるんだよな?この空気圧の能力を使ってれば、何と無く分かる。つまり、俺が煙を放つ事で今碧斗が放ってた煙と同じものとして換算され、それを有害物質にする事で俺の出した煙もまたその成分へと変化するわけだ」
「グッ」
故に、碧斗はその煙の成分を戻せざるを得ない状況になったのだ。それに、歯嚙みしながら、仕方がないと、成分を変化させる。すると。
「いい判断だ」
「なっ!?」
突如、凛はニッと微笑みそう告げると。
「ごぶぇ!?」
「お前っ!」
強く大翔を殴り圧力を与え、周りにはヒビが広がる。それに、碧斗は思わず身を乗り出し、声を上げたものの。
「おっと」
それよりも前に無数のナイフが凛に向かい、それを背中から分離した石を広げて防ぐと、ゆっくり振り返る。
「邪魔だ」
「ぶ!?」
「っ!」
巨大な岩を、岩に突き刺さっている樹音にぶつけると、大人しくなった彼の姿を見て歩き出す。それに、碧斗は冷や汗を流す。先程の攻撃。恐らく樹音が割って入らなければ自分が狙われていた、と。そう思いながら、身を潜める。まだ、彼には場所はバレていない。回復の魔石も彼には見つかっていない。このままやり過ごせば、皆を回復して、立て直せるかもしれない。そう思いながら、碧斗は拳を握りしめる。
涼太は逃げられただろうか。悔しいが、彼を逃さないとこの世界は終わりなのだ。だが、逆に彼さえ逃れられれば、我々は無理に戦わなくても良くなると。現在の碧斗はただそれを願って俯く。
だが。
「っと。残念、お前のステージもここまでだ」
「「「っ」」」
突如、その場には一人の声が響く。それに、身を潜めていた碧斗のみならず、同じく隠れている美里、そして凛自身驚く。そう、彼の腕に、手をつけた人物が居た。それも、関節の間。岩に隙間が出来ている場所である。そこにーー
「よぉ。気、抜いてただろ?」
「お前、」
ーー涼太が、手をつけていた。
「残念。もう手遅れだ」




