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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第7章 : 関わり合いと処罰する者(パニッシュメント)
279/300

279.兄弟

「ありがとう、、兄ちゃん、」


「は、?なんだよ、突然」


「俺を守ってくれて、、俺を想ってくれて、そして何より、生きていてくれて」


 碧斗(あいと)は、掠れた声で、二人で落下しながら放った。すると。


「ふざけんなよ、、今更、なんだよ。今まで散々忘れてて、ピンチになったら(おだ)てんのかよ。最低だな」


「違う、、気づいたんだ。俺の、本当の気持ちに」


「本当の気持ち、?ハッ!舐めてんじゃねーぞ」


「信じてくれとは言えない。言える立場じゃない。俺は、、ずっと、みんなを忘れてた。俺を大切に想ってくれていた、大切な人達を。忘れようと、、してたんだ」


「はぁ、また開き直りかよ。ダリィな」


「ある意味、、開き直りってのも、間違いじゃ無いな、」


「それは良かったな。でも、開き直っても何も変わらねぇぞ?もう、全部終わりなんだよ」


「ああ、知ってる。俺の言葉じゃ、きっと足りないだろうし、俺が不甲斐なかったから、今更何を言っても、聞いてくれないと思う。自分でも、そう思うよ。でも、だからこそ。俺じゃ駄目なんだって、分かった。だから、今から言う言葉は、俺の言葉じゃ無い」


「何、?」


「兄ちゃんに、伝言だ。諦めるな。ぶつかって、倒れても、生きてくれ。生き続けたら、きっと幸せが見つかる」


「生き続けたら、幸せ、?は、はは、、何言ってんだよ、ふざけんなよ!?」


 碧斗の言葉に、拓篤(たくま)は声を荒げ、殴り返す。


「ごはっ!クッ!?」


「生きててっ、幸せな事なんてねぇ!俺はっ、ずっとそうだった。幸せなんて、感じた事なんて無かった!幸せを初めて知っても、それは絶望に変わった!」


「でも、、結果が絶望だったからって、それまでの希望を、全て絶望と捉えるのは、、辛過ぎるんじゃないのか、?」


「よく言うよ。お前だって、死にたいと思ってただろうが」


「ああ、だから言っただろ。これは、俺の言葉じゃない」


 碧斗は落下しながら、そう遮ると、改める。


「いいか。そのままの言葉を言うぞ。これから辛い事があって、もう消えたいとか、自分が嫌になる事ってあると思う。だけど、きっと上手くいく。辛い思いをして、何も見えなくなっても、先を見たらきっと道は出来上がっていくと思うから」


「だからなんの話だよ!?いい加減にっ、しろっ!」


 拓篤はそう声を荒げると、地上からマントルを生み出し自身の周りに柱の様に伸ばしたのち、胸ぐらを掴んでいる碧斗に向かわせる。

 と。


「これは、、母さんの、言葉だ」


「っ」


 するとふと。


 マントルの動きが、止まる。


「なんだと、?」


「あの日。炎の中、母さんが、俺に向けて言ったんだ」


「お前、、お前っ、そんな事を言われててっ!」


「ああ。俺は、全て失ったと思った。あの日、俺の全てが、奪われたんだ。だからこそ、希望は無くて、、その言葉も、薄っぺらく感じて、、俺にとって、重荷だったんだ」


「なんだと、?」


「その言葉を預けてくれた母さんのために、生きなきゃいけないって。それが、俺にとっては呪いの様なもので。それを、忘れる事でしか、自分を守れなかった。それが最終的に、兄ちゃんを含めて、全員を、忘れる事になった、」


 碧斗は、心からの気持ちを伝えた。今まで、ちゃんと自分の気持ちを吐き出した事が無かった様に思える。兄と、本当はこんな会話をしたかったのかもしれない。本当は、この世界に来て、その時に、こんな会話が出来れば、母さんの話を、互いに出来れば、良かったのかもしれない。そんな事を考えていると。


「ふざ、けんなっ!」


「っ」


 拓篤がそう放つと同時。今度は拓篤の真下から巨大なマントルの柱が伸び、それに激突した碧斗含めた二人は上空へ押し上げられていく。


「ふざけんなよっ!そんなのっ、お前のわがままだろ!?確かにそうかもな。俺もそう思うよ。言葉だけ聞いたら消えたいって思う様な内容だと思うし、同じく重荷にはなるだろうよ。でも、だからって、それを忘れていい理由にはならないだろ!」


「ああ、、そう、だよな、、でも、あの言葉を重荷に感じながらも、辛い思いしながらも生きているなんて、、母さんは、耐えきれないと思う」


「お前が、、母さんを語るなっ!」


「ごはっ」


 拓篤はそう掠れた声で放ったのち、突如。起き上がると共に碧斗の胸ぐらを掴んで声を上げる。


「俺は、お前とは違う。母さんの言葉だったら、重荷だなんて感じない。その言葉自体は、重荷になる様なものかもしれないが、、母さんの、言葉なら、」


「...兄ちゃん、、ぐはっ」


 拓篤はそう告げたのち、碧斗の首に手をやる。


「はぁ、、なんか、もうどうでもいいな、、全部、終わりにするか、」


「っ、兄、ちゃ、、何をっ」


「何をするのかって?決まってんだろ。ここで終わらすんだよ」


「そ、そんな事、したらっ」


「ああ、分かってる。ここまでした全てが、水の泡だ。でも、それでも良い。もう、どうでもいいんだ」


「...兄、ちゃん、」


 拓篤はそう光の無い目で放つと、そののち。どこか遠い目をしながら付け足した。


「母さんは、、スゲェよ、、でも、間違ってる。間違ってるよ、母さん、、やっぱり、あの世界に、幸せなんて、あるわけない」


「兄ちゃん、それは、」


「あるわけないだろ!」


「っ」


 拓篤が声を荒げると共に、碧斗は目を見開く。


「あんなクソみたいな世界に、希望があると思い込んでるから、みんな痛い目に遭うんだ。全て、諦めれば良い。それでいい。希望を抱く方が、間違ってる、、あの世界じゃ」


「そ、そんな事っ」


「そんな事無い?お前それ本気で言ってんのか?母さんは、、ずっと、苦しんでたんだよ。お前も、知ってる筈だ。あの時、母さんがどんな心境だったか」


「クッ」


 拓篤の発言に、碧斗は歯嚙みし目を逸らす。母をゴミと呼んでいた事。母本人は、どう思っていたのだろう。今なら、分かる気がする。だが、分かろうと、したくなかったのだ。母を傷つけていた自分の行動が、許せなくて。恥ずかしくて。そして、悔しかったから。


「母さんは、、苦しんでた。ずっとずっと。それからは希望も消えて、俺達もバラバラになって、父も死んだ。誰よりも頑張ってた。頑張ってたのに、、どうして、どうしてそんな人が苦しまなきゃいけないんだよっ、どうして、こんな、クソな世界に、希望があるなんて、、嘘言うんだよっ、!母さんっ、どうして、、そんな事、言うんだよ。あの世界に、幸せなんてあるのか?ただの、妄想なのか、?」


「...兄、ちゃん、っ」


「っ」


 碧斗は掠れた声で放つと同時、煙の圧力で拓篤を吹き飛ばし、互いに距離を取る。と。


「否定はしない、、あの世界は、確かに、クソみたいな世界だし、幸せなんて、、ほんの些細なものなのかもしれない」


「ハッ、お得意の開き直りか。そりゃそうだよな。お前も分かってんだろ?百の不幸を一の幸せで紛らわせる様な世界に、希望なんてありはしない。母さんは、、優し過ぎたんだ。だからこそ、」


 拓篤はそれと同時に拳を握りしめ、立ち上がる。


「俺は、もう、信じない」


「でも、母さんは信じた」


「だから、母さんは馬鹿真面目なんだっ、だからこそっ」


「違う。母さんが馬鹿真面目だった事は否定しない。だけど、幸せを信じて、妄想のまま亡くなったんじゃない。母さんにとって、幸せが、ちゃんと存在してたんだ。そしてそれを、既に手に入れてたんだよ」


「は、?幸せ、?適当言ってんじゃねーよ!いつも辛そうな表情で、苦しそうだった母さんを、お前は覚えてないかもしれないけどなっ、俺は覚えてんだよ!」


 拓篤はそう声を荒げながら碧斗の元へとズンズンと進む。


「そう、見えたんだな、、母さん」


「だからお前が母さんをっ、語るんじゃ、」


「母さんは、、こんな素敵な子供達と出会えて、母親になれて、凄く幸せだったって。そう、言ってたぞ」


「っ」


 拓篤が目の前に来ると同時に、碧斗は真剣に。低くそう告げた。


「は、?どういう事だよ、?」


「そのままの言葉だ。あの時、炎の中。母さんの最後の言葉だった。あの時の表情と声音は、、間違いなく、本当の気持ちだった。薄らとした記憶しかない俺でも、分かる程に。心から、嬉しそうに、笑ってた。そして、だからこそ、辛そうだった」


「っ」


「母さんを、助けようとしていた息子が居た。母さんに辛い思いをさせない様に辛い思いを引き受けてくれていた息子が居るのを、母さんは知っていた。大切な、息子だった。だからこそ辛かったと思う。その息子が、母のため。自分のために頑張ってくれているのが嬉しい反面、そうさせている自分に、嫌気が差してたんだ」


「何が、、言いたいんだよ、」


「母さんは、こんな結末望んで無いって事だよ」


「っ」


 碧斗は、真剣にそう放つ。それに、拓篤は震えながら後退る。


「うるせぇ、、うるせぇよ、」


「大切な息子が。不幸せなまま、希望を見つけられず、そのまま終わりになるなんて、母さんは望んで無い。あんな環境だったが、母さんは幸せを見つけたんだ。手に入れたんだ。その景色を、大切な息子にも、見て欲しいと願ってる。それは、俺だけじゃ無い。兄ちゃんも、同じだ」


「うるせぇぇよっっっ!今更っ、今更おせぇって言ってんだろ!」


「っ、ぐはっ!?」


 拓篤はそう声を荒げると同時、マントルを出現させ、それを碧斗に向かわせる。その突然の攻撃に対応出来ずに、激突すると、その勢いのまま落下していく。


「兄、、ちゃん、」


「はぁっ、はぁ!もう、もうおせぇんだよっ!今更っ、なんでっ、なんで今更なんだよ!」


 拓篤は、頭を押さえ声を上げる。

 そうだ。感情が、ごちゃごちゃなのだ。ずっと、不幸せだった人生。光が現れたと思ったら、それは更なる闇の前触れ。闇に飲まれ、犯罪を犯し、既に居場所すら、生きる意味すら無くした彼に、弟が生きていたという情報。そんな弟も全てを忘れており、全てが嫌になった彼は、弟にもまた同じ気持ちを味あわせようと、その憎しみだけを原動力に行動していた。それが終わったら、全て終わり。

 悪夢も、未来も、終わり。

 そんな時に、一番大切な人に、生きろと。そう言われたのだ。そんなの、ごちゃごちゃするに決まっている。まるで、あの時の碧斗の様に。

 そうだ。苦しんでいい。みんなを苦しめた分、拓篤もまた苦しんで、そしてーー


 ーー碧斗の様に、向き合って、進んで欲しい。


 それに必要なのは。


「いくっ、か!」


 碧斗は自身が乗り越えた際の事を思い返し、目つきを変えると、煙の向きを変えて拓篤の方へと向かう。


「っと、」


「くぅ!ふぅーっ!ふぅー!来るなっ、やめろっ!もうっ、近づくなっ!?全部っ、全部終わりなんだよ!おせぇんだよ!このまま、未来は変わらないっ!もう、終わりにっ、終わりにさせてくれよっ!」


 声を荒げ、拓篤は頭を押さえる。先程よりも向かってくるマントルとマグマの数は増えたものの、理性という面でいっぱいいっぱいになっているからか、規則性が無く、碧斗を追い詰める様な動きはしていない。


「これならっ」


 碧斗は足と手から放つ煙の量と勢いを強め、空中に突然発生させる煙を膨張させ右左の突然移動をしながら、拓篤へと向かう。どんどんと拓篤は上空へと上っていく。それはまるで、逃げていたあの頃の碧斗の様だった。

 もう大丈夫だ。もう、一人じゃない。碧斗はそう強く思うと共にスピードを早め、拓篤の元へと到達する。

 と。


「兄っ、ちゃんっ!」


「っ!?」



 強く、抱きしめた。



 その勢いのまま、拓篤は後ろに倒れる。


「グハッ、、な、何をっ」


「兄ちゃんのやった事は、決して許される事じゃない。現世でも、異世界でも、多くの人の命を奪った」


「ああ、そうだっ、だからっ、俺は死ぬべきなんだよっ」


「死んで償えると、思ってるのか?」


「何、」


「前に聞いたんだ。街で行方不明になってる人が居るって」


「ああ。そいつらは全員俺が殺したよ。言っただろ?ああ、まあ、正確には俺じゃねーけどな。操り人形(おもちゃ)を完成させるのに、使わせてもらったんだよ」


「ああ、、そうだな、、俺はその話を聞いた時、その二つの話が一致して無かった。でも、分かったんだ、、両方共、同じ時の事を話してるんだって」


「何の事だよ」


「こんな話も聞いたんだ。その被害者は家庭内暴力をしてたらしいって。街では身内の犯行だろうとか言われてたらしいけどな、、でもそれが、兄ちゃん、なんだろ?その、完成させるのにどうこうってやつなんだろ?」


「っ」


「兄ちゃんは、ただ無差別に人を殺そうとはしてなかったんだ。どういう用途で、どうやって殺害してたかは知らない。でも、その言い方的に(しん)智樹(ともき)君とか、洗脳した人達に殺させてたんだと思う。それは、決して許せる話じゃ無い。現に、俺は許せない。だけど、兄ちゃんは、自分と同じ様な境遇の子供に、自由を、与えたかったんじゃないのか、?どうせ殺すならって、、そんな言い方は不謹慎かもしれないけど、、でも、それなら、少しでもヒーローになりたいって。そう、願ったんじゃないのか、?」


「うるせぇよ、、ヒーロー気取りなんてするわけねぇだろ。お前じゃねーんだから。結局、この世界は終わるんだ。それをしたのも俺だ。ヒーローになんてなるつもりはねぇ。せっかく救ったとしても、この世界を終わらすんだからよ」


「でもそれは、最終手段だったんだろ?」


 碧斗は抱きしめたまま、目を細めてそう放つと、拓篤は歯嚙みした。


「あの時は、それでなんとかなるって。そう思ってたんだもんな、、俺が、兄ちゃんを忘れたから。母さんを、忘れたから。だからこそ、俺という存在を貶める事に固執して、こんな結末になった。俺が、忘れて、乗り越えたばっかりに、」


「何が、言いてぇんだよ、」


「つまり、この結末は俺のせいでもあるって事だ。そして、まだ、間に合う。確かに、犠牲者は沢山出た。それでも、まだ、この世界は残ってる」


「ハッ、結局俺は死ぬんだ。このまま世界も終わらすよ」


「それが許されないって言ってるんだ」


「何、?」


「母さんは、それを望んで無いし、俺だって望んで無い。それに、、兄ちゃん自身だって、本当は、そんなの望んで無いんだろ、?」


「お前が何語ってんだよ」


「俺だからこそだ。俺だって、死んで、逃げようとする。でも、それじゃ駄目だって。兄ちゃんに教えてもらった。向き合って、生きていく。俺は、そう決めた。忘れていた罪を背負って。大切な存在をもう忘れないって、忘れていた罪悪感や最悪な過去も含めて、受け入れて生きていく。それが、俺なりの償いだ。兄ちゃんだって、本当は気づいてるだろ、?死んで終わりなんて、無責任だって」


「ハッ、何いい感じの事言ってんだよ。偽善者が」


「悪人だよ。兄ちゃんと同じだ。俺と兄ちゃんは。ずっと、見て見ぬフリをしてきた。兄ちゃんと、俺は違うって。そう思いたかった。でも、同じだ。罪を犯して、逃げようとしてた。大きさなんて関係無い。やってる事は同じなんだ。だからこそ、一人じゃ無い。一緒に、背負おう。残された、家族なんだから」


「っ」


 碧斗が優しく告げる。その姿が、どこか母の様で。拓篤は、目を見開いたのち、歯嚙みする。


「ふざけんな、、そんなの、今更っ」


「やり直せる。逃げないで償うんだ。二人でっ」


 碧斗がそう放つと同時、二人を支えていたマントルが崩れ、二人ともそのまま落下する。先程と同じ状況である。だが。


「やり直せる、、そう、思うか、?」


「え、」


「俺は、、まだ、お前を許せてない。それでもか、?」


「安心してくれ、、俺だって、兄ちゃんを許せてないよ」


「ハッ、それなのに、そんな事言えんのかよ、」


「だからこそ、許してもらえる様に頑張るべきだし、俺だって頑張るよ。家族に許してもらえなきゃ、世間からだって、許してもらえないだろ?」


「はぁ、、めんどくせぇけど、、でも、そうだな、」


 拓篤は息を吐く。反論はいくらでも出来た。それでも、自身が今まで話していた内容を振り返り、口を噤む。きっと、それを言ってしまったら、自分が一番憎んでいた、逃げてばかりの彼の様に、なってしまうと思ったから。


「クソッ、、もう、力も出ねぇな、」


「無理、してたんだな、」


「死ぬつもりだったからな、」


 拓篤は小さく零す。あれ程の力。長時間使っていたらそうなるに決まっている。そう思いながらも、抱きしめたまま離さない。


「おいおい、、死ぬつもりかよ」


「いや、死なないよ。ここまでやって、死ぬと思う?」


「なら、なんだよ、」


「俺は、信じてるから」


 碧斗はそう優しく放つと、同時に。


「碧斗君っ!」


 地面からは巨大な刃の壁が斜めに生える。と、それに。


「っとぉ!碧斗っ!今っ、行くぞっ」


 大翔(ひろと)が乗り、その上を走りながら落下する碧斗達に近づく。と、そののち。


「おらっ!」


「っ」


 突如その上から大翔は跳躍し、抱きしめたまま落下する碧斗達を空中でキャッチすると、刃の足場に着地し、滑りながら地面に到達する。


「っと、、はぁ、兄弟揃って、人騒がせだな」


「わ、悪い、」


「お前、」


「な?言っただろ?信じてるって」


「...はぁ、なんか、もっと早くに出会ってりゃあ、何か、変わったのかもな、」


 拓篤は小さく零す。碧斗とは、見ている世界が違かった。きっと、碧斗も元々はそうでは無かった筈だ。それでも、みんなと出会い、進みながら、変わっていった。


「もう、過ぎたものは、、戻らない。でも、自分自身が変わる事に、早いも遅いも無い。俺はそう思うよ」


 碧斗は立ち上がり、手を差し伸べる。それに、拓篤はしばらく目を見開いていたものの、息を吐いてそのまま立ち上がる。


「あ、」


「はぁ、お前の手なんか借りるかっての。まだ、俺はお前を許してねぇし、お前だって許してねぇんだろ、?なら、そう簡単に手出すんじゃねーよ」


「...ふ、ふふ、確かに、そうかもな、」


「何笑ってんだよ、」


 碧斗は思わず微笑む。それに、拓篤が苛立ちを見せていると。


「「「っ」」」


 突如、地面が大きく動く。


「マズいな、、相原(あいはら)が限界みたいだ、」


「兄ちゃん、、このままだと、この世界が、」


「ああ、分かってる。落とし前はつけるつもりだ。別に、この世界の奴らが憎かったわけじゃねーからな」


 拓篤はそう零すと、地面に手をやる。と、徐々に、揺れが収まり、地面が安定する。


「とりあえず、、応急処置だが、、マントルを固めて安定させた。まあ、自然的なものだから、後はどう影響が出るかは分からないって感じだ」


「てめぇ、無責任な事言いやがって」


「分からないものは分からない。それなのに保証する方が、よっぽど無責任だと思うけどな」


「てめっ」


「ま、まあまあ、」


 拓篤の反応に大翔が拳を構えると、碧斗は間に入る。

 と、その瞬間。


「「「っ」」」


 その場に、大きな爆破が起こり、大翔が跳躍して退き、碧斗は拓篤を抱えて飛躍する。


「あっちゃ〜、ミスったぁぁっ、めんごめんご〜」


「安心してくれ。一発で仕留められるとは思ってない」


「なんそれ〜、心外〜」


「クッ、嘘だろ、、なんで、あの二人が、?」


「なんか知らねぇが、二人はグルみてぇだぞ」


 そこには、鈴木香奈(すずきかな)裕翔(ゆうと)が居た。

 それに、二人が一緒に居るところを見ていなかった碧斗が冷や汗を流すと、大翔もまた歯噛みしながら呟く。すると。


「手を組んだのか、?」


「何言ってるんだ。それはこっちの台詞だよ碧斗君。君は、拓篤君と組んだのかい?」


「そうじゃ無い。もう、話は終わったんだ。彼に、落とし前をつけさせる。だから、もう手は出さないでくれ!」


「なんそれ〜、信じられないんですけどぉ〜」


「た、頼むっ、!」


 碧斗が声を上げる中、拓篤は歯嚙みし目を細める。それに、裕翔は息を吐いたのち、改めた。


「なんか、勘違いしてるみたいだから、言うけどさ」


「え、?」


「僕、別に君達と組むなんて言ってないよね?」


「「「っ」」」


 裕翔はそう告げると同時。


 彼らの真上から、巨大な鉄の塊を落とした。

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