270.破壊
「随分と派手にやってるな、S」
「大内涼太、、毒の能力。フッ、危ねぇな。触れられたら即死のチート能力か、、でも、触れられなければ意味は無い」
「そう思うのか?」
「強がりはやめろよ」
ニヤリと笑う涼太に、拓篤もまた挑発的に笑う。
「お前の事は知ってる。毒の能力は相手に触れるか、全体攻撃。二択しか無い。つまりだ、全体攻撃を使ったら、俺を止めようとしてる、他の奴らも巻き込む事になるって事だぞ」
「っ」
「つまり、お前に残された方法は触れる事以外無いって事だ」
拓篤は微笑むと、涼太は歯嚙みする。
ー予想通り、とんでもねぇ奴だな、、さっきの一撃を逃したのはデカいかー
そう涼太は冷や汗を流していると、拓篤の背後で。裕翔が、小さく頷き微笑む。その光景に、涼太は目を見開く。そうか、なるほどと。
「クッ、」
「どうした。図星かよ?俺を大勢で囲んだのが、逆効果だったな」
拓篤が涼太にそう告げる中、背後から裕翔が巨大な鉄の塊を振りかぶり、体を吹き飛ばす。と、思われたが。
「なぁ?裕翔」
「っ」
「こんなもんで、俺を殺れると本気で思ってたか?」
拓篤は背後にマントルの壁を作り微笑む。と。
「おらっ!」
「クッ」
そのマントルの壁ごと蹴り飛ばし、裕翔を吹き飛ばす。が、彼はその先でまたもや巨大な鉄の塊を作ると、それを吹き飛ばされた衝撃を利用して振り回す。と、それを。
「っと」
「っ!」
それを拓矢が捕えられているマントルへと放り投げた。
「うっ!?...あれ、?」
「今だっ!圧力で吹き飛ばせ!」
「っ!了解っ!」
空中で裕翔が声を上げると同時。拓矢は大きな風を起こし、内側からの威力でマントルを吹き飛ばすと、そこから飛躍する。
「クッ、あれを利用されたかっ」
鉄をぶつけて弱まったマントルを、内側から破壊。そのための勢いをつけた。これを狙っての行動かは不明だが、このままではマズいと。拓篤は飛躍した拓矢を見据えると、瞬間。
「っ!」
「クッ、駄目かっ」
「お前っ、クソッ」
背後から、涼太が背中に触れようと近づき、それを避けるため跳躍しマントルを隔てる。
ークソッ、反射的に蹴り飛ばしそうになる、マズいなー
拓篤は僅かに冷や汗をかく。すると。
「丁度良いところに飛んできたねっ!」
「なっ」
その目の前には拓矢がおり、風の圧力で叩きつけられる。
「クッ!?」
「お願い!裕翔君っ!」
「じゃあ、さようなら」
「っ」
と、そんな拓篤に、上空から裕翔が鉄の塊を大量に落とし、彼を潰す。そこから逃げられない様に、拓矢は風を強く放ち続けながら。
「涼太君の能力は一度きりの能力だと言っていたけど、こうして大勢での戦闘の場合には、寧ろ思考を遅らせるための手段ともなるし、隙をついて逆転を狙えるキーにもなる」
裕翔はそう告げながら、潰された拓篤に近づくと、瞬間。
「そう、これを待ってたんだ」
小さく口角を上げ、裕翔は告げると。
「世界の再構築だ」
マントルの地面に手をやり、鉄を広げる。
「こ、これは、」
「何のつもりだ」
それに拓矢と涼太がそれぞれ口にすると、裕翔は微笑み立ち上がる、
「この程度で、俺を倒す事が出来ると思うか?きっと、またそんな事言って出てくるよ。この地面はマントルで出来てる。つまり、これを操作するのは彼の思うがまま。潰されても、その瞬間にマントルを動かして自分を落として、マントルを溶かして道を作り、移動してくる筈さ」
「な、なるほど、」
「で?これは何だ」
「だからこそ、蓋をするのさ。彼を、地中に閉じ込める。そして、彼はどこまでも移動するだろう。だからこそ、拓矢君」
「え?お、俺、すか、?」
「ああ。僕を風に乗せて、この星を一周させて欲しい」
「そ、そんなっ」
「君なら、出来る筈だ」
「...で、、出来なくは、無いけど、」
「ちょっと待て。安易に頷けはしないな。もしそれで世界中の地面をお前の鉄にしたとしよう。そしたら、生態系が崩れる恐れもある。しかも、お前を俺たちは完全に白だと考えてるわけじゃねーんだ。もしそれを実行したら、お前が何処でも好きな様に地面を動かせて、この星の自爆スイッチを握ってる事になるだろ」
「はは、面白い事言うね。でも確かに、そういう疑いの心は大切だ。特に、このクソみたいな世界ではね」
裕翔は笑った目を僅かに開いて低く涼太に告げると、改めて笑みを浮かべる。
「でも安心してくれ。白と認めてくれとは言わないけど、この噴火や地震によって、生態系は既に崩れている。更に、このまま何もしなくても、この世界は終わる。もう、限界なんだよ。この星も。だからこそ、僕はあの街の様に、新たな地面を作り上げたい。そう考えてる。逆に言うと、このまま何もしなかったら、奴によって全てが滅びる。今の状況なら、彼を地中に閉じ込めて、僕が鉄の動きを変化させ、内部爆発で彼を圧死させる事も出来る。どう?僕の話、乗る?それとも、もっといいアイデアが、君にはあるのかな?」
「そ、それは、」
裕翔の提案に、涼太が歯嚙みし悩むと、そののち。拓矢が割って入る。
「わ、分かった、、行こう」
「な、お前、」
「決まりだね。涼太君。君は、能力的に近づかれない筈だから大丈夫だと思うけど、この街は、頼んだよ」
「おいっ、何勝手にーーっ!」
「「っ」」
涼太が声を上げながら二人を止めようとした、その瞬間。突如大きな揺れが一同を襲い。
涼太の背後から、大量のーー
ーー"水"が、溢れ出した。
「嘘っ」
「うふふ、私にいつ勝ったおつもりでした?皆様方は」
「おまっ、ぶっ!?」
背後から美弥子が現れ、涼太を水圧で吹き飛ばす。
「クッ、マズいっ」
それを拓矢が追いかける中、裕翔は目を細めた。
「落下した時に対策が無い涼太君を狙ったか」
「ふふふ、ほんと、岩倉拓矢君には驚きね。あんな風圧で私を無力化したと思い込んで、、水の圧力に勝てる筈ないでしょう、、ほんと、Sに気がいき過ぎね」
「お前は本当におしゃべりが好きだな」
「ん、話すのは良い事よ?」
瞬間、裕翔が地面の鉄を伸ばし美弥子に激突させようとすると、彼女は空中に水を出現させ、それを泳いで避ける。
「ねぇ、この地面の鉄を、私の水だけで壊したと思う?」
「思わないね。だからこそ、焦ってるんだよ」
「ふふ、流石。ご察しの通り」
美弥子がふふふと口に手をやり微笑むと、裕翔は突出させた鉄の塊を変形させてガトリングにし、逃げる彼女を狙う。
「逃すかっ」
「そんな事も出来るのね。面白い」
頰に手をやりペロっと舌を出す彼女に、裕翔は更に火力を高める。地面とした鉄の破壊。それは即ち、マントルが溶けた事による劣化と、核との間に存在する水の量を増やして圧力を強めた結果だろう。故に、水だけで無く、マントルを操作していたという事である。それはつまり。
「あいつをまた地上に出すわけにはいかないんだよ」
「ふふ、随分と必死の様でーーっ!」
「余裕ぶるのも、いつまで待つかな?」
逃げ惑う美弥子の足に、鉄の弾丸が一発通る。それによりバランスを崩した彼女に、裕翔が足を踏み出した。
が、その瞬間。
「チチチチチチチチッ」
一人の少女が、遠くから。
「ドッカ〜〜〜ンッ!」
そう元気に声を上げる。
と、同時。
「「「「っ!?」」」」
その場に、大きな爆発が起こった。
「ぐはっ!?」
「ぐぅ!?」
間近に居た裕翔と美弥子は吹き飛ばされ、それに気づいた、涼太を回収した拓矢は驚愕し、慌てて戻る。
「だ、大丈夫、?」
「クッ、い、一体、なんだ、?」
「あら、どうして敵である私を助けるのかしら?」
「え、いや、それは」
「ほんと、馬鹿で純粋ね。壊したい、」
「え、」
「マズいっ!」
美弥子はニヤリと微笑むと、体から水を大量噴射し、拓矢を吹き飛ばす。それにいち早く気づいた裕翔は鉄の盾を作り、防ぎながら拓矢の風を利用して着地する。
「気を抜いたら、飲まれて死ぬよ。拓矢君」
「ご、ごめん、」
「戦場では気をつけた方がいい」
裕翔はそう口にしながら、「それよりも」と。爆発した方向へと向き直る。
「あらぁ〜、随分とカオスな事になってきたわねぇ。いいわぁ〜、終末を感じる、」
そんな光景を、美弥子もまた空中に生成した水の中で浮きながら見つめると。
「ありゃりゃ〜、ちょ〜っとやり過ぎたかぁ?あははっ、でももう終わんしょ?この世界。なら、もっと盛大にやってもいいよねぇ」
遠くから、金髪でロングの髪を巻いた女子が着地し微笑む。その様子に、一同は目を細めていると、拓矢が口を開く。
「君が、、やったの?」
「えぇ?あー、今のぉ?凄かったっしょ〜?ずっとタイミング見て、溜めてたの。マジ激アツっしょ?」
「どういうつもり、?君は、今までそんな、」
「んー?あー、そういうのいいからいいから。てかさ、もう世界終わるんしょ?なら、楽しんだもん勝ちじゃね?せっかくこの世界来て、色々出来るのにさ。世界終わるのマジ勿体無いじゃん!」
「そんな、」
「世界を終わらせないために僕達はここに居るんだけど」
「え、そうなの〜?まあ、良いけどさ。でも、どんどん死んでるよ。街の人」
「っ!」
その女子の放った言葉に、拓矢は目を剥き冷や汗を流す。
「それなのにどうにかするって、、あははっ!マジウケる!どうにかして、その後どうすんの?このぶっ壊れた世界で、神にでもなんの?」
「違う。僕はーー」
「ああ。その通りだ」
「「っ」」
裕翔が放つ隣から、涼太が割って入った。
「世界を作り変える。元々、俺はお前らに裁きを下そうとしてたんだ。それがこれからは正式に出来て、俺は満足だよ」
「へぇ〜、そのための破壊ってわけ?」
「フッ、違う。あんな奴と一緒にすんな。俺が裁くのは、ああいうゴミ共の方だ」
涼太が低く放つと、その女子はニヤリと微笑む。と。
「ちょっと!涼太君っ!何言ってっ」
「あ?何言ってんだ。甘いぞ。こいつだって、今の爆発、見ただろ。自分が楽しみたいって理由で、絶対に被害者を出す。そんな悪党に、交渉する必要なんてない」
「で、でもっ、被害者は出てないわけだしさっ!さっきのも、丁度誰も当たらない様にしてーー」
「いや、、何も被害が出てないは、嘘になる」
「え、」
拓矢が説得する中、裕翔が目を細めて放つ。と、そんな彼の視線の先。先程の爆発によって地面となる鉄は破壊され、マグマが噴き出し、そこにーー
ーー巽拓篤が居た。
「っ!」
「もう少しだったんだけどね」
「クソがっ!あいつのせいじゃねぇかよ、」
「あいつ〜?誰のこと〜?」
「お前の事だよ!」
「あいつじゃ無いし〜」
「君は、確か、鈴木さん、だったかな?」
「鈴木呼ぶなしっ!なんか変な感じすんじゃん!あーし、鈴木香奈。香奈っちって呼んでよ」
「誰が呼ぶか鈴木」
「えぇ〜、それだからモテないんだよ裁き裁きうっさいなぁ」
「は?」
香奈と涼太が話す中、ふと裕翔はその様子を見つめたのち、目の色を変える。
「...拓矢君。直ぐに後ろに、風を使って逃げてくれ」
「えっ」
「この長い間、秋山美弥子の姿が見えない」
「っ、まさかっ」
それを放つと同時、拓矢は上を見上げ風を使って言われた通り退く。と、刹那。上空から美弥子が大量の水と共に落下し、それを生成した鉄で裕翔は防いだ。
「あら、バレていたのね」
「君の様な存在感のある人には、向かない芸当だよ」
裕翔はそう口にすると同時、防いだ鉄からバルカンを作り出し、鉄の弾を撃ち込む。だが、それが水の中に到達すると、それ故に速度を減速させられ、その隙に美弥子は避ける。と、水を撥ねさせ、その水滴を裕翔の足元に付着させる。
と。
「っ!」
それは直ぐに広がり、裕翔の足を飲み込む。と、そののち。
「さぁ、悶え苦しみなさい?」
美弥子は微笑み告げると、その水は更に広がり、裕翔を飲み込む。と、思われたが。
「っ」
突如、横から放たれた風によって、裕翔は水から脱出する。
「あら、邪魔しないで欲しいのだけれど」
「好きな様にはさせない」
少し声を低くし放つ美弥子に、拓矢は鋭い目つきで放つ。と。
「裕翔君!」
「っ」
突如の名を叫び、裕翔は目を見開く。
「Sを止められるのは君だけだから!ここは任せてっ!だから、お願い!」
「...」
拓矢の言葉に無言で頷くと、そのまま拓篤の方へと向かう。その姿を見据えながら、美弥子はニヤリと口角を上げ、改めた。
「お願いだなんて、、随分と身勝手なのね」
「Sの力には、、敵わない、彼と対等に戦えるのは、裕翔君しか居ないよ」
「ふふふ、とても信頼しているのね。でも、彼はどうかしら」
「分かってる、、俺の事を、信用しているわけじゃないのは、、それはそうだよ。正直、今まで大した話もしてこなかったからね」
「そう。でも、確認しないと分からないものよ」
「そうかな、?」
「ま、でも、結局貴方の信頼は打ち砕かれる事になるわ」
「え」
美弥子は頰に手をやり、そう告げると。
「それを確認する前に、全て終わるから」
強く放ち、大量の水を降らせた。




