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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第7章 : 関わり合いと処罰する者(パニッシュメント)
269/300

269.創造

「邪魔すんなよ」


 拓篤(たくま)が歯嚙みしながら、数メートル先の陸地で手を前に出す拓矢(たくや)に強く放つ。


「それはこっちの台詞だよ。俺達が言われてるのは碧斗(あいと)君達を捕まえる事だよ。その邪魔をして、この世界の人達を巻き込もうとするなんて、、それこそ、やめて欲しいんだけど」


「どこ目線だ。そうやって国から言われた事しかやらねぇから犬に成り下がるんだよわかるか?」


「君の様に、私利私欲のために傲慢に行動する人程は成り下がるつもりは無いけどね」


「随分と分かった様な言い方だな。邪魔すんならお前も先に消させてもらうぞ」


「俺を消すのは構わない。この世界を救えるなら、それで」


「随分な偽善者だな。碧斗レベルだ」


「ふふ、可愛いじゃない。その美しい自己犠牲。私は好きよ」


「誰に言ってんだ。お前も、俺からすれば同等だぞ」


 美弥子(みやこ)が割って入る中、拓篤は鋭い目つきで放つ。と、そんな中。拓矢はその男子に目を向ける。


「すみません、突然風で吹き飛ばしてしまって、、その、大丈夫でした、?え、えーっと、」


裕翔(ゆうと)です。ありがとうございます、助かりました」


「いえいえ。俺、拓矢っていいます。よろしくお願いします」


「知ってるよ。君は有名だからね」


「え?俺、有名なんですか?」


「それより、ここをなんとかしないと。僕らで止めないと、世界滅びるよ」


「ですね」


 裕翔の言葉に、拓矢は目つきを変えて構える。と、それに。


「ふふっ、面白くなってきたじゃない。そこまで言うなら、私を止めてみせて」


 美弥子はクスクスと笑うと共に、水を固めて放つ。それを、裕翔は鉄の壁を作り防ぐ中、風で浮遊する拓矢の方に向かう。


「させないよっ!ウインドカッター」


 と、それに向かって鋭い風を起こし水を分散させたのち。拓矢は空中で回転して更に風を起こす。

 すると。


「おやぁ?それはどういうおつもりでぇ?っ!」


 空中に漂うために伸ばした水の柱を、風を一点集中させる事で切り飛ばす。それ故に、水の維持が僅かにブレ、美弥子が意識をそこに集中した。その時。


「バーストヴィエントッ!」


「っ」


 拓矢の大きな風によって、美弥子自身を吹き飛ばし、水から追い出す。


「これはっ」


 水を空中で維持させるために意識を集中していた美弥子は、突然の押し出しに驚愕する。と、同時。


「君はそこで大人しくしててもらうよ」


 拓矢が口にすると共に、彼女の周りに風の壁が作られ、その圧力で空中に固定される。


「なるほど、、これが風の能力ねぇ、ふふ、面白いわ」


「それはども」


 それに微笑む美弥子に、拓矢は苦笑を浮かべる。と、一方の拓篤は。


「はぁ、どいつもこいつも、、今更焦ったところで、何も変わらないのに、馬鹿な奴らだ」


 この隙を見て街の方へと走り出す裕翔を見据え、目を細める。


「お前の守りたい街は、もう手遅れだ」


 拓篤がそう口にし、自身の足場を動かして裕翔との距離を詰めながら手を前に出すと。その時。


「っ!」


 その、異変に気づく。


「う、動かない、、まさか、」


 そう、マントルが、上手く動かないのだ。いや、動かないわけではない。先程とは違い、マントル自体は動いている。故に、核の鉄を調整しているわけでは無いのだろう。だが、いくら動かしても、地面に影響が見られない。即ち。


「今更焦ったところで何も変わらない。それは、君も同じだ」


「てめぇ、」


 街の前にまで鉄の道を作り上げ、その上で拓篤に振り返る。


「分からなかった?水と鉄を生み出し地震が伝う速度を調整した。でも、だからといってそれだけで解決するとは僕も思ってなかったよ。だから、さっきの水と鉄を、利用させてもらった」


「クソッ、イキりやがって」


 拓篤は歯噛みする。即ち、先程調整していた地中の鉄。それを鉄という物質にし、形を変形させる事で、地上との間に鉄のフィルターを作ったのだ。そう、あの時の碧斗の様に。


「それだけで、勝った気になるなよ」


 拓篤はそう呟くと共に、地中のマントルを溶かし、マグマを噴き出させる。それによって。


「っ」


 裕翔の真下から、マグマが噴き出す。


「鉄の壁なんて、マグマの前では無力だ。まだ分かんねぇのかよ。鉄如きで、マグマは止められねぇんだよ」


 拓篤は息を吐いてそう告げ、手を広げる。


「この星は終わる。お前がどれだけ鉄を調整しようが、守ろうとしようが。世界の摂理には敵わない。もう、運命は決まってんだよ」


「随分とお喋りだね。安心して。これで勝てるとは思ってないよ。ただ、一瞬困惑させただけさ」


「なっ」


 裕翔が笑うと同時。街の地面から鉄の地面が生み出され、それが伸びて天空へと伸びていく。


「お前、」


「これで、地震の心配は無くなったね。たとえマグマで溶かそうとしても、僕が新たに生成して食い止めればいい。地面を動かされるよりも時間差が生まれるから、僕としても対策はし易くなるよ」


「ふっ、それでも、どうせその場しのぎでしか無い。よく考えろ。俺の能力はマントル。地球規模で動かす事が出来る。お前の能力はせいぜい数キロメートル。そうやって一部の街だけ守っても、今頃、この星の裏側の人達は苦しんでるだろうよ」


「そうかな?」


「何、?」


 裕翔の発言に、拓篤は目を細める。


「確かに、君の能力はマントルを動かす事によって星全体に影響を与える事が出来る、、でも、あくまで動かせるのも、生成出来るのも、僕と同じ数キロが限界だよ」


「...ハッ、根拠も無しに」


「根拠ならあるよ。君はさっき、僕が向こうに行く前に、街をマグマの海にしなかった。もしこの世界全体に能力が適応出来るなら、もうとっくに全世界にマントルを生み出して溶かして、マグマにこの星を沈める事も出来た筈だよ」


「...お前、」


「つまり、君が能力を使用出来るのはあくまで僕と同じ範囲。その範囲内のマントルを動かしただけで、間接的に星に影響を与えられるってだけ」


 裕翔はそう微笑みながら告げると、そののち。


「だからこそ、ここで君を倒せば終わるって事だ」


「ハッ、それでも、この世界が終わる事には変わりな、っ」


 拓篤はそこまで告げると共に、気づく。


「分かったみたいだね。僕は鉄を調整する事で、この星を維持する事は出来る。でも、マントルを維持するのは難しいし、地面を元に戻す事は出来ない。だからこそ、僕は地面を鉄にして、作り直したんだ」


「お前、、まさか、終わった後の事まで考えて、」


「当たり前でしょ?僕が君を倒せない筈ないんだからさ」


「てめぇ!」


 拓篤はそう声を上げると、彼の周りからマントルが伸びて裕翔に向かう。それを、彼は手を前に出すと共に、鉄の壁を作りそれを押し出すと、マントルを抑え込み、それと同時に地面からは鉄を突出させ自身を押し上げる。と、その後。


「終わるのは君だ。S(シグマ)


「っ」


 飛び上がった裕翔は、見下しながらそう小さく口にすると。彼を押し出すために突出した鉄から、更に鉄の柱が横に飛び出し、それが拓篤の元へ勢いよく向かい、吹き飛ばす。


「クッ!?」


 それに僅かに吹き飛ばされたものの、その先で立て直そうとマントルの足場を作る。

 が。


「ウィドウバースト!」


「っ」


 突如、目の前からの強い圧力に吹き飛ばされ、拓篤は核へと落下する。が、しかし。慌ててマントルの足場を新たに生成し起き上がる。

 だが、それと同時に。


「なっ」


 またもや、強い圧力で吹き飛ばされる。それに驚愕しながらも、空中でその圧力が放たれる方向に視線を向ける。と、そこには。


「あいつ、」


「ごめんね。でも、こうするしか無いんだ」


 拓矢が、空中で浮遊しながら手を前に出していた。その隣には美弥子が固定されている。恐らく、彼女に力を向けなくて良くなったため、拓篤を止めようと意識を変えたのだろう。

 それに、気づいたものの。


「クッ」


 拓篤は瞬時にマントルの足場を作り後退り、それと共に押し出され、またもや足場を作るの繰り返し。が、それに対抗しようと拓篤がマントルを伸ばそうとした、その時。


「くるなら、ごめんねっ」


「っ」


 拓矢が掛け声の様に謝ると同時。強い風圧で吹き飛ばされ、空中に放り出された。その矢先。


「なっ」


 その上空で、拓矢が現れ、そこからーー


 ーー核目掛けて、風圧を与え拓篤を落下させる。


「クッ!?させっ、るか!」


 拓篤は空中で胸の前に腕を組み、その圧力に耐えながら目つきを変えると、核からマントルを生み出し、それを伸ばして戻ろうとする。が、その時。


「よくやった拓矢君。助かったよ。後は、僕に任せて」


「っ!」


 拓矢の背後から裕翔が現れ、そこから拓篤の方へと落下する。その間、彼は鉄を身に纏い、腕に鉄を集中させて構える。

 と、そんな彼が目の前に到達した瞬間。


「じゃあね」


「させるかっ!」


 拓篤は、突如寝返りを打ち、自身を押し上げているマントルの地面から突如、寝返る前に背を付けていた部分を突出させ裕翔に激突させようとする。が。


「っとぉ!」


「ごはっ!」


 それを軽く避け、空中で回って蹴りを入れる。成す術なく受けた拓篤は、吹き飛ばされ落下していく。それを見据えながら、裕翔は彼が先程まで居たマントルに着地すると、息を吐く。


「はぁ、腕に鉄を固めて、そのまま殴り抜けると思うかい?正直、蹴りを入れようとしていて、足に鉄を固めたらバランスおかしくなるよ。攻撃する場所と鉄を集める場所は比例しない。君も、焦ると馬鹿になるみたいだね」


 裕翔が息を吐いて彼の観察力の弱さを口にすると、その時。


「っ」


 突如その場に地震が起きる。と、瞬間。


「おっと、」


 その場一帯を占める程の大きさを持つマントルが星の底から伸びて、地上の如く元の場所まで戻る。と。


「誰が馬鹿だ。間抜け」


「なるほど。これが出来るのか」


「埒が明かないんでねっ!」


 拓篤がそう告げると共に、地面となったマントルを伸ばして裕翔を追い詰める。それと同時に、対する拓矢へも、マントルを伸ばし変形して、閉じ込める。


「なっ」


「地面がマントルになれば、直で変形出来る。この状況下で、俺に勝てる筈がない」


 拓篤はそう口にしながら、突出してぶつかって来るマントルを、身に纏った鉄を変形させて盾を作り防ぐ裕翔に向かって走る。と、そこから地面のマントルを変形させ拓篤は跳躍すると、周りにマントルを出現、溶かしマグマにし放つ。


「っ!」


 それによって鉄は溶かされ、留めていたマントルが激突。更に追い討ちをかける様に、拓篤はあえて彼の真似をし、マントルを身に纏って殴りを入れる。


「おらっ!」


「クッ」


 既のところで鉄の壁を作り衝撃を抑え、退くがしかし。その先で。


「なっ」


 突如地面が溶け、彼の足場がマグマの海へと変貌する。


「クッ」


 それに慌てて鉄の足場を作り跳躍すると、その先で待っていた拓篤が回し蹴りをして裕翔を地面に叩きつける。


「がはっ!」


「苦痛を味わえ裕翔。今までで最も苦しい激痛を伴って、記憶が消えないようにな!」


 拓篤はそう告げると、彼の腕だけをマグマで溶かそうとする。

 が、その瞬間。


「なっ」


 先に声を漏らしたのは、拓篤の方であった。地面に落とした裕翔に向かって急降下する拓篤に。裕翔はニヤリと微笑み跳躍して退くと、彼の落下地点。その場に大きなヒビが出来上がっていた。


「マントルには鉄は含まれてないから、どうにも出来ない。でも、このマントルを支えているのも、結局は核だよね。なら、それの密度を変えれば、凝縮し、突然の変化にマントルは崩れる筈だ」


「クッ、こんなもんっ」


 拓篤は空中で回転し、空中にマントルを生み出しそれを蹴ると、その勢いのまま距離を取る。

 が。


「なっ」


 その先もまた、ヒビが入り、落下する。


「じゃ、さようなら」


「っ」


 それに拓篤はハッとしていると、追撃を行う様に、裕翔は飛び上がって同じく手に鉄を集めて殴る。それはまるで、先程裕翔を地面に叩きつけた時の、拓篤の如く。


「グッ!?」


 それにより落下する拓篤はマントルを新たに生成しようとしたが、しかし。


「害悪は去れ」


 裕翔は地面となったマントルに着地すると、手を顔の高さまで上げ、それを下ろす。と、共に。ヒビ割れたマントルは動き、拓篤の落ちたその隙間を閉じる。


「ふぅ、中々しぶとかったな」


 裕翔は息を吐いて手をパンパンと叩き埃を落とす。だが、しかし。直ぐに目つきを変えて振り返る。


「そろそろ地面が消える頃だけど、消えないって事は」


「よく分かってんじゃねぇか」


 振り返った先、突如拓篤が現れ裕翔を蹴り付ける。それを瞬時に防ぐために腕の鉄を伸ばして盾にしたものの、大きく弾かれ、先程の一度目のヒビへと押し出される。


「クッ!」


「皮肉な話だなっ!自分で作った崖に、自分で落ちて終わるんだよっ!」


 それに透かさず蹴りを入れ、落下させるが、しかし。


「っ!ライジングウインド!」


「っ」


 拓矢がそう声を上げると共に、裕翔は押し出され、落下しようとしていた拓篤に蹴りを入れる。


「グッ!?」


「ありがとう、拓矢君っ」


 裕翔はそう呟くと、手に銃を作り出し拓篤の胸目掛けて引き金を引く。と。


「そしてさようなら、拓篤君」


 バンッと。その場には銃声が響き、拓篤に鉄の弾丸が撃ち込まれる。

 が、しかし。


「はは、間抜けが」


「っ」


 拓篤はニヤリと微笑み裕翔を掴むと、手からマントルを生み出し、彼を生き埋めにしていく。


「クッ!?」


「やっぱお前には弱く見せんのが一番得策だったな」


 拓篤はそう口にしながら、自身の服を捲る。と、そこには、マントルが服と体の間に出来ていた。


「マントルのスーツだ。お前の能力的に、こんな事もあるかと思ってな」


「お前、」


 拓篤はそう告げると、マントルに固められた裕翔に改めて放つ。


「さて、それじゃあどこからマグマにしていこうか、、世界の終末まで、お前のお陰で時間が出来た。ゆっくりと、遊ぼうか」


 不敵な笑みを浮かべ、拓篤がそう零した。


 が、その瞬間。


「っ!?」


 ギョッと。拓篤は突如目を剥き大きく距離を取った。それに、裕翔は何事かと目を見開いたが、その背後に。


「はぁ、もう少し、だったんだがな、」


「お前は、」


「よぉ、智樹(ともき)との件は助かった。ありがとな」


 チャンスを逃した事により歯嚙みしたものの、直ぐに微笑んで、その「男性」は裕翔に放つ。すると。


「ふっ、危ねぇな、、お前は、一瞬でも気を抜くと、やべぇからな、」


 冷や汗混じりに、拓篤が微笑む。そんな彼に。


「俺はお前に処罰を下しに来た。世界を終わらせる前に、世界を戻し償え。次は、確実にお前を殺す」


 そう、"涼太(りょうた)"は放った。

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