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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第6章 : こびり付いた悪夢(コシュマール)
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268.乱入

操作(そうさく)型、、なるほど、そういう事か」


 拓篤(たくま)は息を吐いて彼に目をやる。すると、対する彼は微笑む。


「そう、操作だよ。ただ作り出す、生成する能力じゃない。既に存在する鉄を操る事が出来るんだ。そして、それは鉄で出来た物質に留まらない。鉄という成分すら、操る事が出来る」


「なるほど、、だからこそ、内核の鉄の調整をして、それを動かす事で止めていた俺のマントルごと動かしたか」


「まあ、マントルを無理に動かさなくても、磁場に関してはどうとでもなるけどね」


「そうか、なら」


 拓篤は彼を睨む様に見据えたのち、低く告げた。


「溶けて死ね」


 拓篤はそれを告げると共に、手を上に上げる。すると、それと同時に。突如大きな地震がその場を襲う。


「っ、なるほど、今まで固めていた分、突然の対流によって今まで以上の地震を生み出したか、、面白いね」


「ああ、いつまで笑ってられるかな」


 拓篤は淡々と告げると、地震を強めて地面を大きく崩し、彼へと向かわせる。それに、対する彼は、鉄で作った足場を強化させながら手にまたもや拳銃を生み出して拓篤に向けた。


「こんなレベルで、僕の表情を崩せると?」


「ああ。こんなレベルで俺が終わると思ってんならなっ」


 彼が発砲すると共に、拓篤はマントルの塊を小さく、いくつか生成し、それを勢いよく飛ばす。と、それによって彼の放った鉄の弾を溶かし、そのまま向かう。


「っ」


 それに僅かに目を見開いたものの、直ぐに鉄の壁を作り出し、それを止めようとする。

 が。


「あめぇよ」


「っ」


 瞬間、そのマントルは全てマグマに溶け、それに飲み込まれた鉄の壁は、簡単に溶け去った。と、その後ろから。


ーっ、ブラインド!?ー


 溶けた鉄の裏から、同じくマントルの塊が彼を襲う。既のところまで見えないよう、飛ぶ位置を想定して作られた角度。それに、彼は目を剥きながらも、面白いねと呟き口角を上げると、足場としていた鉄を突如突出させ、その勢いで空中に跳躍した。と。


「君も、まだ甘さが残ってるみたいだね。甘々な彼女との生活の影響かい?」


「てめぇ、ふざけんなっ」


 拓篤が彼の発言に鋭い目つきで返すと、跳躍した彼の真下をマントルが通過する瞬間。そこでそれは溶け、マグマとなり、それを爆散させる事で彼に飛び散らせる。が。


「おっと」


「っ」


 彼は小さく声を漏らすのみで、一瞬で鉄を作り出すと。

 自分の身体に、まるで鎧の如く鉄を纏わせた。


「お前、」


 彼はそのまま落下し、体の鉄を使ってマグマを抑え込みながら足場を作り上げると、またもや鉄を身体に纏う。


「王城に居る時ね、丁度見ちゃったんだよ。水篠沙耶(みずしのさや)が、岩で鎧を作ってる姿をさ。そういえば、君も居たよね?」


「あの時か、、なるほどな」


 彼は微笑みながら見下す。まるで、これでもうマグマは通用しないと、言っているかの如く。

 が、しかし。


「ふふ、」


「?」


 それは、間違いだと。拓篤はニヤリと微笑み顔を上げた。


「随分と厄介な力だな。それ、瞬時に何度も作れるって事だよな?」


「そうだね。だからこそ、マグマに溶かされても、平気だよ。いくらマグマで溶かそうとしても、直ぐに作り変えられる以上、君の行動は無意味だと思うけどね。どう?観念する気になったかい?」


「はは、なるほどな、、でも、俺がお前を狙ってると思ったか?間抜け」


「なっ」


 拓篤のニヤリと微笑み見据える先に、彼は目を剥き振り返る。と、そこにはーー


「これが、狙いか」


 ーー街の方の地面が砕け、マグマが溢れ出していた。


「お前は救世主なんだろ?なら、助けてみせろよ。どっちみち、お前は死ぬ。このままここに居て、信頼を失い、救世主としてのお前が死ぬか、助けに向かってお前という存在が死ぬか」


 淡々としながらも、挑発的に放つ。まるで、どちらにするか決めろと。そう決断を迫る様に。それに、彼は目を細め悩む。どうするべきか。鉄の能力は遠距離には対応していない。故に、街の方に新たに壁を作るのは不可能。

 するとしても鉄の足場を作って向かわなくてはならないが、拓篤が居る以上難しい。それに、悩む。

 と、思われたが。


「どっちも死なないよ。僕は、どちらの僕も守ってみせる」


「は、?」


 彼はまるで、もう答えは決まっていると言わんばかりに微笑むと、手を地面の方へと向けた。

 と。


「っ」


「お、分かった?流石マントルの能力者だね。そんなに直ぐ変化が分かるのかい?」


 彼の起こしたそれに、拓篤は目を見開く。


「確かに普通に走ったら、絶対に追いつけない。だけど、その"速度を遅くしたら"、間に合うよね」


 彼は街の方へと体の向きを変えたのち、振り返ってニヤリと微笑み返す。


「水が多くあって助かったよ。秋山(あきやま)さんには、感謝しないとね」


 彼がそう放つ中、拓篤は歯嚙みして足を踏み出す。


「お前、まさか、水と反応させて、」


「お、流石だねぇ。そう、水と鉄を反応させて、鉄元素を高速で移動させる事で、"地震波超低速度領域"を作り出したんだよ。ただでさえ地中には水が多くあるけど、彼女のお陰でそれを調整する必要が無かったから、ほんと、タイミングだね。助かったよ」


 彼はそこまで告げると、そのまま街の方へと足を進めていく。が。


「行かせるかよっ!」


 拓篤はそう掛け声の如く放つと同時、マントルの塊を飛ばし、彼の周りで壁を作り、その上にまたもやマントルを作り上げると、それを溶かしてマグマをその中に入れ込む。


「これでどうだ?いくら再生速度が速かろうと、これを鉄で抑えるのは困難だ」


 口角を上げ、挑発的に放つ。そう簡単にマントルは砕けない。更には上からのマグマ投入で上から逃げる事は困難となる。故に、鎧を高速で入れ替えなければ、あの中で生きている事は不可能だ。拓篤はそれを確信し足を踏み出した。が。

 バキッと。瞬間音が響く。それはまるでマントルにヒビが入ったかの様な音。それに、拓篤は彼が抜け出したのかと近づいたが。

 ーー次の瞬間。


「おやぁ?もう勝ったおつもりでぇ?」


「っ」


 バキンと。

 マントルが弾けると共に。拓篤の背後から、彼女が近づいた。


「お前っ」


「ふふ、二人だけで楽しもうなんて、、ズルいわ」


 美弥子(みやこ)がそう口にすると、下に溜まった水を上空へと伸ばし、一本の柱にする。それを泳ぎ、登って行くと、彼女は遠くを見据える。


「うふふ、まだ街は無事みたいね。良かったわぁ、壊しちゃいたい」


 美弥子が頰に手をやり微笑むと、それに対して拓篤は目を細める。


「水の圧力だけで、マントルを破壊したのか、?」


「水を、舐めないでいただけます?」


 美弥子は挑発的に笑うと、同時。街の方へ手を伸ばし、地面を伝って水を流し、街中で噴出させる。


「随分と遠距離なんだな」


「ええ。貴方と同じでね」


「っ」


 美弥子はそう口にすると、拓篤の真下から水を噴き出させ、彼を水の中に閉じ込める。


「クッ、うっ、!?」


「あくまで貴方の能力はマントル。マントルで囲おうとも手遅れだし、マグマで蒸発させようにも、自分がもたない。どうやら、詰みのようね」


 美弥子が笑う中、水の中で拓篤は目を細める。と。


「おや?」


 突如地面が大きく揺れ、拓篤の真下が裂け、中からマントルが突き出し、彼を上空へと押し上げる。


「お前に上を取られるのは癪なんでね」


「ふふふ、元気そうね」


「せいぜい終末を楽しめ。終わりと同時に、お前も終わるだろうからな」


「その前に貴方を先に沈めるわ」



 互いに、同じ高さになり口にする。が、その瞬間。


「その芸当が出来るのは君だけじゃないよ」


「「っ」」


 拓篤の背後から、マントルに閉じ込めていた彼が現れる。


「お前、、マントルの中にマグマを流しておいた筈だが」


「君と同じ方法を使わせてもらったよ。確かに僕の鉄鎧はマグマに耐えきれない。更に言えば鉄じゃあマントルを壊せない。そしたら、君の様に足場を伸ばしてその勢いで出ればいいかなってね。勿論、その間の鉄の鎧はするけどね」


「チッ、俺がヒントを与えちまったのかよ、」


 拓篤が歯嚙みすると、同時。彼はそれだけを告げたのち、突如振り返り、鉄の足場から降りると、その筒状の鉄足場の側面を蹴って、急いで街へと向かった。


「お前」


「街は壊させはしないよ」


「あらぁ、随分と頑張り屋さんなのね」


 速度をつけて向かう彼の隣。水を伸ばして追いかける美弥子は放つ。


「頑張り屋さん?」


「ええ。もう絶対間に合わないのに、まだ救おうとするなんて」


「はは、、そっか、手遅れか、じゃあ」


「っ」


 彼はそこまで告げると同時、空中で振り返り彼女に向かって手を出して上に上げると、真下からタイミング良く鉄を伸ばして美弥子に激突させる。


「ぐふっ」


 と、そのまま、直撃した鉄を変形させて美弥子を閉じ込めると、彼は小さく微笑む。


「そこで見てなよ。僕が、止めてみせるから」


 美弥子の顔だけを出させ、街を見据えられる様に角度を調整する。と、彼はそのまま街の方へ視線を戻し、早める。

 もう少しで能力適応距離に入るがために、街を守る事は出来そうだと。

 そう思った。

 が、その矢先。


「っ!?」


 瞬間、その街の崩壊が始まる。それは、溢れ出す水によって、否。そう、崩れた地面によって落下し、溢れたマグマによって、飲まれそうになっているのだ。それに気づき彼は目を見開いた。すると。


「ふふふ、残念。さっき、自分で言ったんでしょ?地震波超低速度領域を作り出すためには、"水"と鉄を反応させるって。なら、一方の水を止めて、減少させたら、どうなるかな?」


「っ、そっか、それの影響で、地震の広がりが早くて大きいのか、」


 彼女の発言に、彼は納得し改める。


「でも、その程度じゃ僕には敵わない」


「っ」


 彼が微笑むと同時、鉄の地面に手を当て、そこに力を込める。と、瞬間。彼の向かう先に高速で道が出来上がり、背中に壁が現れる。

 と、それ共に、道が出来る速度と同等の速度で壁が動き、彼の背中を押して街へと向かっていく。


「更に内核の鉄の動きも僕が操る。そうする事で、地震の速度は低下し、僕の速度は加速する」


「いい足掻きね」


「ハッ、間抜けが」


 その行動に、美弥子が微笑み、拓篤が鼻で笑う。 と。


「そのレベルでイキんなよ。舐められるぞ」


「っ」


 瞬間、彼の目の前に突如マントルが飛び出し、鉄を貫通して目の前に現れる。と、そののち、そのマントルは突如溶け、マグマとなる。


「クッ」


 マズいと、彼は反射的に背中の壁を消して後退ろうとするものの、その一瞬で戻れる筈も無く。


「っ」


 そのマグマに、飲み込まれる。


 と、思われた、瞬間。


「なっ」


「んっ」


 その場の皆に突如、大きな向かい風が襲い、一同が声を漏らす。その風力は大きく、その圧力によって、彼は背後へと吹き飛ばされる。


「何、?」


「チッ、邪魔すんなよてめぇ。もう少しで消せたのによ。この、クズを」


「随分と大きい力だね、、でも、この世界を終わらせるなら、俺は容赦しないよ」


 拓篤が歯嚙みして風の起こった方向に視線を向けると、そこには。

 数メートル先の陸地にーー


 ーー岩倉拓矢(いわくらたくや)が、立っていた。


「この世界の人達は、俺が守る」

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