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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第7章 : 関わり合いと処罰する者(パニッシュメント)
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247.察知

「おっと、、逃げられたか、」


 その後、S(シグマ)はマントル生成により愛華(あいか)を追い詰めたものの、バリアに弾かれたのちに、目を向けた時には既にーー


 ーー愛華はそこには居なかった。


「あそこまで言っといて逃げるとは、、まあ、でも、時間稼ぎ自体は出来たのかなぁ」


 Sは遠い目をしながらもそうニヤリと微笑む。その数百メートル先の建物の陰。愛華は僅かな時間を使って逃げたのち、息を吐いた。


ーごめん、、碧斗(あいと)、、でも、もう、ー


 息を切らしながらも、バレないよう声を殺す愛華は。服は大きく焼け焦げ、体の至る所に火傷。そして、右脚は僅かに溶け始めていた。逃げる事が出来たのが奇跡と言うべきだろう。火事場の馬鹿力というやつだ。


「クッ、」


 そんな中、ふとSと戦う中で交わした会話を思い返し歯嚙みする。彼は、あの時、確かに言った。


『連続行方不明事件。その人物が皆死体で発見された事件だ』


 確かに以前、王国の中で騒がれていた事件だ。無差別的犯行であったため、多くの街の人々が怯えていたのを、今でも覚えている。あの時は、勇者である自身が何とかするからと。愛華は言ったものだが、相手がSであるならば話は別である。


ー本当、、なの、?ー


 愛華は目を細める。その事件はのちに、大勢の死者を出したとの事だった。もし、Sの話が本当であれば、彼は大勢の人間の命を奪った事になる。しかも、一度きりの、戻らない異世界人の命を、だ。


ー碧斗、ー


 そんなモンスターをここで止められなかった事を悔やみながら、愛華は碧斗を案ずると共に謝罪を呟き無事を願った。


           ☆


「グラムさん、、その、突然で、申し訳ないんですけど、、この家を、出てはくれませんか?」


 碧斗の一言に、皆は目を見開く。


「そ、そんなっ、、どういうことじゃ!?」


「ごめんなさい、、でも、このままだとこの家が危ないんです」


 碧斗は必死に頭を下げお願いをする。その様子に、皆もまた理解した様で、続けて放つ。


「僕からもお願いします。まずは、お二人の命が一番大切です。この家は僕らが守りますから。シェルビさんだけでなく、グラムさんも、、安全なところに移動してくれないでしょうか、?」


「私からも、、お願いします」


「クッ、、チッ、、た、頼む。ジジイには、死んで欲しくないんだ」


 続いて樹音(みきと)美里(みさと)大翔(ひろと)が頭を下げお願いする。それに、グラムは悩んだ素振りを見せたのちーー


「それは、、出来んよ、」


 ーー小さく、否定した。


「はぁっ!?」


「ここは、、儂の大切な家なんじゃ、、シェルビが、、用意してくれた、」


「...」


「ジジイ、、お前、自分の命よりも家を優先すんのかよ」


 グラムが目を逸らす中、大翔が割って入る。それに、碧斗が歯嚙みすると。


「安心してください。この家は、私達が、守ります」


 美里が、強く放った。それに、グラムのみならず一同は彼女に振り返り目を見開く。


「い、一体、、何が起こっとるんじゃ、?」


「...実は、」


「大地震が近いんです」


「「「!」」」


 樹音が事情を口に仕掛けたと同時、碧斗が放つ。それに、皆が驚愕する中、続ける。


「このままだと、災害に発展する恐れがあります。この家を手放すわけではなく、避難という形で、、少しの間、移動してくれませんか?」


 碧斗はそう言い換える。嘘は言っていない。グラムもまた、「確かに、さっきから地震が多いのぉ」と呟いた。

 この言い方が正解かは分からない。だが、これ以上、グラムをこちらの都合に巻き込むわけにはいかないと。碧斗はあえてそう告げた。


「だから、お願いします。相原(あいはら)さんの言う通り。ここは俺達に任せてください。だから、、逃げてください。お願いします。グラムさんは、ここで亡くなったらそれで終わりなんです」


「そ、、そうかもしれないのぉ、」


 いまいち頷けない様子のグラムだったものの、皆の様子から事の重大さを理解すると共に、悩みながらも頷く。すると、美里と碧斗はぱあっと表情を明るくして顔を上げた。


「それじゃあ一度、逃げるとしようかのぉ、、って、およ、?シェルビ、?」


 グラムが改めて支度をしようとしたその時。ふと奥からシェルビが現れた。それに一同目を見開き振り返る。出て行ったのではないのか、と。


「この家は、わたくしが用意した家ですわ。絶対に、守り切ってもらいますから」


 と、シェルビが真剣に放つ。その真っ直ぐ見据える瞳から、碧斗は察する。そう。シェルビもまた理解していたのだ。悠介(ゆうすけ)が訪れた事。この衝撃が近づいている感覚。ここは危ないと。本能で感じ取っていた。


「任せてください」


 「そんな事言うために戻って来たのかよ」と呟く大翔を他所に、碧斗は強く頷く。すると。


「わたくしはソナーで連絡を取って、一度向こうの国の騎士に迎えに来てもらいますわ。わたくしの国の方も気になりますし」


「そ、そうか、」


「何ですの?もしかして寂しいんですの?」


「そ、そんな事は無いわい」


 改めて別れを口にするシェルビに、グラムは俯き気味に放つ。その反応にシェルビはニヤニヤと放つと、恥ずかしそうに目を逸らす。

 と、そんな中で、ふと大翔は口を開く。


「じゃあどうする?そしたら俺らはジジイを移動するか」


「いや、、ちょっと待ってくれ、、もし、この家を守るのだとすると、別行動にした方がいい」


「なっ、どういう事だよ!?あんな奴、四人でも勝てる可能性がねぇのに、」


「だからこそだ」


「っ」


 大翔の言葉に被せる様に碧斗が一言告げると、彼は目を見開く。


「勝てるわけない相手だ。だからこそ、二人の安全が第一だ。そして、グラムさんを移動する間、この家がガラ空きになるのは問題なんだ。二人との約束もあるけど、一番はそれを見て我々を追って来た時、その移動先がまたバレる可能性が高い」


「じ、じゃあどうすんだよ!?」


「だからこそ、二人でグラムさんを守りながら移動して、他の二人でこの家でSと戦う。つまり、時間稼ぎ的なものだな。ここは、俺に任せて欲しい」


「は!?なんで碧斗なんだよ!?」


「恐らく、あの能力に対抗出来るのは、空を飛べる俺か、マントルを少しでも止められる樹音君くらいだと思う。相原さんと大翔君は、攻撃は与えられても守る手段が限られる。二人をここに居させるのは得策じゃない」


 碧斗の案に、美里もまた同意の様子で頷くと、樹音が口を開いた。


「な、なら、僕もここに居た方がいいかな、?」


「いや、別行動をするにあたって攻撃を避けられる、防げる人が固まるのはあまり良く無いと思う。防げる人と攻撃出来る人をそれぞれのチームにして分けた方がいい」


「なら、、私はここに残る」


「はぁ!?おまっ、何勝手にっ、!」


「心配なら、早くグラムさんを移動させて戻って来ればいいでしょ?」


「っ、、あ、ああ!あーったよ!よし、樹音!行くぞ!」


「えっ、あ、うんっ、!」


 美里の促しに大翔はそう仕切り直すと、二人でグラムを連れて足を踏み出そうとする。が、しかし。


「で、でも儂はどこに行けばいいんじゃ、?」


「た、確かにっ、逃げるところなんてねぇぞ、?どうすんだ碧斗」


「大丈夫だ。逃げる先は、もう決まってる」


 碧斗は真剣な表情でそこまで告げると、少しの間ののち目つきを変える。


「マーストの家だ」


「「「「っ」」」」


 その答えにまたもや皆目を剥く。


「誰ですのそれ」


「マ、マーストって、、確か、前にお主らと一緒におった、」


「碧斗の担当騎士だ。でも、マーストの家に入る方法あんのか?鍵でも持ってんなら話は別だけどよ」


「鍵は、、ない、」


「駄目じゃねぇか」


 大翔の発言に碧斗は目を逸らしたものの、でも、と。そう改めた。


「それでも、今は緊急事態だ。少し壊してしまっても、、責任は全てが終わった後俺が取る。だから、能力でなんとかして入ってくれ。Sの目的はグラムさんやシェルビさんではない筈だ。だからこそ、あいつの能力のマントル。それによる地震から身を守れる場所であればそれでいい。とにかく、家の中にいた方が安全だ」


「地震の時って家の中危険じゃないのか?」


「レベルによるけど、、彼の場合地面を動かせるわけだし、、外は危険だよ」


 碧斗の考えに大翔は疑問を投げかけるものの、なら仕方ないかと目の色を変える。


「ちょっと強引だが、仕方ないな」


「なら、僕が刃でピッキングするよ。...それなら、最小限の被害で済ませられる筈、」


「ありがとう、、樹音君、助かるよ」


「うん、、だからこそ、みんなで、弁償しなきゃ駄目だよ、、みんな、生き残って、」


「ああ。当たり前だ」


 樹音の、どこか寂しそうに放ったそれに、碧斗もまた辛そうにしながらも、自信を持って返す。こんな台詞、まるで死亡フラグの様だ。実際に沙耶を目の前で失っている。次は誰が欠けるか分からない。我々も、例外ではないのだ。だが、それでも。

 ここに居るみんなだけでも、生き残る。そんなわがままでしかないそれを強く思いながら、皆は顔を合わせて頷き合うと、大翔と樹音はグラムに向かい、足を踏み出した。


「じゃあ、、頼んだよ」


「俺達が戻る前に死ぬんじゃねーぞ!」


「ああ。任せろ!」


 碧斗は強く放つと、三人は歩き出す。その後ろ姿を見つめながら、目を細めて感慨深そうにしながら息を吐いたのち、改めて碧斗は振り返った。


「はぁ、じゃあ、わたくしは行きますわ」


「ありがとうございます、、シェルビさん。グラムさんを、見送ってくれたんですね、」


「別に貴方のためじゃありませんし。貴方を許したつもりはありませんわ」


「う、、そ、そう、ですよね、、すみません、あんな、言い方してしまって、」


「別にわたくしは言い方にただ怒ってるわけではありませんわ。沙耶(さや)は、わたくしにとっても大切な存在でしたの。それを、侮辱された気分ですわ」


「...シェルビ、さん、」


「はぁ、貴方と話したいから残ってたわけではありませんし、そろそろ出ますわ」


「シェルビさん、そしたら、迎えが来るまで私達から離れないでください」


「いえ、その点は問題無いですわ」


「えっ」


「わたくしの担当騎士は転移魔法の使い手でしてよ。魔法陣があれば直ぐに移動できますの」


「その、魔法陣は、?」


 シェルビの返しに美里が聞き返すと、彼女はドレスから大きないくつかに折った紙を取り出して広げる。


「これですわ」


「す、凄い、、ずっと持ってたんですか、」


 シェルビがそう口にして床に置いたのち、ソナーで連絡を済ませ、魔法陣を広げてから数分後に担当騎士が現れる。と、その騎士に事情を説明したのち、彼女は魔法陣に入る前にふと振り返る。


「不本意ですが、この家は、頼みましたわ」


「はい、、任せてください」


「ちなみにこれ、余ってましたわ。危なかったら、使うといいですわ」


「「っ」」


 シェルビはそう付け足し、騎士から受け取ったそれを美里に託す。


「これって、」


「同じく転移用の魔法陣ですわ。もしもの時はこれを広げてくださいまし。自動的に設定された場所につながる様になってますわ」


「設定された、?」


「今回はここへの移動があったので、恐らくこの家に繋がる魔法陣ですわ」


「「あ、ありがとうございますっ!」」


 シェルビのご厚意に碧斗と美里は同時に深く頭を下げると、彼女はどこか寂しそうに。


「無事で、、いてくださいまし、」


 と、誰にも聞こえない声で呟くと、騎士と共にゲートを潜って消えていった。そののち、その魔法陣はゆっくりと縮小する様にして消え、それを見届けたのち、碧斗に美里が放つ。


「それ、伊賀橋(いがはし)君が持ってた方がいいと思う」


「でも、シェルビさんは相原さんに、」


「私は、対抗策が無いから、」


「...」


 その、死ぬ覚悟を見せる様な発言に、碧斗は目を細め悩んだのち、小さく頷きそれを受け取る。


「分かった、、これは、最終手段だ、、なるべく、使わない様にしないと」


 碧斗はそう呟き魔法陣をしまうと、改めて美里を見据える。


「よし、、じゃあ、、行こうか」


「うん、」


 とうとうこの時が来た。碧斗の手は勝手に震え、足はガクガクし上手く歩けなかった。覚悟は決めた筈なのに勇気が湧かない。碧斗はそんな弱い部分に拳を握りしめながらも、必死に一歩踏み出す。そしてふと、美里へと視線を向けると。そこには。


「っ」


 美里もまた、震える手を無理に抑えつける様にしていた。


「...ふっ、」


「は、?な、何、?こんな状況で何笑ってるわけ、?」


「ご、ごめん、、でも、ビビっていられないなって、、思った、」


「何の話、?」


 碧斗はもっと不安な彼女の、少しでも支えになれる様にと、あえて自信げに微笑み足を踏み出した。


「大丈夫。いざとなったらシェルビさんの魔法陣があるんだ。怖がることはない」


「...最終手段って、、言ったばっかりじゃない、?」


「ま、まあ、安全策があるって事で、」


 碧斗の言葉に未だ恐怖を拭いきれていない様子の美里だったものの、それでもと。同じく覚悟を決める。

 もう、後戻りは出来ないと。二人は身構える。


「今日こそ、、Sを、止めてみせる」


 碧斗は震えた手をもう片方の手で押さえながら、それを隠す様に強く放った。



 だが、しかし。


「...こ、、来ないな、」


「それよりも、、地震すら起きなくなった気がする、」


 いくら経っても、Sが現れる気配はなかった。それに碧斗は拍子抜けした様子で息を吐くと、対する美里はそれはそれで不気味だと目つきを鋭くする。


「グラムさんの家は特定されてるんだ。...Sなら来てもおかしくない筈だが、」


「目的が違うのか、、はたまた、さっきのあの人が、、守ってくれてるのか、」


「っ」


 碧斗は美里の言葉に目を見開く。先程、僅かに見えた膜の様なもの。あれは明らかに彼の攻撃を止める様なものであった。それの使用者は誰なのか、目的は何なのか。分からない事だらけではあるものの、それによってSの足止めに成功しているならば今しか無いと。碧斗はこの時間を利用してSの攻略方法を探るために(わたる)から託された本を取り出し目を向ける。どこかに、"能力"の弱点が無いか、と。Sの能力に能力で勝つのは難しいため、何とか他の方法でと考えたのだが。

 それを思った。刹那。


「「っ」」


 その場に、大きな地震が訪れた。


「こ、、これって、」


「地震、、このタイミングで、、多分、間違いないと思う、」


 碧斗の冷や汗混じりの問いに美里もまた恐る恐る返す。


「どういうつもりだ、?」


 恐らく、Sの能力によるものだろう。そう思うと共に、碧斗は頭を悩ませた。どうしてこんな回りくどい事をしているのか、と。彼が碧斗達を狙っているのならばこんな事はしなくてもいいだろう。グラムの家に先回りすれば良いだけの話である。


ーこれは逆にカモフラージュか何かなのか、?ー


 碧斗は地震に耐える様に地面に手をやり身を低くしながら考える。別の目的があるのか、はたまたそう思わせているだけなのか。だが、先程の様子。少なくとも碧斗に何か思いがある様であった。そのため、他の目的は考えづらいのだが、と。そこまで考えたと共に、その地震はゆっくりと小さくなった。


「と、特に何も無かったね、」


「油断してる暇は無いと思う。いくら能力の地震だと言っても、これはれっきとした災害だから、、この世界の人達に迷惑がかかってる」


「確かに、、これ以上大きくなったら死者が出るかもしれない、、なら、早く見つけないと、」


 碧斗はそう口にしながら歯嚙みする。そうか、これが狙いか、と。彼の望む場所に我々を誘き寄せるために、あえて地震だけを放ち続ける選択をしたのだろう。我々が異世界の人達に迷惑をかけたく無いと第一に考える事を逆手に取られて。


「伊賀橋君、、罠だと想定するのは分かるけど、、でも、一番はこの世界の人達の命だから」


「そう、、だね」


 碧斗の葛藤を美里は察したのだろう。いや、彼女自身も迷っていたのかもしれない。こんなの、罠と分かっていて飛び込む様なものだ。だが、それでもと。碧斗は頷いた。


「よし!ごめん。色々と悩んでたけど、今はその時じゃないよね、、なら、まずはSの居場所、だけど、」


「地震が伝う速度で場所を逆探知するしかないかもね、、少し難しいけど」


「逆探知、、そんな事が、?」


「原始的な方法だけど、私と伊賀橋君が数十メートル離れて立ってる。そして揺れが来た瞬間に私は炎で花火を上げて、伊賀橋君は煙を空中に放つ。それが先に上がった方が震源地に近いことになるし、その間の時間を逆算すれば、揺れが伝う速度も、上手く行けば求められる筈、」


「なるほど、、なら、揺れが伝わる時間差を変わりやすくするために遠くに行きつつ、炎や煙が見える最適な位置に行かなきゃ、だねっ!?」


「!?」


 碧斗が口にすると共に、その場にはまたもや地震が襲う。どうやら、何度も地震を起こしている様だ。恐らく、我々が来るまでやっているのかもしれない。だがそれは好都合だと。碧斗は美里と顔を見合わせ頷くと、地震が止まると同時にそれぞれ走り出す。

 それから数十分後。碧斗は煙で飛躍し、それぞれ四、五キロ程離れたのち、その時を待った。すると、その時。


「っ」


 碧斗は僅かな揺れを感じると同時に空中に煙を放って、それを膨張させる事により破裂させる。その僅か一秒と経たないうちに今度は数キロメートル先から炎による花火の様なものが打ち上げられ、碧斗はその間の時間を把握する。


ー一秒かからずに四キロ程か、、震源地に近いのは俺の方、、後は地図でもあれば、、助かるんだけどなー


 地震が伝うのは一秒で約七キロだと言われている。碧斗はそれを考えながら、今度は少し計測場所をズラしてみようと。西側へと飛躍する。

 そして、数分後。またもや地震が一同を襲う。それに対し碧斗が同じく煙を放とうとした、その時。美里も既に、炎を放っていた。それを見据えた碧斗は、おおよその方向を察して、そちらへ視線を移すと、目を細めた。


「相原さん!」


「っ、伊賀橋君、どうだった?」


 碧斗は美里の元に飛躍して戻ると、先程考えていたそれを伝える。それに、一度悩んだものの、美里は直ぐにハッと目を見開いた。


「確か、、グラムさんの書斎にこの辺の地図があったかも、」


          ☆


「あ、あった、」


 それから数十分。美里と共にグラムの家へ戻っては書斎で地図を探し、なんとか家周辺の地図を見つけ出す事が出来た。


「こ、これだっ、、ありがとう、相原さん!」


「まあ、、確信じゃ無かったけど、あって良かった、、そうしたら、とりあえずさっき計測した場所を特定しなきゃ、」


 碧斗の感謝に僅かに恥ずかしそうに目を逸らしながらも、その視線の先にあった小さな置物を地図上に置く。


「大体、私がさっき居たのがここ、」


「なら、俺が居たのはこっちだから、」


 美里に続いて碧斗もまた置物を使って場所を特定すると、更にもう一つの置物を碧斗は手に取る。


「そして、、確か二回目の計測がこっちだから、」


「それで、二回目の方は私と到達タイミングがほぼ同じだったわけでしょ?」


「うん。だから、地震の広がり方としては、」


 碧斗はそう呟きながら、一回目と二回目の計測場所、そして美里の居た場所の距離感を考えながら円を書く様に広がり方を特定すると、それを踏まえて震源地の方向を割り出す。


「やっぱり、、北側だ、」


「北側、、って言うと、あるのは、」


 碧斗が目を細めて口にすると、美里が地図を凝視する。がしかし、その地図には我々が求めている場所までの記載は無く、拳を握りしめた。


「クッ、、それっぽいものは見つからない、、この地図で見切れてる先っぽいな、」


「この先って、、確か、」


 碧斗はSが我々を誘き出そうとしている場所らしきものが見つからないがために歯嚙みしたものの、美里は心当たりがあるのか、小さく呟く。


「な、何か、、分かったの、?」


「確か、この先、、ラストルネシアがあった場所、、じゃない?」


「ラストルネシア、?...って、、確か、、っ!」


 ふと放たれた美里のその地名に、碧斗はどこかで聞いた事があると首を傾げたが、その瞬間、地図の道を見て思い出す。


「それってもしかして、、大翔君と、」


「そう。(たちばな)君と決闘した場所」


「Sは、、俺達をそこに誘き出そうとしてるのか、?」


 碧斗は顎に手をやり悩む。やはり、彼の能力を考えると、野外であり、ある程度広い場所の方が都合が良いのかもしれない。元々聖戦を行なっていた場として語り継がれてきたのもあって、開けた決闘場の様で、戦闘には持ってこいの舞台だろう。


「そしたら、、そこで待ってるって事か、、だとしたら、罠っぽいな、」


 碧斗は顎に手をやり悩む。場所を考えると、我々を誘き出そうとしているのは明白である。だが、地震をこのままにしておくのも問題だ。そう考える中、美里は首を捻る。


「...ど、どうしたの、?」


「う、うん、、ただ、、なんか、それが狙いなのかなって、」


「他に、、可能性が、?」


「ううん、、ただ、嫌な予感がしただけ、、ごめんなさい、こんな、非科学的な事、言うつもり無かったんだけど、」


「まあ、勘も重要だし、みんなと合流したら、向かってみるか、」


 碧斗はそう呟くと、本を取り出しまたもや何か対抗策はないかを考える。その間も、美里はその"嫌な予感"を明確にしようと悩み続けていた。

 そんな中でも尚、地震は続く。一定周期で続いている。何だか、揺れの感覚が強くなっている様にも思える。それを思うと共に、碧斗は本を閉じて立ち上がった。


「相当俺達を誘き出したいんだな、、強くなってる、、先に、街の人に避難を促しておいた方がいいかもね、」


 碧斗はそう呟きながら、美里に促し家を出ようとする。が、その瞬間。


「っ!待って伊賀橋君!」


「え、?」


 ずっと無言で地図を見続けていた美里が冷や汗を流し、驚愕の表情を浮かべ、今までにない声を出し立ち上がった。


「...マズい、、今すぐ向かわないと手遅れになる!」


「え、?ど、どうしたの、?向かうって、、ラストルネシアに、?」


「ううん、、ねぇ、伊賀橋君、あの時、ラストルネシアを教えてくれたマーストさんの話、、覚えてる、?」


「え、?は、話、?別に、ただ、案内してくれるって、、言ってたんじゃ、?」


「そう、、私も、忘れてた、、けど、その時、ラストルネシアだけじゃ無くて、その場所を教える時、"隣にあるもの"も教えてくれてた、」


「え、」


 美里が目を細め告げたそれに、碧斗は僅かに目を見開く。確かに、何かを言っていたかもしれない。それを僅かに思い出しながらも、そんな彼に、美里は答えを告げる。


「グランドロブモンテ、、あの時、ラストルネシアの隣にあるって、マーストさんは言ってた、、記憶が間違ってなければ、、ううん、名前からしても間違いない、、それは、巨大火山、」


「っ」


 美里の一言に、碧斗は目を剥く。まるで、時が止まったかの様に、空間が締め出された感覚が襲う。

 巨大火山。それはつまり。


「あいつのマントルの能力を上手く使えば、、火山を活発化させて、噴火させる事が出来るって事。下手すると、、この王国が、、滅びるかもっ」


「う、嘘だろ、」


 付け足されたその言葉に、碧斗は驚愕に言葉を失い、力無くしゃがみ込んだのだった。

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