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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第7章 : 関わり合いと処罰する者(パニッシュメント)
244/300

244.計画

「チッ、、マジかよ、」


「ごめん、、僕だけでも、、見張っておけば、」


「いや、、樹音(みきと)君のせいじゃない、、あの時は、みんなを優先するべきだったし、、その行動は間違ってなかった、、ただ、、もう少し早く、、気づいていれば、」


 碧斗(あいと)は歯嚙みし拳を握りしめる。これからだった。あの本を解読し、そこに書かれた内容を踏まえて、この争いを終わらせようと。その一歩を踏み出そうとしていたところだったじゃないか、と。


悠介(ゆうすけ)君は、、一体、、一体どこでその情報を手に入れたんだ、?ー


 碧斗は目つきを変える。(わたる)が伝えたのだろうか。いや、我々に託した彼が、伝えるとは考えづらい。だが、彼が本を渡したのちに、突然悠介は行動に移した。何か関係があるのか、と。碧斗は悩む。と、その瞬間。


「っ、、でも待てよ、?渉君は、、あの本の行方を追っていた、、元々、グラムの家を探していた。だとすると、」


「...でも、それは考えづらいと思う」


「えっ」


 どうやら、口に出ていた様だ。美里(みさと)がふと割って入る。


伊賀橋(いがはし)君の考える通り、もし仮にあいつがグラムさんの家を探していた理由に、この書斎にあった本が含まれていたとしても、安易に本の存在を口にするとは思えない。私達の時みたいに、隠しながら伝える筈」


「そ、、そうか、」


「だから、少なくとも本を持って来てなんて言い方、とくに頭のキレるあいつには言う筈ない。するとしても、グラムさんの家を教えてもらうか、何かグラムさんの家に行く理由を作って、それを行う彼の後を追う事で家の特定をしようとする筈」


「な、、なるほど、、悠介君がグラムさんの家に騎士を連れて来たのも、渉君が、何かを伝えたからって可能性もあるわけか、」


 美里の考察に、碧斗は悶々と悩む。だが。


「でも、その可能性も低いと思う。もし、本を持って行ったのが不破(ふわ)渉なんだとしたら、あの時私達に渡した文庫本は意味を成さないはず、」


「そ、、そうだよね、せっかく、渡してくれたのに、」


 美里が続けると、樹音もまた顎に手をやる。という事は、渉は関係ないのだろうか。はたまた、彼に言われたものの、それを逆に利用して悠介独自の考えで本を盗んだのか。

 真偽は不明だが、本が何者かに盗まれたのは確かである。碧斗がそう考えるとふと。察する。


「そうか、、悠介君は元々これが目的だったのか、」


「「「え、?」」」


 突如呟いた碧斗に、皆が首を傾げる。


「悠介君は俺達の居場所を皆に教えるわけでも、俺達を匿ってたグラムさんを貶めようとしたわけでもない。この、違法な本を所持したとして、グラムさんを捕まえようとしたんだ」


「「!」」


「あ、あり得るかも、、もしグラムさんが捕まったら、私達の居場所は無くなるわけだし、なんとかするために動くから、」


「うん、、多分、本を半分残したのも、」


 碧斗はそう察して口にする。真相は不明である。彼が自分で読むためという仮説が無くなったわけではない。だが、その可能性も高いと、目を細めた。と同時。


「おお、、お主ら、、みんなしてどうしたんじゃ、?」


「グ、グラムさんっ、」


「グラムさん、、その、本が、」


「ん、?お、、およ、?本はどこへやったんじゃ、?」


「「「「っ」」」」


 本棚に目をやり驚くグラムの反応に、目を見開く。どうやら、彼は本が盗まれた事を知らない様だ。即ち、バレずに盗んだということだろう。


ー考えられるのはやっぱり姿を消せる悠介君か、盗んでも瞬間移動出来る渉君のどっちかか、ー


 碧斗はそう改めると、ならばと。改めて皆に向き直った。


「本が無い今、、振り出しだ、でも、」


 と、そこまで告げると、目を細めグラムに振り返る。


「まずはグラムさんをなんとかしないと、」


「わ、儂か、?」


「はい。もしかすると、ここはもう時期囲まれるかもしれません、、早く、避難してください」


「ど、どういう事じゃ、?」


 碧斗は首を傾げるグラムに、事情を説明するべく足を進める。が、その時。


「っ、、シ、シェルビさん、」


 ふと、グラムの背後にシェルビが現れた。


「ど、どうしたんじゃ、?シェルビ、」


「...出て行きますわ」


「「「「「えっ」」」」」


「はぁ、、もう、あなた方と顔を合わせたくないんですの」


「はぁ!?んだと!?」


「ま、まあ、、で、でも、どうして突然、?」


 声を上げる大翔(ひろと)を押さえながら、樹音が疑問を投げかける。と。


「...前から思ってましたわ。あなた方とは、やっていけないと」


「「「っ」」」


「シェルビ、」


 グラムが名を零す中、碧斗は目の色を変える。そうだ、きっと自分のせいだ、と。あの時から、シェルビとは話していない。あれから、大翔との関係も悪そうである。きっと、皆心のどこかで思っていたからだろう。沙耶(さや)を失った悲しみは、彼女には理解出来るはずないと。だからこそ、遠ざけた。それが、返ってきたのだ。


「あ、そのっ」


 碧斗は謝らなくてはと。身を乗り出したがしかし。ふと悩む。現在、この家は危険である。ならば、このまま移動してくれた方が都合が良いのではないか。そう思いながらも、それでもシェルビにはしっかり謝らなくてはと向かった。が、その、瞬間。


「「「「「っ!?」」」」」


 突如、大きな揺れが皆を襲った。


           ☆


「はぁ、、だから言ったのにな、、ちゃんとお話しを聞かないから。...よく考えもしない。だからこそ、いっつも利用されるんだよ。馬鹿真面目君」


 S(シグマ)は、淡々と放つ。

 左腕が溶け、足が地面に埋まった、そんな変わり果てた姿の智也(ともや)を見据えて。


「か、、かはっ、、はぁ、かぶっ、」


「お話しを聞けない奴はお話しをする資格もないよね。そのまま嗚咽でも漏らしておねんねしてな。俺はやるべき事が出来た。お前とは違って忙しいんだ。何も深く考えずに、ただ真面目に、目の前の出来事を何とかしようと考えてるお前と違ってな」


 Sは僅かに微笑み告げると、そのまま踵を返してその場を後にしようとする。

 が、しかし。


「ほぉ。忙しいか、、そうには見えねぇけどなぁ!」


「...またまたお客さんか?」


「お前だって、ただ私利私欲のための行動に理由をつけてるだけだろぉがよぉ!ひひひっ、はははっ!」


「随分と荒れてるねぇ。修也(しゅうや)君」


 Sが振り返った先。そこには、桐ヶ谷(きりがや)修也が立っていた。


「まぁなぁ!もうなんかどうでも良くなったんだわ!」


「そうか。ヤケクソになってるわけだな。見りゃ分かるよ」


 Sは微笑む。この様子。修也もまた、ギリギリの状態だと。

 だが。


ー桐ヶ谷修也、、ギリギリの状況で保っている。というよりかは、これは逆に糸が切れて全てを賭けられる様になったって感じだな、、そう簡単にはいかなそうだー


 ニヤリと。Sは微笑む。


「で?そんなヤケクソ君が、俺に何の様かな?」


「はははっ、暇してんだよ。お前を潰す。暇つぶしになれ。お前も、暇そうだぞ?」


「おいおい、、随分と頭空っぽになったみたいだな。暇つぶしに俺を潰すか、、俺は忙しいって言ってるのに、、それを邪魔するのが好きなのか?それとも、」


 Sはそう呟くと、少しの間ののちニヤリとして低く告げた。


「俺が大きな脅威だと今ので知って、慌てて止めに来たか?ヒーロー気取りが」


「ははははっ!ヒーローかっ!面白い事言うな。残念だが俺は昔も今も変わらない。悪党なんだよっ!」


 修也が狂気的に笑って氷を生成し放ち、その隙に氷で生成した鎧で身を包み勢いよく飛び上がる。

 が、しかし。


「なっ」


 一瞬でその氷の塊の数々は溶け、次の瞬間。


「クッ、ごふっ!?」


 目の前には大きな壁が現れ、修也はそれに叩きつけられた。


「悪いな修也君。もう少し時間があったらお前の相手をしたいところだが、俺の相手はもう決まってるんだ。あいつを殺したら、ちゃんと相手してやるよ」


「...」


 壁の向こうで放たれたそれに、修也は目を細める。智也との戦闘を、ずっと見ていた修也だからこそ、この壁はどうする事も出来ないのも、今挑むのは危険なのも分かっていた。

 だが、それでも。


「おいおい。勝手に終わらせんなよ」


「はぁ、、君に構ってる時間は無いんだ」


 修也は地面から氷山を生やして目の前の壁をも越えると、彼はそこから降下しながら氷の体の足を伸ばし、尖らせ向かわせた。が。


「間抜けが」


「っ!?」


 瞬間、今度は大きな揺れと轟音と共に地面が突出し、その伸びた足を切断した。


「があっ!?」


 それに修也は声を上げた。がしかし。


「ははっ!とでも思ったか!?」


「っ」


 切断したのは彼の足。では無く、氷のみだった様だ。彼はニヤリと微笑みながら更に氷を生成してその地面を避けると、そのまま左手の氷柱を伸ばしてSの顔目掛けて放つ。だが、それを涼しい顔で避ける彼だった。ものの。


「それで終わりだと思うか?」


「ああ。これで終わりだ」


 不敵な笑みを浮かべて修也が放つと、キッパリとSは告げ壁を作り彼を閉め出す。

 だが、その瞬間。


「ぐっ!?」


 その場には突如氷の塊が現れ、そこから氷柱が無数に突き出た事によってSの頰を掠る。


「さっきの攻撃はお前を狙いながらも氷を弱めた。つまり固体を崩そうとしたわけだ。それによって、その場には水分が僅かながらに跳ねていた。それが意味する事は、つまり」


「瞬時に氷を空中に作り上げられるってわけだな」


「その通りだっ、そして、お前のその血液も、それに含まれる」


「っ」


 修也がニヤリと微笑んで告げると、その瞬間。彼の血液を固めてそこから氷柱を突き出す。


「ぐぶぉっ!」


 それにより顔に氷柱が貫く。と、思われたが。


「はははっ、、お前も馬鹿だなぁ」


「っ」


 壁の向こう。彼は、笑っていた。


「お前の敗因は俺の姿が見えないのにも関わらず攻撃を仕掛けた事だ」


「っ」


 目の前の壁が崩れる。と、同時に現れたそれは。


「お前、」


 Sの顔が、半分焼け焦げている光景であった。


「血を固めるよりも前に、皮膚ごと燃やせばいい。そうすればそう簡単には氷は作れないだろ?」


「お前、、予想以上に狂ってんなぁ!」


「はは、お互い様さ」


「おもしれぇ!お前のそのイかれた思考。興味湧いてきたわ」


「そうか。嬉しいけど、終わりだ」


「っ!?」


 瞬間、修也の地面が突如形状を変えて突出すると、彼の両腕を吹き飛ばす。それを見届けたのち、Sはまたもや壁を作り上げると、「それじゃあ、またいつか」と付け足しその場を後にした。

 その姿を見据えながら、修也は笑みを浮かべる。


「なるほどなぁ、、あいつがS、、これがあいつの能力、、ハッ、殺し甲斐があるな」


 修也はそう告げると、吹き飛ばされた腕。では無く氷を溶かして、無傷の状態である生身へと戻ると、少しの間ののち振り返る。


 Sは予想以上に狂っていた。その思考を理解したのも大きな一歩である。彼の恐ろしさは人を操るカリスマ性や強力な能力。だけでは無く、自分を殺してでも世界を壊すという姿勢にあった。どこか、智樹(ともき)に似た点を覚える。


「はははっ、おもしれぇ。もっと壊してやるよ」


 修也はその異様な彼に好奇心から笑みを浮かべると、だからこそと。

 修也は僅かに口角を上げて、智也に向き直った。


「なら、こっちは俺が片付けようか」


 そう零すと、修也は声を上げ笑いながら智也に足を進めたのだった。


           ☆


 息を荒げながら、碧斗達は走る。


「はぁ、はっ、はぁ!」


 先程の轟音と振動。恐らく、大きな争いをしていると思われる。その方向へ向かうなんて正気では無いかもしれない。だが、その衝撃は近くに感じた。故に、グラムの家や民家を巻き込むわけにはいかないと。碧斗は自らが移動し、皆を巻き込まない様誘導しようと考えたのだ。その振動の元凶が、我々を狙っているかは不明だが。


「おい、俺達が入った事で悪化したりしねぇだろうな?」


「...分からない、、でも、もし俺達を狙っている人間によって起こってる事じゃ無くても、この振動の正体は知っておきたい、」


 大翔の促しに、碧斗はそう答える。この振動。明らかに能力にしては大きい。今まで、ここまでの振動は無かった。それ程までに強大な力を持った能力者が、まだ潜んでいるのか、と。碧斗は歯嚙みした。と、同時。


「「「「っ!?」」」」


 ふと、立っていられない程の振動が一同を襲った。どうやら、近い様だ。そう思うと、瞬間。


「っ!大翔君っ!危ない!」


「んっ、うおあっ!?」


 樹音の促しに、大翔は目を見開き慌てて後退る。そう。目の前の地面が割れ、大きな谷を作り出したのだ。


「っぶねぇ、、危うく落ちるところだった、」


「よ、良かった、」


「嘘でしょ、、こんな、、地形をここまで変える能力なんて、」


 息を吐く樹音の隣で、美里は冷や汗を流す。が、対する大翔は首を傾げる。


「ん?別に地面の形変えるなんて俺もやってるだろ。それに、沙耶も岩を使って地面の形変えてたしな」


「それとは訳が違う、、あんたがやったのは表面上の変形。沙耶ちゃんもそう、、でも、これは、」


 ゴクリと。美里のみならず碧斗も生唾を飲む。ここまで、崖の様に地面を割るなんて事、可能なのか、と。そう思うと共に、改めて目の前を見据え目を細める。


「でも、、この崖のせいで向こう側に行けなくなったな、」


「...碧斗君、、ここは戻った方がいいんじゃないかな、?ここまでの能力相手に僕らの居場所がバレたら、、勝ち目なんて無いよ、」


「...」


 樹音の言葉に碧斗は拳を握りしめる。確かに、関わるべきでは無い。だがもし、その人物もまたグラムの家を把握していたら。そう思うと、気が気で無かった。


ーグラムさんの情報は、、一体王城内でどれ程広まってるんだ、?ー


 碧斗は眉間に皺を寄せた。確かに悠介が騎士達に促していたのは先程ではあるものの、それ以前に他の転生者に話していない証拠なんて、どこにも無いのだ。それならば、もう既にグラムの家を知っている人間が近くに居る可能性も無いとは言い切れない。

 そう、碧斗は葛藤したが、その直後。


「やぁ、久しぶりだね。伊賀橋碧斗」


「「「「っ!?」」」」


 突如、背後から声が聞こえたと同時に振り返ると、そこには微笑んで手を振るーー


 ーーSの姿があった。


「てめぇ!」


「クッ」


「あんた、、どこから、っ、!?」


 大翔が構え、樹音が剣を生成、美里が全身に炎を宿し睨みつける。


「そこからだよ」


「は、?」「え?」


 美里の問いに対して、Sは彼の背後にも同じく出来た地面の割れた跡を指差す。


「地中から来たんだ、君達を探しにねぇ。ほんと、そっちから出て来てくれて助かったな。色々とめんどくさい奴らがいっぱい居たから、もっと時間かかるところだったよ」


 ニヤニヤと放つSに明らかな敵意を見せる一同。それに、碧斗もまた構えながら返す。


「...色々とめんどくさい奴って、、何のことだ?」


「はは、別に気にしなくていいよ。何も気にしなかった奴が」


「何、?」


 Sの低く放ったそれに碧斗は目を細めると、樹音が割って入る。


「その相手は転生者?それくらいは、、言えるでしょ?」


「随分と上からだなぁ。ま、でもいいや。そ。相手は転生者だ。二人程俺の計画を止めに来たよ。きっと、変な理由付けしてたけど、根本(こんぽん)はそんなところだろうね」


「てめぇ、、二人相手して来て、、それかよ、」


 目の前のSは傷は愚か、擦り傷すらも見当たらない。そこから明らかに察してしまう彼の力の強大さに、大翔は歯嚙みする。それは、皆も同じの様だ。


「それよりも、、計画って何の話だ、?」


 そんな中、碧斗は切り出す。


「ん?ああ。まあ、俺には俺の考えがあるんだよ。でも、ことごとく失敗してるけどね」


「失敗、?まさか、、みんなの弱みに漬け込んで、みんなを操ってるのは、、その計画ってやつなのか、?」


 碧斗は、Sの発言に目つきを鋭くしてそう告げる。それに、Sは一度ニヤリと微笑んだのち、改める。


「弱みに漬け込んでって、、ひどい言いようだな。俺はただ、事実を話してただけだ。勝手に自分追い込んで嘆いてたのはあいつらの心の問題だろ?」


「お前っ」


 碧斗は(しん)の事を思い出し声を荒げる。


「許さない、、お前はっ!」


「おお、、随分と威勢がいいな。どうした?冷静な碧斗らしくないぞ?」


 ニヤニヤと放つSに尚も拳を握りしめる。すると、改めて碧斗を見据え息を吐く。


「にしても、、本当に立ち直ったのか、、つまんねぇな」


「あんた、、やっぱり、、狙って伊賀橋君にあんな事を、」


「はは、まあな。俺の計画をことごとく邪魔してきた碧斗を、今度は逆にターゲットにしようと思ったんだが、、まあ、意味が無かったわけだな、」


「...ふっ、残念だったな。俺にはみんなが居る」


「みんな、、ねぇ」


「っ」


 Sはニヤリと微笑み皆を見据える。嫌な予感がする。額から汗が噴き出す。ただの憶測。勘、それだけだというのに、震えが止まらない。だが、それを必死に隠して碧斗は口を開く。


「...それで。そんな失敗した奴に、何の用だ?」


「そうそう。今までずっと俺の操り人形(おもちゃ)をお前らが片付けてたからなぁ。それで本人にも通用しない。なら、もう俺が直接やるっきゃないだろ?」


「んだよ。結局お前も、俺ら狙いだったわけか?」


「ハッ、んなわけないだろ。だったらもうとっくの昔に全員殺してるよ」


 大翔が割って入ると、Sは即答する。と、それに碧斗は引き攣った笑みで返す。


「...随分と余裕だな。まるで、俺たちは絶対に殺せると思ってる様な言い方だ」


「ああ、その通りだね。君達如きに、俺が押される筈がない」


「そうか。上等じゃねぇか」


「君に情けをかけるほど、僕らはもう平和じゃないよ」


「ここであんたを仕留める」


「S。お前の好きにはもうさせない。誰も、、もう傷つけさせない」


 大翔が腕を鳴らし、樹音が空中にナイフを出現させて剣を構え、美里が辺りに炎を出現させ、碧斗が僅かに煙を放出する。その姿に、Sは尚も変わらず微笑むと、次の瞬間。


「おお、そうか。じゃあ、頑張ってみてよ」


「「「「っ!?」」」」


 Sがそう告げると同時、大きな振動と共に地面が浮き上がり、彼を上空へと押し上げるとそこからーー


「見せてみろよ。お前らの絆を」


「...嘘だろ、」


 ーー大量のマグマの様なものが、降り注いだ。


「お前、、の、能力って、」


「ははっ!能力知らずに突っ走るもんじゃねーぞ?カッケェ事言ってるけどなぁ、、お前ら如きに俺の能力、」


 Sはそう声を上げたのち、少しの間を開け皆がマグマに埋もれた瞬間、低く告げた。


「"マントル"に勝てるわけねぇんだよ」

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