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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第7章 : 関わり合いと処罰する者(パニッシュメント)
238/301

238.自分

「それで、何の用ですの?」


 ドアを開けたシェルビは、イラつきを見せながらそう問う。それに、騎士達は頭を下げる。


「い、いえ、、その、まさか、隣国の皇女、シェルビ様が、こんなところにいらっしゃるとは思わず、」


「こんなところ、、まあ、そうですわね。わたくしには不釣り合いですわ」


 騎士の発言に、シェルビがそう返す中、悠介(ゆうすけ)は目を細めた。


ーなるほど、、この人は隣国の皇女か、、遠回しに教えてくれるのは助かるなぁ。ま、どうしてここに居るかは分からないけど、予想外だね、これはー


 そんな事を考えながらシェルビの後ろに見える家の内装を見据える。と、対するシェルビは続ける。


「ですが、ここはわたくしがグラムに用意した大切な家でしてよ?」


「こ、この家を、シェルビ様が、?」


「た、大変失礼いたしました!」


 騎士が呟く中、代表が頭を下げる。その光景を、悠介は見つめる。


ーなるほど、、隣国であるとはいえど皇女、、他の国と揉め事をするわけにはいかない感じだね、、まあ、国王でも無い、ただ国王に仕えている騎士が戦争に発展させたりでもしたら大変だし、当たり前の感覚かなー


 悠介はそれを考えながら、シェルビに視線を戻す。すると。


「それで?どうしてここに来たのか聞いているんですわよ?」


「ああ、はい、、あの、実は、こちらの家に、我々の国の勇者様がいると小耳に挟んだものですから」


「っ」


 その発言を聞き入れるシェルビを、その背後で碧斗(あいと)が聞き目を見開く。先回りしたものの間に合わなかった。いや、ここから碧斗が出ても逆効果だろう。今はただシェルビの対応を願うしか無いと碧斗はただ祈る。

 と、少しの間ののち、シェルビは口を開く。


「ええ。居ましてよ」


「「「っ!」」」


 騎士や悠介。のみならず、碧斗もまた目を見開く。が、続けて。


「ですが、わたくしが追い出しましたわ。うざったくて仕方がありませんでしたの」


「と、という事は、」


「えぇ。この家に来た事は認めますけど、勇者なんて、追い出しておりましてよ?そもそも、この家にわたくしとグラム以外を入れられるスペースがあると思いまして?」


「そ、、それも、そうですね、」


 シェルビという権力者の発言に、騎士達は成す術なく、呆気なく頷き引き下がる。その様子に、碧斗は安堵の息を大きく吐いて崩れ落ちる。


「よ、、良かった、」


 どっと疲れが押し寄せた。だが、本当に、シェルビが居てくれて良かった。ただ感謝を思いながら、ならば問題は智也(ともや)の方だと。目つきを変えて家を後にした。


 そんな中、騎士達が引き下がる隣で、悠介はーー


 ーーニヤリと、微笑んだ。


           ☆


「あ、碧斗君っ!」


「っ!樹音(みきと)君っ!そっちは、大丈夫だったか、?」


「う、うん、、でも、それよりもグラムさんの方だよ、、ごめん、、僕が、気を抜いちゃったばっかりに、」


 碧斗はグラムの家を裏口から後にしたのち、智也の元へ向かう中、樹音と合流してそう放つ。


「いや、、俺の方こそ、ごめん、、突然色々起こって、、意味分からなかったよな、、でも、助かった。本当にありがとう。樹音君が臨機応変にやってくれなかったら、危なかった、」


 碧斗は目を逸らしながら謝罪の意を込め告げる。樹音には、碧斗が王城に先回りする際に、先に作戦を促していたのだ。初めから全てを察していたわけでは無い。勿論、初めは王城の転生者に居場所を教える線を睨んだ。だが、もし転生者だろうが騎士だろうが、それが間に合わなくて皆を連れた悠介がグラムの家に向かっていたら、頼むと。樹音にはその場で待機してもらったのだ。

 その詳しい説明すら無い始末である。きっと樹音は、酷く混乱したに違いない。

 碧斗はその罪悪感を覚えながらも、樹音は首を振る。


「ううん、そんな事ないよ。僕だけじゃない。碧斗君の作戦が無かったら、一ノ(いちのせ)君の事だから、、もっと大変な事になってたと思う、」


「でも、、シェルビさんが元々家に居たなら、あれは、」


 意味が無かった。碧斗はそう口に出しそうになったものの。慌てて口を噤んだ。と、その時。


「それよりもみんなが心配だよ、、阿久津(あくつ)君が、居るんでしょ、?」


「っ、あ、ああ、、そうだな。とにかく、、急ごう」


「うん!」


 碧斗の促しに、樹音は力強く頷く。きっと、彼の方が心のどこかで感じている点だろう。先程の作戦で、一番消耗し、一番ダメージを負ったのは樹音なのだから。だが、そんな彼はあえて碧斗にそんな事を言わせない様に話題を変えた。そんな彼の気遣いに、碧斗は胸が締め付けられながらも、ならばこれ以上話すわけにもいかないなと、改めて雷鳴が未だ響く方向へ二人で駆け出した。


           ☆


「かはっ、」


「た、ちば、、な、く、」


「おいおい、、やめろよ、、もうやめてくれよっ!」


 智也は、服が焦げ、体が痙攣し、度重なる落雷によって皮膚が変色し始めている大翔(ひろと)に対し、同じくボロボロの姿で名を呟く美里(みさと)達二人にそう声を上げた。

 あれから電気を地面を使って一定量放ち続けている。時期に炎のカーテンも消え去った。恐らく、限界なのだろう。だが、それなのにも関わらず。


「なんでだよ、、なんでまだ動くんだよ、」


「う、動かなきゃ、、いけない、から、」


「意味が分からない、、俺は別にお前らを殺すつもりはない。相原(あいはら)美里。君に関しては、殺すわけにはいかないんだ、、それなのに、なんでだよっ、!」


「あんたには、、分からないだろうけどね、、でも、絶対、ここで折れるわけには、、いか、ない、の、」


「動けなくしてから運ぶつもりだったが、、これじゃあ埒が明かないな、」


「殺すつもりは、、はぁ、無いんでしょ?なら、、思う存分、、抵抗出来るってわけね、」


 美里はそう呟きながら、ゆっくり立ち上がり手を構える。


「おいおいおいおいっ!ふざけんなっ!なんでまだ立てるんだよっ!ここまでの電圧を受けてるのに、、立つことは愚か、動く事すら出来ない筈だろ!?」


「あんた、、人間相手に電気の実験行った事、、ある、?それか、ちゃんと勉強してきたか、どちらか、」


「なっ、、俺が勉強不足だとでも言いたいのか?」


「こんな電流で、私達の思いは砕けない」


 美里はそう告げると、炎を放つ。それが智也の目の前で、電流によって爆破すると、その隙に。美里は彼の周りにまたもや炎のカーテンを作り出しそれを狭めていく。


「さっきのは目眩しかっ」


「そう。そして、あんたはさっきの遠距離攻撃によって電気を放っていた。って、、ことは、」


「っ!?」


 智也は気づいた。がしかし、時既に遅し。炎を電気の力で空中で爆散させていた。即ち、彼の周りには炎と合わさる事で爆破が起こる様に調整した電気が、放たれていたという事だ。それ故にーー


 ーー彼は、爆破した。


「くはっ」


「い、今のっ、うちにっ」


 美里は、掠れた声で放ちながら移動しようとする。その促しに、大翔もまた今しか無いと。そう立ち上がるものの、走る事が出来ない。足が、思う様に動かないのだ。


「クッ、」


「クソッ!し、仕方ねぇ!」


 大翔は自身の腿を軽く殴りながら愚痴を漏らすと、突如その場で地面を強く殴った。それによって地殻変動が起き、大きな壁が出来上がる。


「何っ」


 その光景に、爆散し吹き飛ばされた先で起き上がる智也は目を見開く。未だに、そんな力が残っているのかと。


「はぁ、、はぁ、これで、時間稼ぎ、出来るか、?」


「はぁ、、はぁ、こ、これくらいじゃ、、もっても十秒くらいね、」


「ハッ、、最悪な状況だな、」


 大翔と美里はそれぞれ願う事しか出来なかった。碧斗と樹音。彼らが、戻って来てくれるのを。彼の能力に、対抗出来そうな彼らに、委ねるしか無かった。

 が、しかし。


「はぁ、、仕方ねぇ、」


「え、?」


「だっせぇ事は止めだ。相原」


「どういう事、?」


「ただ待ってるなんて、らしくねぇよ」


 大翔はふと思い返す。ここ最近、弱気になっていた気がする、と。奈帆(なほ)の死から始まり、次から次へと人の死を目の当たりにした。その中で、段々と思考が恐怖に染まっていたのだろう。だが。


ーそんなの、俺じゃねぇー


 拳を握りしめて目つきを変える。そうだ。死ぬのは確かに怖い。怖くない奴なんか居ない。一度死んでいるから尚更だろう。だが、死なない様に祈りながら、ただ救済を待つためだけに時間稼ぎをするなんて、大翔ではないと。足を踏み出す。


「あ、あんた、、その足で、?」


「ああ!当たり前だ。俺はただの時間稼ぎはしねぇタチでな。時間稼ぎするんだとしても、その間でケリつけてやるって、そう考えるもんだ!」


 大翔は今までの自身を思い出した様に微笑む。それに、美里は呆れた様に息を吐きながらも、どこか安心した様に微笑んで、ポケットから"それ"を取り出し彼に投げた。


「これっ!使って!」


「は、?うおっ、な、なんだ、?って、これって、回復の魔石か!?」


「そう。一応、、心配だったから家出る時に持って来てたの。多分、痙攣とか、そういうものには効かないと思うけど、その体の傷だけでも、治せると思うから」


 美里は遠回しに自身のこれは治せない。だからこそ。大翔、頼むと。力強い促しが見て取れた。それを受け入れた大翔は回復の魔石を使用しながらニッと笑みを浮かべた。


「サンキュ!おう!任せろっ!」


 大翔はそう強く放つと同時、今度は強く地面を蹴り上げ、跳躍すると、先程地面を変形させて作った山に乗り上げそこから瞬時に智也に急降下して殴りかかる。


「なっ」


 それに、目を見開く智也。無理も無い。先程まで、立つことすらままならなかった人間が、迫っているのだ。


「ありえないっ」


 智也はそう口にしながら退き、大翔の殴りを避ける。が、その殴りは凄まじく、その威力によって大きく変化した地形に智也は弾き飛ばされる。


「クッ」


 それに立て直そうとするものの、直ぐにその盛り上がった地形を大翔は殴り、その破片を蹴りで飛ばす。だが、それをも電気の幕によって破壊すると、瞬時に背後に周り、大翔は彼を。では無く、地面を殴ってまたもや吹き飛ばす。


「なっ」


「智也。いいか?お前の能力は確かにつえぇ。でもな、それは人相手だからだ。岩でも飛んできたら、電気じゃどうしようもねぇだろぉ!?」


 大翔はそう声を上げ、その変形させた地面を、今度は引き抜く様に持ち上げ、それを彼に投げ飛ばす。大翔の力の能力をフルに活用してだ。

 それによって、普段よりも速く、巨大な岩でありながらまるで野球ボールの様な速度で向かう。

 が、しかし。


「「っ!?」」


 それに僅かに可能性を感じていた美里もまた、目を見開いた。いや、思わず閉じたのだ。その、閃光によって。


「はぁ、馬鹿だな。確かに電気の能力は、フィジカル重視の接近戦になると弱くなる。電気だけでは破壊力は生まれないし、電気を感じる生き物相手に直接放たないと、あまり得策とは言えない。だが、破壊力に関しては一つ大きなものがある。それが」


 呆れた様にしながらも微笑んで放つ智也に、大翔は歯嚙みしながら付け足す。


「雷か、」


「そう。それも、俺自身に落とす方法を使えば、俺に向かう全てのものを破壊する事が出来る。俺自体には電気の耐性があるから、そこは心配しなくていいしね」


「クソッ、」


 大翔はそれに愚痴を溢した。だが、それが無駄では無かったと。大翔の地形変形によって生み出された壁の後ろを移動して、気づかれない様に美里は彼に近づく。と。


(たちばな)君」


「うおっ、びっくりしたっ」


「静かにして。バレるから」


「お、おう、」


「大丈夫。確かに雷は厄介だけど、今のそれで分かった事がある。勝てる可能性はある」


「なっ、マジか!?」


「ばっ、静かにしてっ!」


「おい。まさか、そこに相原美里でも居るのか?」


「「っ」」


 智也は大翔の声にそれを察し地面に手を触れると、またもや電気を送り出す。が。


「とりゃ!」


「っ」


 目の前の壁が突如破壊され、その奥からそれを破壊した張本人。大翔が現れた。と、彼のその手には。


 炎が宿っていた。


「な、一体、」


「終わりだ!」


 大翔は、破壊して向かわせた破片に気を取られていた智也の下に入り込み、そのまま腹を殴り抜けようとする。だが、その破片を電気で破壊したのを確認したのち、大翔はそのまま彼に。では無く、その地面を殴って下から智也を吹き飛ばす。と、そのまま大翔も跳躍し、空中で蹴りを入れ、吹き飛ばす。


「がっ」


 それによってまたもや吹き飛ばされた智也は反対方向の壁に激突する。と、同時。


「これでっ、どうだ!?」


「っ」


 気づいた時には既に、大翔が目の前に居た。と、同時。


「うおらぁぁぁぁぁっ!」


「ごふっ!?」


 彼の腹に、拳を入れる事に成功し、次の瞬間。


「がはっ!?」「グハッ!?」


 その場に爆破が起こり、二人は吹き飛ばされる。その威力は大きく、大翔は先程の壁まで戻され激突。対する智也は背後の壁を貫通し、更に二つほど後ろに連なっていた壁をも貫通して大きく破壊しながら吹き飛ばされた。


「かはっ」


 と、その後智也の目の前の、壁が破壊されて粉々になったものによって視界が妨げられると、その後。

 それに紛れて大翔が拳を構えて現れ、それを認識した瞬間。


「ごはっ!」


 既に拳は、力強く腹に入り込んだ。


「こ、これでっ」


 その様子に、美里は身を乗り出した。彼の能力は強い。だが、先程の話。雷は自身に落として、周りに攻撃を与えられるというそれ。それは一見すると強いものの様に見えるが、雷を落とすための電力は計り知れない。そのため、体力は使うだろうし、それに伴い雷一つ落とすためにも時間がかかるのも事実だ。故に、その一瞬。彼が雷を落とすのが間に合わない程の速度で、大翔が攻撃すれば良い。そう、美里は考えたのだ。

 彼の本気の速度と攻撃。更に、破壊された破片によっての視界の妨げ。その前には美里の炎を纏わせた拳での一撃。それが全て重なった時、彼の一撃が智也に入るのだ。それも、今回の一撃もまた炎を宿している拳だ。

 先程、美里の炎の遠距離攻撃は全て電力によって空中で爆散していた。それは即ち、密度の変換で膨張させて到達前に消しているのだ。それを踏まえると、電気を一定の距離で維持している彼に炎が宿っている拳が触れると、それによって。


「っ」


 爆破が起こるのだ。


「クッ!?」「がっ!?」


 先程同様、その場に爆破が起こる。爆破のお陰で吹き飛ばされ、落雷が直撃するのは避けられる。と、思われたが。


「えっ」


 それと同時に。爆破だけで無く、その場に落雷が起こった。


           ☆


「はぁっ、はぁ!はぁ、あっ、相原さんっ!ひっ、大翔君っ!」


「大翔君っ、相原さんっ、はぁ、はぁ」


 碧斗と樹音は走りながら、二人の名を口にし向かう。

 が、瞬間、またもやその場には閃光が辺りを包み込み、落雷が起こった。


「っ、ま、まただっ!クソッ、樹音君っ、悪い、先に行くぞ」


「うんっ!すぐ追いつくからっ!」


 碧斗は何度も起こるそれに居ても立ってもいられなくなり、手を地面に向けると、そのまま煙を放出して飛躍し向かった。


 と、その先には。


「っ!」


 その驚愕の光景に、碧斗はゆっくりと地上へと戻り、ゆっくりとそちらに向かった。


「っ、、碧斗。やっと戻ってきたか。遅かったな。もう、全部終わってるよ」


 こちらに気づき振り返る智也の背後。そこにはーー


「あ、、碧、斗、」


「あ、、う、」


 ーー体の至る所に大きな火傷を負い、肌が黒く焦げた様子の美里と大翔。そんな二人の首周りや頰には樹状の火傷が見て取れ、そんな状態のまま、電気で固定されているのか、盛り上がった地面に磔にされていた。


「ふざけんな」


 そんな絶望的光景に、碧斗は恐怖し震えたものの、それ以上に。


 とてつもない怒りが、湧き上がった。

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