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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第7章 : 関わり合いと処罰する者(パニッシュメント)
232/301

232.喪失感

「そう、その人は勇者様じゃったんじゃ」


「なるほど、、それならそんな魔法を使えるのも、」


「この世界の勇者か、、会ってみてぇな」


 グラムの一言に、美里(みさと)は納得した様子で頷き、大翔(ひろと)は微笑みながら零した。すると。


「あなた方も一応勇者でしょうに」


「ああ、、そういえばそうか、」


「ま、転生で召喚した人物を勇者とする国は、ここくらいのものですわ。こんな余所者を、よく勇者に出来ますわね」


「おうおう。どうしたよ。寂しくて戻って来たのか?」


「あなた方と話すつもりはないですわ。わたくしはグラムの話に興味がありましてよ」


「ハッ、ただ嫌味言いに来ただけかよ」


「...それよりも、、勇者って、特殊な魔法を使えるん、、ですか?」


 グラムの言葉に納得していた大翔が、割って入ったシェルビに怪訝な表情を浮かべる中、美里が小さく問う。


「使えますわ。というか、この間の本にも書いてありますわ。貴方方がそれぞれその人に合った能力を与えられるのと同じで、勇者には他の魔術師が使える魔法の他に、突出した固有魔法を所持していますわ」


「私達と、、近い存在なんだ、」


「ハッ、俺らとは話さないんじゃねーのかよ」


「あんたは黙ってて」


「はぁ!?おまっーー」


「それで、、その勇者さんは、別の国へ?」


「そうじゃ。ああ、、そういえば前にそんなことを話したかの、」


 シェルビと美里が話す最中、樹音(みきと)は以前の話を思い出し話を繋げる。その後、グラムは頷くと、浅く息を吐く。


「まあ、、話としてはそれくらいじゃ。恩を返すと言ったんじゃが、、要らないと言っててのぉ。その時に、言われたんじゃよ」


「「「「?」」」」


「同じく、困ってる人が現れるかもしれない。戦いの中、行き場を失った人達がいるかもしれない。そんな人を見つけた時に、匿ってあげて欲しい、と。一人でも、二人でも。出来るだけでいいから、手の届く範囲で今受けた分を、同じく困ってる人に返してあげてくれ、とな」


 グラムのしみじみとしながら放つそれに、皆は目を見開いた。なるほど、と。その事もあって、我々を匿ってくれたのだろう。恐らく、シェルビの時といい、彼の性格上、きっとそれが無くとも泊めてくれただろうが。そんなことを美里達が思う中、グラムは続けた。


「それと同時にな、、頼まれたんじゃよ。儂も、それだけじゃ納得出来ないと言ってな、、ならばと、勇者様はこれを置いて行ったんじゃ」


「それが、、あの本って事、?」


「そうじゃ」


 美里が恐る恐る聞くと、グラムは短く呟き頷く。すると、同時に樹音が疑問を投げかける。


「も、もしかして、あの本、全て、、ですか?」


「ああ、、そうじゃ。一気に持ってきたからのぉ。びっくりしたわい」


「でも、、どうして、」


「そうだ。その勇者はもう別の国に行っちまったんだろ?」


「...置いておいて欲しいと。託されたんじゃ。時期に、その本が必要になる時が来る。だから、その時まで、置いておいてくれ、と」


「ひ、必要、?」


「意味分かんねぇな、」


 グラムの話に樹音と大翔が首を傾げる中、美里は僅かに目を見開く、


「そ、、それって、」


 もしかして、と。思考を巡らせる。(わたる)がグラムを探していた理由。それが、もしその本の事だというのならば、彼が読んだという紙に、何か関係があるのかもしれない、と。美里は繋がりそうで未だ全貌が見えない現状に、息を吐いた。


「何か、分かりそうなのか?」


「...分かりそう、、だけど、分からない、、きっとあの人に聞いたところで、教えてくれないだろうし、」


「あ、あの人、?」


不破(ふわ)って人のこと」


「なんでそいつの名前が出てくんだよ」


「あの人がグラムさんを探していた理由。関係あるのかなって、、思っただけ。明確な理由と、証明出来るものはない、」


「んだよ、勘ってやつか」


 美里が顎に手をやり呟く中、大翔もまた息を吐いた。


「でも、その本に何か隠されてるのは確か。...とりあえず、、あの本を解読するのが、今私達に出来る最大限の事かもね、」


「そうと決まれば、だな」


「丁度体を休めようって時だしね」


 美里が改めて放つと、大翔が腕を回して、樹音が微笑んだ。


「頭は休まんねぇけどな、」


 大翔は浅く息を吐いて放ち、皆は立ち上がった。それに。


「お、、お主ら、、本気か、?」


「本気ですよ」


「どうしたんだジジイ。突然」


 やる気を見せる皆に不安げに口にするグラムに、皆は首を傾げる。と、それにシェルビは割って入る。


「心配するのも無理はないですわ。...あの本。昨日見た時わたくしでも見たことがないものが多数見つかりましたわ。恐らく、勇者の書なども、含まれていると思われますわ」


「ゆ、勇者の書、?」


「勇者だけが持つ事を許されてるものですわ。世に出回ってるものでは無いんですのよ」


「は?んでも、俺らも一応勇者だろ?」


「でも、渡されていない。違います?」


「っ、、チッ、、まぁ、そうだけどよ」


「ならば、その権利は与えられていないのも同然ですわ。そんな人が、その本を読んだり、ましては解読及び所持なんてしたら、、只事じゃないですわ」


 シェルビが表情を曇らせながら、その本の恐ろしさを語る。危険が伴う。そんな事、百も承知である。


「ご忠告とご心配、、ありがとうございます、シェルビさん。でも、私は、もう覚悟は決めてます」


「グラムさんも、このままじゃ所持してるって理由で捕まる可能性あるんですよね?なら、僕達が読んで、僕らがグラムさんに無理矢理所持させていた事にすれば、容疑は僕らに傾く筈です。グラムさんには、危険な目に遭ってほしく無いんです」


「じ、じゃが、、お主らは、」


「今更なんだよジジイ。もう俺らは国から狙われてんだぞ?怖いものなんてねぇっつーの」


「お主ら、」


 怪訝な表情のシェルビに美里が覚悟を見せ、樹音が付け足し、不安げなグラムに大翔が告げる。と、そんな皆の姿に、グラムが目を見開いた。その時。


「...きっと、グラムさんも、、今まで、その本の事を知らせないために、恩人の話を隠していたんですよね」


「「「「「っ」」」」」


 ふと、背後から。ずっと倒れていた碧斗(あいと)が、仰向けのまま割って入った。


「勇者の書である事を、その危険さを知って解読及び所持をした場合、それは違法に繋がる。だから、、その事を知らなかったと言える様に、俺達には事実を伝えないまま、自然と読んでも良いと促してくれてたんですよね。俺達がそれに興味を持ってるのを知って」


「そう、なんですか、?グラムさん」


「...」


 彼の言葉に、樹音がそうグラムに促すと、本人は口を噤み目を逸らした。


「そうだとしたら、それで罰せられるのはグラムさんです。そんな、全てを背負わせるなんて、"俺達の命の恩人"にさせるわけにはいきません」


「っ」


「意外みたいな顔しないでください。大丈夫です。もう、グラムさんは十分、俺達にとって恩人になってくれました。それも、貴方の命の恩人に勝るくらい」


 碧斗の発言に、皆も頷く。その様子に、グラムはハッと目を見開いたのち、目を潤ませた。


「はは、、歳をとると涙脆くなるわい、」


「...もう、背負わなくていいんです。今度は、俺達の番ですから」


 碧斗は、ゆっくりと起き上がりながら、そう告げると、少しの間ののちニッと微笑み目つきを変えた。


「誰も傷つけずにこの争いを終わらせる。そのための、一歩になる筈だ。みんな、絶対に解読してみせるぞ」


 改めてそう放つ碧斗に、皆もまた微笑みながら頷いた。


 だが、それは皆の衝突の始まりであった。


           ☆


 あれから一週間。誰からの襲撃も無く、文字通り回復に専念した一週間となった。基本的に、時間がある時は全てを本の解読に使用していた。碧斗もそうだったのだが、一番は美里であった。


「...あ、相原(あいはら)さん、、そろそろ休んだ方がいいんじゃないかな、?休憩も無しで、食事とお風呂と睡眠以外、ずっと、、それを五日連続なんて、」


「...いいの。私は、こうしてる方がいい」


「でも、、睡眠時間だって、、大して取ってないんじゃ、」


「いいの」


「...そっか、」


 長時間勉強という名の解読を続ける美里に、碧斗は心配の色を見せる。と、そんな中、ふと美里は目を細めながら、本に目を向けたままだが、強く放った。


「...少し、、気が紛れるから、」


「...」


 碧斗は、歯嚙みした。皆、前を向いて歩き出した。それは、そう見えているだけだったのかもしれない。いや、寧ろ進めない現状を、必死で見ない様にするために、進んだフリをしているのかもしれない。そう考えながら、拳を握りしめた。すると。


「おい相原。ちょっとやりすぎだぞ。少しは休めよ」


 大翔もまた、部屋を覗きながらぶっきらぼうではあるものの、気にかけ声をかけた。


「...休まないよ」


「っ、、気持ちは分かるが、、お前、ほぼ寝てねぇだろ?」


「...なんで知ってるわけ?」


「...その顔見りゃわかる」


「最低、、あんま見ないでよ」


「チッ、、んだよ。...なぁ、、相原も体ヤバかったんだぞ。まずは回復に専念した方がいいって。そう言ってたのはお前だろ」


「うっさいなぁ!こんな状況でっ、眠れるわけないでしょ!?」


「「っ」」


 大翔の言葉に、美里は声を荒げた。


「な、何、?大丈夫、?」


 その声を聞いた樹音もまた、その部屋を僅かに覗く。それでも尚、美里は続けた。


「私はねぇ!あの部屋で寝てるの!あの、沙耶(さや)ちゃんと一緒に寝てた、あの部屋で!寝る時になると、いっつも思い出すの。こびり付いて離れないの!寝ようとしても、隣に温もりがないだけで、、苦しいんだよ、」


 美里は、掠れた声で放った。それに、大翔もまた歯嚙みした。


「ふざけんな、、自分だけが悲しいみたいな言い方すんなよ。俺達だってな、忘れられてねぇんだよ。でも、それでウジウジしてんのも、揉めるのも、沙耶は望んでねぇって。そう思うからこそ、その意思を汲み取って前向いてんだろ。それを、わがままで踏み躙るなよ」


「ひ、大翔君、」


「っ、、はぁ、、もういい、、でも、止めないで。きっと、この作業の手を止めたら、私は色々考えて、耐えきれなくなると思うから」


「...ハッ、勝手にしろ、」


 二人を交互に見ながら、碧斗と樹音は言葉を失う。だが、それを見据えた樹音は、直ぐにハッと意識を戻して碧斗に提案を促す。


「碧斗君、、相原さんの事、お願いしていい?僕は、大翔君のところに行くよ」


「...わ、分かった、」


 以前の事があるため、早めに対処しなくてはならないと、樹音は思い立ったのだろう。以前の様に、どちらかがこの家を出ていく可能性もまた、あれから仲を深めたとは言え無いとは言い切れないのだ。


「...相原さん、」


「何、?」


「えっと、」


 言葉が詰まる。こういう時、なんと声をかければいいのか、今まで人と関わる事をしてこなかった碧斗には全く分からない。故に、名を呼んだのにも関わらず、碧斗はその場で留まる。と。


「はぁ、、止めないで、、私は、こうしてる方が、楽なの、」


「...でも、、相原さんの体も、、心配だよ。大翔君だって、、それを思って言ったんだと思う。もう誰も、欠けてほしく無いから」


「...」


 碧斗の言葉に、美里は歯嚙みする。


「あの時、あんたに救われたのかも」


「え、?」


「みんな、、もう、希望も何も無いような状態だった。沙耶ちゃんという大きな存在が、、居なくなって、、私は、私だって、、死にたくなったよ、」


「相原さん、」


「こんな世界に居続ける理由あるのかなって、正直そう思ってる。この争いも、本当に終わるのか分からない。私達が今までどう動いても、良い結果にはならなかった。それでもって。小さな希望見据えて進んできたのに、、それを、全部踏み躙られた感じ、」


 美里の発言に、碧斗は拳を握りしめる。それは碧斗。だけで無く、皆同じだった事だろう。我々は、一体何のために頑張っているのか。ここまで苦しい光景を見るためじゃない。こんな事になるならと、碧斗もそう思っていた。だからこそ、あの行動をとったのだ。


「でも、、そんな時だった。あんたが、、家を出て行ったのは」


「ご、ごめん、」


「謝る事じゃない。さっき言ったでしょ?救われたって」


「俺は、、自分勝手に動いてしまっただけだ。誰も救えてなんかいないよ」


「ううん、、少なくとも、その自分勝手で私は救われた」


「え?」


 碧斗は更に素っ頓狂な声を漏らして首を傾げる。と、そのまま美里は続けた。


「あの時、私も、もう諦めようとしてた、、でも、私よりも先に、あんたが死のうとした」


「そ、それは、」


「そのお陰で、気づいたの。それは、やっぱり、駄目だって。沙耶ちゃんのためにも、それは違うって」


「...」


多分橘(たちばな)君とかも同じだと思う。全部投げ出したくなったあの時、あんたが出て行ってくれたから、みんなあんたの救出に意識が向いた。...まあ、だからこそ、今こうして爆発してるわけだけど、、でも、あんたが動かなかったら、最初に自害してたのは私かもね」


「...相原、さん、」


 碧斗は掠れた声で、名を呟く事しか出来なかった。あの時は碧斗の事で精一杯だったがために、沙耶の事に本気で悲しむ隙が無かったのだろう。今気が紛れるからと行っている分析と、同じようなものだ。


「だから、、今はこれに集中させて。お願いだから、何もしない時間を、、作らせないで、」


「...」


「お願い、」


 美里は、泣きそうな声で放つ。それに、碧斗もまた強く唇を噛む。駄目だ。頭では分かっている。やるべき事も、忘れるべき事も。忘れないようにしなくてはならない事と、振り返らない様にしなくてはならない事。それでも、心が、ずっと苦しいのだ。


「...分かった、、でも、相原さん。それはそれとして、まずはちゃんと、寝て欲しい。その、、もしあれなら、俺が、一緒に寝るから」


「何それ、、誘ってるわけ、?」


「ちっ、違うよ!そうじゃ無くて、、俺だって、相原さんは大切なんだ。死んでほしく無いんだ。相原さんが俺にそう言ってくれたように、俺だって、そのくらいのわがままはあるよ」


「...はぁ、、わがまま、ね、、確かに、、私のあれは、、わがままかもね、」


「お願いだ、」


 今度は、碧斗が目を潤ませながら懇願する。もう、絶対、誰も失いたく無いから。


「...分かった、、はぁ、、でももし、悪夢を見たら、その時はちゃんと責任とってよ?」


「うん、、分かったよ、」


「...馬鹿、、意味分かって言ってる?」


「ど、どういう、?」


 美里の呆れた様子に、碧斗は返す。すると、まあいいと、そういう様に美里は改めて伸びをする。


「はぁ、、うん、、ありがと、」


「落ち着いた、?」


「うーん、、どうだろ。また一人になったり、静かになったら、、きっと、辛くなるかもね、」


「なら、、ずっと話していよう。ずっと、今だけを、考えて」


「でも、、それって、、本当にいいのかな?」


「え、?」


 碧斗の、美里を励ますつもりで放ったであろうそれに、表情を曇らす。すると。


「...ううん、、やっぱ何でもない、、ごめん、ありがと」


 美里は改めて、今にも崩れそうな笑顔を返した。


「相原さん、」


 恐らく、沙耶の事を忘れて。悪い事から目を逸らして生きていくその提案は、本当に良いのか。そこが気がかりなのだろう。碧斗もまた、改めて考えるとそう思い、口を噤む。美里と同じ気持ちだろう。だが、今の彼女の重荷を、少しでも軽く出来るのであれば、そちらを優先したい。そう碧斗は考え、何を言うでもなく彼女を見つめた。と。


「それで、?あいつはどこ?」


「え?あ、大翔君?」


「そう」


「えーっと、、ど、どこだろ、、樹音君が話に行ったけど、、多分、家の外」


「はぁ、、私のせいだ、、探しに行く」


「な、なら、俺も」


 立ち上がる美里に、碧斗もまた後をつける。もう、誰も失いたく無い。それを思っているというのに、自ら離れ離れにしてしまった自身に、美里は憤りを感じながら。そして、碧斗もまた、もう何も出来ないのは嫌だという様に。

 そんな彼の表情に、美里は一度ついてこないでと言いかけたものの、その覚悟を察して目を見開くと、少しの悩みののち浅く息を吐きながら頷く。


「...分かった。...そう遠くには行ってない筈だから」


「そうだね」


 お互いに、沙耶を失くした痛みを忘れてしまう事に恐怖しながらも、今だけを見て歩み進めたのだった。


           ☆


「はぁ、んだよ、あいつ、」


「...大翔君、」


「おう、、樹音。お前もあいつから離れたくなったか?」


「いや、大翔君が、心配で」


「心配される様な事は何もねぇよ」


 グラムの家から数メートル先の道を歩きながら歯嚙みする大翔に、樹音は小さく声をかけた。


「大翔君も、心配して言ってくれたんだよね」


「ま、生憎あいつには届かなかったみたいだけどな」


「でも、、分かってると思うよ。ただ、分かってるけど心がいっぱいいっぱいなんだと思う」


「...それは俺もだ」


「僕だってそうだよ」


 樹音の返しに、大翔は目を細める。それにしてはどこか、樹音は前を向いている様に見えた。きっと、沙耶の事は忘れられない。心を痛めている。それは本当だろう。だが、きっと彼は違う。前を向ける人間だ。


「でも、俺とお前は違う」


「え、?」


「悪いな。ちょっと、一人にさせてくれ。もう少ししたら戻る」


「...本当?」


 樹音は怪訝な表情を浮かべる。それに、大翔は小さく笑う。


「俺が碧斗みたいな事すると思うかよ」


「でも、」


 樹音は、それでもと。ここに一人で居させるわけにはいかない。そう、今だからこそ口に出しかけた。と、その時。


「あれ、、碧斗君、?」


「ん?どこだ?」


「今、向こうに居た、、もしかして、探しに来てくれたのかな、、ちょっと、行ってくるね」


「おうよ」


 大翔が低く短く返す中、樹音は僅かに見えた碧斗を追いかける。と、その数分後。碧斗に追いついた樹音は息を吐きながら声をかける。


「あ、碧斗君っ、、ごめん、探しに来てくれたんだね、、あ、そっちじゃないよっ」


 碧斗に声をかける中、足を進めようとする彼に、樹音は改めて場所を伝えようとする。が、その瞬間。


「丁度一人か。なら、ここでなんとか出来るかな?」


「っ、、君、、碧斗君じゃ、ないね、?」


 樹音はその様子に、眉間に皺を寄せる。そんな中、彼は振り返りながら、碧斗の姿から。

 悠介(ゆうすけ)の姿に変化する。


「この間ぶりだね。円城寺(えんじょうじ)樹音君」


「やっぱり、君だったか、」


 ニヤリと微笑む彼に、樹音は声を低くして放つ。それと同時に。


「「っ」」


 突如、落雷が起こる。


「グ、グラムさんの家の方だ、」


 樹音は、それに冷や汗混じりに振り返ると、そんな彼に。いや、その落雷の方角に。

 悠介は目を細め、誰にも聞こえないくらいの声量でそれを呟いたのだった。


「動き出したか、」

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