166.度胸
「それじゃあ、行くぞ」
「...」
碧斗が促すと、その元魔術師は無言で頷く。それを見つめる事しか出来ない騎士の人々は、そんな彼に声を上げた。
「待ってください。貴方が、背負う必要は、」
「...」
だが、それに対しても無言を貫くその男性は、ただ碧斗の元へ足を進めた。
「おいおい、うるせぇよ。さっさとしろ。こっちは急いでんだ。トロトロしてっとまたこん中の一人ずつ消してくぞ!?」
ーこいつ、、ノリノリだなー
声を荒げてそう口にする碧斗に、大翔はジト目でそう胸中で呟いた。
が、すると。
「今です!」
「っ!」「なにっ!?」
突如、その中の一人が叫ぶと共に、碧斗と大翔に剣を向ける。どうやら、人質を解放した瞬間を狙っていた様だ。
いくら無能力者だと言っても相手は騎士である。こうなるのは目に見えていた。故に。
「...フッ、もう手遅れだ」
「何っ?」
瞬間、元魔術師の人物が、手が届く範囲に居たのを確認し、煙を大量に放出した。
「な、何がっ、ごふっ!?」
「ど、どうしーーごはっ!」
それにより視界を奪われた騎士達に、大翔は隙を利用して殴りを入れると、気絶している内にその元魔術師である男性を連れてその場を離れた。
濃い煙の中、強行手段を行った二人を追う様に足を進めた、残された騎士達。それから逃げるようにして走る碧斗と大翔に、突如。
「碧斗様!」
「っ!マースト!?」
「...!あんたは、」
廊下の奥、地下への入り口近くで声を上げる。そのマーストの姿に、元魔術師は眉間にシワを寄せる。
それに返す様に、マーストもまた怪訝な顔をして、彼の名を呟いた。
「...ジェネス」
「...お前何やってんだ?」
マーストとそのジェネスと呼ばれた男性は見合う。そんな二人の様子に、大翔は碧斗に詰め寄り。
「...知り合いか?」
「さあ?」
そう耳打ちした。
「碧斗様」
「え?あ、ああ」
「...この人を選んだのは、、正解であり間違いですね」
「えっ、そ、それは、どういう、?」
ジェネスに目を向けたまま口にするマーストに、彼もまた無言で見据える。そんな、理解出来ない現状に碧斗が声を漏らすと、マーストが切り出す。
「...でも、行くん、ですよね。碧斗様」
「え?ああ。そう、だが」
「なら、最後にお話があります」
「えっ」
マーストのその"最後"という言葉も気になったが、それよりも先に彼に耳打ちされ、その内容に碧斗は目を見開いた。
☆
「ダガーレインッ!」
樹音が、智樹を追い詰めようと何度もナイフを降らす。たが、そんなものには目もくれず、沙耶へ巨大な茎を何本も向かわせる。
「クッ」
「ほらほらっ!水篠さんの本当の力、俺に放ってみてよ!」
「くぅっ!ビッグ、ストーンストライク!」
沙耶が、大翔や樹音の真似をする様にして叫ぶと、地面からは大量の小石が集まって出来た巨大な腕の様な形の岩が現れ、茎を握りつぶしていく。
「うっ、、まだまだっ!え、ええっと、ジェムショット!」
沙耶は少し考える素振りを挟んでそう叫ぶと、手を前に出して、その小石の集合体が弾けて全てが智樹に向かう。
「がはっ!い、いいね、小石でも強い力になる。これは、初めてだ!」
智樹は、初めて受ける攻撃に、口角を上げて称賛を口にした。だが。
「君にはやはり無と絶望が似合う」
「え、」
「なっ」
智樹がニヤリとそう呟くと、沙耶の背後の"美里"に茎が向かう。
だが、二度も同じ手には引っかからないというように、沙耶は岩を飛ばして斬り刻む。すると、それにより散り散りになった植物を、美里は抹消するために燃やし尽くす。
「はぁ、はぁっ、む、向こうばっか見てちゃ、危険ね」
その唐突な攻撃に息を切らしながら、美里は冷や汗混じりに笑って振り返る。そんな彼女に、沙耶は安堵の表情を浮かべた。
だが。
「っ!水篠ちゃん!」
「えっ?」
美里は突如目の色を変えて叫ぶと、沙耶に向かって。いや、彼女の背後に向けて炎の塊を放つ。
だが、それよりも前に。
「っ!」
沙耶が振り返り、理解した。
自身の脚に、茎が無数に近づいている事に。
だが、それに気づいた沙耶は突如脚を上げて、茎に向かって振り下ろすと、義足代わりにしていた岩が変形して茎を斬り刻む。と、そのままその岩は伸び、智樹を掴んで放り投げた。
「ごはっ」
木に叩きつけられ血を吐き出す智樹は、次こそはと体を前のめりにして茎を向かわせる。
だが。
「させないよ」
「クゥッ!?」
未だ途切れる事なく降り注ぐナイフの数々にーー
「ふっ、ふれいむかったーっ!」
美里が炎を纏わせ茎を焼き払った。
「は、はは、邪魔だよ。そろそろ、時間もないのに、なんで、邪魔するかな、」
「「っ!?」」
下を向いて、引きつった笑みで不気味に笑う智樹に、美里と樹音は険しい表情を浮かべた。
憤りを露わにしながら、智樹は突如、地面に大きな葉が目立つ草を生やす。
「なっ、これはっ!?」
「っ!マズいっ!この見た目は、多分ローレルジンチョウゲ、、これを切ったら毒性のある物質が放たれる!」
「えっ!?」
樹音が声を上げると共に、美里が記憶にあった情報を口にする。だが、それには既に、先程から降り注いでいた樹音の大量のナイフが向かっていた。
「みんなっ!早く逃げーー」
既に手遅れだと。美里がそう思い声を荒げると、刹那。
「させ、、ない!」
「「!」」
沙耶による岩が伸び、ローレルジンチョウゲの上空に屋根の様な形で覆い被さりナイフを防ぐ。
「...はぁ、、よ、良かった、」
「み、水篠ちゃん、、大、丈夫、?」
美里は、恐る恐る口にする。
「うん!大丈夫。絶対、ここまできて終わらせない!」
そう意気込む沙耶だったが、対する美里は冷や汗を流す。
そう、先程義足の様にして作った岩の足から始まり、全身にヒビ割れが見えるのである。
ーこのまま能力を使ってたら、、戻れなくなるかも、ー
思わずネガティブな想像をし、美里は怪訝な顔をしたがしかし。ハッと気づき首を振る。
ここまできて終わるわけにはいかない。それは、沙耶と同意見であったからだ。
故に。
「分かった。ここで終わらす。水篠ちゃん!作戦は、、分かってる?」
「うん!任せてっ!」
美里は目つきを変えて、隣の沙耶に伝える。すると、その様子から察したのか、樹音もまた強い双眸で見つめる。
「ははは!水篠ちゃん、やっぱおもしろいね。君は進化し続けている。この中で、、いや、転生者で一番おもしろい。俺を、飽きさせないでくれよっ!」
「ご期待に添えられるよう、頑張ります!」
智樹がニヤリと笑って放つと共に、周りから棘のある茎を無数に生やして沙耶に向かわせる。対する沙耶もまた、手に持っていた石を変化し強化させて、巨大な腕の形にする。
「クッ!う、う!」
智樹の方から生えて向かう茎。それのみならず、沙耶の背後、右、左。更には既に生えていた森林の中の樹木からも枝分かれした茎が襲う。
全方位であった。
樹音はナイフを降らせる事が智樹の策略に嵌ってしまうと考え、彼に直接の近距離戦を仕掛ける。
「はは!邪魔だなぁ、君は。オーディエンスは黙って観ていろ!」
「ぐはっ」
智樹は、沙耶に対して能力を全て使用するためか、茎を生やす事はせずに、樹音の攻撃を避けては蹴りを入れる。
一方の沙耶は、自身が乗ったと同時に地面から岩を生やし、その勢いで高く跳躍すると。全方向から向かう茎を、その岩の腕や義足代わりとした脚。更には、智樹と同じく地面の至る所から生やした岩で斬りつけ、裂いて、消し去る。
そんな一同の様子を、美里は見つめながら、"その時"を狙っていた。
ただ、呼吸を落ち着かせて、体力を回復させる様にしながら。
すると、その瞬間。
その時は、訪れた。
「喰らえっ!」
「うっ」
樹音の、智樹に対してゼロ距離で放っていたナイフにより、彼は避ける事にも意識が集中していた。
そのため、樹音は彼の背後から、智樹に峰打ちをする事に成功する。
すると、それによって僅かに押され飛び出した智樹はーー
ーー目の前で岩の拳を構える、沙耶に向かった。
「ふふ、いいよ。待ってた、君の本気の一撃を」
「ごめんなさい。貴方の望むものは、私には出来ません」
「何、?...ブッ!」
構える沙耶に、智樹は微笑んだがしかし。彼女のその一言に表情が強張る。すると、その矢先。
沙耶は智樹を殴ったのち岩を変形させて包み込み、美里の方へと投げ飛ばした。
「行くよっ!美里ちゃん!」
「ふぅ〜、、うん。任せて」
美里は一度目を強く瞑り深呼吸をすると、飛んできた智樹を回し蹴りをして更に後ろに吹き飛ばす。
「ぐはっ!...何を」
「あんたの顔を、歪ませる」
美里が見下す様に、倒れ込む智樹を見据えると、力を込めて地面を踏み締める。
すると、その場一帯。
美里や智樹から半径五十メートル程の空間が、突如大きく燃え上がり、瞬く間に火の海になる。
「もしかしてこれ?こんなので、そんなに胸を張って、、一番おもしろくないけど」
その現状に、智樹は拍子抜けした様に立ち上がると頭を掻く。が、刹那。
「来てっ!水篠ちゃん!」
「うん!」
美里の叫びと共に沙耶が背後から飛び出し、それと同時に智樹を含んだ三人を閉じ込める様に。囲む様に岩の壁を地面から生やしてはドーム型に形成する。
「なっ!?」
その光景に、人一倍驚愕を露わにしたのはーー
ーー木の枝に乗ってそれを見据えた、樹音であった。
「な、なんで、、本当なら、僕も、入る筈、なのに、、っ!まさか」
樹音はその現状に呟くと、その後。ハッと何かに気づき目を見開く。
「...沙耶ちゃん、相原さん、」
力無く呟いた樹音の一言が、その「岩の砦」に居る二人に、聞こえる事は無かった。
☆
「はぁ、はぁ、、どう?この状況。これでもまだ楽しい?」
美里は、息を荒げながら智樹に迫る。
燃え上がる火の海の中。沙耶の岩により逃げ場が無くなった智樹は動揺している様に見えた。だが。
「おお、、これはおもしろい、、あの感覚を、あのギリギリな感覚を、また与えてくれるって事かな?」
彼の動揺は、"予想以上におもしろいものだった事"に対するものであった。
故に、智樹は周りを見渡し微笑む。と、それに。
「はは、本当に頭どうかしてるのね、あんた。でも、その方が罪悪感無いかも」
美里は、その反応に引きつった笑みを浮かべながら嘆息する。と、そんな彼女の話を聞き流しながら、智樹は突如。
「ごほっ、ごはっ」
大きく咳き込む。
「ははは!いいね、これだよ。ああ、ちょっと苦しくなって来た、、はは、そろそろ来るぞぉ、、」
足元をふらつかせながら、智樹は光の無い瞳で笑ってみせる。そう、この空間。これは、以前沙耶と美里の能力によって成し遂げた「それ」と同じであった。
美里の炎により酸素が薄くなる空間を、沙耶の岩で閉じ込め、智樹との耐久戦を行う。それが、最後の美里の案であり、最後の碧斗の作戦である。
「はぁっ!ふー、ふぅ〜、、ひぃっ、ひぃっ、ふぅ〜」
美里が息を止め目を細める中、智樹は樹木を生やしてその上に乗り、火の海から抜け出して息を切らす。
智樹は燃えにくい樹木による高所への避難。美里は、炎の能力適合によるノーダメージ。
お互いがお互い。酸素量のみの対決となった今、先に潰れるのは先程から声を上げていた智樹。の、筈なのだが。
「ああ、、やっべ、、もうそろそろまずいか」
智樹は突如、腕を繋ぎ止めるために巻きつけていた植物を伸ばし、全身を草木で覆って。まるで草の鎧の様に体に纏う。
勿論、顔にも、マスクの様に覆って。
「はぁ、、あ〜、いいね。もう少しでとべそうだったよ」
「そんなにとびたいんだったら感覚に任せればいいじゃん」
そう。智樹は、植物を纏う事で酸素を得ているのだ。それにより酸欠を避けた智樹は、掠れた声で放つ美里を見下ろす。
「そうしたいとこだけど、相原さん達が居るでしょ?気を失ったら殺されちゃうだろうしね」
「へぇ、、死ぬのは、怖いのね」
「はは、そうだね。生きているから死の快感を得る事が出来る。死を経験出来るのは一度きりだからね」
植物を纏い、見せつける様に大きく息を吸いながらそう美里に返す。すると。
「はぁ、、あんたらしくて、いい返答」
「どういたしまして」
対する美里は、呆れた様子で息を吐いた。
「それよりも、大丈夫?俺はこうして草木を纏えば平気だけど、、相原さんに免疫があるのは炎だけでしょ?それによって生まれた一酸化炭素に対しては俺と。一般の人間と同じだ」
どんどん青ざめていく美里に、張り付いた表情で心配を口にする智樹。そんな彼に、美里は鼻で笑う。
「フッ、さっむい同情をありがとう。これで、少しはあっためたら!?」
と、続けて美里は手に炎を宿し、それを塊として智樹に放つ。
「おっと」
だが、軽々とその全てを避ける。その度に何度も。何度も。幾つも幾つも。美里は炎の塊を放ち続ける。
「おらっ!おらぁ!」
薄れた意識の中、美里は智樹に向かって攻撃をし続ける。声が弱々しくなっても尚、足元がおぼつかなくても尚。炎の威力が弱まっても、尚。
「だんだん攻撃が雑になってきたね。ちゃんと狙えてない感じだ」
智樹はそう微笑みながら避け続ける。だが。
「お」
僅かに。ほんの僅かに、美里の放った炎が掠り、智樹の体に巻き付いた植物に引火する。そんな、僅かな。少量の炎であった。更には、それを放つ美里はあの有様である。こんな弱い炎で、何も変わらないだろう。
そう、思われたが、刹那。
「っ!」
小さく引火した火が、突如大きく燃え上がり、智樹の体に広がる。
「何っ」
「分かった?今、ここは炎によって環境が私に味方をしてくれてるの。少しでも引火したら、直ぐに炎を拡大する事が出来るから」
以前と同じ作戦で、智樹には通用しないのを理解しているのにも関わらずに使用した点。更には、こんな自身を殺す様な場所に本人もまた入った点。その全てに、智樹は疑問を抱いていた。だが、この攻撃と共に彼は理解する。
これがこの作戦の狙いであったのだと。
「クッ」
智樹は慌てて美里に攻撃をしようと、茎を目の前に生やそうとしたものの、既に地面の草が燃え、地自体が火の海になっている現状では、そんなものが生やせる筈も無く、智樹は珍しくも歯を食いしばる。
「どう?分かった、?私達の作戦。それは」
美里はそこまで告げたのち、目眩と共に前へと蹌踉ける。
そんな彼女の代わりを務める様に、智樹はそれに付け足す。
「植物を生やせない、育たない環境を作り上げる。だろ?」
「...はっ、分かってんじゃん」
智樹の適切な発言に、美里は引きつった笑みを浮かべ返す。と、対する智樹もまた顔を引き攣らせて続ける。
「はは、あいつとやってる事一緒だよ。相原さん」
「...あい、つ、?」
美里は怪訝に呟くと、智樹は少し間を空け僅かに口角を上げてその名を告げる。
「桐ヶ谷修也」
「!」
智樹の短い返しに、美里が目を剥いたがしかし、その動揺によってか、またもや体をよろめかせる。
「クッ、」
「はは、でも。この環境下で行うのは逆効果だったね。分からなかったのかい?自分の方が先に厳しいって」
智樹はそう微笑むと、更に上から植物を巻いて引火した炎を圧力で鎮火させる。
「火事になった時の死亡率が高いのは、煙を吸ってしまった事によるものの方。炎に焼かれる事じゃない」
ニヤリと。未だ体をふらつかせながらも炎の塊を放ち続ける美里に、智樹は残念だったと言うように伝える。と、そののち。
「ありがとう、相原さん。君は、この中で二番目におもしろかったよ」
残念そうに口ではそう放ちながらも、表情では清々しく。まるで、目の前で死ぬ事になんの躊躇も戸惑いも無いといった様子で、智樹は微笑む。すると、そののち。
智樹はとうとう植物を完全に全身に行き渡らせ、本当の意味での鎧を完成させて付け足す。
「俺に攻撃が出来なくさせたのはそっちだ。俺は何もする事が出来ない。だから、ただ相原さんが苦しみ、悶え、力尽きるのを待つしか無いんだよね」
「チッ、」
「恨むなら、こんな不利でしか無い作戦を考えた自分を恨みなよ?」
ただ何をするでも無く、拷問の如く苦しむ美里を見つめる智樹。彼はその光景に、美里の死を確信した。
が、そんな矢先。
「フッ」
美里は、口角を上げた。
「...いいね、相原さん。君も、好きかい?死を感じるのが」
「...ヒュー、、ヒュー、い、、一緒に、、しない、で」
美里の反応に。まるで共通の趣味を見つけた時の様に表情を明るくする智樹。だったが、美里は冷や汗を大量にかきながら、青ざめた顔色で彼を睨むと、そのまま炎の塊を放ち続ける。
「ハッ、受け入れた方が気持ちいいのに」
未だ尚争おうとする美里に、智樹はニヤリと微笑みながらも呆れを見せる。が、そののち美里は。
「み、、水、、篠、、ちゃっ」
沙耶の名を、掠れた声で放った。
唐突な行動に、智樹はハッとする。そうだ、ここには美里のみでは無く、沙耶が居たでは無いかと。
目には見えていたものの、岩の中に入ってからというもの一言も口にせず、行動は愚か、呼吸すらしていなかったであろう沙耶の存在を、認知出来ていなかったのだ。
それに気づいたと同時、美里の発言に頷いた沙耶は、彼女に近づきーー
ーー唇を奪った。
「なっ」
智樹は、目を疑う。これは、そういう事だろうか。いや、こんな状況でするはずが無い。最期の瞬間故の行動とも考えられなかった。
そう、これは。
「...口、、移し」
沙耶が、今の今まで呼吸を止め、口を噤んでいた理由。それは、美里に息を共有するためだったのだ。
「実際にやるとはね。でも、呼吸共有なんて。そんなもので耐えられるのはほんの僅かな時間。そう長くは保たないよ」
智樹は、そう笑ったが、しかし。
「!」
美里の瞳はしっかりと智樹を見据え、呼吸を共有したまま美里は的確に炎を飛ばした。
それにより、炎が植物に掠った智樹は、またもや炎上する。
それに少しの快感を感じながらも、同じ方法で対処する智樹を睨む美里は。先程とは変わって鋭い目つきで、しっかりとした面持ちで、彼を見据えていた。
☆
「な、、なんでっ!あの中で二人で保つわけない、、僕が、僕が助けないと」
岩の中から聞こえてくる轟音を耳にしながら、樹音は冷や汗混じりに焦りを見せる。
作戦では三人が中で智樹を追い詰める筈であった。それなのにも関わらず。
ークソッ、、僕が近くに居なかったばっかりに、、っ!タイミングが上手く合わせられなかったー
樹音は、即座に対応出来なかった自身を憎みながらも、以前作り上げた熊手を能力で生成し、岩の下を掘り進めて、沙耶や美里の居る岩の中へと侵入しようと試みる。
ー待ってて、直ぐ、行くからっ!ー
そう樹音が胸中で強く思い、掘り始める。
が、刹那。
「こんなとこに来てたのか、円城寺樹音」
「!?」
背後から。一人の男性の声が放たれ、樹音はハッとし振り返る。
すると。
「い、、岩倉、君、?」
岩倉拓矢の姿が、そこにはあった。
五章終了間近。
の段階で申し訳ないのですが、、
来週の投稿は、諸事情があり行えません。申し訳ございません。
日付をズラすか、以前の様に一話分お休みを頂くかを現在検討中ではございますが、来週の金曜投稿が行えない事をここでお詫び申し上げます。
申し訳ございませんでした。
ズラして投稿の際は、Twitterでのご報告となる可能性が高いです。ご了承下さい。(その場合は土曜投稿になると思います)
よろしくお願いいたします。




