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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第5章 : 啀み合いと狂気(フォリィ)
152/301

152.苦悩

 静まり返った廊下にて呟かれた智也(ともや)の一言に、大翔(ひろと)は怪訝な顔をしたのち、それはやがて怒りの表情へと変化する。


碧斗(あいと)が、、首謀者、?ふざけんな、、ふざけんなよっ!碧斗がか!?お前、あいつと一緒に居たんだろ!?なら分かるはずだ。確かにあいつは意気地なしで時々やべぇ事言う時あるけどよ。絶対に何も起こしてない無実の人に危害を加える事はしない」


 大翔は、意味の分からない唐突な発言に、思わず感情的に声を荒げる。

 そんな彼に、視線を逸らしながら、智也は割って入る。


「...そう、S(シグマ)は言ってたんだ」


「っ」


 そう付け足された事実に、大翔は僅かに目を開く。


「なんだ、、お前の考えじゃねーんだな?...そうか、、それよりもまず、お前もSと会ったのか」


 安堵したように息を吐いて問う大翔に、智也は無言で頷く。

 と。


「お前、、それ、信用したのか?」


 目つきを変えて、大翔は彼を見据える。


「いや、そんな事、信用しなかったし聞く耳も持たなかったよ。碧斗はいい奴だし、そんな風になる奴じゃ無いのは分かってた。だって、友人だったから」


 遠い目をして語る智也に対し、大翔はなら何故と言わんばかりの表情を浮かべる。

 すると、大翔が口を開くよりも前に智也は続けた。


「それに、それもSの作戦かもしれないしね。正直、あの人は誘導するのが上手い」


 と、そこまで放ったのち、突如大翔へと視線を落として「でも」と、付け足す。


「だからこそ、俺はこの選択を取った」


「っ!だからなんでだよ!?どうせSの作戦だろ!そんな言葉信用しないんじゃ無かったのかよ!?」


 動かない身体を懸命に動かすようにしてもがく大翔に、智也は唇を噛んだ。


「...Sは、言葉巧みに相手を翻弄させて悪の道へ(いざな)った」


 智也は、そこまで放つと少し間を開けて、呼吸を整えたのちそう口にした。


「碧斗もまた、俺達を誘導した」


「...な、何?」


「作戦でだ。さっき、俺達は碧斗の予想通りに動かされた。どうだ?その力を、まだ彼の正義の心で扱われているからいいものの、碧斗がいつ道を踏み外すか分からない」


「そんな事、あるわけ無いだろ」


 作戦というものが何かは分からなかったものの、今まで行動を共にした中で幾つか思い当たる点があり、大翔は自信なさげに声量を下げて放った。


「もしもの話だ。そうなった時、俺は碧斗の思惑に乗らないとは思えない」


 だからこそ、今こうするしか無かったのだと。そう言うように、智也はそれを告げたのち目を細める。

 すると、大翔は口を開く。


「もしも、だろ?もしもで、確信もないのにそんな事すんなよ」


「確信になった時にはもう遅いんだよ。それに俺は、、いや...別に殺すつもりは無い。牢屋に収容するつもりだ」


 小さく何かを言いかけたものの、直ぐに取り繕って智也はそう力強い視線で伝える。

 そんな事とはつゆしらず、大翔は眉を潜める。


「それで、、そんな事して、この争いは落ち着くのか?」


「...少なくとも、5人が減るんだ。少しは前へ進めるんじゃない?」


「悪いがそうは思えない。俺達を捕まえても、新たな奴が自分勝手な争いを始めるだろ?それなら、俺達で手を組んでーー」


「そんな事にはならない」


「何?」


 大翔の発言を遮って、智也は低く告げる。


「争いを始めないように、俺達パニッシュメントが管理する。どれだけ頑張っても、力技じゃきっと争いは終わらない。だから、始めに裏切り者はどうなるのか。みんなに見せないと。強者が誰で、どのような新しい秩序が生まれたのかを。定めると共に"それを裁くのは誰か"を、"それを行った人物"を使って理解させないと、誰も止めないよ」


「ハッ!難しくてよく分からねーが、とにかくみんなに自分達の強さを見せつけるために使うのが、俺らって事か」


 嘲笑する様に声を発し、大翔は口角を上げる。その、自身の状態を理解していないかの様な姿に、智也は怪訝そうに言葉をかける。


「お前、今の状況分かってないのか?」


「分かってるよ。でも、お前はそれが一番の行動だと思ってねーみたいな顔してるから、思わず笑っちまっただけだ」


 その発言に、思わず歯嚙みする。

 はらわたが沸切りそうだった智也は、必死に感情を抑えたのち、睨むような双眸で大翔を見据える。


「...悪いが、話はここまでだ。長話は、誤解を生む」


「あ?なんの話だ?」


 大翔がそう首を傾げ、智也は気にするなと言わんばかりの表情で攻撃を放とうとする。

 が、それと同時に。


「「っ!」」


 突如窓から。窓と同じ程度の大きさを誇る巨大な茎が、智也の背後に現れる。

 それに気づいた本人は、既のところで回避し窓の外を見据えた。


「まさか、、あれでまだ平気なのかよ」


 その視線の先に映し出された、屋上に生えた木々の間からチラつく、海山智樹(みやまともき)の姿に、智也は驚愕の表情で口にした。


          ☆


 未だ身体の自由が効かない碧斗達に、涼太(りょうた)達は「よくやった智也」と小さく呟いたのち詰め寄る。


「邪魔者も消えたわけだし、次はお前達だな。伊賀橋(いがはし)碧斗と水篠沙耶(みずしのさや)共」


 名を放たれた二人は、必死で体を動かそうとするものの、智也の放った電流はいつもより強く、現在もまだ言う事を聞いてはくれなかった。

 故に、抵抗すら出来ない一同に対して、涼太の目配せと共に愛梨(あいり)が弓を引く。

 が、次の瞬間。


「「「「っ!」」」」


 碧斗達及び、涼太達も驚いたように「それ」へと視線を戻す。

 突如屋上の木々にヒビが入り、それが弾けるようにして茎が放たれたかと思うと、中から智樹が現れたのだ。


「なっ」


 運良くそれに当たらなかった一行は、僅かな傷のみで、大きな致命傷が見られない智樹に対して目を剥く。

 そんな皆の視線を受けながら、智樹は見渡すようにして口を開いた。


「いい雷だった、、けど、もう電気はいいかな。感覚は十分味わった。正直、おもしろくなくなってきたよ」


「お前、なんで」


 彼の隣に立つ、涼太が嫌悪を露わにする。と、智樹は笑顔を崩さずに


「どうして無傷かって事?ま、無傷では無いんだけどね」


 と放つと、丁寧に返す。


「木に雷が落雷する事はよくある現象だよね。雷は高いものに落ちるから。でも、あれによって電気が通ったり山火事になるのは、自然界の木が地中の養分とか水分を吸い上げてるからなんだ」


 そこまで告げると、智樹は僅かに目を開き、その笑顔の印象が不敵なものへと変化する。


「でも、俺のは違う」


「何、?」


 怪訝に返す涼太に、体をそちらに向き直して続ける。


「俺の能力で生まれる植物は、養分を必要としない。伸びたり成長する原動力は俺の能力だからだ。つまり、性質はそのままの造花のような、人工的に作られたものに近いかな」


「クソ、」


 その話を耳にした碧斗は、思わず愚痴を零す。その声が聞こえていたのか否や、智樹は涼太に向けていた体をまたもや皆の方へと戻し、微笑む。


「ま、元々木自体、電気抵抗が高いから電気を通すのには時間がかかるって訳だね。それに」


 智樹はそこまで呟くと、智也が飛ばされた三棟の方向へと視線を向けて口を開く。


「どうやら本気の電気じゃ無かったみたいだし?」


 その、余裕そうな。いや、怖いものが無い様な表情に、碧斗は必死で作戦を練る。

 が、その矢先。


「確認致しました。直ちに対応します」


 一人の言葉と共に、大勢の足音が近づく。

 そう、王城側の対応である。幾ら勇者であり、能力者である人物だとしても、限度というものがあるだろう。

 それを超えたが故に、動き出したのだと思われる。

 碧斗がそれに気づきそんな事に頭を働かせている中、王城の騎士達は魔法石を前に突き出す。


(ボウ)ッ!」


 恐らく、爆発系の魔石だろう。応戦する人数が増えた事に安堵する碧斗だったが、それを唱えたのち、彼が爆発する事はなかった。


「何、?」


「いっ、一体何が起こってるんだ、?」


 その場に居た全員が。騎士達本人ですら、その現状に首を傾げる。

 おかしい。ここまで多量の魔力を、爆発のみに使用したとは思えない。そう思考を巡らせる最中、背後の愛梨は騎士の方々の方向へとただ視線を送った。

 すると、改めた騎士達は、今度は先程と違った魔石を取り出し同じく構える。


(エン)ッ!」


 だが、結果は先程と同じ。炎が出る事も、突如彼が燃え盛る事も無かった。


「っ」


 それに、今度は珍しく何故か反応を見せる愛梨。

 だが、その気持ちは全員が同じであろう。碧斗もまた、その中の一人であった。


ークソ、これで時間稼ぎが出来ると思ったんだがー


 そう内心で思いながらも、ゆっくりと体を起こす。どうやら、電流が弱まってきた様だ。

 それに続き、美里(みさと)や沙耶、樹音(みきと)も立ち上がる。が、それに合わせる様に、智樹の茎が目の前から現れ、一同を襲う。

 と、刹那。智樹に向かって矢が三本程放たれる。

 がしかし、それを目にした智樹は、焦りなど一つも見せずに木を隔て対応した。すると、それが樹木に突き刺さったその瞬間、その場が爆発を起こす。


「え」


 その光景に、それを起こした張本人である愛梨が声を漏らす。

 どうやら、騎士達の援護は失敗に終わってしまったものの、皆の標的を智樹にする事は出来た様だ。その事実が唯一の救いだと言わんばかりに碧斗は嘆息する。

 が、彼の目の前にはーー


 茎が迫っていた。


「っ!」


「「させないっ!」」


 すると、既のところで樹音が割って入り、茎を切断する。と、立て続けに美里が、残された茎の根元を綺麗に焼き尽くす。


「あ、ありがとう。助かった」


「何ぼーっとしてんの!?」


「はは、大丈夫だよ。でも、あまりバラけない方がいいかもね」


 標的を智樹にする事は出来たものの、彼らは我々を助けてくれるわけでは無いのだと。

 美里の言葉に碧斗は苦笑を浮かべながら、樹音の発言は最もであると頷いた。

 すると、その瞬間。本体である智樹から、無数の茎が無造作に生えては暴れる。


「なっ」


 その大量の茎は、先程とは違って細長く、至るところに刺が突き出ていた。


「あれは、、薔薇か、?」


 細いが故に、目で追う事が困難となっていた茎を凝視する碧斗は小さく呟いた。すると、それを斬りつけようと構える樹音の隣で、美里が返す。


「ロサ・ルビギノーサ、、スイートブライヤーとも言われてるもの」


「わ、分かるの?」


 的確な名を放つ美里に、碧斗が驚いた様子で放つ。


「...確信は無いけど、、好きだから。植物」


「ガーデニングとか?」


「そんなのうちでやったら潰されるよ」


 前を向いたまま、少し声のトーンを下げて放った美里に、碧斗は「そうなのか」とだけ零す。すると。


「元々植物が好きなの。それで生物にも興味を持って、、それで理系に」


「っ、それでか」


 知ることが無かった美里の話に、碧斗は目を見開く。


「来るよっ!」


 だが、その大量の茎が、一斉にこちらに向かう光景を目の当たりにした樹音が割って入る。


「「了解!」」


 それに、二人は同時に返す。とは言っても碧斗は、それに対する対抗方は持ち合わせていないのだが。


「クッ!これ、危ないねっ」


「しかも量が多いから、全部燃やすのも厳しっ!」


 樹音は集中力を高め、それを避けながら斬り裂いていく。対する美里は、一つ一つを見極めながら、炎を放っていく。

 がしかし、その量とスピードに、一同は追い詰められていった。


ークソッ、こんなの、袋の鼠じゃないか、?なんとかしないとー


 碧斗は必死で攻撃を避けながら、打開策を練る。

 と、その瞬間。


「っ!危ない!」


「「っ!」」


 樹音の声と共に、その場一帯に爆発が起こる。


「っ、、神崎(かんざき)さんか」


 それが放たれた方向へと振り返り、碧斗は呟く。彼女なら、この状況を打破出来るのでは無いだろうか。

 そう考えたものの、立て続けに無数の爆発が起こる。


「クッ!」「んっ!」


 茎を避けながら、更に爆発から逃げる様にして、碧斗達は足を早める。


「俺達の事はお構い無しか」


「元々っ、狙ってた相手は僕達だしね、、同時に倒せればラッキーって感じなんじゃないかな?」


 息を切らしながら歯嚙みする碧斗に、樹音は苦笑を浮かべながらそう返す。


「クソッ、これで爆破威力がもっとあれば良かったんだが、、これじゃ茎に全然攻撃が通ってないぞ、?こんなんじゃ意味無いじゃ無いか」


 これではこちらが圧倒的不利では無いかと。碧斗はその現実に嘆いた、が。


「いや、そうでも無いかも、、あの爆発は、ただ威力を発するだけじゃ無い。あの爆発には、能力だけどちゃんとーー」


 美里は目つきを変え、それがチャンスだと言うように向きを爆発した樹木へと変える。


「火種がある」


 それだけを呟いたと同時。手を伸ばしたその爆破の威力が劇的に大きくなり、それにより散った火の粉が、智樹の木々に付着し更に炎上する。


「っ」


 それに、智樹は目を見開く。


「ナイスだよ相原(あいはら)さん!」


 樹音が美里に声をかけ、追撃を行おうと体勢を整える。が、その瞬間。


「っ、マズい!」


 碧斗が声を荒げ、眼前にはまたもや大量の茎が現れた。


「「「クッ」」」


 それを既のところで避けた一同だったが、そののち碧斗はその光景に絶望を見せる。


ーあんなに燃やしても直ぐ生えてくるのか、、こんなの、絶対ー


 勝てないと。そんな弱気な感情が湧き上がる。と、その最中。


「うっ!?」


 背後の愛梨が、茎に直撃し吹き飛ばされる。


「ゴハッ」


 血を吐き出す愛梨を横目に、次は我々では無いかと。

 頭では分かっていた。恐怖してはいけないと。勝つために意識を変えなければならない事も、対策を練らなければならない事も。

 分かっていた。だが、碧斗の手足は、本能的に震えていた。


「はは、いいね。今のは結構でかかったよ。本当の爆発の衝撃が知れて、満足だなぁ」


 背に大量に生やした草の壁にもたれかかる智樹は、そう至福の笑みを浮かべた。恐らく、爆破の衝撃を、それで抑えたのだろう。

 すると、彼の隣から。物陰に隠れていた涼太が現れる。


「お前。伊賀橋碧斗や水篠沙耶を殺すんだったらさっさとやれ。いつまでも伸ばすな」


「えぇ、でも、直ぐはなんかやだな。結構、気になる子も居るしね」


 睨み付ける涼太に智樹は笑って返すと、その場に居た「ある人物」を目を細めて見つめ、ニヤリと口角を上げる。

 その姿に、諦めたのか涼太は呆れた様子で息を吐く。


「だったら、俺達の邪魔するな。俺達には俺達の使命がある」


「ははは、傲慢だなぁ。使命って、やりたい事やってるだけでしょ?それって、俺と一緒じゃない?どうして俺が引かなきゃいけないの?」


 ニッコリと笑顔と共に返す智樹に、涼太は歯嚙みして鋭い目つきを送る。

 と、その直後、涼太に智樹の無数の茎が向かう。


 ーーだが。


 その茎の数々は、涼太に到達する前に朽ちた。

 すると、目つきはそのままで。いや、更に鋭いものへと変えて、涼太は声を低くし放った。


「お前、次俺達の邪魔してみろ。今度はお前をこうしてやる」


「いいね。是非受けてみたいもんだよ」


 それとは対照的であるかの如く、智樹は爽やかな笑顔で、苛立ちを見せながら放ったそれに受け応えた。


            ☆


「嘘だろ」


 海山智樹の暴行に、智也はそう漏らす。

 ただでさえ生きているのが奇跡である状態であった筈だというのに、彼はそれを感じさせない動きと行動で、皆を追い詰めていた。


「ほら、見ろ。そんな生温い考えで、あいつは倒せねぇ。俺達の相手を優先させるなんて精神状態で、あの化け物には勝てねんだよ」


「うるさい。黙ってろよ」


 外を眺める智也に、大翔は仰向けになったまま伝える。


「黙るわけねーだろ。それ以外出来ねんだから。...こうしてる間にも、みんな死に物狂いで頑張ってんだよ」


 だからこそ、何もしない訳にはいかないと。

 真っ直ぐな理由と真っ直ぐな視線で、寝ながらではあったが智也を見つめる。


「...何が言いたい?」


「...つまりだな。まずはとりあえず、あいつをみんなで協力して倒した方がいいんじゃねーかって話だ」


「...ざけんな、」


 それに、智也は歯嚙みする。そののちーー


「なんでこうなんだよ。なんでこうも上手くいかないんだよ!?」


「...」


 智也は、突如声を荒げた。それに、大翔は返す事が出来なかった。

 その思いは、我々も同じだったからだ。


「...おい。智也」


「...なんだよ」


「俺はお前の事なんて大して知らねーし。ここに来てから何があったのかも知らねー。それに、大して話もしてねぇから、俺はお前をただのヤベー奴としか思えねんだよ。でも、何か、言えないけど苦しい。...いや、言えないからこそ苦しい事があったんだよな」


「何を、突然」


 大翔の優しくも強く告げられる言葉に、智也は外に視線を向け、背中だけを見せる。


「誰だって、苦しんでる時がある。でも、だからってそん時に視界を狭くしちまったら、逆に解決なんて出来ない。俺は、ずっと引きずってる事がある。それでも、今は前より少し視野が広くなった気がすんだ。あの人のお陰でな」


 大翔は、ある黒髪でセミロングな、小さな一人の少女を思い浮かべながら、そう口にする。と。


「それが、何なんだよ」


「まあ、つまり、なんだ。今苦しんで、悩んでる事を治めるだけに集中しても、周りを見てなきゃ上手くいかない事もあるって事だ」


「...つまり、お前らを潰す事に集中しても、まずあいつを倒す事に意識を変えなければ成し遂げられないって事か?」


「フッ、分かってんじゃねーか。...悪いが、正直俺らだけであいつに勝てるとは思えねぇ。だから、、お前の力も必要なんだ」


 大翔は少し話し方を柔らかくし、動かない身体で必死に願う。

 それに少し考えたのち、智也はため息を吐くと、こちらに振り返っては足を踏み出す。


「分かった。まあ、お前をここでやっても、まだ四人居るからな。後を考えると、こうするのが妥当だ」


「...助かる。そう言ってくれると思ってた」


 大翔がニッと笑顔を見せて返すと、智也はまたもや息を吐いて窓の外へと踵を返す。


「だあ!悪かった!だから早くこれどうにかしろ!」


「はぁ、、もうとっくに能力解除してるよ。後数分すれば動くはずだ」


 声を荒げる大翔に、歩きながらそう呟くと、目つきを変え。あくまで大翔には背を向けたまま戦闘体勢へと入る。


「いいか?大翔達と共闘する事は出来ない。大翔達を逃す事も、みんなを助ける事も出来ない。それは、分かるな?」


 そこまで声を低くして告げると、少し間を開けて「だが」と続けると、窓から跳び上がると同時に付け足した。


「処す順番を逆にする事は、俺にだって出来る」

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