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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第5章 : 啀み合いと狂気(フォリィ)
141/300

141.裏側

 登場人物の名前が、漢字表記にすると見間違ってしまう恐れがあったため、出来る限り一行の中に両方の名が出る際は苗字を書く様にしました。

 それでも尚、人物の把握が難しくなる場合があるため、先に謝罪申し上げます。

 識別し難い名前ばかりで、誠にすみませんでした。

「嘘だろ、」


 冷や汗を流し、碧斗(あいと)は問う。そんな言葉に、無慈悲にも智也(ともや)は真顔で返す。


「ああ、本当だ。ここで碧斗達と協力するわけが無いだろ。俺からしたら、その方が都合がいいんだよ」


「なんでっ、だよっ!」


 心の何処かで、願っていたのかもしれない。信じていたのかもしれない。

 智也と一緒に協力し、あの"化け物じみた人物"に勝利する未来を。


「クソッ!」


 体が動かないが故に、碧斗は頭を地面に打ち付け叫ぶ。


 詰んだ。


 その言葉が、何も出来ない彼の脳内を埋め尽くした。と、その時。智樹(ともき)が、表情を崩さずに口を開く。


「君さぁ、そんな事言って、碧斗君を庇ってるんじゃ無いの?俺と戦わせない様にって」


 その言葉に、碧斗はハッとする。が、それを受けた智也は、対照的に頭に手をやり息を吐いた。


「んなわけないっしょ。つーかまず、俺が智樹と戦うメリット無くね?だから、碧斗を仕留める方が俺にとっては効率がいいんよ」


 ヘラヘラと、体がボロボロになりながら、震えながら平然を装って放つ。そんな姿に、碧斗はどちらが本当の言葉なのか目を細める。


「まっ、つー事で、、ね?悪いけど、碧斗は俺が殺っとくからさ。だからーーブッ!」


 尚も提案を続ける智也に、言い終わるよりも前に突如ーー


 ーー彼の足に、茎が突き刺さる。


「がぁぃぁぁぁぁっ!」


 とどめを刺すような一撃に、智也は崩れ落ちる。


「智也君!?」


「なんか勝手に話進めてるけどさ。逆に、俺がお前に碧斗君を渡すメリット無くない?」


「くっ、ふっ」


 歯を食い縛り、智也は顔を上げる。

 確かにそうだ、と。碧斗は体を突っ伏したままで目つきを変える。

 智樹は、我々が裏切り者であるがために狙っているわけでも、我々を殺したいから狙っているわけでもない。

 故にーー

 「碧斗を代わりに殺しておく」なんて言葉は、彼にとっては逆効果なのだ。

 と、そんな智也を見つめたまま、海山(みやま)智樹は続ける。


「それにさ。君、なんでここに居るの?」


「...は、?」


「いやさ。だって今はもう王城に居なきゃいけない時間だよね?俺は一時間程度の外出許可をちゃんと得てから来てるけど、、君はどう?」


 海山智樹の突然の発言に、阿久津(あくつ)智也は動揺混じりに押し黙る。それに


「やっぱり」


 と。智樹は呟くと、ゴミを見つめるような目で、放つ。


「そんな奴、殺されても仕方ないよね。ルール破ってるんだから」


「「っ!」」


 彼の発言に、2人は目を剥く。

 狂っていると。

 智也は冷や汗をかきながら、ようやく彼の異常さに気付いたようだ。


ー意味わかんねぇ、、なんなんだよこいつ、殺すとかの、人としての最低限の感覚より、転生されて付け足された、王国のルールの方が優先的に守ってるっつーのかー


 それに思わず、智也は鼻で笑った。


「イカれてんな。お前」


「何言ってんの?許可も得ないで転生者が外に出る方が異常でしょ」


 そんな彼に、智樹はやれやれと放つと、目つきは鋭くしたままではあったが、微笑んで付け足す。


「そんな君は罰せられないとね」


「っ!」


 その瞬間、碧斗の足元にも茎が現れ、足を掴んだかと思った次の瞬間。


「「なっ!?」」


 足に突き刺された智也と共に、碧斗は屋根の外に放り出される。


「もういいよ。つまんないし」


 小さくそう呟いたのが聞こえた。と、同時に。


「っ!」


ー嘘だろー


 放り投げられ向かう、先の地面から。先端の尖った茎が、一斉に。一面に現れていた。


ーこれじゃ、針地獄じゃねぇかー


 クソッと歯嚙みして、碧斗は隣で同じく降下する智也に目をやる。

 どうやら、意識が遠のいている様子だったが、その目は。まだ諦めてはいないものだった。

 だが、どうすると。そんな事を考えている最中でも、その茎の先端が眼前に迫る。

 すると、瞬間。


 焼けるような熱さと共に、目の前が赤橙色に染まる。


「「!」」


 その正体に、そう時間は要さなかった。


「「がはっ!」」


 "それ"が茎を焼き払いながら通り過ぎたのち、地面に叩きつけられた2人は、そう血を吐き出すと、碧斗のみが震えながら体を起こし、その名を声に出す。


「あ、相原(あいはら)さん!」


「はぁ、はぁ。ま、間に合った、みたいね」


「いやぁ、正直。地面に激突してるのは間に合ってるって言わないんじゃね?」


「は?助けられた分際で何言ってるわけ?炙るよ?」


 ふと碧斗の背後で横たわる智也は、空を見上げたままそう放った。

 その言葉自体はいつもの悪ノリの様な、軽い冗談のようだったが、それを放つ表情は真顔だった。

 と、そののち。


「何助けてんだよ」


 と、碧斗にだけは、その呟きが聞こえた。


「へー、向こうは見捨てたの?相原美里(みさと)さん」


 突如、屋根の上から聞こえた海山智樹の声に、美里は顔を上げる。


「残念、随分と自信があるみたいね。あんたは確かに広範囲に草木を生やせるみたいだけど、コントロールは鈍くなる。自意識過剰が裏目に出たって事ね」


 煽るように、試す様に美里は堂々と口にする。

 それに、智樹はニヤリと微笑むと、目を細めて口を開く。


「そっか。でも、碧斗君に時間を作るってのは失敗しちゃったみたいだよね」


 そんな彼にも動じず、美里は返す様に冷や汗混じりに、だが胸を張って笑みを浮かべる。


「あっそ。本当に、そう思うわけ?」


 その言葉に、僅かに眉が上がる。と、瞬間、智樹の背後に。


「このイカれ野郎がぁ!」


 大翔(ひろと)が、彼を殴りにかかる。

 それに、ニッと。智樹は不適な笑みで振り返る。

 それはまるで、殺してくれとでも言うように。

 だが、それとは対照的に。大翔の拳をスルリと避け、屋根に拳をぶつける。その攻撃を避けられた事に、大翔は思わず歯を食いしばる。

 がしかし、それが本命ではないのだと。避けるために飛び上がった智樹にーー


 無数の岩が襲う。


「もう、好きにさせない!」


 沙耶(さや)の甲高い声に合わせて、岩は智樹に直撃する。

 そう、こちらは空中戦に特化した人物と長く戦ってきているのだ。今更、空中では身動きが上手くとれない相手に攻撃するなんて事は、造作も無い。

 それを受けた智樹は、先程全員で彼を相手していたあの場所。その方向へと吹き飛ぶ。


「いいね。おもしろい」


 思わず口元がにやける。振り飛ばされながら、智樹はそう口にする。

 と、そんな彼に追い討ちをかけるようにして、大翔が屋根の上を助走をつけて走り跳躍すると、地面に叩きつけるようにして智樹を地に向けて殴る。


「らぁっ!」


「ぐふっ」


「っと」


 地に無抵抗で落下した智樹は血を吐き出すが、しかし。

 未だ表情を崩さずに立ち上がる。

 すると、対して地面に着地する事が出来た大翔は、それを目撃し顔を引きつらせるが、智樹が立ち上がったために露わになった"それ"を目にし目を剥く。


「なっ!?」


 そう、地面に大量の草を生やし、芝生のクッションを作っていたのだ。


「ハッ、どおりでピンピンしてるわけだ」


 冷や汗を流す大翔に、智樹は微笑む。だが


「くらえ」


「っ」


 背後から突如現れた人物に、智樹は微かに表情を崩す。

 そう、先程から彼の背後で突き刺され、身動きの取れなかった筈の。


 円城寺樹音(えんじょうじみきと)である。


ー自力で抜け出したかー


 どうやら、いつの間にかその場所に戻って来ていた様だと。智樹はハッとする。

 だが、その人物を目にした瞬間。既に、新たに突き刺さっていた。

 樹音の腹に。茎が。


「っ!があっ!?!?」


 失望を感じる様な瞳で樹音を見つめると、智樹は更にとどめを刺そうとする。が、既のところで大翔が智樹を殴り、吹き飛ばす。


「がはっ、ぼはっ!はぁ、はぁ、あ、ありが、とう。大翔、君」


 突き刺さった茎を剣で切り除いたのち、膝から崩れ落ちて血を吐き出す樹音。

 すると、大翔は智樹に視線を向けたまま、樹音に対して小さく、「それ」を伝えた。


           ☆


 智樹が沙耶の岩によって吹き飛ばされる様子を確認した美里は、碧斗に対し改めて口を開く。


「で、、大丈夫?その、なんか、取り込んでたみたいだけど」


 口では言わなかったが、目線は智也の方を向いており、碧斗は理解する。


「ああ、ありがとう。でも、大丈夫。確かにパニッシュメント側が乱入するのは予想外だったけど、致命傷を負ってるのは俺じゃ無くて、智也君の方だ」


 と、そこまで告げたのち、碧斗は一呼吸置いて口角を上げる。


「それに、もうある程度考えは定まってる」


「!」


 その強気な発言に、美里は「きたっ」と言わんばかりの表情を浮かべる。

 と、そののち、少し不安の色を見せながらも、恐る恐る美里は問う。


「それで、、どういう作戦なの?」


「...ごめん。それはまだ言えない」


「え、」


「いや、その、それにっ、みんなが揃わないといけない作戦なんだ」


 碧斗の考えに、美里は少し悩む仕草を見せる。


「...みんなが揃わなきゃいけないなら、尚更ここで一応話しておいた方がいいんじゃないの?向こうに行ったら、戦闘に集中しなきゃいけなくなるわけだし、少し時間稼ぎが出来た今に、話せるだけ話しておく方がーー」


「駄目だ。それは、、出来ない」


「な、」


 美里は、何故と口に出しそうになり、思い留まる。

 恐らく、彼の作戦には準備や覚悟のようなものが必要なのだ。即ち、まだ、それを告げることの出来るタイミングでは無いと。そう、訴えているのだ。

 何か考えがあっての判断だと予測し、美里はこれ以上の詮索を諦め頷いた。


「はぁ、分かった。とりあえず、能力的に私が援護しないと厳しそうだから戻るけど、、大丈夫?」


 恐らく、美里の心配は智也の事だろう。

 だが、それは寧ろ好都合であると。そう分からせるかの如く表情で、碧斗は頷く。

 美里の、碧斗に構いながらも合間に見せる表情と、ソワソワとした様子に、直ぐに彼らの元に戻りたいという意思が現れていた。

 それは、勿論碧斗も同じだった。だが、何も出来ない碧斗は、作戦で勝負するしかないのだと。

 そう覚悟を示すように真剣な眼差しで見据えると、美里も同じく強く頷き、「じゃあ、あとは頼んだ、から」と呟きその場を後にした。

 その一言を僅かな時間の中で噛み締めたのち、碧斗は息を吐く。


「さてと、次はこっちだな」


 美里の背中を見つめたのち、碧斗は振り返って智也に放つ。すると。


「ふっ、俺を殺すか?」


 空を見ながら、智也は自傷的な笑みを浮かべる。

 そんな彼に、碧斗はただ首を振り、続ける。


「そんな事しない。それよりも、誰か、他のメンバーは来てないのか?来てたら、その人にお願いして、早く治療をーー」


「は?」


「え、」


 碧斗の発言を遮る様に、智也は威圧感を露わにして口にする。


「お前、正気かよ。俺はお前を殺しに来てんだぞ?それに、碧斗の大切な、お友達も殺そうとして、一度は誘拐した事もあったよな?そんな奴を、助けようとするなよ」


「...」


 そう放つ智也を、神妙な面持ちで聞き入れ、少し視線を下げる碧斗。


「いや、その、俺にとって智也君も、大切な友達、、だと思ってるから、さ。それに、その、実は、一緒に海山智樹君とも戦ってくれたらなって〜、お、思って」


 恥ずかしさからなのか、碧斗は声を小さくしながら伝える。それに、思わず智也は歯嚙みする。


「ふざけんな。そうやってお人好しだから痛い目見んだよ。呪うなら、そんな自分を呪え」


「ぎっ!?」


 その言葉の意味を理解するよりも前に、またもや碧斗の体は言うことを聞かなくなる。


ークソッ!ま、またか!?まさか、地面に電気を流してー


 崩れ落ちる碧斗に、智也はふらつきながらも立ち上がり、睨む様な形相でこちらを見下ろす。


「そんな流暢な事やってらんねぇんだよこっちは。俺の目的は裏切り者共のお前らなんだ。それ以外の事はどうでもいい」


「...お前、、どうしたんだ、?」


「は、?」


「この前と随分と思考が違うみたいだな。俺達の目的は変わらず桐ヶ谷(きりがや)修也(しゅうや)を捕まえて真実を知る事。今は更にあいつを捕まえたい気分なんだ。それが一致して、話は丸く収まった筈だろ?それなのに、どうしたんだ、、智也君。君は、、もう少し冷静に話が出来る人物だった筈だ。一体、、一体何があった?」


 その、ずっと違和感を感じていた振る舞いに、碧斗はとうとう抑えきれなくなり、目つきを変えて顔だけで放つ。

 だが、それに対しても同じく拳を握りしめ、焦りとも取れる様子で返す。


「うるさいな。お前には関係無い、ただ気が変わっただけだ。根幹は桐ヶ谷修也だとしても、それを庇った碧斗達も共犯だ。罰を受けなきゃいけない事に変わりはない」


「待ってくれ!少し、話をさせてくれ!」


「もう時間がねぇんだよ!早くしないと、犠牲者が増え続けるだろ、」


 ジリジリと近づく智也に、碧斗は慌てて声を上げるがしかし。

 それに対しても遮り、智也は胸の内を口に出す。と

 それを耳にした碧斗は、歯軋りして怒りを見せる。


 時間がないのも、犠牲者が出るために焦っているのも。どれもこちらと同じ事なのだ。

 (しん)が犠牲になり、苦しみ、焦りを感じているのは寧ろ我々なのだと。彼から受けた使命を背負い、今まで以上にこの争いを早く終わらせなければと考えているのは自身の方なのだと。


ーこっちの気も知らないで、好き勝手言いやがってー


 碧斗は、思わず智也を睨む。


ーふざけるなよ。意思は同じだった筈だ。どうしてそうも直ぐ思考が変わった?...智也君なら、話を聞いてくれると信じてたのにー


 自分勝手なのは自身もだった。

 智也の気持ちを考えずに、我々の安全のみを考え、何度も裏切ってしまった。人との関わりを避けてきた、碧斗の悪い癖だった。

 内心では全てに気付いていても、見て見ぬふりをしてしまう。そんな、自分の非にも気づいていた。

 ここは冷静に考えを練って、作戦を立て直さなければいけない事も。感情を抑え、智也に寄り添わなければ作戦は成功しない事も。

 全て、分かっていた。


 だが、碧斗は抑えきれなかった。


「犠牲者が増え続ける事に焦ってるのはこっちもだ!自分達だけが辛いみたいな言い方するなよ!俺達を倒して、何になる?犠牲者が増え続ける事の原因は俺達じゃ無い。修也君を止めないと意味が無いんだよ!」


「っ!...そうじゃ無いんだよ!お前は何も分かってない。こっちだって焦りたくもなるさ!何も知らないくせに、ごちゃごちゃ言うなよ!」


 同じく怒りで返した智也に、碧斗は体を動かす勢いで放つ。


「またその、何も知らないくせにってやつか。何も知らないのを知ってるなら、どうしてそれを言わないんだ?どうして知らない人間に知っている人間の心情を押し付けるんだ!?」


「っ!...悪いな、碧斗。でも、もう、こうするしか無いんだ」


 碧斗の必死な叫びに、智也は何かを思い耽りながら、そう寂しそうに口にする。

 すると、彼は「ごめん」と、再度そう放ち、碧斗の腕を掴む。


「っ!智也君、、分かってるのか?自分が何をしようとしてるのか」


 恐らく体に、今度は意識を失う程の電流を流す気なのだろう。それを察した碧斗は、冷や汗混じりに訴えかける。

 だが、それで彼の行動が、思惑が止まる事は無かった。

 智也は無言で苦しそうに目を瞑ると、手に意識を集中させる。

 が、刹那


「「っ!」」


 智也の首元に、剣が近づいていた。


「...どういうつもり?樹音」


「...それはこっちの台詞だよ。碧斗君を、どうするつもり?」


 鋭い目つきで、樹音は智也に放つ。だが、その体はボロボロであり、動くのがやっとといった様子だった。


「み、樹音君、、大丈夫なのか?それに、向こうは、」


 不安げに放つと、樹音ははにかんで返す。


「うん、みんなが時間を稼いでくれてるよ。稼ぐ、というより、みんな死ぬ気でやってるけど。...僕は、大翔君に頼まれたんだ。大翔君、さっき碧斗君と一緒に君が居たのを見て、気になってたみたいだから」


「大翔君が、?」


 どうやら、樹音にこちらの様子を見てくる様促したのだろう。それは、ただ碧斗を助けるためだけでなく、別な理由もありそうだ。


「悪いけど、碧斗は連れて行くから。つーか、その様子だったら余裕そうだね」


 智也は体は動かさずに顔だけで樹音の方へと振り返ると、彼の状態を目にし、同じく鋭い目つきを返す。


「じゃあ、樹音も連れてこっかな」


 その言葉にも表情を変えず、樹音は口を開く。


「そんな事よりもまず、君に聞きたいことがあったんだ」


「...は、俺に?お前が?」


 智也の驚いた様子に頷くと、樹音は間を開けたのち問う。


「...竹内将太(たけうちしょうた)君は、どこ行ったの?ここには居るの?来るの?」


「...」


「僕は、最後に彼の生い立ちを聞いたんだ。まだ、話したい事がある」


「...はぁ。つーか、お前にそんな事言う義理ねーし。ここで感電死させてもいいんだぞ?」


 威圧を返す智也に、尚も冷静に。


「そんな事したら、君の首を斬らせてもらう」


「出来んのかよ?それに、光に追いつけるとは到底思えないけどな」


「どうか、、なっ!」


「っ!」


 余裕を見せる智也に、樹音は思いっきり剣を振る。

 それに、瞬時に前屈みになり避けた。その一瞬を狙い、空中に瞬時に生成したナイフで服を貫き地面に固定する。


「何っ!?」


 動揺を露わにした隙を利用し、碧斗を抱えて距離を取る。

 電気を放てない位置で、地面に電流を流しても問題無い場所に、だ。


「どう?話す気になった?」


「...」


「竹内将太君は、、どこに居るの?合わせて貰えないかな?前に戦った時に、少し言いそびれた事があるんだ。あの感情のまま、現実世界に帰って欲しく無い。彼には、ちゃんと立ち直って欲しいから」


「チッ」


「「っ」」


 樹音の綺麗事に、思わず智也は舌打ちを漏らす。

 と、智也は苛立ちを見せたまま、思いっきり体を起こし、服を破いて立ち上がる。


「「!」」


 彼の行動に体勢を整える二人。

 そんな二人に、智也は拳を握りしめ、歯を食いしばり、睨む様な形相でーー


 その事実を口にした。



「竹内将太は、、将太は...」






「もう、死んだよ」



「「え、」」


 その、思いがけない返答に、碧斗と樹音はそんな、間の抜けた言葉しか発せられなかった。

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