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殺し合いの独裁者[ディクタチュール]  作者: 加藤裕也
第4章 : 履き違えの仲違い(コンフィリ)
130/299

130. 心積

キャラクターファイル13

桐ヶ谷(きりがや)修也(しゅうや)

能力:氷


運動能力:5

知能:5(?)

速度:4

パワー:3

成長力:3(?)

 碧斗(あいと)が緊迫した状況の中、凛々しい風貌で修也(しゅうや)に宣戦を促す。


「は?伊賀橋(いがはし)君、あんたそんな事言える立場じゃないでしょ?」


「う、、調子乗りましたすいません」


 碧斗の弱さを知っている美里(みさと)の指摘に、そう謝罪を述べると縮こまった。

 すると


「おいおい、5対1て。流石にこりゃ弱いものいじめ過ぎねぇか?」


 修也はそう嫌味のように放って、手をひらひらと振る。


「いや、確かに分が悪いかもしれないが、お前は既に人を殺めている。殺人犯1人に、複数人の警察が相手する事はよくある事だ。それが、実績がある。前科のある人間の末路だ。どんな理由があろうとも、人を殺め、この争いを始めた事は、絶対に許せない」


 碧斗は冷静でありながらも、感情を露わにして修也に突きつける。全ての発端である人物が目の前にいるのだ。

 感情を抑えられるわけがない。と、それに数秒の間を開け、その場に。

 大声が響いた。


「いやっ!6対1だ!」


「っ」


 刹那、タイミングを見計らい、大翔(ひろと)が修也の背後から殴りにかかる。

 がしかし、ほんの少し退き、目をピクリと動かしたのみで、修也は大翔との間に軽々と氷を隔てる。

 それに、大翔にとっては容易だと。彼は笑みを浮かべ氷を軽々と破壊し、修也の元へと拳を放つ。

 だが、先程の氷は止める事が目的では無く、時間を稼ぐ事が目的であったのだと。それ故に、それを破壊し妨げられた視界が露わになった先にはーー


 ーーこちらに向かう氷の塊があった。


「っ!」


 大翔は思わず体を反らし、既のところで氷を殴り破壊する。


「そういえば、、お前は最初っからずっと俺に否定的だったな」


 ようやっと大翔の姿をマジマジと見つめた修也は、その顔に見覚えがあるというように呟いた。


「フッ、ああ、あん時なんつったかは忘れたが、お前の事が気に食わなかったのは確かだな」


「気に食わない、ねぇ。大した会話もして無いのに、決めつけとは感心しないな」


「ハッ!人殺しになんて感心されたくねぇなぁ!それこそ、俺は人殺しなんて感心しねぇよ。お前、絶対ここで終わらせてやる」


 目つきを変え、碧斗と同じく修也に宣戦布告の如く放つ大翔。それを目の当たりにした碧斗もまた、表情を変えて足を踏み出す。


「修也君。こんな事してても意味なんてないんだ。君は頭が切れる人だと思う。何か理由があるんだろ?」


「...フッ、またその話か。そこの奴にも言ったが、俺はこの世界を堪能しようとしたまでだ」


 (しん)を一瞥し、修也がそう放つと、即座に碧斗が切り出す。


「それなら、どうしてみんなを殺しに来ないんだ?」


「俺が無双出来る力を手に入れるまで出るわけにはいかないだろ。今の俺に分が悪い事くらい容易に想像出来る」


 碧斗の問いにも、淡々と返す修也に、一度ため息を吐く。


「そうか、、どうやら修也君は一度負けないと話してくれなさそうだな」


 真剣な表情で碧斗が放つと同時。その意図を読み取った一同は、一斉に戦闘態勢へと入る。

 と、思った次の瞬間。


「仕舞いだ修也ぁ!」


 大翔が強く足を踏み込み、瞬時に彼の元へ拳を向かわせる。


ーなかなか速いな。だが、攻撃にムラがあり過ぎるー


 その動きに、僅かに関心を見せた修也だったが、やれやれと。またもや氷の塊を隔て防がれる。

 が、しかし。


「っ!」


 それは直ぐに溶かされ、修也の目の前にはーー


 ーー炎が纏った大翔の拳が広がっていた。


 反射的に大きく退いた修也だったが、その背後から、樹音(みきと)が襲う。


「少し手荒だけど、そうさせてもらうよっ!」


 樹音の手に握られた剣の刃には、同じく炎が纏っていた。

 まるで未知のものを見るように、修也は一度目を丸くしたが、直ぐに切り替えて、振ろうと構えた樹音との間に氷を出して防ぐ。

 だが、炎を纏っていたが故に、またもや瞬時に溶かされ、氷が消え去ったと同時。


 剣を振った反動を利用した樹音の蹴りが、修也を襲った。


「っ!」


 手を凍らせ、それで防いだものの、修也は数メートル先にまで足を擦るびかせて押し出される。

 と、その背後から、大翔が拳に炎を宿し。眼前からは樹音が剣に炎を纏い。それぞれが修也に向かう。

 それは、「自身に対して使っていた攻撃方である」と、進は目を見開く。


「クソッ」


 だがそれに、小さく呟いたのみで、未だ涼しい顔をする修也は軽くしゃがみ、地に向けて手を伸ばすと同時。

 地面からはまたもや小さな氷山の如く、氷の壁が、生えるように現れる。

 それを溶かすために、一度腕や剣を振るう事を余儀無くされた2人の、そんな時間を利用し、修也は跳躍してその場から抜け出す。が、それだけでは無いと。


 修也の視線の先。

 遠くでこちらを見据える沙耶(さや)と目が合った次の瞬間、足元が盛り上がり、岩が生える。


「...」


 未だ大きな反応を示さずに、修也はそれを回避する。だが。

 地から伸びた岩は地面から飛び出し、空中で突如砕けては、その破片が修也に向かう。


「何っ」


 修也が小さく、反応を示す。

 この大きさの岩が生える程度であれば、これくらい下がれば十分だろうと、高を括っていた修也は、それ故にゼロ距離で放たれた破片に目を剥く。

 すると修也は、反射的に両腕を凍らし、顔の前で防御壁の如く防ぎながら、岩と距離を取る。


 だったが


「もうやめて!」


 沙耶の必死の叫びと共に、飛び出し砕けた岩の後ろから、無数の石が修也に向かう。


 だが、先程とは違い距離があるがために、修也は余裕な表情で防御壁のように生成した氷の塊を前に放つ。だが、その時


 沙耶の放った数々の石に。まるで隕石の様に炎が纏う。


「!」


 その事から、修也の放った防御壁も意味を成さず、無数の石が向かったために瞬時に溶かされる。

 と、溶け切った氷の後ろから、石が修也を囲む様に軌道を変えながら向かう。


ーこの動き、、めんどくせぇなー


 若干冷や汗をかいて、それを避ける様に動きながら、石と同じ数の氷を宙に生成し放つ。

 それにより、バキバキという音と共に、石及び氷は砕け散っていく。中には氷が先に砕かれるものも多々見受けられたものの、それくらいならば避けられると、修也は運動神経の良さを活かし、巧みにそれを避ける。

 と、その隙を狙い、今度は樹音が幾つものナイフを放ち、大翔はまたもや拳に炎を宿し殴りにかかる。


「っ、、お前、熱くねぇの?」


 未だ追尾を続ける石の数々と、樹音の放つ炎が付いたナイフを、氷で防ぎ避けながら、眼前で攻撃を放つ大翔に向かって小さく問いた。


「ハッ、熱いに決まってんだろ!でもな、こんくらいやんだよ。俺らは、それくらいガチなんだ。お前がいくら、この世界が遊びだと勘違いしてようとなっ!」


 そう大翔は手を止める事なく殴り続ける。それに、修也が僅かに攻撃パターンを予測し始めた、その瞬間。

 大翔が大きく振りかぶって殴りを入れると同時に。


 視界が煙により妨げられる。


「クソッ、マジか」


 思わず、修也の口からは愚痴が漏れる。

 煙により生まれた、辺りの状況が分からない環境のまま、皆の一斉攻撃は続く。


「...」


「..心配か?」


 そんな様子を不安げに見つめる進に、碧斗は小さく問いかける。


「いやぁ、、ただ体が、心配でさ。もしかすると、死んじゃうんじゃないかって」


「...どっちのだ?」


「どっちもだよ」


「そうか、」


 碧斗の短い疑問に、進も同じく短い返事を返す。


「でも、修也君の事は元々、殺すために進はこの場に来てたんじゃ無いのか、?」


「まぁな〜、、その気でいた。でも、、もし碧斗達の手で殺したら、、その、重荷とか、罪悪感とか、、そういうのを押し付ける事になるだろ、、俺は、、もう、みんなに迷惑かけたくねぇんだよ、!もう嫌なんだ、、これ以上、俺が、こんな大切でいい人達を、酷い目に遭わせる様な事するなんて、、もう、絶対に嫌なんだ、誰の迷惑にもなりたくねぇんだよ、」


 進は心中で渦巻いた気持ちを吐き出して、歯嚙みする。

 そんな彼に、碧斗は表情を曇らせ、だがどこか微笑んでいる様子で放つ。


「そうか、、それで、1人で全て終わらそうとしたんだな。...でも、大丈夫だ。俺も本当は、、正直怖かった。近くにいる人達が殺されてしまう事が。俺のせいで苦しんでしまう事が、辛くて、嫌で、逃げ出したかったんだ。でも、それは自分の傲慢でしか無かった。みんながみんな、自分の意志で考え、それでいて行動してるんだ。だから、自分の予想(きもち)だけで、相手を、相手の心情を決めつけるな。みんなを、、俺らを、信用してくれ」


 碧斗はあの時に皆に気づかされた言葉を思い返しながら、真っ直ぐな瞳で告げる。それに、進は僅かに涙ぐみながら、険しい表情を見せた。

 が、その時


 煙がゆっくりと薄れ、修也の姿が現れる。


「「「「「!」」」」」


 それに反応した碧斗と進は、ハッと表情を硬ばらせる。

 更に、そちらを凝視していた樹音、美里、沙耶の3人も。


 煙が薄れて現れた修也。と思われたそれが、氷の塊であった事に気づき驚愕する。


 と、その瞬間、その氷は自ら破裂し、その破片を我々に放つ。


「「「クッ!」」」「くおあっ!」


 その破裂の勢いにより吹き飛ばされた大翔もまた、皆と同じタイミングで声を上げる。


「はぁ、、お前ら、ほんと馬鹿だな。そんな少年漫画みてぇな御託並べて、ヒーロー気取りの綺麗事という、虚言を投げ付け続ければ、俺が揺らぐとでも思ってんのか?」


「修、、也、君」


 氷が先程まで設置されていた場所に、そう放ち首を回す、修也の姿があった。

 恐らく、氷の塊は、それ自体が置かれていた訳では無く、自身を守る防御壁であったという事だろう。

 即ち、煙に撒かれていた最中、"その中"に、彼はずっと居たという事。氷で体を覆っていたという事である。


 その事実に、樹音は驚愕に目を凝らし、美里は「嘘、」と小さく零して項垂れ、沙耶は寂しい、悲しい表情で彼を見据えた。


「チッ、クソが。イキリやがって」


 対する大翔がそう愚痴をぼやいた、それと同時に。

 拳を握りしめ、作戦を立てようとする碧斗を差し置いて、進が足を踏み出す。


「はぁ、分かったよ」


「「「「え?」」」」


「「あ?」」


 その場の6人それぞれが、笑みを浮かべ突如口にされた進の言葉に、そう聞き返す。


「ここで、、彼を止めてやる!そして、この争いを絶対に終わらす。だから、、ちょっとみんなこっちに来てくれないか?俺に、考えがある」


「「「「「!」」」」」


 その強気な発言に、皆は目を見開く。それを受けた修也本人も、何か面白いものが見れるのかと、期待に口角を上げる。


「し、進、、信用、してくれたのか」


 碧斗は、進の前向きな言葉と姿勢に、そう表情を明るくする。

 だがそれとは対照的に、彼の唐突な言動及び行動に皆は、一度怪訝な表情を浮かべた。が、それぞれが顔を見合わせ頷いたのち、修也に一斉に遠距離攻撃を放つ。


「っ」


 と、その隙を利用して、皆は一斉に進の元へ駆け寄る。

 そんな一同の姿を確認したのち、進は数歩、皆の前に出るようにして修也に足を進める。


 と



「悪いな、碧斗、みんな。許せ」



「え」



 進は、そう小さく謝罪を放つ。

 それに碧斗は、思わず眉間にシワを寄せる。すると、次の瞬間ーー


 目の前の彼は、修也に。

 では無く、"我々"に、手の平を向けたのだった。

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