表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
ファイナルライブ編 杉谷寿奈よ、永遠なれ!
94/168

二人の天才 その一

私は最後まで見ていた。二人の練習の様子を。

 同時に驚きもした。空良が格闘技の素質を持っていたことを。

「空良ちゃんって、実はすごい人だったんだね・・・・・・」

 空良がアイドルとしても、ゲーマーとしても、かなりの実力を持つ人間だということは前から知っていた。

 だがまさか、一年でここまで急成長を遂げるとは思ってもいなかった。

「・・・・・・」

 私はこの一年、かなり空良に助けられていた。

 空良に振り回されたこともあったが、最終的には、自分の抱えている問題を解決してくれた。

 私に出来なかったことを、空良はやってくれたのだ。

 

 私は思う。

 あの子は、空良は、どこまでも往くと。

 私がいなくなったとしても、彼女がいれば大丈夫。

 そんな気がしている――。

「――姉さん、ここにいたの?」

「うわッ!」

 唐突に掛けられた声に、私ははっと仰天する。

 その声は、先ほどまで優先輩と組手をしていた空良のものだ。

「あ、う、うん・・・・・・」

 私は、目を逸らしながら答える。

 気まずさで、彼女の顔をまともに見ることが出来なかった。

「いい義姉を持ったな、空良」

「はい」

 ゆっくりと私は空良と優先輩の方を向く。

 自分を良い義姉と言ってくれたことに聊か恥ずかしさを感じてはいたが、でも嬉しかった。

「私も、良い義妹が家に来てくれて嬉しい」

「そりゃどうも」

 空良は私の肩に掌をポン、と乗せてから、タクシー乗り場に向かった。

 それを眺めていた私に、優先輩が声を掛けた。

「なあ、そういや新しい部長って決めたのか?」

 ――あ。

「すみません・・・・・・まだ決まって無いんです」

 本来なら、冬季大会が終わった時に決めるべきだった。

 だがそれをすっかり忘れていた。

 決められずに時間が経ち、気付けばもう半月しか時間がない。

 部長を誰にするか、私にとっては難しい話だ。

 部長が誰になるかによって、これからの部の未来は如何様にも変わる。

「じゃあそうだな・・・・・・正子のアドバイスじゃないから、もしかしたら無視した方が良いかも知れないが」

「そんなことありません」

 優先輩が笑みを浮かべつつ告げた。

「ありがとな。

私は空良に可能性を感じている。

あいつは真宙と秀未にも、そしてお前にも持っていないものを持っている気がするんだ。

あいつが部長になれば、私がさっき教えた格闘技を上手く使いそうだ。

それに、アクロバットももしかしたら習得出来るんじゃないか?」

「あの子が・・・・・・」

 私は内心驚いていたが、先の練習風景を見る限り、出来なくもないと思えてきた。

 空良は一年で私達を超えるに至ったアイドルだ。

 そして、パフォーマンスだけでなく、その他のスポーツも器用に熟し、相手の心理を巧みに突いて作戦を考えられる程の頭脳を持つ天才だ。

 恐らく、私や他のメンバー以上の。

 私は気付いていなかったが、優先輩がそれに気付かせてくれた。

 今なら思う。

 部長になる素質が十分あると。

「私の言ったことを鵜呑みにする必要はない。

あとは自分で決めるんだ。

部長は、お前なんだからな」

 優先輩はそう言い残し、ホテルに向かって歩き出す。

「姉さん、タクシー来たよ?」

「今行くよ!」

 私はそのままタクシーに駆けこんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n1678eb/ 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ