全員集合!
周りの物音で、私の意識は覚醒した。
まだ瞼は重かったが、ゆっくりと気合で開き、まだぼやけている視界で辺りを確認する。
どうやら先輩達が、着替えをしているところだったようだ。
私が起きた事に気付いた優先輩が、一瞥しつつ告げた。
「お、寿奈! 朝飯食って練習行こうぜ!」
相変わらず、整った八重歯を見せながらだ。
もう彼女の笑顔に、偽りが無い事を再確認してから、私は笑顔でベッドから降りた。
ホテルのバイキングで朝食をとり、私と先輩達は待ち合わせ場所で待機していた。
マリアや千尋と話した場所である、ホテルから二キロ離れた場所にある公園が、その場所だ。
昨日は気にしていなかったが、意外と広い。
輝く朝日が園内の様々なものに乱反射し、園内を綺麗に染めている。
ここから見る夕焼けも綺麗だったが、ここは朝日を見るのにも適しているようだ。
時刻は七時五十分。待ち合わせ時間まであと二十分くらいだ。
確か日本とイギリスの時差は、日本の方が九時間進んでいると聞いたことがある。
つまり今の日本の時刻は、四時五十分。
既に夕方で、且つ間もなく夜になる時間帯だ。
私達が今練習を始めようとしている時、日本では明日に備え始めていると思うと、不思議だなと私は感じていた。
「寿奈先輩~!!」
不意に私を呼ぶ声が聞こえ、その方向へと視線を向けた。
その声は真宙のもので、真宙を追いかけるように秀未と空良がついてきていた。
そして一旦止まったかと思うと、真宙は私に抱き付いてきた。
「心配したじゃないでふかぁ・・・・・・」
「ごめんごめん・・・・・・」
涙混じりに、しかも甘えるようにそう呟く真宙の頭を、私は宥めながら優しく撫でる。
確かに昨日、真宙達には戻るという連絡を一切していなかった。
彼女らには悪い事をしたな、と少し反省する。
「秀未ちゃん、おはよ」
「・・・・・・」
秀未は無言のまま、背を向けた。
相変わらず恥ずかしがり屋だ。
「おはよ、姉さん」
「空良ちゃん、おはよ!」
ニヤリと笑顔を浮かべる空良。
これで『Rhododendron』が全員揃った。
その光景に感動したのは、私だけではない。
真宙と秀未、そして空良を見ながら、琴実先輩が嬉しそうに呟いた。
「これが、寿奈さん達の後輩なのですね・・・・・・」
「はい、私の。自慢の後輩達ですよ、琴実先輩」
私が感動したのは、『Rhododendron』の七人がここにいるということだ。
皆、年齢も違う、趣味も違う、性格も違う。
ここにいる、私を含めた七人は元は何の接点も無かった。
だけど、一つの部がこの七人を同じ場所へと向かわせてくれた。
その部を作ろうと考えた者がいなければ、この出会いは無かったのだから。
それ故の感動だった。
「服部先輩、やっぱり貴女は凄いです。
私に、こんな光景を見せてくれるなんて。
これも全て、貴女のおかげです」
そして不思議と、いつも以上に気合が入ってきた。
もううずうずして、気持ちが抑えきれず、私はガッツポーズをして大きな声を上げた。
「さあ皆さん! どっちのライブも成功させましょう!!」
「おー!!」
呼びかけに、皆が大きな返事をし。
私はそれに、満面の笑みを返した。




