大会に向けて
「それでは皆さん、これから大会の概要を説明します」
琴実先輩がホワイトボードを黒い棒で指しながら言う。
私と二年生の先輩は話を聞いている。
「え~、六月に開かれるこの大会は、東京で行われます。
今回参加するグループは私達『Rhododendron』を含め、十五チームです。
順番にライブを行い、観客の得票数が一番多いチームが優勝です。
大会の前日に秋葉原に赴く、一泊二日の行事になります。何か質問はありますか?」
「はい」
「どうぞ服部さん」
「バナナはおやつに入りますか?」
琴実先輩は真顔で沈黙した。
そして何事も無かったかのように、「何か質問はありますか?」ともう一度言う。
「無視しないでよ!!」
「はい」
「では寿奈さん、どうぞ」
「私達のチームは、何番手なんですか?」
「大会のルールでは前大会の上位チームを最後に、逆に下位チームを最初にするという仕来りがありますから、私達は一番ですね」
一番手だとッ!? それってつまり・・・・・・。
「もしかして、前年度冬期大会の結果は・・・・・・」
「ええ、私達は得票数0で終わりました。
元々春期、夏期、秋期と結果は芳しくなかったのですが、冬期大会当時はは流石に驚きました」
その話に入った途端、皆が落ち込んでいた。
その時点で、私は何となく察した。私が服部先輩に勧誘を受けた理由。
それは部員不足というだけではない。私はこの部の希望として、呼ばれたのだ。
「今回は絶対に勝ちましょう!!
アイドルもサッカーと同じです。諦めなければ、負けじゃないんです!!」
服部先輩が立ち上がる。
「寿奈の言う通りよ琴ちゃん。私だって、寿奈なら才能があると見込んで勧誘したんだよ?」
「服部さん・・・・・・」
「そうだぜ琴実。落ち込むのは、また負けてからにしようぜ!」
「百地さん・・・・・・」
「ですね。私も寿奈さんに賛成です!」
「伊賀崎さん・・・・・・。皆で勝ちましょう!」
「おー!!」