卒業式~それでも、まだ~
卒業式は、あっと言う間に終わり。
その足で私は、部室に向かった。
一足先に部室で待機していた後輩達が、クラッカーを引いて出迎える。
「寿奈先輩! ご卒業、おめでとうございます!」
真宙は笑顔でそう言った。
「ありがとう!」
パーティは二時間続き、よく食べ、よく笑い、よく話した後、私が口を開く。
「皆、ちょっと良いかな」
「はい?」
「ん?」
私は、今の空良との関係を話した。
空良は既に、私の妹となっていることを。
「そうですか・・・・・・。こうなったら、それも祝いましょう!」
真宙が、ガッツポーズをしながらそう言った。
それから、少しの準備時間の後。
何故か、結婚式風の舞台が準備され、私と空良は並んでそこに立たされた。
仲人の如く、養子縁組の申請書を持って真宙が言う。
「姉、寿奈。姉として、今まで以上に素晴らしい人間になることを誓いますか?」
「結婚式か何かなのコレ?」
「一度やってみたかったんですよねー! それより返事お願いします!」
「あ、うん。誓う」
真宙が微笑み、空良の方を向く。
少し空良が怯えるが、すぐに普段の顔をした。
「妹、空良。妹として、姉を敬い、杉谷家の人間として生きることを誓いますか?」
「え、はい先輩」
「そうそう! それじゃあ最後に――――
「あぁ、誓いのキスなら却下だよ? 結婚じゃないし、そもそも女の子同士だし」
「しょぼーん・・・・・・」
え、そんなにさせたかったの?
「まあ、とにかく。これで正式な姉妹ですね、先輩」
満面の笑みで、そう言う真宙。
「ははは・・・・・・」
私はそれに苦笑していた。
◇◇◇
楽しい時間は、やはりあっという間に過ぎてしまった。
後輩達に先に帰るように言われ、少し申し訳ない気がしたが、ゆっくりと校門から外に出ようとしていた。
その前に、振り向いて校舎を見る。
三年前、私はスクールアイドルと出会った。
そして、色々な事を経験した。
沢山泣いた、沢山怒った、沢山落ち込んだ、沢山笑った――楽しかった。
「やっぱり、信じられないな」
ここで、本当に終わっちゃうのかな。
って、何を今更考えているのだろう。
スクールアイドルが学校卒業と共に終わることは、宿命なのだから。
だから、これで終わりだ。
でも、なんでだろう。
違う、気がしてきた。
・・・・・・。
『寿奈、アンタの話は、まだ終わってないからだよ。
もう、本当の最後の物語は始まってるよ』
不意に聞こえたその声で。
私は辺りを見回した。
その声の正体が見つからないまま、私はいきなり現れた郵便局の人間に声を掛けられる。
「あの、杉谷寿奈さんですよね?」
「え、あ、はい」
「これ、大会実行委員会からの手紙です」
「あ、どうも」
手紙を受け取り、私は開けたい衝動に駆られ、シールを剥がす。
中身を見ると――――。
「これは、もしかして――」
そう言うと、私は駆け出していた。
部室へ。
最後の物語の始まりの部屋へ。
『寿奈の物語は、まだ終わらないわよ。
もうちょっとだけ、続くよ』
というわけで、まだ終わりません。
今日からアイドルを始めたい!は真の最終章へと入ります。
一ヶ月一話更新で送る、今日からアイドルを始めたい!ラストライブ編は、一月より公開開始です!




