表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
冬季大会編 最後の大会!
75/168

石楠花は再び咲く

東京の拘留所に入ってから四日が経過した。

 今日は最終日で、すでに拘留所を出て、バスを待っているところだった。

 バス停ではなく、近くの公園のベンチに座り。

 

 普段、必要な時以外感情を表に出すまいと決めていたのだが、空良は俯いていた。

 拘留所に入ったせいではない。

 退部になったことが、やはり辛い。

 あり得ない。そう思っていたのに、感情は違っていた。

 あの時、秀未先輩にきちんと話していれば、未来は変わっただろうか。

 色々、考えてしまっている。

「空良ちゃん」

 不意に聞こえた、その声に空良は顔を上げる。

 茶色の明るい髪に、黄色の二重瞼の整った容姿。

 こげ茶の防寒着に身を包み、赤いスカートの下にはストッキングを穿いている。

「寿奈先輩」

 空良は呟きながら立ち上がった。

 だが寿奈を見て嬉しくなりそうな自分を抑えて、冷静に言う。

「今更私に何の用ですか? 退部届代わりのプレゼントなら既にした筈ですよ。

後は先輩達の力で、冬季大会に勝って

 

「いや、それは違うよ」

 

 違う? 何が違うのだろうか。

「空良ちゃんも、『Rhododendron(ロードデンドロン)』のメンバーだよ。空良ちゃんがいなかったら、『Rhododendron(ロードデンドロン)』じゃないよ!」

「・・・・・・」

「だから、冬季大会もみんな一緒」

 寿奈は空良の身体を強く抱きしめる。

 感じた。

 温かさを。人間の心の温かさを。

 生まれて初めてだ。

 

「こんな私を、援助交際や犯罪に手を貸した私を。受け入れてくれますか?」

 

「うん、約束する。それに空良ちゃんに、もう辛いことはさせない」

 え?

 空良は目を大きく開けた。

「親とちょっと相談したんだ。部員で実は身寄りのない子がいて、助けてあげたいって言ったら。

そしたらね、OK貰えたんだ!」

「つまり?」

「一緒に暮らそう。私は四月からまた、ブラジルで女子サッカーの選手に戻ることになってるけど、たまに戻ってくる。

だから、今日から空良ちゃんは私の妹。私の家族だよ」

 その言葉を聞いて、今まで自分の心を苦しめていた重りが外れた気がした。

「先輩――――いや、姉さん。ありがとう」

「うん、よろしくね」

 久しぶりに両目から、涙が流れる感覚がした。

「さて、じゃあ行こうか」

「え?」

「これから始まるよ。冬季大会!

急ぎでの打ち合わせになっちゃうけど、でもきっと何とかなる!」

 面白いけど、やっぱり無茶苦茶だ。

 でも、何だろう。

 今は笑って、こう答えられる。

「うん!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://ncode.syosetu.com/n1678eb/ 小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ