真実 その一
決勝当日。
空良は打ち合わせ通り、誰もいない時間に準備を開始していた。
芽衣に指示された通りに、一個ずつ爆弾をセットする。
爆発させる予定はない、爆弾を。
「・・・・・・」
芽衣から伝えられた作戦は、こうだ。
爆弾はあくまで予備の作戦。
爆破予告に掛からなかったチームに対して使う予備の作戦である。
white lillysは、もし爆弾を使ったとしても、生き残る術を持っている。
空良は知っている。その秘密を知り、そして使ったのだから。
故に、それを利用する。
自分にとっての、『勝利』の為に。
◇◇◇
私は結局、ライブドーム付近の駅で様子を見ることにした。
動画アプリの生放送の画面は、開始まで二時間と表示されている。
その駅にいるチームは、私達だけではない。
現在参加チームは、二組に分かれている。
私達を含めた五チームが、安全が確認出来るまで待機しているチーム。
white lillysを含めた五チームは既に、大会会場に入ったのを確認した。
入っていくチームを見て、焦りそうになったが、何とか足を止めている。
「先輩、あれを見ても空良を信じるつもりですか!」
私は強く目を閉じ、反論した。
しかし声は、不思議と落ち着いていた。
「空良ちゃんは、私達を本気で助けようとしてくれている
あの目に、嘘は無かった」
まだ私は、渡された手紙の内容を知らない。
事が起きるまでは読むな、という空良との約束を守っているからだ。
「人は喋っている言葉が嘘か本当かで微妙に変わる。それは空良ちゃんが何回も言っていたし、それは嘘じゃなかった。
だから私達は、爆発時に他チームを救出する方法を考えよう。
もう誰にも、血は流させない」
私はそう言って、拳を握った。
◇◇◇
「さて、『Rhododendron』を含めて五チームを強制棄権させました。爆破はしなくても大丈夫ですよ」
電話の相手――空良にそう言った真友。
通話終了ボタンをタップし、二度のバイブの後、スリープモードに入る。
それを確認してから、自分の出番を待った。
負けるつもりなどない。
“アレ”がある以上。
“アレ”はこのチームのメンバーと空良しか知らない機密事項。
勿論バレてしまえばどうなるか、分かっているつもりだ。
両目をパチパチと瞬ぎながら、そんな事を考えている内に、自分達の出番に突入する。
真友はメンバー全員に呼びかけてから、ステージ裏までの道を歩く。
三分程度でステージ裏に到着し、少し嗤う。
ステージにいる司会が大きな声で、自分達のチーム名をコールした。
『さあ! 冬季大会!
五チームがまさかの棄権となってしまいましたが、最後のチームとなります!
それでは、「white lillys」の皆さんどうぞ!!』
コールの後、勝利を確信した笑みと共にステージに上がった。
――――芽衣。見てますか?
――――これが、あらゆるもので頂点に立つ者の力なのです。
決めた位置に立つ。
緊張などない。間違うことなど、万に一つも無いのだから。
と、その時だ。
「ッ!?」
ピピピ――――、と鳴る筈の無い音がステージ中に響き、観客が黙り込む。
辺りを見回そうとしたその時には、爆発は始まっていた。
ドガン、という音と共にステージ上の天井が弾け飛ぶ。
機材やコンクリートの雪崩が、観客ではなく、真友達を襲う。
そこで真友には――――真友の頭には緊急回避の方法など思い浮かばなかったが。
体は、真友の止まった思考に反して動いていた。
あらゆる危機を数秒で判断し、回避を可能にする真友の全身が、岩の雪崩を自動的に避けた。
雪崩が収まり、瓦礫の上に着地し。
再び、辺りを探る。
直後、裏切り者と思しき、その人物が声を上げる。
「私の――――いや、私達の勝ちだ」
黒野空良の、声だった。




