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今日からアイドルを始めたい!  作者: 心夜@カクヨムに移行
第十四章 八月&九月編 合宿編
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秀未VS寿奈――剣道勝負

夏休みが終わり、九月。

 秋季大会―――――決勝に進めない者にとっては最後の大会となるその大会に向けて、私達は練習に明け暮れていた。

 そんなある日。

「では、私は剣道の方へ」

 秀未は袋に入れた竹刀を持って部室に出る。

「ねえ、秀未ちゃん!」

「何だ?」

 私に振り向いて訊く秀未。

「今日、剣道の方見に行っても良いかな?」

「好きにしろ」

 秀未は表情を変えずに言い、部屋を出て行った。

 相変わらずトゲのある返事を返されてから、真宙が私に申し訳なさそうに声をかける。

「何というか、ごめんなさい先輩」

「大丈夫だよ。でも秀未ちゃん、優しいところも少しあるんだよね」

「はい、秀未ちゃんは私が一年の頃、滋賀に慣れていない私を助けてくれたぐらいですし」

「なるほどね」

 

◇◇◇

 

 私は剣道の練習が終わってから、道場に駆け寄った。

 他の部員は既に帰っており、秀未のみが正座で待機している。

 多分秀未が言う『気』とやらを感じ取り、私が少しずつ歩み寄っていることなど当然気付いているだろうが。

「待っていたぞ、先輩」

 私が近付いている途中、秀未は立ち上がって振り向いた。

「うん」

「ところで来るのは良かったが、何をするんだ?」

「そうだねぇ――――」

 私は近くにあった箱から竹刀を取り出し、

「私と一回試合してみない?」

「先輩、お前はバカなのか?」

 ま、まあ普通はそうなるよね。

 でも実力を見たいな、と私は秀未にこう言った。

「うーん、そうかもね。でも、ちょっと秀未ちゃんの実力が見たいなって思うの」

「全く・・・・・・。まあ良いだろう」

 

 分からないな、と秀未は対峙する寿奈を見て思った。

 秀未は子供の頃から、兄と共に剣道をやっていた。

 だが強くなり過ぎて、兄以外に自分に勝てる者も、自分から挑む者もいなくなった。

 最初から勝てないと、分かっている筈なのに。

 寿奈は余裕そうな顔をしている。

 ――――悪いが先輩、お前に圧倒的な力の差というものを見せてやるぞ。

 

 最初に動いたのは、秀未だ。

 しかし、私には彼女の動きが見えなかった。

 辛うじて、私に向かって一直線に接近していることと、面に向かって振り下ろそうとしていることだけは理解し、私は素早く右に躱す。

 まるで瞬間移動の如く姿を消した秀未が私の近くに出現し、すかさず胴に向かって右薙ぎを放つ。

「胴!!」

 新体操の選手の如く、私は竹刀を握って後方転回。

 逆立ちの状態から、秀未の背後へ飛ぶ。

 頭に向かって、全力の唐竹割り。

「面ッ!!」

 だが秀未は再び、消えるように素早く動いた。

 出現場所は――――。

「残念だが、私の勝ちだ」

 『面』という叫び声の後、私の頭に竹刀が入った。

 

「ま、負けたぁ・・・・・・」

「だから言っただろ、勝てるわけがないと」

 と言いつつ、秀未は内心驚いていた。

 寿奈との戦いで、秀未は久しぶりに手応えを感じたのだ。

 攻撃こそぎこちなかったが、彼女の動きは他の剣道選手には出来ないものだった。

 そして何より、彼女の瞳が熱を放っているように見えた。

「次は勝ちたいな・・・・・・」

「無理だな。お前の動きは素人同然だ。

剣道部の部員全員を倒せる程の実力が無ければ、私は倒せんよ」

 嘘だ。

 彼女がもしこの道を極めれば、秀未は負けてしまうかも知れない。

「絶対に無理――なんてこの世には無いよ。

何度でも挑めば、必ず相手に勝つ方法は見つかる。

勝てなくても、相手を驚かすことは出来る」

 普通の人なら、どうせ口だけだ――――などと思う台詞だが、秀未はそう思わなかった。

 この少女――寿奈は天才だ。

 秀未の力は生まれつきのものではない。

 剣道部の部員を余裕で倒すなど、昔なら考えられなかったし、何度も失敗しては兄や父の注意を受けていた。

 対して、防具の着け方すら知らない状態であそこまで戦えるのは天才以外に他ならない。

「ふっ、どうだかな」

 秀未は本心を隠して、寿奈にそう言った。


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